ウーゴ・ヴィエイラの評価
本来であればシーズンの終了を待つべき記事ではあるが、選手と代理人が待てなかったようなので、4試合を残す現時点で書くことにした。
契約更新の流れを推測する
アポエルへの移籍という話題が出た、夏からの経緯を見ていると、選手側はより高い報酬、良い条件を模索しており、その時点で、マリノス側が提示している、翌年以降、次の契約が満足する物ではなかったのだろう。
この点で、その後もマリノス側とは交渉を行っただろうが、妥協点を見いだせず、結論が出た結果が、彼の来年予想と思われる。
より良い条件が来ることを期待してフリーになるという選択であるし、既により良い条件が代理人には届いている可能性も少なくない。
ではクラブからしてみると、何故、契約更新を諦めたのだろうか。
そこには評価の乖離、というものが存在し、維持するには高額になりすぎた、つまり、選手の考える価値と、チームの評価が乖離し、コストパフォーマンスから諦めた、と言える。
2年連続でチーム最多得点を記録したことで、契約更新には、以前よりも高いサラリー(給料)が必要になる。
その上がり幅に対して、双方の小さくはない差が存在したと思われる。
勿論、この手の話は最後の局面まで予断を許さないものであり、外的な要因も影響し、最終的にどちらかが歩み寄る事で、一気に真逆の結果へと突き進む場合が珍しくない。
一方で、次にマリノスが歩み寄れなかった、妥協できなかった、ウーゴを評価しきれなかった理由を推測したい。
また、その前に、今回、フリーで出ていくとしても、前年のエース流出騒動とは事情が異なる点にも言及しておきたい。
マリノスにとって今期、つまり契約中に売る、という判断を夏の時点でするのは、保有戦力の観点から不可能であったし、
次に、売る為に一旦、契約を延長するという判断は、本場なら珍しくないが、何よりカイケという全く売れそうにない大きな不良債権を既に抱えている現状では、そのリスクに踏み切る事は難しいだろう。
奴は来季もまだ居るんだ。
理想との比較
さて、マリノスで2シーズン目を過ごす、得点する為にプレーをしているようなポルトガルのストライカーについて、皆さんも何となくは特徴を把握しているだろう。
ここで再確認の為に、理想の選手、トップレベルの数値(データ)と比べる事で、評価(ゴール)を得る要素に対して、物足りなさを感じる部分を抽出した。
< vs アグエロ >
シティグループのフラッグシップモデルに君臨するプレミア最高峰のエースストライカー
マリノスとシティにはボール保持時間を意味する支配率ではなく、本当の意味でゲームの主導権を握る部分で大きな差が存在する。
この為、当然、理想の選手には、良い機会が多く訪れやすい、という外部環境があるのは分かった上で比較する。
① ゴールを決めるまでに必要な出場時間
ウーゴ 143分
アグエロ 94分
② 出場時間90分換算(1試合)辺りの枠内シュート数
ウーゴ 約2本
アグエロ 約3本
③ アシスト数・ビッグチャンス演出(味方が失敗したアシスト未遂)・パス成功率
ウーゴ アシスト 3 クリエイト 1 パス成功率 71%
アグエロ アシスト 6 クリエイト 10 パス成功率 82%
④ 枠内シュート数に対するビッグチャンスのシュートミス発生率
ウーゴ 21.428%
アグエロ 17.333%
⑤ ドリブル成功率 と デュエル勝率
ウーゴ 46% 33%
アグエロ 67% 46%
値段が50倍以上する選手は凄い。
ただ、リーグの競技レベル自体も大きく異なる。
皆さんが何となく認識している、
『 あの決定機を決めていればなぁ、もっと周りを活かして欲しい、ドリブルでのロストが多い、アピールプレーじゃなくてデュエルで競り勝って欲しい 』
という部分は、理想と比較すると、データ上でも物足りていない事が分かった。
理想の選手は、遥かに高いレベルの中で、遥かに高い数値を記録している。
Jリーグ内での比較 小林悠
次に、Jリーグにおいてマリノスと同じくボール保持時間が多いチームのエースストライカー達はどの様な数値なのだろうか。
先ず、全くスタイルが異なるタイプと言えるのが川崎の小林悠。
1試合平均の走行距離は10.37kmで、9km以下のウーゴとは1km以上の差がある。
この点において、マリノスのスタイルにとって、ウーゴが良いのか、小林が良いのか、という議論はあり得ると考える。
何故なら、今期、スタメンを争う伊藤翔はご存知の通り、どちらかと言えば小林に近いタイプの選手で、1試合の走行距離が10kmを越えることは珍しくない。
マリノスに必要なタイプは必ずしも ゴール(得点) に特化した選手では無いのでは?
もしかしたら小林タイプの選手が欲しいのか。
この点、シティでみると、いわゆるアグエロかジェズスか、という異なる2タイプのファーストトップを持ち、相手によって選択する、という戦略が垣間見える。
つまり、伊藤がいるのであれば、この第2の選択肢として必要なタイプはこれ以上は要らない為、このピッチで広く関与していくスタイル、という部分で評価を下げているのでは無いと思われる。
Jリーグのモンスター ジョー
マリノスと同じくボール保持時間が多く、ウーゴと同じくゴール以外での関与が少ないプレースタイルの選手として名古屋のジョーがいる。
名古屋が別のチームになった8月以降のデータとなるが、1試合平均の走行距離は8.555kmと、ウーゴより若干少ないくらいだ。
だが、正にJリーグレベルではモンスターと言える、圧倒的な数値を持っている。
※ 以下は名古屋が全く勝ててなかった前半戦も含めたシーズントータルのデータ
① シュート成功率
ウーゴ 18.4%
ジョー 23.5%
② 枠内シュート数に対するビッグチャンスのシュートミス発生率
ジョー 14.24%
アグエロ 17.333%
ウーゴ 21.428%
③ アシスト数・ビッグチャンス演出(味方が失敗したアシスト未遂)・パス成功率
ジョー アシスト 4 クリエイト 5 パス成功率 76%
ウーゴ アシスト 3 クリエイト 1 パス成功率 71%
④ ドリブル成功率 と デュエル勝率
ジョー 62%(ドリブル頻度がウーゴの半分) 50%
ウーゴ 46% 33%
⑤ 周囲との連携 1試合平均のパス本数
ウーゴ 6本
アグエロ 21本
ジョー 23本
ウーゴはJリーグでトップ10に入る選手だとして、その水準で満足なのか、という理想の追求は常に議論として存在する。
例えば、ルヴァンカップ決勝戦、前半は見事にハメこまれたとして、勿論それは改善したい部分であるが、
後半は、前半の湘南130回に対して、230回もアタッキングエリアに侵入して、15本もシュートを打って、枠内に6本飛ばして 0ゴールだった訳です。
公式スタッツに修正あり→ (16本シュートを打ち、枠内に10本飛ばして)
湘南は前半だけ、でしたけど、9本のシュートを4本枠内に飛ばし、1得点。
この様に、ゴール前のクオリティで負ける事が、イコール、ゲームの負けに直結するのがマリノスの特徴といえる。
リーグトップ10レベルの選手に満足できず、高い評価をしない事で失うとして、同じ予算では、もっといい選手が来る保証は無い。
一方で、ウーゴには出せないけれど、ウーゴ以上と評価、期待する選手には、より良い条件を提示することが可能なはずだ。
この部分でクラブが、ウーゴではない可能性を求めてチャレンジをするのだとしたら、それなりの予算を投じるべきだろう。
マリノスがファーストトップを入れ替える条件(が期待できる選手)
・ 1試合の走行距離は9km以下でも良い。
・ シュート成功率20%以上
・ 決定機のミスは20%以下
・ パスが選択肢にある (クリエイトを含めたアシストが一定以上は期待できる事)
・ 出来ればドリブル成功率、デュエル勝率も高い方が良い
・ 身長や最高速、スプリント数は特に必要ない
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