2025年12月6日、優勝を目指す鹿島アントラーズの本拠地メルカリスタジアムに4連勝の勢いという気持ちだけは強者で乗り込んだ横浜F・マリノスと大島監督は1試合平均勝ち点2を実現するチャンピオンチームの前に、ろくにシュートすら打てず、手も足も出ずに完敗した。
どうにもならないチームを個人でどうにかしてしまった角田と天野は流石という他ない。特に天野は途中出場メインながら、ようやく天職といえる右WGでの出場機会を得て特別なクオリティを発揮しており、FC東京戦のボレーに並ぶベストゴールと言える。
一方でチームとしては共に対空勝率70%オーバーなCBを揃え、足元を知念と三竿で固める鹿島に対してロングボールによるプレー位置の設定が出来ないだけでなく、自分達のブロック守備に対して効果的にロングボールを打ち込まれる事で、やりたい事をそっくりそのまま敵チームにやられ続け、その劣勢を何も改善出来ないままゲームを終えた。
これまでの対戦ではマリノスのブロック守備を攻略され、ボールを意図的に持たせてるのではなくガードを堅め身を守るしかない状態、通称サンドバックタイムが訪れたとしても敵チームがミスを繰り返してくれたが、荒木は自身のシュートミスをオーバーヘッドでアシストに変えるなど、ゴール前のクオリティが別次元であり、あまりにも長すぎるサンドバックタイムは幸運で消化しきれる範囲ではなかった。
この先制点のシーンに象徴されるように、構造として人は捕まえているのにボールが奪いきれない場面が何度も繰り返されており、気持ちの問題ではなく、チームとしてやりたい事に対して最適な戦力がピッチ上にいるのかも問われた。この点において鹿島の鬼木監督はクラブが与えた大補強である筈のエウベルを90分ベンチに座らせるドラスティック(徹底的)な決断、負けられないラスト3試合において、シーズン前半は冷遇していた知念に頼る情けなさを受け入れたとも言える。
マリノスにもジャンの様な自陣の劣勢局面、マイナスベクトルなプレーに強い選手はいたが、前節にシーズン8枚目のイエローカードで2回目の出場停止となっていたのが大きく影響しただろう。だが、そもそも何故ジャンを右サイドバックで使うのか。これまでもバックラインに入れる選手としては極めて不安定なプレーを繰り返しており、89分に出て早々にイエローカードを貰ったシーンを見て、一体どれほどの人がやっぱりやったか、と思った事か。
更に言えば、マリノスのサイドバック不足は夏に第2ウインドーが閉まった時点で確定しており、それは8月30日の神戸戦において松原が今季復帰不能の怪我をした事で更に悪化していた。関富だけではどうにもならない事情があった。
以上の状況にも拘らず、大島監督が適切な準備を行っていたとは言えない。例えば諏訪間が最後に試合に出たのは全面ターンオーバーを採用したG大阪戦になるが、それ以降はベンチ入りしても試合出場はない。つまりホーランドは必要として春に前倒しで加入したが、大島は必要としていないようだ。
例えば大島監督はFC東京戦で3-0からあわや追いつかれそうになる試合で、急遽5バックを試すも、当日のマリノスのベンチにDFは諏訪間しかいなかったが、彼はベンチに座ったままだった。急遽5バックにしたのが問題ではなく、ベンチに唯一いるDFを使わず、CBを3枚にせずにWGをWBにして5バックを形成するようなデタラメな振る舞いが間違いだったのでは?という話もあった。
セレッソ戦、前節の京都戦でJ1残留を決め、大島監督も翌シーズンの契約を勝ち取り、そして十分な3週間があったのに、89分に、またしても諏訪間をベンチに座らせたまま右サイドバックにジャンが送られたのを見て眩暈がした。そして案の定である。
10月18日、マリノスと対戦したスコルジャはやらかした。結果はマリノスの4-0。しかし明らかに”今日の為以外の何か”をやっているのは間違いなかった。その後も浦和は町田に悲惨なドロー、広島に0-3と酷い試合を繰り返すが、岡山に1-0、川崎に4-0と今期を締めくくる連勝をすると、既定路線と言わんばかりにスコルジャの続投が発表された。既に来期へ向けた戦いを始めていたのが10月18日だったのは間違いない。
残留を決めて、契約を勝ち取って、今のサッカー界では十分すぎる3週間があって、何故、来季へのチャレンジを始めないのか。懸念点であるサイドバック問題を見えない振りで乗り切ろうとするのか。適当に若手を並べる事以上にやる事があるのではないか。
今ここで諏訪間を右サイドバックで試さなかったら次はいつ出来ると言うのだろうか。CBだろうと森保ジャパン(日本代表)ではいつサイドバックをやらされるか分からないし、そんなのは彼が今後、世界に出て行く事を目標に置くなら当たり前に試される事だろう。
また、サンドバックタイムの原因も明らかで、マリノスは全く出来ないけど昨今のボール保持は325(又は3151)がスタンダードになっているが、442のブロックを効率的に崩す構造、相性の悪さ、自然と生じる不都合、進行ルートはチームによるが、これを相手が理解して押し付けてくるとローブロックで耐える、もっと言えばエリアにバスを並べる以外に対抗手段がないからだ。
マリノスはファーストラインで意図的に数的劣勢を受け入れ、縦パスが撃ち込まれる先に数的優位を作るのだが、この時、特にオープンになるボールホルダーが長いボールの供給に長けていると、ハイブロックの裏、対角線パスで逆サイドを効率的に使われ、一気にゴール前という展開が繰り返される。また横ポン※にも弱く、大外の選手がダイレクトや早い判断でDFラインの裏に流すプレーでハーフスペースを狙われるのも弱点だ。
※ポステコグルーも繰り返したCB→WG→フリック&スルーパスでDFラインの裏攻撃
ボールを最終ラインで持たされても困らない、神戸、柏、鹿島、ロングボールの供給能力が高い選手がいるチームには手も足も出ずに敗戦。神戸と柏に対してマリノスのゴール期待値0.6、鹿島戦に至っては0.11しかない。
そして思い出して貰いたいのが、19位に勝ち点差8、ブッチギリの最下位で降格した新潟に対しても、引いて守る戦い方をしていたにも関わらず1分1敗だ。キスノーボが喫した惨敗は特に酷いもので、それが解任につながったと思うが大島監督の鹿島戦と何が違うのか。それよりも、もっと酷いんだが?
鹿島戦の惨敗、それは大島監督が敵のGKの+1保持と、ミドルゾーンの保持(vs325)に対して何も解決策を見いだせずに今季を終えたと言える。明らかなサイドバック不足もあり、3週間の時間を使って正しく523での守備をチームとしてチャレンジするべきだった。セレッソ戦にしても木村の対応は不安定さがあったにせよ、そもそも安定した保持から繰り返しDFラインの裏を狙われ続けたのが問題であった。木村が退場しないかとハラハラしたが、最後は敵チームの愚かさで助けられたに過ぎない。
優秀監督の投票で大島監督は5位に躍進し、それは状況を考えれば当然であり、結果に対しては賞賛をされるべきである。一方で、来期を思うと勝敗を敵チームに委ねすぎている。リーグ優勝を狙うには余りにも他力本願すぎるのが、現状ではないだろうか。さぁ君のチームは出来るかできないか大島検定試験を受けよう。
今期優勝した鹿島アントラーズの1試合平均ゴール期待値は得点側が1.253、失点側が1.246と正にCFとGKで優勝したチームと言える。ただそれはあくまでもイーブンに出来て発揮されるクオリティの勝利であって、ゴール期待値が0.6、更には0.1の様な試合をしていてはクオリティも何もない。どんな優れた選手を揃えても統計的には負ける試合と言える。
まとめると戦いの趨勢を、その収支を決める要素として、マリノスはチームとして今や標準装備と言える、GKの+1を使うボールを安定保持するロジックが浸透しておらず、一方で敵が325でボール保持する事に答えが見つからないのだから当然の結果だ。おまけにそれを受け入れ可能なバスを並べる戦い方に最適と言える戦力ではない。先ずプレミアリーグ並みに平均身長185㎝にするとか?
残留を決め、来期を勝ち取った大島監督はもっと3週間でチャレンジするべきだった。来季への準備を始めるべきだった。プランB、スコアがビハインドなら3バックにして後方の数的同数を受け入れるラッシュ的プレスでプレーのベクトルをプラスに固定し、何も出来ていないロングボールロジックを諦め、ビルド部隊を入れ替えた保持からのスペースアタックへの切り替え。
ところが慎重かつ平凡な選手交代同様に、何もしないで平凡に惨敗。その腰の引けた姿勢に対し、通算5度目のJ1制覇を成し遂げた鬼木監督から「そんなんじゃダメだよ」と言われている様な最終戦だった。