横浜F・マリノスのマネーボールに期待が高まる
横浜F・マリノスについて、こんなにも期待感が大きいシーズンは無い、と感じている人も多いのではないでしょうか。
やはりオフシーズンというのは新たな門出を迎える時期であり、未来には不安よりも希望を感じたい、踊って夢を見れる状態こそが幸福と言えるじゃないですか。
この点で、開幕が待ち遠しいとすら思わせる仕事をした、スポーツディレクターのドル氏には賞賛を送りたいです。
※ 今回からチーム名の表記について公式Twitterの表記に準じます。
おさらい ここまでの横浜F・マリノス
① 2009年に日産による赤字補填停止、チーム単体での収益化を目指す。
② 長期的スパンで考えていた為、中村俊輔の復帰等もあり3年間で16億円の債務超過に至る。
④ マリノスは債務超過によりライセンス失効の危機、日産に赤字補填の意志はなくクラブ消滅の危機
⑤ 三方良しな解決
・ ファイナンシャル・フェアプレーで罰則を受けていてスポンサーを探していたシティ
・ シティへのスポンサードなら資金が出せる日産
⑥ 嘉悦社長のチームで単年黒字化の達成、更に多額の費用が必要になるマリノスタウン撤退
※わずか900万円と天候一つな危うい黒字ではあるが、DAZNによる分配金倍増で盤石な黒字になりそう。
⑦ 資本参画したCFGに日産がチーム運営を委託
チーム運営については以前に書いた記事を参照ください。
横浜F・マリノスの意思決定プロセスを整理します
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/speirs/article/17
マリノスのマネー
上記したように、カルロス・ゴーンに『持続不可能』とまでに、こき下ろされた経営は大きく改善されたのが解るかと思います。
次に修正が必要であった点として、目標に対して正しく投資されているか、という観点を、チームの競争力・競技力に当てることです。
2015年、チームの総人件費は18億6千万円(Jクラブ個別経営情報開示資料より)
J1リーグの中で、6位に該当しますが、1位の浦和とは1.1カイケの差しかありません。
これはあくまでも総人件費なので、チームの競争力・競技力を推定するのであればサカマネ.netの方がイメージに近いと言えます。
2016年 サッカーJ1リーグチームデータ
参照 http://www.soccer-money.net/team/in_team.php
2016年となってますが、カイケやマルティノスが居ない分、上記の2015年データに近いかもしれません。
1位 ガンバ大阪 10.8億円
5位 マリノス 7.5億円
こちらはあくまで推定データですが3カイケ差があります。
マネーボールの概念とCFGとしてのマリノス
メジャーリーグにおけるスカウティング、チーム編成に統計学の概念を持ち込んだ手法であり、それを実践した例を紹介した本の題名です。
チームスポーツにおいて、チームは何の為に投資するのか、という議題を想定した上で、
防御率、ホームラン、打点、打率ではなく、チームが投資するべき対象は勝利であり、
簡単に言うと、勝利貢献度を数値化することで勝てる選手を安く買おう、という考え方です。
これをサッカーにそのまま流用出来るとは思えませんが、監督の望む選手を揃える、というテーマでは十分に機能するかと私は思います。
現在、選手をデータ化して能力、特徴を把握する部分において、CFGは世界でも最先端を行っているのは以前説明した通りです。
また、今オフシーズンの間、これまでとは全く違うルートでの選手獲得だけでなく、いくらでも次の手が出てくる感があったのはCFGのネットがある、だけじゃなく、新任のスポーツディレクターが下記の様なシステムを使いこなせる人物になった事も大きいでしょう。
嘉悦社長(当時)「正直、本当にびっくりしました。向こうでデータを見せてもらったのですが、とにかくデータの密度、検索機能は、日本とは比較できないレベルでした。」
「言えないことばかりですが、選手の属性、特徴などです。あのレベルを日本に持ち込むと、カルチャーショックみたいなのもあるはずなので、まず消化不良を起こすでしょうね。人間は、情報が多すぎると判断できない生き物です。まずはフィルターを通さないと。」
引用 http://diamond.jp/articles/-/54477?page=5
監督はチームの指針で決まっている
今回、チームは監督の求める選手を十二分に揃えたと言えます。
その流れで、登録枠、予算の関係もあり、チームを離れる選手もあり、必要以上に騒ぎ立てられた結果、横浜F・マリノスの名誉はかなり傷つく事になりました。
もう少しソフトランディング出来なかったのかと個人的には思う部分もありますが、それは所詮は外野の意見で、現場では相当な苦労があったとお察し致します。
一方で、昨年チームの競争力・競技力という点で監督の望む状況ではなかったのは素人が上から観てても、6月の時点で十分に解りました。
モンバエルツに対して、練習方針がどうだ、訴求力だなんだと書き立てられましたが、結局はこのサッカー(価値)観の違いこそが根源にあると私は感じています。
この部分で、では監督を変えて改善するのか、というとそれはあり得ないと思うんですよ。
先ず、何が正しいのかなんて、絶対的な解は存在しないという前提はあります。
ですが、今のマリノスには以前は無かった指針がCFGにより存在します。
この結果どうなるかというと、例えモンバエルツを首にしても、次に来る監督もモンバエルツと同じ哲学を持つ人物になる。
勿論、メンタルヘルスは無視できず、よほどエキセントリックな人物で、感情的な部分などで多くの選手と決裂しているのであれば致し方なし、というのは解りますが、
騒ぎ立てられたそれらは現状を見れば真っ赤な嘘であることは明白であり、根本的な問題はサッカー感の違いであったと推測されます。
つまり、モンバエルツのサッカー(価値)観 = チームの指針 なので、残念ですが、それに対する忠誠心が無い選手は今後も出ていくしかないですね。
以前の記事で、私は現時点でマリノス(モンバエルツ)の目指す理想は2008年頃のホッフェンハイムではないか、と書きましたが、
現在ブンデスリーガを席巻しているのが3位ホッフェンハイムであり、更には当時ホッフェンハイムの監督として旋風を起こしたラングニックが退任後にスポーツディレクターとして就任したのが2位ライプツィヒです。
先週は正にラングニックの元カノと今嫁と言うと過言はありそうな、両者の激突が天王山として発生し、これは海外サッカー観戦魔境への道と解りつつも、思わず観てしまいました。
試合はラングニック時代を彷彿とするホッフェンハイムの超高速ロングカウンターがライプツィヒのゴールへ炸裂するも最後は嫁が逆転勝ちする光景に、修羅場とは誰も無傷ではいられないのだと、自戒の念を高めると共に、指針を持つチームというのは素晴らしいなと再確認しました。
清武が所属していたセビージャも、私が最も没頭していた2007-8年頃に、世界で最も攻撃的なチームと言われた力を取り戻しつつあるのが聞こえてきます。
映画 マネーボール ではシーズン20連勝を達成するのですが、プレーオフ制度で敗退し、世間は理論の実践者であるビリー・ビーンを正当に評価しませんでした。
ですが、彼を評価した人物がいます。
レッドソックスオーナーは彼にGMとしてメジャーリーグ最高の年俸額(1250万ドル!!!)を提示して、ウチのマネージャーになれ、と以下のセリフで勧誘しました。
『 どの世界であれ先駆者は血を流すものだ、常にな。
君の行動は彼らに脅威なんだ。
脅かされるのはビジネスや野球だけじゃない、何より彼らの仕事や暮らしだ。
つまり既得権への脅威だ。
既に何かを支配しているもの、権益を持っている者はもれなく怒り狂う。
しかし、ここへきても古いチームを解体せず、
君のやり方を否定し続けている連中は、いずれ滅びる。』 (映画 マネーボールより)
ビリー・ビーンは若い頃契約欲しさに野球選手になった後悔から、もう金で人生を左右されるのは嫌だと、断るんですけどね。
@Speir_sさんのツイート