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バージョン3.0 2021年の横浜Fマリノス

川崎との開幕45分を見た時には、目眩がした…なんて事は今さら起きず、見慣れた”やらかし”に「あぁ今年で最後かなポステコさん」と、サッカー界で言われる所のサイクルの終焉を予感した。

 

所が、最初からそのつもりだったのか、状況がそうしたのか、詳細を語ることがない指揮官から、その理由(ワケ)を知る術もないが、マリノスはこれまでとは大きく異なる、ポステコグルー監督の就任以来2度目となるメジャーアップデート、正にバージョン3とも言える、最終形態にモデルチェンジした。

 

これは新しいサイクルの始まりであり、大きな変化、革命を起こさず、同じ監督が自身でこれを成すことが出来るのは凄いことである。

 

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1385894009088790533

 

 

 

日程だけではなかった問題

 

オフには量より質を求め、良いトレードが出来たと思いきや、突出した記録を残したエースを失い、リカバリーとして行った補充も、コロナ禍により、それがいつ届くのか、全く見通しが立たない苦境に追い込まれる。

 

攻撃を標榜するチームでありながら、そもそも前線の駒数が足らず、特に左ウイングは高卒ルーキーである樺山を開幕先発にせざるを得なかった所に苦しさが伺えた。ポステコグルー監督にしても、やらかしとは君たちが言うが…と別に色々と理由を言いたい開幕戦だったと言える。

 

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1365300051602407429

 

 

 

一方で、前年にあらゆるタイトルを失い、持たざる者として2021新シーズンに挑む横浜Fマリノスだったが、常軌を逸した過密日程さえなければ、という思い込み、それはつまり、マリノスは何も変えなくとも、日程さえフェアであれば勝てるという誤解があるとすれば今年も昨シーズン同様に勝ちと負けがイーブン程度になると考えていた。

 

 

speir-s.hatenablog.jp

問題は増幅した状態でシーズンを終えており、2021シーズンに向けて大きな懸念点であり、問題が解決しているとは言えない状態である。

 

 

編成の問題は若干残ったが、それよりも覇権奪還を成し遂げる上で、焦点は昨シーズン顕になった問題を解決できているのかどうか、だった。

 

 

 

 

コンパクトネス依存からの脱却

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1367288400357715968

 

 

マリノスはポステコグルー監督の理想を具現化するべく年々と特化、先鋭化してきたが、失点と直結する要素として、フットボールラボの提供するデータにおけるコンパクトネスと高い関連性があった。

 

これは対戦相手が自陣でボールを保持しプレスがかかっていない時、どれだけ守備陣形が狭いか数値化されたものだが、マリノスにおいてはコンパクトネスの低下=失点しやすい状態となる事が、ポステコグルー監督のロジックとして存在していた。

 

DFラインは限界まで高いので、1列目で、戦術的に吊り出される、切り替えの遅れ、プレスミス、プレスバックのサボり、を起こすと失点しやすく、昨年は何処のチームも狙ってやってくるようになった、と言える。

 

 

この点において、昨シーズンに守備で上位に健闘した大阪の2チームも(何処を守るのか方法は異なるが)コンパクトネスに守備の堅牢さが依存しているタイプと言える。

 

 

他方、守備の堅さをコンパクトネスに依存しないスタイルとして、昨シーズンのJリーグにおいて、最もリスクなく戦った上位2チーム、川崎と名古屋があった。

 

ハイプレスを生命線としながらもディフェンスラインがマリノスほどヒステリックじゃなく、蹴られる局面では下がる川崎。自陣のスペースを完全に埋める為、横に広くなることで、コンパクトネスが下がる名古屋。

 

そして、今シーズンのマリノスは、この2チームの中間に位置し、守備のロジック、構造として従来のスタイルから脱却し、コンパクトネスに依存しないタイプへと転換したと言える。

 

 

 

大人のディフェンスライン

 

シン・エヴァンゲリオンはディティールの確認を含めて、2回観に行ったが、大人になることの重要性、そしていかに問題だと思っていたことが、自身の振る舞い1つで問題ではなくなるのか、を見せてくれた。

 

話をマリノスに戻すと、敵にプレスのラッシュをかけている時は連動してオフサイドトラップを仕掛けている、今までと変わらずにラインは高いのでは、と感じている人もいるだろう。

 

データではマリノスの”大人な振る舞い”が明確に反映されていた。

 

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1372365513955758084

 

 

 

フットボールラボが提供する、敵陣で敵がボールを保持し、マリノスのプレスがかかっていない時における最終ラインの高さを数値化した指数において顕著な差が出ている。

 

 

2019年 最終ライン指数 77  コンパクトネス55

2020年 最終ライン指数 81  コンパクトネス47

 

昨年はコンパクトネスが低下しているのに、プレスがかかっていない状況で更にラインを高くしていた、全体として前に吊り出されていたのがわかる。

 

そりゃー、もし途中で3バックをやっていなければ、2018年同様に年間で60失点しかねない数字だったのも分かる。

 

 

そして2021年、大人になったマリノスでは

 

最終ライン指数 46 と、プレスがかかってなければラインは上げられない、と常識的な振る舞いを見せるようになった。

 

大人になったなポステコはん…

 

 

シンエヴァを観てない人には何の事か分からないかもしれないが、大人になれば、「何であの時に私が怒っていたのか分かってんの?」と、答えがない地獄の設問に、黙っていれば「話聞いてんのか?」とガン詰めされる状況も華麗に切り抜けることが出来る。

 

問題は問題ではなくなるのだ。

 

 

 

コンパクトネスとハイプレス指数

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1379671278571855872

 

 

昨シーズンまで、マリノスはプレスがかかっていない状況でもラインを高く保っていたので敵は当然と裏に蹴る、その結果、だいたい通らないけど、通れば簡単に失点、シュート3本で3失点した試合もあった。

 

今季は上げられない状況においてはラインを上げないが、その分、一発勝負ではなく、自陣で時間をかけて守るようになったと言え、その結果、川崎よりも自陣で守る、名古屋よりは敵陣で守る、中間のチームになった。

 

 

ハイ(敵陣)プレス指数は川崎の72に対して40、元からマリノスは集計方法的に低めだったが

 

2019年 51.4 成功率47.8%

2020年 52.5 成功率50.3%

 

と大幅に下がっているものの、成功率は川崎を凌駕するリーグ1位 54%と大幅な上昇を見せている。

 

 

また、この3チームにおける共通点は前項で触れたが、コンパクトネスに依存しない、関連性は一切感じない点であり、それはマリノスにとっては激的な進化、革命とすら言える。

 

この為、敵チームが敵陣でボールを保持し、マリノスのプレスがかかっていない状況において、マリノスの守備陣形は、特に横に広くなっており、コンパクトネス指数も40になっている。

 

優勝した鬼プレスと言われた2019年が55、守備崩壊と言われた2020年が47、2021年はそこから更に大きく下がっているのだが、守備は過去1番というほど安定している事になる。

 

これは構造・ルールが変わった事を意味し、パラダイムシフト、変革である。

 

 

 

 

時間をかけて守る=自陣で戦う機会の増加

 

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引用 https://twitter.com/adidasJP/status/1385730187518783492

 

 

敵チームは苦し紛れにラインの裏を狙う、そしてパスカットやオフサイドトラップが決まると、それは気持ちの良い守備かもしれない。

 

一方で、プレスが上手く行っていないのに、それを狙うことで、無抵抗な失点を重ねてきた。その結果、マリノスは攻撃が良いけど守備はねぇというイメージが浸透している。

 

だが今季、プレスをかけられていない時はステイ、と待つ時間を持った事で、敵が一発勝負をする機会が減り、守備時にコンタクトプレーが激増しているのが伺える。

 

フットボールラボにおいて、タックル、ファウル、空中戦、ブロックなどを指数化したフィジカルコンタクトにおいて、ポステコグルー監督就任以降、初めて50を越える数値を記録。

 

2018年 31

2019年 36

2020年 43

 

2021年 51

 

 

 

被ゴール期待値と利益

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1385928358240784389

 

 

その成果として失点数が減っているとして、一つ前のデータが被ゴール期待値と、その差分、つまり利益だ。

 

 

ゴール期待値とは、打たれたシュートの状況、場所や敵の配置などから、平均的な能力の選手が放った場合の得点数をAIを用い割り出した数値となる。

 

昨シーズンのマリノス1.357の被ゴール期待値に対し1.6失点と必要以上に失点をしている状況だった。今季は、被ゴール期待値で1.205と改善した上で、0.7失点と大きな利益を出している。

※予想失点数が1.2点に対して、0.7失点しかしていない、ということ。

 

 

これはサッカーという競技において1点は重く、ゴール期待値と実際のゴールという関係において、「うちの子供でも決められるよ!」というようなイージーな状況が一回あるだけで、数値の上振れが起きやすい。イージーミスが多いチームほど、損失が増えやすい。

 

例えばルヴァンで高野がミスした後の状況とか、試合を通して数値は低くとも、エラーが起きれば実際のゴールは増えやすいのだ。

 

 

この点、データの見方として、昨シーズンまでのマリノスはいかに、オープンなシュート状況を生み出しやすい、守備のエラーが起きやすかったのか、と見るべきだろう。

 

1試合の平均利益は0.5に及び、これはとても優秀な数値であり、今季は如何にエラーが起きていないのかということだ。

 

上述してきた要素の成果として、大人の対応がもたらす安定感と言える。

 

 

 

前線の新サイクル

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1379441703451418630

 

 

エリキの移籍、そして度重なる仲川の離脱、遠藤の売却が決まり、優勝時とは総入れ替えとなった前線には新たなサイクルが生まれている。

 

 

エウベルはデータ通り、ドリブルの破壊力はリーグ屈指のレベルであり、全体的に弱点がないコンプリートなアタッカーと言え、更に実際にプレーした発見としてはパスに喜びを見出す、パスが好きな選手だった。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

これにより復活したのがハーフスペースの攻略で、以前よりも警戒され狭くなった中で、走り込む選手の足元にピタリと止まるスルーパスは見事という他ない。今までのマリノスになかったクオリティである。

 

 

例えばセレッソ戦において、左右の攻撃を査定する上で『オープンになったボールホルダーがクロスを蹴ったか』という点において、右サイドが45分で2回と完全にスタックする中、エウベルは自身のドリブル突破、ハーフスペースに走り込む選手へのスルーパス、8回を記録した。

 

エウベルというクオリティによる攻撃効率向上の実現化と言える。

 

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https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1378234179301699584

 

 

湘南戦では、オープンな選手が蹴るクロスの危険性を理解しましたね。攻撃が上手く行っているかどうか、どのようなプロセスでゴール前にボールが供給されたのかを注視してもらいたい。

 

 

 

また、ファーストトップとして活躍していた前田をウイングで使うしかないとして、昨シーズンの様な置物化の悪夢がよぎったが、何となく足の速い奴を置いただけという状態ではなくなっている。

 

タッチライン際で開いて受ける従来ウイングの仕事を他の選手に任せ、中に進出していく動きがかなり多く、そこに空間が生まれ、マルコスが新たな仕事場として活用、さらにクロスに対して強みを見せるオナイウと前田が中にいる状態を作り出している。

 

 

ここに、ベッカムの領域すら感じる水沼のクロス攻撃、もう少し時間はかかるだろうがレオという新戦力の上積みもあり、そしてルーキー樺山や、怪我がちな仲川をデトネイター(起爆剤)として毎試合時間制限で活用するプランなど、始まったばかりの新しいサイクルはまだまだ可能性を残している。

 

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1388403351511977987

 

 

また自陣からのビルドアップ・攻撃においては、ドリブル、ロングボールなど従来パスワークとは異なる方法の使用率も増えており、こちらも上手く行かない時の別手段に改善が見られた。

 

 

 

今季も川崎は独走し、過密日程は続き、そして8月は常軌を逸した真夏の連戦が待ち受けている。奪還には、追撃をしながら、更にもう一段のレベルアップが求められる。

 

土台は整った、あとはリーグNo.1の攻撃、アタッキングフットボールを標榜する前線のクオリティ向上に期待したい。