Jリーグ第7節・広島戦雑感 マリノス的な目標を達成する為の最適な配置
今季は選手へのアタリが少々キツイ様な気がする。
これは、いよいよマリノスがシティグループの一員である理解が広がり、更には理想とするプレーのモデルケースまでも、現マンチェスター・シティに設定するのだと認識している人が多いからだろう。
つまり、論理は間違っていないのだから、後は実践、実行出来ないのが悪い、となるのだから、選手はやり玉に上がりやすい。
残念ながら、解らなかった人もいるようだが、マリノスがどうなったら強くなるのかが、観戦側に見えてしまったが故のリアクションと言える。
ただ一方で、何でシルバやデ・ブライネの様に出来んのじゃ!と言っても、あれは100m走で9秒台の世界にいる、特殊な一握切りな住人であることを忘れてはいけない。
これは今、話題沸騰な日本代表も、W杯でベスト16がノルマのような現実と乖離した目標設定に言える事だ。
100m走であれば、10秒台しか出ない中で、どれだけマイベストを尽くせたのか、を査定項目にするべきだろう。
若干、話が逸れて申し訳ないが、日本代表の話をすると、仮にロシアでノルマがあるとしたら、前回の反省として最高のコンデションを作れたのか、その指標は運動量やスプリント、又は別の何なのか、
更に良い守備が出来た効果測定として結果としての失点数ではなく、被シュート数や被決定機を指針にするべきであるし、カウンター攻撃を主題とするのであれば、カウンター発生回数、更にはカウンター成功率を観るべきだろう。
日本がW杯において、2分1敗でグループリーグで敗退しましたと言っても、それは100mのベストで10秒00の選手が決勝レースにいけませんでした、というのとイコールであって、
サッカーのデータは陸上のタイムと比べると対戦相手が異なるので絶対的ではないが、例えば、被シュート数はグループリーグを戦った全チームの中で16位より上か下か、被決定機は16位を越えているか、シュート数は、カウンター成功率はどうか、というデータにおいて、真ん中を基準に良いのか悪いのかを判断するのが正しい効果測定だろう。
冷徹に見れば、日本のレベルだと、内容は良かったで満足するレベルであるし、その内容を個人の感想ではなく、目標指標を設定して判断しようぜ、というビジネスの世界では至極当たり前な話である。
勿論、内容は良くても結果が悪ければ、結果でしか語れないバカが大騒ぎするだろうが、エビデンス(科学的根拠)に基づいて正々堂々と反論をすれば良いだけの話である。
平和な45分と最低な最重要指標
さて、話はマリノスに戻る。
ここまで、お付き合いをしてくれるチームが多かった中で、広島はボールを持ちたければご自由にどうぞ、と構え、更にロングカウンターを主軸とするチームだった。
これにより、マリノスは自陣ポゼッションの失敗から攻撃を食らう回数が、これまでに比べれば大幅少なく、特に過密日程により広島が起用した選手の問題からロングカウンターの質が低い前半は、今季、最も平和な45分だった。
ところが、自陣が平和なら敵陣も、最も平和な時間が訪れていた。
これはマリノスにお付き合いをすると、どうしてもスペースが出来るので、シュート数で優位になるとしても、マリノスもある程度、攻撃が成功し、シュートの打ち合いになりやすく、オマケに慣れない事をさせられてるので、マリノスよりも先にヘバる現象が起きている。
だが、広島は甲府を彷彿とさせる自陣に陣地を形成してのロングカウンターを主軸としていた事から、マリノスにとって敵陣中央はスペースがなく、サイドに追いやられてしまう、サイド傾斜が起きた。
ウイングとサイドバック、インテリオルとピボーテ、4人がアタッキングエリアのサイド、いわゆるペナルティエリアの角でボール交換をしながら機を伺う攻撃が繰り返された。
だが、迎え撃つのは、ここまでの失点は当日のPKも含めて2、広島が保有する甲府よりもレベルが高い選手がやりきる事で生み出される、Jリーグでは鉄壁の質。
それに対して、マリノスの攻撃で、若干の可能性が生み出されたのは、そこから脱出して逆サイドに戻した時に、ブマルが応援を必要としないことで生まれる僅かな時間を利した、カットインを始めた時くらいであった。
マリノスにおいて、攻撃的とはシュートという行為を出来るだけ多く行おうという意志を意味する。
結果としてシュートは5本。
今季の最も解りやすい指標において、スコアは度外視しても、今季最低のゲームになってしまったし、それは柏レイソルが後半から広島の様に、ボールを奪う事を放棄してロングカウンターを主軸に据えたゲームでも予見されたものであった。
今後に予想される相手チームの傾向。 前から行くと交わされる確率が高い&上手く行っても殴り合いを覚悟なので、自陣を埋めるように撤退してロングカウンターをメインとしつつ、プレスに来たら無理に繋がずロングボールでDFラインの裏狙いでセーフティに攻める。 #fmarinos
— Speir_s (@Speir_s) 2018年3月2日
https://witter.com/Speir_s/status/969554460350402560
ボールプレー機会に対するシュート本数が全然足りない、これはマリノスの価値観では攻撃出来ていないと同義。 後半は柏が撤退して中を固めた事で、前半は空いていたスペースが無くなり、アタッキングエリア中央から追い出された結果としてのサイド傾斜が起きてしまった。 #fmarinos pic.twitter.com/bJbsUw0TM9
— Speir_s (@Speir_s) 2018年3月2日
2点目を、敵の攻撃を防いだ直後に起きる自陣ポゼッションの失敗から取られる展開まで同じだった。
シュートを増やす方策はないのだろうか
理想としてシティがあるかもしれないが、マリノスに適したチューニングというのは必要であると思うし、特に、今後に予見される、ボール奪取を放棄してのロングカウンター狙いに封殺される可能性にどう立ち向かっていくのか、は重要なテーマだろう。
確率論の話である。
現状の所属選手において、ゴールシーンから逆算して考えた場合にパターンとして浮上するのは、左サイドで下平が蹴ったクロスに対して、ウーゴと翔さんが中で合わせる、というのが、ここ数年のマリノスを振り返った文脈からは思い浮かぶ。
敵に撤退され、スペースが無い状況でも、あくまでもフリーな選手を作ってそこにパスを出す、という攻撃がシュートに至る確率と、ウーゴと翔さんがエリア内にいる状況で、下平がクロスを蹴る、どちらが確率が上なのか。
ここで重要なのは、ポジショナルプレーは縛るのではなく、全く逆の開放する理論なのだということ。
例えば出来るだけ失点したくない、という指針を持つチームもポジショナルプレーは導入できる。
概念を深く解釈すれば、誰もがバルセロナやシティの様にプレーする為の理論ではなく、あくまでも配置の優位性が勝敗における最重要課題だとするだけであって、
サッカーという競技で勝つ為に最も重要な事は、シュートを沢山打つことだ、とする考えと、出来るだけ失点を防ぐべきだ、という考え、それぞれに存在する正義、どちらでも使う事が出来る。
マリノスには、マリノスの目標に合致する、マリノス的な最適な配置
シティがモデルだ、で止まっていては、真のポジショナルプレーという概念からはむしろ遠ざかる。
マリノスというチームが、広島の様な撤退した陣地を形成する敵を相手に、出来るだけシュートを打ちたい、とする場合における、最適な駒の配置はなんなんだろうかを追求するのが重要。
また、左を山中下平とする場合に、左ウイングに山中を当てるのが当然的に言われるが、タッチラインに張り付くウイングには、多方面な活躍が可能な山中ではなく、純サイドプレーヤーである下平の方が良いと思う、ハマのベッカム化計画。
それに、これなら天野はピボーテとして、大好きなサイドでのボール保持活動に専念していいし、更にデルフの様に、サイドバックとして山中と、もしくはクロサーというタスクならば下平とウイングのポジションを争うテストもありえる。
またこれは、別にユンがダメだとか言う話ではなくて、過去の文脈からみると、広島の様な相手であるならば、確率論として、左利きで良いロングパスが蹴れる選手をサイドに配置して、ウーゴと翔さんが合わせる方が、今のマリノスならシュートは打てそうという話。
まだマリノスは、導入初期の段階に当たり、モンバエルツの時代から取り組んできたビルドアップ(敵のプレスを回避して敵陣ポゼッションへ移行&アタッキングエリアへの突入準備)にすら苦慮しているのは、多くの人が感じているだろう。
他にも、川崎に、いいようにやられてしまった敵陣地での守備は、何の為にリスクをとってラインを上げてるのか解らない大きな課題であるし、ボールロスト後の再奪取も、ハーフライン付近でセンターバックが奪い取る事はあるが、ショートカウンターは出来ていない。
現状、Jリーグで上位と言えるのは、モンバエルツの遺産と呼べる、撤退時の強固なブロック守備だけだろう。
だが、どうやったらマリノスが強くなっていくのかは、よく解った。
改めて、チャレンジしていくチームを支持したい。
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