2026年6月21日、横浜F・マリノスは不在となっていた新監督の座に、オークランドFCから実質引き抜く形でスティーブ・コリカを招き入れた。
これに伴い、副官と言えるダニー・ヘイも連れてきた形となっており、特に昨シーズンは大混乱を招いた一因でもあるだけに、これまでの反省が活かされる事を期待したい。
一方で、鈴木SDには自らが選び、そして運命共同体と言える彼らがベストの仕事をする為にも、この夏は引き続きハードワークが要求される。
何故なら、今のマリノスは2024年から続く負債が残る中で、更に2025年大混乱の余波による行き当たりばったりのパッチワークが行われた結果、スパゲッティコードの様なデタラメな戦力編成となっているからだ。
既に派手な情報も出回っているが、特段に問題が出ているとは思えない。
勿論、選手に対してはこれまでの貢献もあり、そこに特別な感情がある事も否定しない。だとしても、前任者達の残した余りにも大きい負債を解消する為には出せる所は出していくというのはやむを得ない判断と言える。
この記事ではコリカ新監督の好むスタイルを推測しながら、必須となるポジション、現状戦力の運用、編成の狙い目などをまとめていきたい。
オークランドFC
前所属クラブ、直近のポートフォリオを能力の参照とするのは監督であっても当然だ。選手ではこれを行うのに監督では無視した結果、どうなったのかは説明する必要がないだろう。
そして同時に、ポートフォリオと照らす事で、今のマリノスにどういう選手が足りていないのかも見えてくる。
・攻撃で見える特徴
ボールの保持率を見ると、非保持とは言い切れない。例えばJリーグなら岡山の40%、東京Vや町田の様な45%以下の様なチームとは一線を画す。
一方で1試合中のパス成功数は290本台で平均保持率も50%を割り込むなど、保持に対する強い意志があるというタイプでもない。
この辺は前任の大島体制に近いかもしれないが、持つ局面ではしっかりと保持攻撃をする。この為、自陣のパス成功数よりも、敵陣でのパス成功数が多い、などスキッベ時代の広島に近いスタイルと言える。
また、広島がそうであるように、なぜ敵陣でパス数が増えるのかと言う点において、ロングボールでしっかりと前進出来るチームだと伺える。
1試合平均のロングボール成功数と成功率
大島 26マリノス 13.1本(34.7%)
コリカ オークランド 15.8本(43.9%)
空中戦勝率の高い明確なロングボールターゲットを用意している。
コスグローブ 65%
谷村 37%
そして補助要員としてGKのキック力が高い。
ゴールキックで敵陣に20mは深く入り、エリア内で蹴ったパントキックが敵のエリアまで届いているシーンもあった。これなら仮に競り負けたとしても、確実に敵陣でプレーを開始できるだろう。
・守備で見えた特徴
保持率が50%を割り込む理由としては実際の試合、フルマッチを見た感想として守備にあると考える。
ハイプレス時はマンツーマンで行く、そんな世界標準を当然の様に搭載しているが、ではハイプレス以外の局面ではどうだろう。
リーグ1位の守備力のベースはリトリートするミドルブロックにある。
26マリノスでは終盤に向けてやっと修正の兆しが見られたが、ボールホルダーにけん制がかけられないファーストライン設定(-2人)なのに無駄に全体が高く、DFラインの裏を簡単に取られて失点するシーンが相次いだ。
この点でオークランドFCは行く時と引く時、極めてメリハリのある守り方をすると言える。ボールを奪うよりもゴールを守る事のウェイトが高い、町田に近い印象を受けた。
この辺が高い位置で守り切りたいスキッベ広島とボール保持率で差が生まれる要因と言える。一方で、ビッグチャンスクリエイト数は欧州ビッグクラブ並みの1試合平均3以上を記録しており、往時のマリノスを凌駕するなど、攻撃の効率は良かった。
マリノスに欠ける戦力
監督のやり方に必須な選手と言うのは存在する。
清水エスパルスに”移動”した吉田孝行がオセフンを確保した様に、オセフンとミッチェルデュークを失った黒田剛がテテ・イェンギを求めた様に、ロングボールを設計に組み込みたい監督に、ロングボールターゲットを用意しないのは最早、裏切りに等しい。
またロングボールターゲットとは競るだけではなく、競り勝って触る回数を1試合中に何度も再現可能な選手と言える。この点で谷村はJ1リーグではロングボールターゲットになりえない。
・ロングボールターゲット
オークランドFCでコスグローブがそうであるように、マン・シティでハーランドがそうであるように、勝率60%オーバーの選手がいれば、それだけでチームの前進力が高まり、敵陣でプレーする回数が増える事になる。
もしかしたらマリノスにくる監督達がそうなるように、急にリカルド・ロドリゲスの様になるかもしれないが、それはピッチ上で証明された事が無い能力で、信用できない。
コリカを監督として選んだ以上は、当然用意されるべきオプションと言える。
この点で、大島体制では全く出番の得られなかったディーン・デイビッドと外国籍枠を入れ替えるのは手っ取り早い仕事だ。何故なら町田がテテ・イェンギをスコットランド2部から発掘した様に、アジア圏ではサイズの暴力が通用しやすい。
今のマリノスでは多少の損は目をつぶる必要がある。リストラクチャー”再構築”に痛みはつきものだ。以前に扱いを困ったブラジル人をそうしたように、無償レンタルも考える必要がある。機能しない戦力は居ないのと同じだ。大きな年棒枠を開ける事で取れる選択肢もあるだろう。
この点でセカンドトップは過剰になると言える。
オークランドFCではウルグアイのギレルメ・メイという左利きでスキルフルなドリブル、スルーパス、巧みなシュート、エリア内では理不尽なダイレクトシュートを叩き込むという、天野と谷村を足したようなハイライト動画がある選手が務めていた。
1シーズン、二人をエースとしてセカンドトップで併用すれば1年が終わる頃には同じような動画が出来るだろう。
次点では浅田、負傷中の遠野、更には松村と、やや人員過剰である。この為、26/27シーズンでは松村を借りる機会は減るかもしれない。
更に、オークランドはシーズン中4411を選択していたが、プレーオフでは541を選択しており、こうなるとセカンドトップというポジションは無くなる。
4の両脇をシャドーと捉えるかSHと捉えるかで谷村や天野も安泰ではなくなる。
・ウイング
コリカ監督の下で大ブレイクした左WGがいた。勢いでワールドカップにも出てる。活躍し過ぎたのでスコットランド1部に移籍が決定したジェシー・ランドール。
日本人選手にはオファーがこないけど、下の水準にあるAリーグにオファーがあるのをみるに、やはり英語が話せるというのはマジで大きいかもしれない。移籍したい選手は英語でSNSをやった方がいい。
逆足ウイングだからというよりも、純粋に良い選手だから使っていただけで、右サイドは順足WGを採用するなど、特にこだわりも無さそう。
ただ、何をして欲しいのかと言えば、共にスピードがあってラインブレイク、縦突破からクロスをいれられるタイプで、近藤、クルークス辺りはそのまま採用されるだろうが、テヴィス、アラウージョはどうだろうか。
またオナイウは再評価の機会があるだろうか。遠野も走力が戻るならセカンドトップというよりウイングが主戦場になるか。この点、話題の高橋君などはスピードが水準に達していれば積極的に使われるかもしれない。
しかし、開幕時点では明確に左ウイングで実績十分という選手がいないと言える。
これを解決するなら、特別大会でひと際輝くプレーを見せたのが…
藤枝の中村優斗だろう。
藤枝では左WBというポジションであったが、実質左WGとして機能していた。
右利きの左WG、突破だけでなく、とにかくボールを失わないタフなキープも出来るタイプで、縦突破しての左足クロスもあり、Jリーグ初ゴールもカットインからの右足で決めている。
マリノスが長年夢見た
本物の日本人左ウイング
英語はしゃべれるか?
コリカの元で第二のジェシーにならないか?
・ミッドフィルダー
マリノスは既に知念を獲得しているが、ダニー・ヘイのオーダーをこなすプレーメーカーと言うタイプではない。木村卓とポジションを争うフィニッシュの局面に顔を見せる敵陣6人目のアタッカー枠だ。
勿論、山根が残るのであれば彼に期待はかかるだろう。構想リーグでは遂にフルタイム出場を成し遂げている。一方で、それは同世代の若者がそうであるように、同時に卒業の資格を手に入れたとも言える。
タイプとしては田中がそうなのかもしれないが、前監督がまるでプレータイムを与えなかったのがここにきて大きく響く。見た事が無いので分からないとしか言いようがない。
前任者は経験が浅く、結果を出せない事に焦り、次のシーズンに必要となる戦力を育てる事を着手しなかった。
もしも山根を失うとなれば、外国籍枠の大幅な組み換えをしてでも、プレーメーカーを確保しなければならないだろう。川崎で出番を多く失っていた河原なども候補にあがるが優良物件だ。
この点、コリカ監督の元でプレーしていたベルギー人のフェルストラーテはダニー・ヘイのオーダーも熟知しており、186㎝とJリーグならサイズも十分でシティのロドリやアーセナルのライスといった、大型で時に4+1でバックラインに入って守備が出来る、今風のアンカーと言える。
試合中にセカンドトップを置かない433の選択肢もとれる。
もしくはボランチを狙うならブラジル2部もまた金脈が眠っている。
奪い合いが過熱し、高騰気味なブラジルのアタッカーに比べると、明らかにフルタイムで出ている様な選手でも価値が上がって行きにくい。清水エスパルスが連れてきた今やJリーグ屈指のボランチも当時は2部でフルタイムにプレーしていた。
山根の代わりとなるプレーメーカーというとサンベルナルドFCでプレーする、ドゥドゥ・ミライマが興味深い。
26歳、173㎝、今期はここまで14試合全試合先発、2G2A。とにかくキックの質が高く、現時点で山根を凌駕すると言える。ロングボールの精度は見事。
にも拘らず、市場価値は29万ユーロと実にJリーグ水準に収まっている。
トランスファーマルクトでは山根が100万ユーロ、諏訪間が30万ユーロだ。
マテウスブエノも清水に移籍当初は30万€程度だった。ブラジル2部のボランチはフルタイムで出ていても上がらないのだ。
とにかくダニー・ヘイのオーダーを消化するには列移動を出来るプレーメーカーが必須である。田中、樋口と候補はいるが、被カウンター局面など未知数な要素も大きい。
山根を失う場合はなりふりを構っていられない。
外国籍枠の入れ替えに打って出る必要があるだろう。
・ゴールキーパー
先ず守り方として無駄なハイブロックはとらない。
特別に保持に固執もしない。
そして深くまで蹴れるキックが必須。
こうなるとパク・イルギュと飯倉よりも、木村凌也を好む可能性が高いと言える
更に、経験が必要となればGKの獲得も急務になる可能性はある。
バックラインを考える
怪我人が多いのが戦力編成を難しくしている。
松原と渡邊、特に後者の長期離脱は編成に影を落としている。
SBの陣容は井上が一気に盤石の地位を築いた事で一定の安心はあるが、村上にプレー機会がゼロだった事で、こちらも次シーズンへ向けた準備が進んだとは言い切れない。
村上が2番手で松原の復帰を待てると言える状態とはならなかった。
諏訪間なども富安や伊藤の様にSBも出来るCBとして育てる事も出来たが、前任者は要所要所で間違った判断をした上に結果まで出なかった。
この点、マルチロールとしてむしろ後ろで固定したくなるプレーを見せたのが、やたらテストされたと言える宮市だった。だが上がったらWGロールをこなせるSBとして、一番見たかった左SBは試されないなど、要所が定まらない運用が行われ、これもまた負債としてコリカに引き継がれる事になった。
右 井上 村上 負傷松原 要テスト諏訪間
左 鈴木冬(負傷) 関富 要テスト宮市(右はいける 負傷渡邊
3番手として左右に使える宮市を置きつつ、若手が2番手、緊急でCBを回すという体制は現スカッドで組めている。
負傷と未テストが新監督に降りかかる負債だ。
CBの陣容も考えると、唯一補強を考えなければならないのが、長期離脱で復帰の目途も見えない渡邊泰基の代わりだろう。
つまり…以下の3条件を満たす補強が必要だ
1,左利きでCBを主戦場として角田のサブもこなせる
2,3バックのオプションをチームに与える
3,左SBも埋める事が出来る
ここで希少な左利きCBとして思い当たるのは、2025シーズンJ2リーグで右の井上、
左の青木と言えるプレーを見せた
徳島の青木駿人だろう。
徳島がかなり守備的な外国籍選手行ってこいチームだったのもあり、なかなかビルドアップで良さを見せるのは難しかったが、左足のキックには光る物があり、J2歴代最強と言われた鉄壁の守備を支えた3バックの左CBを務めた。
25歳 183㎝79㎏ 徳島で累計59試合 5000分近いプレータイムがある
構想リーグは1月に疲労骨折の影響もあり不在であったが、キャンプインには間に合うのではないだろうか。
JリーグやFIFAのルールとは別に、横浜村には一度でもマリノスのユニホームに袖を通したら永遠に抜ける事は出来ないという掟が存在しているので、マリノスプライマリーの出身者である彼は、既にマリノスのファミリーである。
そろそろ特別な想いのあるであろう横浜に帰省してはどうだろうか。
どんなに優れた監督でも、戦力編成を失敗した状態では結果が出ない。
それは急ぎ過ぎた結果、ポステコグルーすら解任目前と言われた時期があった事を教訓として忘れるべきではないという事だ。
鈴木SDはアイザック・ドルの様に1年持たない結末にならない様に、このオフシーズンにこそ死力を出し尽くす必要があるだろう。