再構築と再点検のロストエジガルとオフサイドトラップ
根拠を示す事で、多くの人が納得できる情報発信が必要だと、ここ数年、状況が悪い時にこそ、記事を更新してきた。
3連敗、遠ざかるACL、タイトルを意識するのであれば苦境と呼べる今、一体何が、何故、本当に悪い所は何なのか、自分の考えをシェアしたい。
ロストエジガルの攻撃
未来が期待される若者ではなく、トップスコアラーを失って戦力が落ちないチームは今のJリーグに存在しないだろう。
この点で、李の離脱まで重なり、単純な選手の入れ替えすら出来ないマリノスでは大津を試すなど鹿島戦でも一定の成果はあったが結論は出ていない。 更に、そこから選手のインアウトがあったことで、セレッソ戦で試されたオプションは、マルコスにより大きな自由を与える2トップだった。
先ず、大前提として、それがセレッソに驚異を与えたのか、論理的な勝利を目指しているとして敵チームよりも決定機を作ったのか、という部分で確認をすれば、成功だったと言える。
ゲームスタッツ by DAZN
そして、次に、これ、この思想に基づく配置が試されるのは決して、今回が初めてではない。
マルコスと三好が同時に出る時に、これまで何度か試されてきたオプションであり、先日のマンチェスターシティとのゲームで先制点につながったシーンも消えたマルコスと、上がった三好、の関係から生まれている。
さらに最後に二人が同時出場した鹿島戦 72分の決定機
問題は、このオプションをとる場合、マルコスのパートナーとなる選手には、マルコスの位置に応じてポジションを取る事、それは前のスペースを狙う動きだけでなく、更にはクロスに対してニアサイドで勝負するなど、常にファーストトップとしてマルコスがやらない事をする動き、補完する働きが90分間求められる。
この点において、初コンビながらエリキは引いた位置でボールを受け、マルコスにアシストを通し、更には三好よりもクロスの局面でエジガル的なファーストトップの動きも見せるなど、非常に高いマルコス補完力を見せてくれた。
攻撃が左からビルドされる場合は
エリキは後半良かったですけどね。これは左からの攻撃が増えた結果、マルコスが下がって『エジガルな位置』に居れば良いって展開が多くなり、決定機3回。この点、右からビルドすると、ただの2トップになり後半は喜田と渡辺も支援に行けず、数的にも不利な局面が目立ち速攻しか有効打無し。 #fmarinos
— Speir_s (@Speir_s) August 21, 2019
45分間で、この位置から3本シュートを打って1本も決まらないのは最早悪いジョークだ、忘れよう。
質的優位というオプション(選択肢)が登場した左サイド
マリノスはポジショナルプレーを標榜しているとして、一人でドリブルから、例えば、これまでマリノスがゴールを量産してきた低弾道の高速クロスを味方に送れる選手がいたら、合致しないだろうか。
そんなことはない。
シティにおけるサネは、マンチェスターシティというフラッグシップモデルを知る人であれば誰もがずっと望んだオプションであり、正にマリノスが目指す攻撃における質的優位の具体例として見られており、選択肢としてずっと欠けていると焦がれるラストピースだった。
ボール周辺に人数をかけないでも、マリノスの選手がゴールに近い位置でシュートを放つ、という目的を達成出来るなら、それに越したことはない。
この点において、マテウスは質的優位を発揮したか?と聞かれれば、少なくとも2つはゴールを決めるべきシーンを作り出した事からみて、YESと答えない理由がない。
更に、激しいポジションチェンジによる流動性と、マークの混乱を狙う立ち位置を噛み合わせ、位置的優位や瞬間的な数的優位を論理のベースとする攻撃が、
台風通過後のフェーン現象による格段の蒸し暑さを記録し、今季のJリーグでワーストとも呼ぶべき芝グラウンドで出来るのか、という疑問を持つのは当然の事で、それに対する選択肢としては悪い判断であったとは思えない。
繰り返しになるが、実際に何が起きたのかを90分確認した結果、エリキによるマルコス補完と、マテウスがもたらす質的優位は十分に機能した。完璧ではないが、デメリットを感じた部分は殆どなかった。
喜田とティーラトンの位置を見て、正しい位置に入ったマテウスが絡んだ5レーン攻撃。後半、セレッソは左に比べると右の方が守備強度も低かった。 #fmarinos
— Speir_s (@Speir_s) August 20, 2019
Jリーグを観るならDAZN https://t.co/ORVFVZfTPL pic.twitter.com/Z14wlXamxb
マテウスの仕掛ける判断が絶妙なプレー。水沼とソウザを引きつける、だけど追いつかれてはいないので、あくまでも1対1で質的優位を発揮できるタイミング。ドリブルで1人、タイミングで2人を無効化しゴール前を3対3の同数にしたプレー。 #fmarinos
— Speir_s (@Speir_s) August 21, 2019
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パスに対する守備とシュートに対する守備
昨季、端的にマリノスを評する様な外部の声はハイライン&プレスだったが、今季はそれらを盛り込んだ上で、オフサイドトラップが象徴的だ。
その結果として、目的とする『相手に何もさせない』方向には間違いがなく進んでいるのだが、ここにきてやりすぎ感、もっと言えば確率論で見た時に有効なのか、論理的に勝つという方向に合致するのか、若干の疑問を感じる部分がある。
データ by フットボールラボ https://www.football-lab.jp/
マリノスに対して敵チームが得た攻撃機会と、その攻撃がシュートまで達した確率は9.1%とリーグ2位の数値であり、その結果、1試合辺りの被シュートは10.8本と3位となっている。
一方で、その放たれた敵シュートが決まる確率、被シュート決定率は11.4%とリーグ14位と、下から数えた方が早い。
被チャンス構築率 9.1% 被シュート平均10.8本
被シュート決定率 11.4%
ちなみに1位は川崎で被チャンス構築率は7.7%、被シュートは8.6本と恐るべき数値だが、被シュート決定率が9.5%で9位と、昨季より1%以上悪化しており、イマイチ勝ちきれないのはココにあるかもしれない。
シーズンを通しての被シュート決定率が1ポイント異なるのはこれほど重い数値だということ。
そして「なんでだ」となるのだが、この数値は先日のセレッソ戦や、鹿島戦でもそうだが、いざオフサイドトラップを突破された場合に、シューターが完全にフリーで打てる状況になってしまう事が大きく関与している。
1失点目も清武のキックフェイントに対してオフサイドトラップを仕掛けた結果、マークする敵選手を見失ってしまっている。
裏一発パスの前では無駄に無効化される人数が増えるだけだった謎5バック
アメフト的に言うと『マリノスの守備は、シュート(シューター)に対するカバレッジが無いのである。』となるのだが、この意図をもっと噛み砕いて言うと、「シュートを打たせない守備しか用意されていない。シュートを打たれることが想定に無い守備をしている。」となる。
勿論それは、大分戦、松本戦、浦和戦(前半のみ)で炸裂したように、まさに観るものすら畏怖させる、凄まじいゲームを披露する事もある。
(永久保存版) 『ハーフタイム』の表記が味わい深いですね(*´ω`*)
その一方で、ハイラインだから、オフサイドトラップを多用するから、というよりも、敵シュートに対する備えが「ゴールキーパー頑張れ」だけ、という、完全に何もさせない事を目的としている副作用が、この2連敗、特に、残り時間が少ない状況で決勝ゴールを食らうという形で、顕在化したと見ている。
データ解析をしていれば、ゴールキーパー頑張れという方針でも、敵のボール保持時に、失点率が低いエリアと、そうではないエリアが統計的にチームはとれている筈だ。
確率論で勝って行こう、という論理的勝利のプロセス、思考を持つチームとして、更に現実が信仰よりも勝るとして、DFラインの人数を増やすのではなく、敵が自陣のレッド(危険)ゾーンでボールを保持している状況で、オフサイドトラップを控える方が遥かに効率的だと思うのだが。
パスを通させないのではなく、ラインをブレイクして、通ったとしてもカバレッジが効いている(シュート成功率を下げさせる)状態、をオプション(選択肢)として持たないと、相対的な競技における勝負強いチームにはならないと考える。
今季、皆さんが簡単に失点する印象があるとしたら、選手の個人能力ではなく、パスが通った後の備えが無いからだ。
1方向に突き詰める、突き詰めすぎた結果の袋小路にハマったとして、一端、下がってみる冷静さがあることを期待したい。
エスパルス戦は悪いゲームだったが、そこ(底)からチームは復活出来ている。
この連敗はゴール前のクオリティと、オフサイドトラップのリスクをコントロール出来ていない監督の判断にあると私は考える。
自陣ゴール35m圏内でセットプレーも含めて、フリーのボールホルダーに対してオフサイドトラップを行うのは自分の運命をコイントスに委ねるのと同じではないだろうか。
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