アタッキングフットボールを標榜し、完遂した3シーズン※。
多くのチームが掲げるだけに終わる、景気づけの標語みたいなワードを現実へ実装する事に成功した横浜F・マリノス。
今季最大目標のACL2020へ挑む、チームの攻撃的ポジションを統計的に最高効率なユニットを考えたい。
※カレンダー上は、まだ34節が残っているが、ACL決勝戦と同日に開催予定である事を考えれば、形式上の物に過ぎないことは説明するまでもないだろう。
また、2020年において、特にマリノスは常規を逸したスケジュールがあり、それのみならず、5人交代制、そして夏季が終わった以降も継続される、謎の飲水タイムによる実質4クォーター制など、マリノスの競技力を正しく測るシーズンでは無かった点は前提としたい。
ファーストトップ
引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1329065727689510912
httpshttps://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1329065727689510912?s=20://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1329065727689510912?s=20
ACLの外国籍枠と関係なく、断然、エリキを推す。
何故なら、ジュニオールサントスとエリキ、この2択において、途中加入ながらゴールを量産したのが素晴らしいとしても、ジュニオールサントスを選ぶ理由が、全く分からなかった。何しろ比べる相手が悪すぎる。
以下はエリキがコンスタントに出場するようになった後半戦において、2つの異なるポジションでプレーした際の比較データとなる。
合計プレータイム 625分
シュート本数 24本(シュート1本を打つのに要した時間 約26分)
ゴール数 10得点(1得点に要した時間 62.5分)
シュート成功率 46.66…%
チーム全体の攻撃効率 1試合平均 約2.33得点
② 3トップのウイング アウトサイドでプレーした7試合
合計プレータイム 514分
シュート本数 9本(シュート1本を打つのに要した時間 約57分)
ゴール数 2得点(1得点に要した時間 257分)
シュート成功率 22.22…%
チーム全体の攻撃効率 1試合平均 約1.57得点
※ エリキは出ていないので浦和戦は含まれず
※ シュートブロックも計測する方式
事情や思惑があって、並びを3トップにしたかったとしても、エリキのシュート機会を減らして、別の仕事を任せたら、チームとしての攻撃効率も大幅に低下した、という実験結果が出た。
また”ウイング”エリキの2ゴールは東京戦と鹿島戦、どちらもロングカウンターに類する物だった。
補足1
昨季ファーストトップに固定されたエリキが1ゴールするまでに要した時間、105分
今季ジュニオールサントスが1ゴールするまでに要した時間 113.84分
エリキの2シーズントータルなシュート成功率 23.59%
ジュニオールサントスのシュート成功率 17.8%
能力が高いので必要な時間が少なくて済む
補足2
ウイングエリキの対戦相手は上位陣だから、という指摘があるかと思うが、90分フル出場して1本もシュートを打てなかった試合は3試合あり、その対戦相手はC大阪
そして、広島と湘南である。
一方で、インサイドで出場してシュート0本の試合は9試合中、ゼロ。(インサイドでのフル出場は1試合のみ、平均出場時間は69分)
セカンドトップ
セカンドトップは不動のマルコスがいるので議論の余地は薄い。
今シーズン”も”シュート成功率は20%を越えており、起点となるパスを打ち込みながらフィニッシュに関与する理想の選手と言える。アシスト数が1に留まるが、ビッグチャンスクリエイト(味方が下手打った)は7本計測しており、ウイングエリキや仲川の離脱した影響を伺わせる。
故に、代わりとなる選手には高いハードルとなっていたが、浦和戦で発見があった。
フィニッシュワークでは残念なシーンが目立ったが、シンプルなプレーで速いテンポを生み出し、正確なパスを次々と前方に打ち込んだのがオナイウだった。
パス成功率はセカンドトップの選手として 別次元な93%(40/43本)を記録し、キーパス2、アシスト3と、これまでの2シーズン、誰も代わりが務まったとは言えないポジションに、たった90分で答えを出した。
引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1327502761525616641?s=20https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1327502761525616641
また、175cm/75kgという肉体的スペックは敵陣空中戦、イーブンボールの競り合い、カウンターで先に触れるかどうか、という局面で強さとして発揮され、マルコスに対するフィジカル的な優位性を感じさせるに十分なプレーだった。
両者にはボクシングの様なコンタクトを前提とした競技であれば、危険とされるスペック差がある。
右ウイング
水沼、アシスト数10、恐らく満足とは言えない約1000分の出場時間ながら、アタッキングフットボールに別のパターンゴールを確立させたと言える活躍をみせた。
引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1327589468505731073
また、決める側の能力が問われるビッグチャンスクリエイトは13にも達しており、2010年代マリノスで最高のサイドハーフと言って過言ではない数字を残した。
参考
2017年
マルティノス 2300分 アシスト6 ビッグチャンスクリエイト14
今季の仲川が、もちろん計算はできるが、計測は不能なだけに現状では右サイドで最高効率な選手と言える。
左ウイング
もっとも意見が分かれるポジションだろう。
2018年のオフに戦力を補強出来ず、代わりが居ないのにデゲネクを送り出した事態を思い出す、編成やっちゃった案件とも言える。
そもそも、エリキ、エジガル、オナイウとファーストトップが揃う中で、ウイングが居ないからジュニオールサントスを獲得したのではなかったのか…
高野が594分で4アシスト、松田が500分で4アシストする一方で、前田は923分プレーしたが、0アシストに終わった。
勿論、前田には走力での貢献というのがあるかもしれないが、優先順位として、ウイングが0アシストでアタッキングフットボールは成立するのだろうか、疑問を感じ得ない。
まだ利き足でクロスが蹴れる、右サイドの方がチャンスありそうじゃないですかね
そしてドリブラー、今シーズンは各チームでウイングが暴れてる中、川崎の三笘に、C大阪の坂元に、札幌のルーカスに、マリノスのサイドバックが1対1に晒されて無残に破壊される光景を見て、どうだろうか。
今のJ1リーグ最強ドリブラーは彼らではなく、ジュニオールサントスだと言うのに。
引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1327619462690787333
フットボールラボのドリブルポイント1位 13.37を計測
マリノスは試合数が多いので加算値系は有利だとしても、90分での換算は0.80で4位。
これらの数字をサイドプレーヤーではなく、スペースが得られにくい3トップのファーストトップというポジションでプレーする、ジュニオールサントスが記録している。
主なサイドプレーヤーの90分換算
三笘 0.97
坂元 0.46
ルーカス 0.45
昨年のマテウス 0.58
昨年の遠藤 0.74
昨年の仲川 0.66
2017年のマルティノス 0.57
ジュニオールサントス 0.80
また、よく分かった能力として、ダイレクトシュートがとても苦手で、逆に、走っていようが、止まっていようが、とにかく一度ボールにタッチして自分で置いたボールを蹴り込めば、シュートの難易度は関係ない。
なので、クロスが沢山飛んでくるマリノスで、ジュニオールサントスのシュート成功率は17.8%と、マリノス的な水準(みんな20%以上)でみると高くない。
そりゃー、江坂やクリスティアーノのパスをダイレクトで決める重要な仕事があるオルンガの代役は務まらんでしょうな…。
典型的なドリブルシューターであり、クロスをファーで立って待ってる感じと併せ、「あれ、なにか見たことがある…」という感覚は、正に 伊藤翔VスペックNISMO仕様、と呼ぶに相応しいだろう。
データ的にはオルンガやエリキと比較すれば見劣るファーストトップ、だが、カットインマシーンとして左サイドに立っているだけで、
もはや厄災レベルの脅威となるだろう。
中央のエリキと、サイドにいるジュニオールサントスというシナジー(相乗効果)を生み出せなかったのは、もしかしたら今シーズン限りのチャンスかもしれない事を思うと、川崎戦での片鱗しか見られず、残念に他ならない。
手放すんですかね、例えば川崎がウイングとして獲得したら大変なことになると思います(白目)
で、ACLはどうすんねん
外国籍枠3人、問題がいくつか起きる。
特に今シーズンの流行語大賞を受賞しそうな左ウイングレスは再燃するし、オナイウがマルコスの代役なら、エリキの代役はどうするんや、結局、シーズンを通してファーストトップをACLで使えないと分かっていた外国籍選手に頼っていたので、誰もおらんやんけ、と。
これまでのポステコグルー監督をみると、ファーストトップはエリキとオイナウ、セカンドトップにマルコスと天野、右に水沼、左に前田、仲川は状態次第で遊軍的に、大津や松田もプレータイムがあるだろうし、高野や小池がやる試合もあるかもしれない。
ただ、それで攻撃効率は高まるのだろうか。
オナイウが浦和戦において良い確率でプレーしたのは、決定機ミスを1回、成功0/3を記録したシュートではなくパスである。
前田はウイングならせめて利き足でクロスを蹴れる右、もしくはクロスからヘディングでゴールを決めているようにファーストトップが適していないだろうか。
良い精度のキックを持つ選手がもたらす、サイドアタックの攻撃効率はリバプールを見るまでもなく、今季のマリノスでは水沼がウイングの定義を変えたのではないだろうか。
そこで、ベルギーに行ったら何故かドリブル小僧になって帰ってきた天野の適正ポジションはインサイドかい?と。
ビフォー 2019天野(フットボールラボ プレイスタイル指標)
アフター(2020天野 フットボールラボプレイスタイル指標)
鳥栖戦の後半は天野が左ウイング(3バックのセカンドトップ)的にプレーしていた訳ですけど、クロスじゃなくとも、このラストパスが前田では出ないでしょう、と。
確率から見る攻撃効率を求めた前線ユニットは…
・ファーストトップ
エリキ(第1選択)
前田(今季3得点全てクロスをダイレクトシュート 頭2右足1)
マルコス(第1選択)
オナイウ(マリノスの水準で”良い確率”なのはパス能力)
オナイウのシュート成功率は8.1% 3得点 5アシスト
前田大然のシュート成功率は15.8% 3得点 0アシスト
何より得点を求めるアタッキングフットボールを標榜するチームとして、どっちに、どこで、何の、機会を与えたいか。
・左右ウイング
仲川(コンディション次第 パートタイム運用?)
松田(時間限定 パートタイマー)
大津(困った時はなんでも屋)
・右ウイング
水沼(10アシスト 今季の武器)
・左ウイング
天野(連携からスペースに走るのが得意プレー、左足のクロスは随一)
高野(4アシスト 水沼以上のクロススペシャリスト)
※90分換算クロスポイント 水沼1.04 高野1.28
・臨時招集 主に右
前田(せめて右の方が良いのでは?)
小池(左サイドバックの可能性もあるのでウイングまでは無理か)
2.5列目問題
今季のマリノスにおける特徴として、両翼に高いドリブル能力を持ったウイングが居なくなってしまった中で、更に敵陣プレスなどに取り組むチームが増えたことで、2.5列目が攻撃を前進させられるのか、攻撃性能が問われる様になった。
そこで、2.5列目の4人が獲得したパスでの攻撃関与をポイント化した数値(フットボールラボ パスポイント)を、出場時間で割った数値が以下になる。
高い方が優秀。
喜田 0.018846
扇原 0.028229
渡辺 0.030639
和田 0.024847
皆さんが何となく感じ取っている物が、数字上でも確認出来たとして、喜田の守備力が必要な試合、必要だとして使うべき時がある訳で、ならばその時は喜田が前でボールを受けて、攻撃を前進させる役割を請け負わなくて良い構造をチームとして持つべきではないか、と思う。
全ては両翼に、高いドリブル性能を持った選手がいれば問題なかったんや!として、
この異常なスケジュールでは出来ることなんてなかったんや!としても、
もう少し柔軟な、統計的に見える選手の能力を活かす運用を検討してもらえれば、確率論的には攻撃効率が高まるのではないか、と感じる。
まぁ今季、年間100億円のチームには及ばずとも、あれだけの陣容で勝ち点47に終わるに至った大問題は、敵陣プレスの回避方法が知れ渡った事が響いた、失点数なんですけどね。
しかし、なんで急に3バック辞めたんやろなぁ、最初の名古屋戦は論外にしても、守備は安定してたやん。
3バック 9試合 5勝2敗2分 21得点 10失点
元に戻した4バック 8試合 3勝5敗 17得点 17失点
連戦を迎える中で、上位陣には通用しないとか思ったのか、左右にスライドしたり、喜田を押し出したり、システム的に複雑すぎて選手をローテさせる状況じゃ、ムリムリカタツムリ!とか思ったのかもしれないけど、結局は1試合平均2を越える17失点ですぞ、と。
9試合10失点って、神戸にシュート3本で3点取られた、あの試合を入れての数字なので、去年平均を越える守備力(失点しない性能)だったのに。
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