横浜F・マリノスが目指す物 (メディア向け説明書)
堅守、ハイライン&ハイプレス、偽サイドバック、シティ式、ポジショナルプレー。
安易なレッテルで納得する前に、横浜F・マリノス(以下マリノス)新体制発表会で何が語られたのかを、この事実をベースとして、考えよう。
スポーツディレクターによる指針方針演説
昨季からの大きな変化として、統括本部長の利重氏ではなく、スポーツディレクターのドル氏がメインで語った事が先ずあげられる。
これは、サッカーにおけるスポーツ(競技)面における知見というものにおいて、利重氏がそれを専門としないのは明白であり、この道でキャリアを重ねてきたドル氏が、役職に応じた役割を表舞台でも果たすようになった、と言える。
内容として、大変エモい演説であり、私を含め、多くのファン、サポーターは感ずる物があったと思うが、出来ればクラブとして、校正を入れた書き起こしを出してくれると望ましいとリクエストしておきたい。
本稿では、競技面の最高責任者であるスポーツディレクターが登壇し、従来よりも具体的となったことで、チームの指針方針演説と呼んでも過言はないプレゼンテーション(以下プレゼン)の内容を再確認したい。
マリノスにとって攻撃的とは何か
先ず、前提として、マリノスにとって、理想のサッカーにおける第1優先事項が変化した、というのが発表された場であった、と私は考える。
2018年の変化として、出来るだけ点を失わない、という概念が、消えたのではなく1番手では無くなり、代わりに1番手となったのが、攻撃的(オフェンシブ)という概念である、と言える。
また、プレゼンでは攻撃的とは一体何のことなのか、という定義説明が丁寧に行われているのも大変印象が良い。
なぜなら、よくあるパターンとして、堅守のチームとマリノスの事を言う人がいるが、2017年リーグ戦における総失点数は36であり、一方で優勝した川崎フロンターレは32失点である。
堅守のチームとは、結果論として失点が少なければいいのか、それとも、出来るだけ失点をしない、という概念が第1優先事項であるのか。
では、第1優先事項であれば、50失点していても堅守のチーム?
(札幌47失点 仙台53失点)
先ず、堅守のチームという言葉は、結果に対する評価なのか、それともスタイルに対する評価なのか、次に、第1優先事項としたチームにとって、36失点は堅守と言えた結果だったのか。
このように定義もされずに曖昧な意味の言葉を、レッテルとして使う事に疑問を感じないのであれば、ジャーナリストという職業は資質が無い、という意味で向いていないので辞めるべきだ。
この点において、ドル氏のプレゼンでは、マリノスにとって攻撃的とはなにか、について、シュート本数だ、と明確に定義されている。
シュート本数を増やす為に、アタッキングエリアへの侵入回数を増やすんだ、出来るだけ素早く前に進むんだ、そして素早く進む為に仕掛ける回数を増やさないといけない、と非常に解りやすい説明でした。
またバーチカルプレー、というワードが出てきましたが、これはピッチをボードなどに記載した際に生まれる、上下、垂直という縦軸であり「まっすぐ立ってプレー」はご愛嬌かと思われます。
人間の姿勢を指すのでしたら、アップライト、かと思いますので、ここではピッチを上下に見た、前進意識の高いプレーをしよう、という事だと思います。
シナジー(相乗効果)はどう生まれるか
攻撃的という定義、そしてそれを理想における第1優先事項とするとした上で、どの様に実現するのか、という実装が次のテーマとなります。
この点で、身体、技術、思考といった個人スキルとしてのスピードを、欧州(トップレベルリーグの)水準にしようという目標が提示されました。
まてまて新幹線はそんなに速くないぞ、ドイツのパスは時速80キロで中国は20キロってほど差はないだろう、と聴衆がツッコミたくてたまらないエモさ溢れるトークでした。
次に、そんな選手の個人スキルとしてのスピードだけでは、理想の実現は出来ないぞ、と提示されたのが、リーダーシップでした。
オリンピックに多い、個人競技なら個人スキルのみの衝突ですけどね。
ハッキリ言って、私を含めて聴衆の中で、この時点で意味を完全に理解していた人は居なかったと思われます。
リーダーシップという言葉の解釈が、全員がキャプテンの気持ちで~、責任感を持って~、みたいな曖昧な物では無い、という事です。
私は、昨今話題のポジショナルプレーという言葉が気になり、それをグアルディオラがサッカーに流用するとして、表層的ではない、概念の根源的な意味を考えていました。
この点、現在のメディアでみる論は、構成要素の説明に追われているに過ぎないのではないか、と感じます。
私は、深い思想的な部分を読み解く結果、チェス、将棋、ボードゲーム界を席巻しているAIソフトのゲームに対するアプローチが、極めて近似していることに気が付きました。
コンピューターは人間の模倣ではなく、将棋という競技や対戦相手は関係なく、ただひたすらに、盤面を点数化して、より良い点数の可能性だけを計算する事になりました。
監督は、盤面(駒配置)の点数化方法と、良い点数が出しやすい解法を教えるが、最終的に、より良い点数の探索は選手に任せる、ということになります。
この概念では、攻撃や守備という分類もなくなり、あくまでも、盤面が、より良い点数となる様な配置の模索と実行だけが行われるイメージとなります。
これこそが正に、ポジショナルプレーにおける『駒の配置から生まれる優位性がゲームの結果を決定するとされている』という概念に合致します。
選手が、駒として、割り振られた役割の消化、オーダーを消化する定石の保守、だけではなく、指し手として盤面形成を考える。
これがボードゲームから持ち込まれた、ポジショナルプレーという概念をサッカーに流用する、というテーマに対する根源的な回答であると私は考えます。
監督は盤面の採点方法と、良い点数の出し方を授けます。
そして選手は、それを元に、リーダーシップ(指し手の概念)により、盤面形成による配置の優位性を維持し続ける事で、個人スキルとしてのスピードが活きる、その結果、攻撃的(=シュートの本数)という理想の第1優先事項を叶える。
更に、逆説的に言うと、盤面形成のゴールとして、第1優先事項は攻撃的だよ、という事です。
例えば、GKがボールを持っているとして、第1優先事項が『出来るだけ失点しない』のであれば…
ハイボールに強いファーストトップ(質的優位)を用意して、俊敏性が高く独力で切り込めるセカンドトップを近くに配置して(配置的優位)、敵陣深くへ蹴り込んだロングボールの落下点に数人が殺到(数的優位)、する盤面形成を繰り返せば良いとなります。
ビルドアップミスを完全に排除して、ショートカウンター(自陣からの速攻)被弾率をゼロにしつつ、自陣において常に敵よりも味方が多くいる状態の構築、です。
つまり、ポジショナルプレーとは、必ずしもFCバルセロナのようなスタイルだけが該当する訳ではない、と言えます。
問われるリーダーシップ
日本的対策として、GKがボールを持ってる時に、2人のセンターバックと、喜田にミラー型の配置で選手をぶつけられたら、今のマリノスは混乱すると思います。
例えば、4-3-1-2ですか。
この時に、前半終了を待たずに、 正に選手がリーダーシップを持って、最適なオプション(選択肢)を選択して、準備してきた相手を即座に無効化する盤面形成が素早く出来るのか、どうかが今後の戦いにおけるテーマではないでしょうか。
「おい、サイドバックがめっちゃワイドに開いたぞ」
「サイドサイドでボール運ぶから中の4人空転してる」
「サイドバックが常にウイングとサイドバックにボコられる(´;ω;`)」
「喜田が落ちて3バックなったけど、代わりにウイングが中に入って中盤4人になってるやん」
「ぼく喜田にマークついていって良いんですか?」
「真ん中で一人足らないけど、どうするんですか、監督ぅー!」
みたいな感じで、前半終了を待たずに、選手が指し手となって、常に最高の盤面形成をする結果として、盤面的な優位性を保ち続ける事が出来るのか、ということであり、
今季のマリノスは苦労するとして、その中身は、定石の習熟に苦労するのではなく、盤面を崩壊させる様な、個人スキルに依存する致命的ミスと、選手はリーダーシップ(指し手という概念)を獲得できるのか、という事だと考えます。
マリノスがいい成績を収め、その中で大活躍する選手というのは、ある意味、盤面を支配する能力を手に入れたと同義であるので、それはプレミアだろうがブンデスだろうが、どこに出しても通用する選手になるでしょうね。
横浜F・マリノス プライオリティ(第1優先事項)の転換
2018年、今季の横浜F・マリノス(以下マリノス)は、既にJリーグ開幕戦において、チーム愛の垣根を越えるという意味で、サッカーマニアック層に対して最もインパクトを与えたチームであるのは間違いがないように、今後も、どっちに転ぼうが話題を集めることになるであろう。
その喧騒の中で、具体的なゲーム単体における事象の分析は、プロに任せるとして
セレッソ大阪対横浜F・マリノス ~横浜F・マリノスの設計を探ろう~ - サッカーの面白い戦術分析を心がけます
チームとの時間を共有するいちファンとしては、同じくファンやサポーターに向けて情報発信するに辺り、私は、その文脈を重視したい。
この立場から見た場合に、許容出来ない記事として、マリノスの文脈を無視する、以下の様な記事である。
順調なC大阪と戸惑う横浜――キャンプで見えた両チームの現在地は? | サッカーダイジェストWeb
選手の役割を単純化し、それがシンプルなサッカーとなって結果を出すことができた
今シーズンは、そのスタイルから180度転換した
前述のらいかーると氏がゲームを観た上でマリノスの分析に時間を割いてくれているのを感じる事が出来るのに対して、この文には、一切の時間が割かれていない事が直ぐに解る。
以下は2017年のマリノスに対する、正しいおさらいであり、反論となる。
自陣ポゼッションからの攻撃指数は、2016年の56から60と、微増に過ぎないが、ゴール率は、0.3%(リーグ13位)から、1.2%(リーグ3位)という結果を出している
カウンター頻度の激減 (2015年 2016年 2017年)
ショートカウンター 51 49 35
ロングカウンター 43 61 49フットボールラボ・カウンター指数
意図的にカウンター使用率を減らし、ボール保持攻撃に取り組んだ代償として、
自陣内でのボールロストが多発し、最悪の被攻撃指数を記録(下記)
守備開始位置の必然的後退に伴う「DFラインの高さ平均値」低下
38m(リーグ17位)
被チャンス構築率 12.2%(リーグ17位)
平均被シュート数 14.4本(リーグ16位)
私は上記のデータを論拠として、マリノスにおいて、もしスタイルの180度転換というものがあるとしたら、2016年→2017年に既に実施されていて、
2017年は目標を打ち立て、それにチームは団結して苦しみに立ち向かった、という文脈があることを、1人だけ何故苦しんでいるのか、その意味が解らなかった人を除いて、ここに確認します。
理想における優先順位とモンバエルツの功績
物事には優先順位が存在して、それは25年という歴史においても長い間、漠然とではあったが、マリノスにおける理想のサッカーという物の1位には常に(若干ハヤノしたが)、堅守(出来るだけ失点しない)が存在していた。
これは実際、2017年にチームのスポーツ面における最高責任者であった利重氏が、新体制発表会で強く明言していた事実もあり、2017年までは間違いがなく、マリノスというクラブにおける理想のサッカーとしてプライオリティ(第1優先事項)であった事がわかる。
次に、では、理想のサッカーにおける第1優先事項とは何かと言えば、先ず、前述したように、マリノスは2017年において、攻撃手法におけるカウンター使用頻度を減らし、 ボール保持攻撃の比率を増やそうとした意図はあった。
その目的は、年間を通して、もっと得点する為に、手段を多様化する事であり、シーズンを通して勝ち点を獲得する事を考えた場合に、ロングカウンターしかない、一辺倒の限界は誰が考えても明白と言え、理にかなった選択である。
一方で、相手からボールを奪う、という目的に対しては、常に正しい駒配置をする事が目的となるポジショナルプレーの概念において、最終的にハイプレスと撤退守備、どちらも完璧に出来る様にならないといけないのだが、この点でマリノスは2016年の秋に、撤退守備の整備から始めたと言える。
これこそが、理想における第1優先事項とは何か、という現れであり、また自己分析において、フットボール批評に載ったモンバエルツのインタビューを読むに、ポジショニングの基礎であり、更にはボール保持攻撃がろくに出来ない状態でリスクオフを優先した、適切な判断と言える。
この点、モンバエルツを評する際に、基礎をマリノスに教えた、というだけではなく、一歩間違えば、前年はマリノスより上位だった大宮が降格した様に、
チームの状態を見極めて習熟段階を上げていくという、極めて困難かつ危険な作業に対して、リスクヘッジが最適であったという部分も賞賛したい。
以上から、サッカーダイジェストの記事が、いかに、CFG以降のマリノスという文脈を理解していない物かは一目瞭然と言えるし、同時に困難な仕事を成し遂げたモンバエルツを過小評価していると言えるだろうか。
サッカー専門誌として長い歴史を持つサッカーダイジェストではあるが、WEBサイト化による記事の乱造に注力した結果、ゲームを観ること、事実を調べる事に労力を割こうとしない記者の記事を掲載し続けており、最早、存在価値を失っていると断じたい。
その一方で、元からマニアック層には人気の高かったフットボリスタは、ようやくのWEBサイト化に対応し、評価を上げてきている。
footballista | 海外サッカー月刊誌 footballista(毎月12日発行:900円)
彼らが、以前は眼中にも無かった日本、Jリーグにも目を向けてきたのは、ビジネス的理由もあるだろうが、良い傾向だと思う。
18年マリノスの変化は理想のプライオリティ(第1優先)
今年、2018年の新体制発表会は、元エースが意味不明な言動により離脱したこともあり、大変注目度が高かった為、ドル氏のスピーチを聞いた人も多いだろう。
先ず、前年との違いとして、統括本部長の利重氏はより広い範囲をカバーし、海外クラブと同じく、スポーツ面という局所における最高責任者がスポーツディレクターとなったのだと感じたが、今にして思えば、あれこそが、マリノスというチームにおける理想の転換を明言した発表の場であった。
攻撃する回数を増やす(アタッキングエリアへの侵入回数)
これを多くの人は、前年からの改善と受け取った筈だ。
だが、開幕戦で私は実感した。
マリノスにとって理想のサッカーにおける第1優先事項が、出来るだけ失点しない(=堅守)では無くなったのだと。
それが第1のチームであれば、ああいう手法(ゲームモデルの採用)を選択する事は絶対に出来ない。
勘違いがないように説明すると、引き続き「出来るだけ失点しない」という概念は存在しているが、理想のサッカーとして、全試合において相手を圧倒し3-0で勝つ、というビジョンがあったとして、その中で優先順位が低いという意味である。
1-0より3-1がいいよね、と言うのが解りやすい例えだが、表層的な物ではなく、とても根源的な部分から出てきているのを理解しないといけない。
まとめると、2018年にマリノスは変わった
何が変わったのかというと、戦術や攻撃手法、守備方法ではなく、それら手法を選択する、マリノスが考える理想のサッカーとしての第1優先事項が転換した、と考える。
チームとの歴史を重視する、ファン、サポーターにとって、より重要な事は、こうした文脈であると私は考えるので、ここにシェアする。
マリノスはクラブ消滅の危機だった
CFG以降の文脈はこちらの記事から
2018年の横浜F・マリノスはスペクタクルだ
絶対的な正解が存在しない世界においては、何を信じるか、という事が意味と価値を持ち、その結果として数々の宗教が存在し、その信奉者も多数存在している。
この点、私が応援する横浜F・マリノス(以下マリノス)は、これまで無宗教であったが、2018年からは新たな教義を信仰し、それに殉じる覚悟を決めたようだ。
我々が入信した宗教とは、現在の運営長たる法王は、マリノスが加入したシティフットボールグループにおける、フラッグシップチームであるマンチェスター・シティの監督グアルディオラなのは間違いがないのだが、その成り立ちから、エポックメイキングな信徒の名を表し、こう呼んでも異論は出ないであろう、クライフ教と。
私は、まさかJリーグで、それも横浜という街で、そして自らの意志とは関係なく、再び入信することになるとは思いもしなかった。
だから、若干話は逸れるが、この思い出を触れない訳にはいかないのである。
1996年のすれ違い
今や多くの人にとって、スカパーは”スカパー”という一つの単語かもしれない。
だが、かつてクライフ師の講演を生で観戦したいと願った私にとって、スカパーはスカイ&パーフェクTVであり、その出会いは1996年に起きた、苦いすれ違いの経験に他ならない。
当時において、オンタイムでクライフ師の講演を体験するには、ようやく始まった有料衛星放送に契約し、欧州チャンピオンズリーグを観るしか方法は存在しなかった。
この時に、それが可能であったのが、後にスカイTVに吸収合併される(事実かどうかは不明な私の印象)、パーフェクTVだった。
当時の私はまだ未成年であったが、それでも自分のお金でテレビを買い、アンテナを買い、工事費も払い、来るべき96シーズンに向けていち早く準備を済ませていた。
だがしかし、95シーズンが終了した直後、インターネットも民間レベルでは存在しない時代、私は彼の処刑を伝えるニュースをスポーツ新聞で目にする事となった。
クライフ解任
まぁ、クビにならなくても当時はリーグ3位じゃCLには出られなかったんだけどね。
グアルディオラの提案は何が凄いのか
マリノスに関係がない思い出話はこの辺にして、試合の細かいディティールではなく、我々が信じることになった教義について、確認をしよう。
現法王であるグアルディオラが持ち込んだ言葉について、その解釈作業を多くのメディアが試みているが、例えば下記の記事を読んでみた所で、
多くの人は一体、これまでの戦術とは何が違うんだ、何がそんなに画期的なのか、正直なところ、意味がわからないと思う。
-従来の戦術とは何が違うのか?
「ポジショナルプレーが従来の戦術と唯一違うのは、ほとんどのチームよりも、もっとフレキシブル(柔軟性)なプレーをするようになることだと思う。」
もっと柔軟性のあるプレーが出来るんだ、と言われて意味がわかりますか?
グアルディオラの提案について、如何に従来の概念に対して画期的なのかを、「おお!それは確かに画期的だね」と感じれる様に、日本人に、そしてマリノスを応援する人には馴染みの深い将棋をベースに説明してみたい。
・ 駒としてのタスク
君は香車だ、お前は桂馬だ。
香車の初期配置はここ、桂馬の初期配置はここ、動きのルールはこうだ、これが駒としてのタスクであり、配置される全戦力は、タスクを割り振られた駒として振る舞うというのが、戦術として基礎と言える物になると考える。
駒は、盤面全体や、更にはもっと小さな局面も気にする必要(知る必要)がなく、ただ、自分のタスクを忠実に消化していれば、指定されたマス目へ移動していればいい。
これが極めて適した組織のモデルケースとしては、万単位の人間が動く軍隊が最適だろう。
・ 定石(連携&セオリー)の理解
駒同士、駒間の連携、つまりは複数駒における連帯責任としての局地的セオリー、ルールに基づく運用というのが、更に発展した戦術であり、将棋においては定石と呼ばれるものだ。
2~4、の駒が、予め定められた局面における配置を連携して構築する事を目的とする。
駒間の相互理解による熟成が発生しやすく、サッカーにおいてよく聞かれる「まだ連携が低い」というのは、これが上手く行っていない、となる。
監督は指し手であり、準備として駒に役割を割り振り、コマを並べ(配置し)、予め定めた定石(セオリー的ルール)に沿って運用出来る様に整備する。
これが従来の手法で、各駒には一定の制限、又は、無法者と無法地帯を生み出す。
・ グアルディオラの提案
監督ってさー、実は試合中は出来る事すくねーじゃん?
だから、盤面の理解方法は教えてやるから、全員が指し手になった方が合理的じゃね。
もうお前ら駒をやめろ、更にただの棋士じゃダメだ、全員が常に最適解を探す、コンピューター将棋のようなAIになれ。
私は、これこそがグアルディオラの提案に潜む画期的要素であり、ボードゲームとして見た場合における、レイヤー(階層)の飛躍的突破という、とてつもないパラダイムシフト(革命的転換)であり、その根源は、盤面の理解(評価)方法と最適化手法の習熟だと考えます。
盤面の新理解方法 人類を越えたコンピューター棋士の画期的手法
もはや、大きくスペックを下げたマシンに搭載されたソフトにすら、その道を極めた人類最高峰のスキルでも勝てなくなっています。
そのブレイクスルーになったのが、人間的アプローチの放棄です。
極めて簡単に端折って説明するので、若干、その道のプロからする間違っている箇所もあるかと思いますが、
これまでは、過去の棋譜と呼ばれる対戦経緯や、定石の学習を行い、つまり人間の模倣をいかに上手にできるか、と性能(棋力)を上げてきました。
この手法では、マシンの性能が上がれば、やがて勝てるのではないか、程度の見込みがあったのですが、極めて進歩が、棋力の向上が遅かったのです。
ところが画期的な手法が発見され、それが劇的に性能を向上させました。
盤面、つまり、駒の配置を点数化した上で、秒間数十万手計算という、マシンの性能を活かし、全可能性を探索する、という手法です。
コンピューターは人間の模倣ではなく、将棋という競技や対戦相手は関係なく、ただひたすらに、盤面を点数化して、より良い点数の可能性だけを計算する事になりました。
人間には想像もできなかった新しい手(配置)が生まれるだけでなく、更には、なんでこの配置になると良い(点数が上がる)とコンピューターが判断するのか判らない、というケースも生み出しています。
人間には不可能なアプローチが、人間を圧倒しているのです。
従来の戦術とは何が異なるのか
定石(セオリー)の習得でとどまるのではなく、盤面を点数化(採点)する手法を採用した上で、その手法(採点方法)を基礎として、本当にそれは正しいセオリー(より良い点数化が出来る配置)なのか、といった再検討から、もっといい点数があれば、そっちを選択しても構わない。
従来の戦術とは何が違うのか、という問いに、「選手はもっと柔軟性のあるプレーができる」と彼が答える意味がここにあります。
つまり、監督は、盤面(駒配置)の点数化方法と、良い点数が出しやすい解法を教えるが、最終的に、より良い点数の探索は選手に任せる、ということになります。
コンピューター棋士と、そのソフトを開発する人、という関係に近いと言えます。
・ 従来のチーム
駒(選手) 指し手(監督)
・ グアルディオラのチーム
駒&指し手(選手) 【何と呼んでいいか判らない役割※】(監督)
※ 私は時代を先取って、コーチ(監督)ではない新ポジションとして、グアルディオラを(仮)プログラマー と呼んでおきます。
同時に、この概念では、攻撃や守備という分類もなくなり、あくまでも、盤面が、より良い点数となる様な配置の模索と実行だけが行われるイメージとなります。
これこそが正に、ポジショナルプレーにおける『駒の配置から生まれる優位性がゲームの結果を決定するとされている』という概念に合致します。
この為、ポジショナルプレーに存在する3つの優位とされる、数的優位、質的優位、位置的優位、というのも、あくまでも盤面を点数付けする際に考慮する、ボーナスポイント程度の物と考えられます。
そして、昨日のゲームを観て分かる通りですが、習得の段階であるマリノスでは、まだ、より良い点数を出しやすい解法の消化に追われている印象があり、それはつまり定石の範疇であると思います。
例えば、サイドバックの動きは現在、象徴的でわかりやすいのですが、盤面の判定として、より得点が伸びる配置をグアルディオラの採点方法で考えた時に、従来のセオリーよりも、あちらの方が点数が伸びやすいから、ああなっている(採用している)と捉えるのが正しいと思います。
但し、現状では、ドル氏が発表会で提示した、リーダーシップ(選手の指し手化)ではなく、定石(監督によるオーダー)により為されている訳です。
ですが、この段階で、既にこれだけの変化が起きています。
#fmarinos マリノス開幕戦の最終スタッツ&ポジション分布(by @DAZN_JPN ) pic.twitter.com/sf1L7FOCFl
— Speir_s (@Speir_s) 2018年2月25日
開幕戦で劇的な変化が見られたのがプレーエリア。 真ん中から追い出された結果としての、サイドからしか進めないビルドアップは解消されつつある。 #fmarinos pic.twitter.com/EAShWJySBs
— Speir_s (@Speir_s) 2018年2月25日
そして抜群の捌きを見せた喜田は、この提案で復活を感じさせる働きを見せました。
残酷な基準
この手法には大きな落とし穴もあります。
セレッソばかりが決定機を迎えているようなハイライト動画があるようですが、ゲームを支配していたのは間違いなくマリノスであり、彼らの決定機は、殆どがマリノスが犯してしまった致命的なミスありきの物でした。
そうです、将棋とサッカーの大きな違いとして、駒は絶対にミスをしない点が上げられます。
駒がミスをすれば、点数が一気に激減する恐ろしさがサッカーには存在するという事です。
サッカーはミスありきのスポーツではあるのですが、許容されないミスとして、DFラインにおける誰にでも解るような致命的なミスが象徴的ですが、可能性を想定していなかったミスというのは、極めて危険性が高いです。
例えば、セレッソとのゲームでも、失った瞬間に周囲に誰もプレスに行けない位置にいる敵選手にパスカットされてしまい、DFラインが高く裏に大きなスペースを残し相手選手がそれを即座に狙う、というような状況が何度かありました。
残念ですが、主にミス率という部分で、駒としての性能が足りない選手は、対応できなかったという評価になっていくかと思います。
ありがとう英語教師
かつてもう一つ存在した横浜のサッカークラブに、FCバルセロナが窮地に陥った時だけ現れる、敗戦投手的なレジェンドであるカルロス・レシャックが監督として着たことがありました。
この野心的な試みが全く上手く行かなかったのは皆さんご記憶の通りですが、当時の問題点として、比喩的な表現をすると、
『宣教師は英語しか話さないし、聖書も英語でしか書かれていないのだけど、村人は誰も英語がわからないし、解ろうともしなかった。』
という要素があると思います。
この点、マリノスは、この3年間、極めて優秀な英語教師が最高の仕事をしてくれました。
実力はあったのに英語を理解しようとしなかった選手は居なくなりましたが、数々の犠牲者を生み出した暗い歴史を抱えているクライフ教圏においては、比較的マシな方と言えます。
『サッカーはスペクタクルではなければならない。そしてピンチもまた、スペクタクルだ。』
今年のマリノスはどうなろうと面白いに決まってる。
だって僕らの教祖がこれなんだもの。
覚悟しよう、我々は気がついたらスペクタクルの殉教者となっていた。
2017年の横浜F・マリノス分析 補足・戦術における運用の失敗
この記事の補足的な内容です。
先ず、あくまでも、ファン、サポーターが2017年のマリノスを正しく捉えられる補助として、当記事を作成しています。
誹謗中傷に利用されるのは心外であり、おやめください。
この記事内で若干、戦術について数行触れたのですが、もう少し広げたい思います。
言葉の認識は重要です。
戦術(せんじゅつ、英: Tactics)は、作戦・戦闘において任務達成のために部隊・物資を効果的に配置・移動して戦闘力を運用する術である
目的に応じた駒の選定、その最適な配置(計画)と、配置を作る方法(実装)、運用の検討という事になります。
かつて、日本代表が世界を目指し、Jリーグが始まった頃には、雨後の筍状態で専門メディアが溢れ、新聞などの既存メディアでもサッカーが取り扱われる様になり、その結果、戦術という言葉が普及していった感はあります。
その時代に特に一般メディアで良く見られたのが、将棋の駒を使ったポジションの解説であり、将棋という土壌を持った日本という国では、確かに良い流用だったと言えます。
その中でも、動きのイメージ、例えばサイドバックは香車で、タッチライン際を上がっていくんだ、程度の物が多かったのですが、一方で、より戦術という言葉に合致した解説を目にしたことがあります。
誰が何のメディアで書いたのか、記憶が曖昧ですが、それは、飛車と角という、いわゆる強い駒を、どこで、どの様に使うのか、という、正に、配置と運用こそが、戦術であり、各チームのスタイル(戦い方)なんだ、という的を得た物でした。
2トップに配するチームもあれば、トップ下とフォワード、両サイドのウイング、ボランチとFW、センターバック2枚なんていうのもあるかもしれません、みたいな話です。
運用の失敗とは
この点で、徹底的なリスク管理を行うモンバエルツのチームにおいて、リスクを避ける為に中央を進むビルドアップを減らし、サイドを回り込んでいく、という指針があったと推測する17年のマリノスにとって、両サイドにリーグ屈指のウイングを配置するのは当然と言えます。(中央攻撃使用頻度はリーグ17位 フットボールラボ)
そして、前回触れたように、自陣ポゼッションでの失敗が多く、カウンターも少ない事で、敵陣へ入れないという状況を加味すれば、両ウイングは十分なプレー機会があったと言えます。
今季大ブレイクして日本代表にも選ばれた柏レイソルのウインガー伊東純也
(フットボールラボのチャンスビルディングポイント参照 ドリブルは加算方式なので出場時間が多いほど伸びる傾向)
ドリブル指数は約3000分出場で 16.41
出場時間辺りのシュート数 1.4本 6ゴール
アシスト&チャンスクリエイト 18
ドリブル指数は約2500分出場 14.93
出場時間辺りのシュート数 0.7本 5ゴール
アシスト&チャンスクリエイト 20
ドリブル指数は約2400分出場 19.94
出場時間辺りのシュート数 1.6本 1ゴール
アシスト&チャンスクリエイト 15
特にシュート数において、柏はリーグ6位であるのに対して、マリノスはリーグ13位なのを考慮すると、いかに齋藤が突出した数字なのかはお分かりいただけるかと思います。
ちなみに、同じく柏で大ブレイクした2列目の選手である武富は、出場時間辺りのシュート数は1.0本(9ゴール)です。
以上から、プレー機会という点からみると、ある程度は思惑通りに進んだ部分もあり、配置は良かったが、次の段階において、シュートを打つべきではない駒に打たせる、打ってしまう、というデータが残っている事から、つまり運用が悪かった、というのがわかります。
運用の失敗とは『そこから何で角がそっち行くの!』みたいなイメージ、いわゆる配置で勝っていたのに逆転を生んでしまう悪手。
カウンターをしなくなったチームで求められた物
前回、記事で触れたように、2017年にマリノスは意図的にカウンターの頻度を下げ、ボールを長く保持し、構築及び再構築を繰り返す攻撃、いわゆるポゼッションの頻度を高めました。
左からフットボールラボにおける2015年、2016年、2017年の指数(※回数ではない)。
ショートカウンター 51 49 35
ロングカウンター 43 61 49
その結果として、カウンターの状況ではゴールを量産していた齋藤学が、特に低い決定率を記録するようになってしまったのは、既に紹介した通りです。
一方で、今季、もちろん出場時間の影響はありますが、マリノスのシュート数が少ない中で、ゴール数を積み重ねた選手もいます。
前項では、配置が成功しても、運用で失敗があったと結論づけましたが、では、正しい運用とは何だったのか、といえば、シュートを打つべき選手を変える設計であり、修正が必要だったと言えます。
先ず、これだけ強力なウイングがいてサイドの比率も高いのに、クロスからのゴールが10得点しか無い。
左サイド攻撃の空中戦使用率 リーグ15位
右サイド攻撃の空中戦使用率 リーグ18位
この結果もあって、ボックス内を離れないウーゴの1試合辺りシュート数は 1.5本(10ゴール) です。
セレッソの杉本は出場時間辺りのシュート数は 3.4本(22ゴール) です。
確率論では、決定率において、ウーゴが杉本と同じ、出場時間辺りのシュート本数であれば、川崎の小林なども含め、リーグ得点王が狙えます。
また、バブンスキーや天野、そしてマルティノスや前田もそうですが、今季のゴールシーンとして、自分の前にディフェンダーが揃っているテクニカルな状況でも、正確にコースを撃ち抜ける選手が、複数のゴールを重ねています。
サイドという場所を目標に、両ウイングと決定率トップレベルのファーストトップ、というリーグ最強クラスの駒という最適な配置しているにも関わらず、推定される成果よりも低い数字になっているのは何故なんでしょうか。
さぁ、おさらいです。
戦術とは何か、その構成要素は、目標、駒、配置、だけでは無かった筈です。
配分の失敗
齋藤学は、リーグで一番ドリブルをした選手であり、特にカットインプレーを多数行いました。
しかし、攻撃方法の比重を変えて、状況が異なっているにも関わらず、そこから次に至る選択を間違えているというデータが残り、チームとしても、戦術として取るべき運用の修正(=再設計)をできなかった、行わなかったと言えます。
状況が変わっているのだから、選択の比重を変えるべきだった(運用の変更)。
この点において、シーズン初期では、正しい選択(運用)により、多数のゴールシーンを量産していたのに惜しまれます。
ロッベンの典型的アシストパターンと同じ、カットインからの横パス
ディ・マリアが得意とするカットインからのクロスと同じパターン
もちろん、チームの戦術において、正に配置と運用の変更、マルティノスを左に配置し、クロサーとして機能させる事で修正を試みたと思われる時期はありましたが、自由を許容するタイプだったモンバエルツは、選手の自主性に委ねた感はあります。
ゴール数を増やしたいという理想があって、その為にゴールに迫る方法を増やしたかった。
だけど、そのやりたい事はあまり上手く行かなかったね、というのが前回の主題であり、これは継続的な強化を標榜するマリノスにとって、2018シーズンに向けて最重要なテーマであり、皆さんの注目も高いと思われます。
流石に、矢倉好きなんで、矢倉組みたいけど、矢倉組む前に急襲されて対応できませんでしたってのが多すぎました。素人か!
一方で、果たしてそれが上手く出来るようになったとして、問題は全て無くなるのか、というと異なります。
戦術とは、効果の最大化を目的としている事を忘れず、配置とその効果だけで満足するのではなく、中盤戦以降の運用が重要な局面も焦点を当てるのを忘れず、今季はシーズン中に、絶えず修正がなされる事を期待します。
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データから見る 2017年に横浜F・マリノスは何を目指したのか
当初にはデータをベースに、翌シーズンを見据えつつ、『2017年にマリノスは何をしようとして、何が出来て、何が出来なかったのか』を、サポーター、ファンが出来るだけ理解できる様な記事を予定していた。
ところが、皆さんもご存知の例の件もあり、若干、そちらに比重を置いた構成に変更する事にした。
<データ引用元>
サッカーをデータで楽しむ | Football LAB[フットボールラボ]
Yokohama Marinos live score, schedule and results - Football - SofaScore.com
17年 齋藤学は前年から大幅に減衰した数字を記録
2016年に大ブレイクし、海外移籍を模索したことで、キャンプ後にチームへ正式合流するなど、オフシーズンに失ったファンの信用を取り戻すべく、マリノスのエースを自身でも宣言して迎えた2017シーズン。
残されたデータでは前年から大幅に減衰した数字を記録しているように、空回りに終わったと評する事が出来る。
特に、49~51本(シュートの判断が別れる)で1得点に終わったゴール数の激減は1点差ゲームを制してこその強さを誇ったマリノスにとっても、特に下位チーム相手に、大きく勝ち点を落とした要因と言える。
もちろん、シュートが警戒された事で難しくなり、結果として役割りとしてアシストに回る傾向が多くなった、という理由も想定されたが、データでは、チームでトップクラスにシュートを打った選手と言える。
出場時間辺りのゴール数は、流石に意地が悪いので掲載しないが、出場時間辺りのシュート数は以下になる。(リーグ戦のみ)
齋藤 1.6 本 1ゴール
マルティノス 0.7本 5ゴール
ウーゴ 1.5本 10ゴール (正にストライカー!!)
天野 1.0本 5ゴール
前田 0.9本 4ゴール
バブンスキー 0.7本 3ゴール
攻撃を終わらせる役割を、最も担ったという事実が、データでは残っている。
端的に言えば、マルティノスよりも2倍以上、ゴールチャンスがあった、と言える。
明らかな決定機のミスは、マルティノスが5ゴールに対して3、齋藤は1ゴールに対して6である。
更に、8アシストを記録しているが、これはバブンスキーや、前田が極めてテクニカルなシュートを決めたような、シューターの技術に依存している傾向も多く、
味方が決定機をミスした、チャンスクリエイト(決定機創出)も含めた数字ではマルティノスの方が、遥かに高い数字を残している。(途中交代、累積イエローもあって出場時間はほぼ同じ)
齋藤 8アシスト チャンスクリエイト 7
マルティノス 6アシスト チャンスクリエイト 14
また、フットボールラボのチャンスビルディングポイントにおいても以下の通りである。
2016、2017(記事表記上 00 を使用)
攻撃 72.24 59.86
パス 40.08 30.63
ドリブル 22.68 19.94
クロス 09.44 09.30
シュート 03.99 -8.56
※注意
チャンスビルディングポイント はシュート以外は純粋な加算方式である為、出場時間による差異を考慮して、2016年データの2割減を行い、記事内容を修正しました。
この出場時間に伴う修正を行った場合、2015年とは各項目で微増、微減となり、どちらが上とは言い切れない数字となります。
一方で、出場する事もチームに対する貢献なのであって、貢献度を推測する指数において、出場時間が減ったからといって、減衰計算する必要はないのでは、という考えもあります。
キャリアベストを記録した2016年シーズンには遠く及ばず、あらゆる項目でマイナスを記録、特に打ったのに入らなかったシュートの極めて低い数値が足を引っ張り、総合的な攻撃(貢献度)も大幅に下落している。
チャンスビルディングポイントとは | Football LAB ~サッカーをデータで楽しむ~
昨年初頭、マリノスは主力が流出と騒がれたが、データ的に、それは大きく間違った見解であると、私は反論を行った。
今年も世間は騒がしいが、齋藤が17年シーズンにおいて、つまり、最新の状態のチームにとっては、上記のデータを論拠として、チームへの最終的な貢献度において、皆で攻撃の中心となるようにお膳立てをしたが、期待に応えられずエースと呼ぶには程遠い結果だった と主張します。
ギリギリ攻めた表現ですが、4つの属性における『無能な働き者』になります。
では、何故、この様な変化が起きたのか。
冒頭で述べた、『2017年にマリノスは何をしようとして、何が出来て、何が出来なかったのか』について、引き続き、残されたデータから引用して紹介したい。
カウンター頻度の激減
17シーズンにおける最も顕著な傾向を一言で言うと、カウンター(相手ゴール迄に少ない時間で迫る、もしくはシュートで完結した攻撃) が激減している。
また、同時に、これは出来なかった、のではなく、選択として行わなかった、つまり使用頻度を下げた、と言える。
左からフットボールラボにおける2015年、2016年、2017年の指数(※回数ではない)。
ショートカウンター 51 49 35
ロングカウンター 43 61 49
ショートカウンターの35はJ1リーグの所属チームで最も低い数値である。
特に、2016年に大ハマリした、ロングカウンターの使用頻度を大きく落としたのが顕著な傾向といえる。
一方で、カウンターによる攻撃自体の成功率は極めて高い。
ショートカウンターを行った際のゴール率はリーグ1位、ロングカウンターにおいてもリーグ2位となっている。
つまり、2017年は使い所を見極めて使っている状態であり、2016年がロングカウンターへの傾倒だとしたら、攻撃における選択肢の一つ、に変わったと言えるだろう。
ロングカウンターが大ハマリした2016年は確かに痛快であったが、それに傾倒し、一辺倒では手詰まり感があったのも事実であり、新シーズンにおいて、攻撃の選択肢、その1つに過ぎない状態へと戻すのは、リーグ上位で戦い続ける事を目標にするのであれば、当然の帰結と私は考える。
そして、これこそが、齋藤が大きく攻撃に関するデータを落とした要因であると考える。
開幕戦のように、まんまとやられてくれるチームとディフェンダーもいたが、それ以降に、特に力差が無い上位陣で、柏やセレッソ、鹿島と川崎のゲームで、齋藤があれほどハマったゲームがあっただろうか。
チームの政治に問題を抱えたモンバエルツが、シーズン中に行った大改革、故に簡単で、極めて偏ったやり方が、個性とマッチしたからこその2016年シーズンのブレイクであったと私は考える。
だが2017年、『あるプレーモデル』とモンバエルツが語った、チームの整備を進めれば進めるほど、齋藤はデータ的には活躍しなくなっていった。
2017年にマリノスは何をしたかったのか
2017シーズン、マリノスの理想は何だっただろうか。
私が考えるに、出来るだけ失点をしない、という前提条件の上で、出来るだけゴールを奪って勝利したい、というのが、新体制発表会で利重氏が『堅守』というキーワードを強く提示した2017年におけるマリノスの理想だと考える。
これは、失点を気にせずにとにかくゴールを目指す、更には先ず最初のワードとして、見てる観客を魅了する、等が来ることは無く、それらは、あくまでも前提ありきの二番目になる、という事を意味する。
では、この理想を実現する為に、何をするのか。
これこそが戦術であり、そもそも戦術とは、戦争において、攻撃(守備)目標と攻撃(守備)方法の決定を意味し、それはもっとシンプルに言えば、目標を設定し、何の兵器を使いたいか、それをどこに置けば最も効果的か、そこに配置するにはどのようにしたらいいのか、という考えである。
この点で、マリノスが2017年に最も取り組んだ事は、攻撃頻度のバランスを調整する事であり、それは一定時間、ボールを保持した攻撃の再構築である。
もっとゴールを奪う為に、得点機会の創造において、セットプレーとカウンター以外の選択肢を増やす意図があり、いわゆるポゼッション、ボールを一定時間、保持した攻撃に注力した。
その成果として、データでは自陣ポゼッションからの攻撃指数は、2016年の56から60と、微増に過ぎないが、ゴール率は、0.3%(リーグ13位)から、1.2%(リーグ3位)という結果を出している。
だが、皆さんは印象として記憶に残っているだろうが、数多くの失敗と、それに伴う代償も発生させてしまっている。
ポゼッションに取り組んだ代償
自陣脱出率というのは私の造語だが、カウンターの頻度を低下させてボール保持攻撃の比率を上げようとした為、反発力を失った。
これは、どういうことかと説明をすると、自陣ポゼッションは、本来であれば、そのまま敵陣ポゼッションに移行する可能性も高い。
例えば浦和レッズであれば、その指数は、自陣70→敵陣65となっているし、今年降格争いをした、つまり全く上手く行ってなかったチームである広島ですら、自陣66に対して敵陣55となっている。
これに対して、マリノスは自陣60、敵陣42と、広島より低い数値を記録し、降格した大宮に極めて近い数値だった。
更に、広島と異なる点として、抜群の成功率を誇ったカウンターも、使用頻度自体は低かった事から、 ① 自陣から中々脱出出来ない、という皆さんの印象が、そのままデータとしても残っている、と言える。
これは、更に、② 守備の開始地点が必然的に下がる事を意味し、シーズントータルでのディフェンスラインの高さ平均値を大きく押し下さげた と言えるだろう。
フットボールラボによると、最終ラインの位置は、新潟の27m(ゴールラインからの距離)に次ぐ、J1リーグ17番目の38mとなっている。
ちなみに甲府はリンスとドゥドゥによるロングカウンターを連発する事で反発力を高めるので、43mであり、マリノスもロングカウンターという反発力を活用した2016年は42mだった。
上記した反発力が低下し、自陣に押し込まれ、自陣で守備をする時間、機会が増えた結果として何が起きたのか、というと、最悪レベルに悪化したデータとして、チャンスを構築された率、そして平均被シュート数だった。
被チャンス構築率 12.2%(リーグ17位)
平均被シュート数 14.4本(リーグ16位)
まとめると
・ マリノスはセットプレーとカウンター以外の得点比率の向上に注力した。
・ それは一定の成果を見せたが、同時に、上手く行かないことも多かった。
・ 上手く行かなかった影響として、自陣でプレーする事が多く、敵の攻撃を多く受けた。
この結果として、PK、直接FKを含む、セットプレーの失点が過去最悪に大幅増加、更に、その他に分類されるような(こぼれ玉は含まれない)、自陣での致命的ミスによる失点が散見された。
余談ではあるが、同時に、代表戦で日本対策として、中東下位、東南アジア勢、北朝鮮などが、とにかくゴール前を 固めるやり方の有効性が見える。
シーズン終盤にいくつかの大量失点があったが、敵ウイングがサイドで抜けてもサイドバックは出ないでエリア内のゾーンを守るように、徹底すればリーグ1位を狙える堅い守備が作れるとも言える。
2018シーズンへ向けて
新体制発表会で改善目標として先ず上げられた項目が、攻撃を仕掛ける、仕掛ける回数を増やす、更に『早くアタッキングサードへボールを入れなきゃいけない』というコメントがドル氏からあったが、
これはカウンターを選択する比率をまた増やすという回帰ではなく、自陣ポゼッションから敵陣ポゼッションへの素早い移行を意味すると思われる。
その説明にあたり、チームの取り組む成長として、2016年から遡って考えるんだと、イメージ図が示されたが、データから判断すれば、2016年のテーマはカウンター成功率であり、2017年は自陣ポゼッションのゴール率と言える。
よって、順番としてみると、2018年の目標は、自陣ポゼッションの比率を敵陣ポゼッションへの素早い以降による自然減を想定し、指数として、自陣50台、敵陣60台にする事ではないだろうか。
これがなされる事で、自然と、自陣ポゼッション失敗の結果として、あまりにも低すぎる2つ指数、ディフェンスラインの位置、更にはショートカウンター指数も改善するだろう。
結論
以上をもって、私の結論として、齋藤学は、居るに越したことはなかったが、絶対的なエースではなかったし、今季の重要度も、昨年同等程度だったと推測する。
ちなみに移籍先のチームは、データ的にみると、意外とショートカウンター魔なので、適合出来れば、その局面では活躍するだろうし、早く怪我が治り、ワールドカップに間に合うといいですね。
私の結論としては、2017シーズン、マリノスのベストアタッカーはデータから、天野であり、新シーズンに向けて、彼をビルドアップ作業から開放し、最終局面に参加させる事こそが、チームにとって最大の補強と言える。
補強とは、選手を獲得するという意味だけではなく、弱い所を補い、強くする、というのが本来の意味だ。
この為、ここでパニックになって行動する必要はなく、弱い所は別にあるのだから、ウイングの代わりはもう要らないと思う。
発想の転換的アイデアとしては、誰が入っても上手く行かなかった右サイドの再構築も含め、より最終局面への関与へシフトするという意味でも、天野にとって、右ウイングというポジションも検討の余地はあると考える。
このゴールは2018年のチームで再現可能だ
また、個人的には、ドリブルでセンターラインを進撃し自陣ポゼッション攻撃の完結、カウンターの起点、更には敵陣ポゼッションへの移行が出来るセンターハーフが必要だと感じている。(モドリッチ超必要だぞ、頑張れ)
ウイングは大津の加入、仲川の帰還もあり、駒が十分ではないだろうか。
ここからは蛇足の話になるが、この比較的リスクをとれるポジションこそ、若い選手が、才能を早い段階で輝かせるべきポジションであり、遠藤はもうアマチュアじゃなく、結果が人生に跳ね返るプロとして、座席が空く齋藤の移籍を心から喜ばないといけないし、それはホリケン(要望通り)も、まだ18歳ですから、なんて言ってる場合ではないと思う。
今季の放出を見れば、マリノスにとって23歳という年齢は若くない、『そこそこの選手であれば許される』育成対象と見てもらえないのは間違いがなく、これは既に世界的な傾向であり、今後も変わる事はないだろう。
U-23を解体
もはやRBライプツィヒにとって、ただのタレントでは満足できない。ラングニックSDは「もっと早い段階で才能を手に入れたい」と語り、EU加盟国の16歳のタレント獲得にさらに投資する方針を固めた。
彼はアマチュアなので、まだ椿君と呼ぶが、世界大会での活躍を見れば、(本人が望むのであれば)彼のデビューを来年まで待つ必要があるのだろうか。
FC東京、16歳・久保建英とプロ契約を締結!今季中のJ1デビューも視野に - サッカー - SANSPO.COM(サンスポ)
アーセナルは若手が次々と活躍して凄い、ヴェンゲルは凄い、いや、彼らは見つけるから凄いのではなく、見つけた選手をプレミア上位を争うプレッシャーの中でも使うから凄いんだよね。
18歳であろうと、所属してマリノスのユニホームを着ている以上は、戦力として考えたい。
そしてA契約は契約解除金を設定した3年程度の複数年契約で。
つづく ↓ 補足記事