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横浜F・マリノス24シーズン新監督 キューエルどうよ?

リーグ戦を9試合消化した段階だが、横浜F・マリノスに24シーズンから就任した新監督であるハリー・キューエル監督の仕事ぶりを表層的ではあるが、各種データからレビューしたい。

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1776102718060564827

 

 

サッカーは相対的な競技であり、対戦相手の傾向に偏りがあればマリノスのデータも偏ってしまう事になり、その点で9試合という段階はフルシーズン戦ったデータと比較するには中途半端である点は考慮して頂きたい。

 

※一部更新の早いデータは10試合段階の物が混同している

フットボールラボ、Sofascore、Jリーグ公式を参照

 

 

5月2日段階 7位 得点減

 

9試合 4勝3分2敗 14得点11失点(10試合 4勝4分2敗 15得点12失点)

 

順位、勝率、勝ち点、得失点、2月から始まる過密日程を今期のJ1リーグで唯一消化している事を加味する事をどれだけ重視するかで評価も分かれる数字になっている。

 

一方で、それ過密日程は関係なくね?というポステコグルー就任以降から変わらず続く、拙い試合展開による勝ち点のロストを感じる試合があるのも評価を分ける要素だ。

 

 

その中でアタッキングフットボールを標榜するマリノス的に譲れない一線として、やはり9試合14得点が一番、分かりやすい未達項目なのかもしれない。

 

なぜ、という点で得点に関わる数字を追っていくと、シュート数、ゴール期待値自体は上昇している。

 

23シーズン → 24シーズン

 

1試合平均シュート数 13.9 → 15.1

1試合平均ゴール期待値 1.449 → 1.760

 

 

一方で、1試合平均ビッグチャンス創出は 2.6 → 2.3 と減少が見られ

 

更に1試合平均の

枠外シュート 5 → 6.4  被シュートブロック 3.7 → 4.4

 

と、得点が減っていても納得の数字が並ぶ。

 

勿論、これは消化試合がまだ9,10試合という事から自陣でブロックを作る撤退守備の対戦相手が多かった結果、という偏りの結果かもしれない。

 

 

 

攻撃データ

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1767917468654469434

 

 

一方で、これも対戦相手による偏りは考慮しつつも、敵陣ゴールまで出来るだけ多く侵入するというチームの目標が一定の達成をされているのも確認できる。

 

1試合平均パス数を見ると

 

23シーズンが455本中 自陣241本 敵陣218本 と後ろでつなぐ機会が多いのに対し

24シーズンは 442本中 自陣208本 敵陣239本 と敵陣比率が上回る。

 

 

また実際の1試合平均プレーエリアでも

 

23シーズンは 30mライン(AT)侵入 42.4回 エリア内侵入が 13.1回

24シーズンは 30mライン侵入が 48.7回 エリア内侵入が 15.3回

 

共に24シーズンでは現段階でリーグ1位の数字であり、J1リーグにおいて最も敵ゴールに近い位置でプレーする機会がチームとなっている。

 

またコーナーキックが多い印象があるとしたら、それはデータ的に正しく、昨季は1試合平均5本だったのが、今期は7.6本と50%アップなのだから、そう感じるだろう。

 

一方で、広島は1試合平均のシュート数が20本(枠内シュート数もリーグ1位の6本、マリノスは5.1本)を越えており、マリノスとは約5本の差が生じており、パターンアタックの整備など敵ゴール前での効率という点で改善の余地はあるのではないだろうか。

 

 

ボールゲームを制圧しすぎてしまった結果、敵がとにかく引いて守備を固くさせる、更にはロングカウンターを被弾する、諦めた敵がロングボール中心なプランBで大反撃(川崎、C大阪)という要素もあるかもしれない。

 

 

 

守備データ

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1783070543778066922

 

 

1試合平均失点、被ゴール期待値、直接的な数値でも悪化しているのが確認できる。

 

1試合平均の被シュート数も16.2本と、自分達のシュート数を上回る数字で撃ち負け状態のリーグ18位。

 

 

また間接的なデータでもKAGI(守備時に敵を前進させなかった)はポステコグルー就任時の2018年を下回り過去最低の41.5、リーグ19位の数字だ。

 

参考として23シーズンは46.5、22シーズンは51.0、21シーズンは56.0。

 

そして、今季から守備に関するデータはかなり細分化されており要約して箇条書きにまとめると以下になる。

 

プレスとブロック(ボールにアタックしてない状態)の違いを理解する必要がある

 

・ハイプレスは成功率などに改善が見られる

・一方で失敗してシュート打たれる率も上がった(リーグ20位)のるかそるか状態

 

・ロングボールで交わされるので高い位置のブロックは機能してない

・交わされてシュート打たれる率はリーグ19位

・だけどハイブロックからは失点した事はない不思議

 

・ミドルゾーンとローゾーンのブロックは優秀

・だけど、こちらものるかそるか状態で失敗はシュートに直結してる

・ミドルゾーンのブロックはシュート打たれたら4本に1本は決まる致命傷

・ミドルゾーンの被シュート成功率は勿論リーグ20位、ズバ抜けてる

 

改善点

 ハイプレスがギャンブル過ぎる

 ロングボールを蹴られる前提のハイブロックを検討

 ミドルゾーンのブロックではエラー=致命的状況の解決

 

属人的な理由なのか、構造的な理由なのか、何かを得る為に何を捨てるのか、実現できない理想よりも現実を見つめると、そういう決断も必要になるのかもしれない。

 

ハッチンソン、横浜FCで失敗した経験は活きているかい?

 

 

また433から442に何となく変えてしまう事で名古屋戦の逆転負けの様な、比較的マシだったハイプレス中心で戦っている状況から、苦手なミドルゾーンブロックで戦い続ける状況になってしまう事も考えないといけない。

 

更に、カウンタープレス(ロスト後の奪い返しプレス)という点で強いと感じるチームと比較すると、マリノスは被シュート率が11%(リーグ17位)なのに対して、広島5%、神戸5.6%と大きく水をあけられている。

 

とにかく過密日程、疲労というキーワードが一番影響しているテーマかもしれないが、昨シーズンに続いて、壊滅的な状況は継続中だ。

 

 

戦力編成 水を得た天野と433のインサイドハーフ

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1780185064929939467

 

 

今季、未整備な守備を個で支えるポープや上島が活躍しているのは誰の目にも明らかであるし、インサイドハーフに見いだされた植中は戦力編成の歪さを加速させる程の活躍を見せる。サイドバックは豊富だが。

 

更にはMVP榊原の躍進は三井寿的にチームを育成年代から応援する人のハートをキャッチしているだろうし、MF陣の充実はACLのベンチで確認できるまで吉尾の捜索願をそろそろ出そうか迷わせる程であった。

 

 

そんな中でも、今一番期待をさせるのが右のインサイドハーフで起用が増えてきた天野純である。これまでチームが上手くいっていない様な時の方が活躍する、独特の感性でフレーム外での活躍をしてきたが、今期は物凄くハマっていると感じる。

 

433のインサイドハーフ、これまでプレーする機会が無かった殆ど無かったポジションだ。

 

 

ボールのキックに関してはチームでもトップレベルの技術力があるのは議論の必要が無いとは思うが、天野の真骨頂はそこではない。

 

個人的に彼のJ1リーグにおけるシーズンベストは2018シーズンであり、そのシーズンにこそ、天野が433のインサイドハーフに求められる資質を最も発揮したシーズンだった。

 

2018シーズン、リーグ戦における総走行距離は379.8㎞に達し、リーグで年間1位に輝いたのが天野純であり、走れる選手という資質を示している。

 

また2018シーズンにおけるデュエル勝率は59%(地上戦60%)に達し、前線で無駄にフラフラと浮遊させるよりも”球際”が多数発生する戦場に送り込むべき選手であるのが伺える。

 

これまで高い技術や感性を重視し、天野を正確に捉えなかった結果としてファジーに使い過ぎていたのかもしれない。アタッカーとビルドアップの中継者でありその両方、433のインサイドハーフという天職に巡り合った。

 

思い起こせば、2018年はアンカーに拘ったポステコグルーによって天野がフルシーズンインサイドハーフとしてプレーした唯一のシーズンだ。

 

 

現況として、前述の通り守備に大きな問題を抱えているが、ロペス、エウベルがファーストチョイスであるのは議論の余地が無いとして、故に2列目の強度が妥協できない、アスリート能力的に走れて勝てる選手で固めるレアルマドリード的な選択が必要となっているのではないだろうか。

 

マスカットは両ウイングを先ず変える選択をしていたが、キューエルが最初に考えるべきはチームの強度を担保する両インサイドハーフの状態になるだろう。高強度で走れない選手は破綻を生み出す。

 

喜田、渡辺、山根、榊原、植中、天野、2チーム分の戦力は整った。吉尾や植田にもチャンスが回ってくるかどうか。

 

この点、ナムテヒは時折上手いプレーをするのだが、要件を満たさないと考える。むしろ高精度なクロスを蹴れる事を考えると、インサイドハーフが充実してきた現在のマリノスでは左右のウイングが適しているように感じる。

 

元々は西のACLでも大暴れしていた実績は十分すぎる左ウイング、ふがいないプレーが続く宮市、井上は十分に競争の射程圏内だろう。

 

現実的に考えれば、大体殆どロペスが出る運用が続くのであれば、ファーストトップ・ロペスの保険として”6番目のベンチ要員”はそれぞれ個性があって興味深いし、宮市、井上、村上でも務まると考える。

 

J1クラブでありながら出場すら叶わない残念なチームもいるようだが、天皇杯などの今季マリノスにとっては優先度が低い大会で試すべきだろう。

 

24シーズン横浜F・マリノス戦力編成展望

まだ監督も決まっていない段階では展望というよりも願望に近い内容になるが、24シーズンの戦力編成を構想していく。

 

リーグ2位という順位にしては様々な課題を残す結果となった苦闘の23シーズンをベースに、実現性に配慮をしつつも可能性と問題解決に重点を置いた内容とする。

 

 

ベースとしての23シーズン

 

1つ前の記事で行ったシーズンレビュー。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

内容を要約すると

 

・守備は壊滅的状況(ここまで悪いと個人の問題ではない)

・攻撃も上手くいってない結果、個人能力(特定選手)依存

・選手の組み合わせ、補完性、シナジーに課題

 

以上が問題となる。

 

そして更に、今回の前提としてロペス、エウベル、ヤンは来期もマリノスでプレーするとする。

 

 

並びを変えよう

 

引用元 https://x.com/LFC/status/1736087544633413907

 

2019年、ポステコグルーが発見をして以来、一貫してマリノスセカンドトップを採用した4231-442でプレーしてきた。

 

しかし23シーズンでは敵チーム、J1リーグのトレンドを含む様々な変化が起きている現状、更にはロペス、エウベルのダブルエースを共存させる上で、主に守備時に成立不可能ではないかと思える破綻的状況が試合の中で何度も発生してしまった。

 

また攻撃時も、22シーズンはプレータイムを共有したマルコスと西村で合計62本ものラストパスを記録したが(つまりセカンドトップが実質チーム1位)、23シーズンでは上位3人がウイングで、ラストパス数5位以内にもセカンドトップはいない結果になるなど、もはやセカンドトップが必要なのか?と戦術的迷子の状態になっている。

 

 

以上の事からも、今季のマリノスはブライトンを模倣していると噂されていたが、その理由が共通の4231だからというのであれば、そもそも並び構造自体を変える事で、もっと上位のチームを参考にすることも出来るだろう。

 

例えば、現在プレミアリーグで上位にいるのはリヴァプールアーセナルであり、基本的には433をベースとしており、また選手の凸凹を組み合わせるケミストリーの達人アンチェロッティの22年マドリードも参考にする事が出来るのではないだろうか。

 

対戦相手を考慮したオプションとして2つの配置、タスク振りを持つチームになる時がきているのではないだろうか。

 

 

最悪7人で守れる

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1712123804481364282

 

マルコスシフトからエウベルシフトへ

 

4231(守備時442)と433で何が変わるのかと言えば、頻発するロングボールを蹴られる状況、更に自陣でエウベルが戻ってこない(でもいいよ)という状況での改善が想定される。

 

23シーズン、GKラッシュまで厭わないプレスを行う意思はあったが、全く効果的でなく(被ゴール期待値1.516 被シュート数リーグ16位)、2トップは開いたCBとGKにいい様にあしらわれ、ウイングとボランチ1人を前に引き出された上で蹴られるロングボールという状況が何度も発生した。

 

結果、後方のフィールドプレーヤー5人に対してロングボールを蹴られる事で、セカンドの回収が難しく、一旦拾われれば対応が難しく、ゴール前まで下がるしかない状況になった。

 

今期の神戸をはじめ、意図的にGK及び最終ラインから対角線のロングボールを蹴ってくるチームは今後も増えていくだろう。

 

これに適応する為、3トップ化する事でロペスは中央ステイ、両ウイングがCBにけん制、サイドバックは2列目がけん制という極めて無難な対応をする事で、GKラッシュの機会は減るが、2列目以降が7人になる事でロングボール回収率は向上が見込めるし、セカンドを拾われても対応が可能になる。

 

勿論それで”間”を使われる事もあるだろうが、今期はもっと悲惨に使われて破綻する事も珍しくなかったので、使われた後の対応も補填が効くのでマシになるだろう。

 

 

そしてミドルゾーン以降の守備でも、2列目が気合いでスライドすればエウベルが戻ってこないからサイドで数的不利になる、という今季何度も発生した状況を見る事はないだろう。ガッツが足りない選手は交代すればいい、5人使える。

 

特に深い位置での守備においては、後ろは数的に揃った上で、あえてエウベル前残りの状況を作るのは敵チームにとって脅威でしかない。

 

平凡で、それはツマラナイかもしれないが、ロペス、エウベルを共存させた上で破綻しない事を優先するべきでは?と考える。

 

別に理想を変える必要は無く、バックパスやミスを起点に行ける時は行けばいいし、何より守備が上手くいってないチームは弱く見える。

 

そもそもマルコス及び、それを代替する選手もいない上に戦術的に意味がなくなっている状況でセカンドトップを用意する必要性はアンチェロッティ的な選手の特性を最大限発揮する”調理”からすると、意味がないのではないか。

 

 

ウイングの戦力編成

 

さて、攻撃の中心となる両ウイング。ここはエウベルとヤンがいる前提なので2番手以降の選手が求められるし、更にターンオーバーや毎試合交代する事も考えると3番手も持つ必要がある。

 

そして何よりも重要なのはロペスとの相性であり、クロス精度と、ドリブル突破も含めたラインブレイク能力、他にゴールシーンとしてスルーパスに抜け出すようなスピードも必要になる。

 

 

この点で宮市は2番手としてみた時に、自身のゴールシーンはあったが、クロスでのアシストが無かった。またドリブル突破も高いとは言えない。

 

ゴール 3ゴール

アシスト0 クロス成功数&率 0.4 (26%) ※数値として悪くはない

ドリブル成功数&率 0.4 (47%) 

 

 

また水沼も彼が活躍していたのはエウベルと同時に出ている試合、もしくは相手に退場者が出た後のみであり、この条件が無いと6月以降は0ゴール、0アシストだった。

 

前提条件がエウベルとヤンのセットを基本としているので、ヤンが先発で出れない状況のみ、など制限が付いた右の3番手とするのが望ましいだろう。エウベルが居ない=途中交代で使うのは止めた方がいい。

 

井上に関してはスピードこそ光ったが、クロス、ドリブルといったクオリティがマリノスが求めるウイングの水準に達していない。出場機会的にチームに置いて成長を待つべきなのか、判断が難しい所。

 

クロス成功数&率 0.4 (16%)

ドリブル成功数&率 0.1 (17%)

 

 

また対戦相手次第ではエウベル、ヤンが出れない状況などで1番手に出来るのがスピードはなくともドリブル、クロス、ボールを守れるなどの部分でクオリティの高さを持つ選手だろう。

 

この点で、ナムテヒはもともとは左ウイングで長年プレーしたキャリアを持つ事から、敵のゴール前まで前進するのが難しくない相手、そこからのクオリティが求められる相手など、起用が検討できる。

 

ドリブル成功数&率 0.9 (67%)

デュエル勝利数&勝率 1.7 (54%)

クロス成功数&率 0.8 (37%)

 

 

また、今シーズンは苦戦したが昨シーズンはほぼ右サイドでプレーしていた復帰確実らしい天野も限定条件での右サイド起用は検討ポイントになるだろう。中央に置いてもサイドに行く訳で。

 

共にロペス向きな、斜め後方から、質の高いクロスを蹴れるという条件を満たし、また433化する事で、2人とも2列目での起用も想定される選手ではある。

 

 

ウイングの戦力補強①

 

エウベルとヤンが絶対的な主力だとした場合、必要になるのは短時間で効果を発揮するパートタイマーであり、23シーズンはここが泣き所になってしまった部分もある。

 

この点で、激推ししたいのが、右ウイングでヤンと交代しても構造が変わらないという点で熊本に所属する島村 拓弥の名前を上げたい。

 

主にJ3で経験を積み、今期はJ2の熊本で主力として活躍したプロ生活6年目を終えた24歳。京都からレンタル生活が続き、ブラジルにレンタル歴もあり州選手権などに出場している。

 

J2 熊本 36試合 34先発 2652分出場 2ゴール 7アシスト

 

左利きの右ウイングであり、ゴールよりもアシストが多く、左足の制度には自信アリ、起点となるプレーも上手い。つまりヤンとスタイルがとても似ている。

 

 

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とにかく今Jリーグにいる選手でヤンに一番類似している選手である

本人の意思は別に、マリノスとして取らない理由がみつからない。

 

島村君、熊本もいいだろう。いい監督でいいサッカーだ。

だが君の左足をJ1リーグで、アジアで振るいたくないか?

 

 

 

ウイングの戦力補強②

 

さて、マリノスは育成組織の選手をレンタルで育成しているが、帰ってくる事例は生まれるのだろうか。

 

もちろんアカデミーの最大成果にプロ選手が育成される事があるとして、それがマリノスである必要は無いという要素があるのは忘れてはならないテーマである。マリノスにとって育成は今や戦力補強ではなく事業なのだ。

 

とは言え、よその池を山田康太が元気に泳ぎ回っているのを見ると、未来が交錯しなかったのが惜しむ気持ちも芽生えてくるだろう。

 

この岐路にいるのが新潟でJ1昇格し、今期もプレーした松田詠太郎になる。

 

今期は何故か彼のポジションだけ激戦区になり、出場機会を大きく減らす結果となったが、シーズン終盤では一段上がったクオリティを発揮し、後半戦成績を伸ばしてきた新潟の一員として活躍した。

 

23 J1 新潟 898分 21試合9先発 0ゴール1アシスト

22 J2 新潟 1982分 38試合22先発 4ゴール7アシスト

 

特徴はドリブルで 成功数&率 1.0 (60%) はJリーグでも上位レベル。

クロス成功数&率 0.4 (20%) はあとちょっと

 

課題はタックル数の少なさが目立ち、守備貢献、関与が課題ではあるが、433化するならアリの水準。右利きで一貫して右サイドでプレーしている、いわゆる順足ウイングだが、カットインも上手い。

 

 

松田君、これまで松橋さんにはお世話になっただろうが、独り立ちの時期では?

そろそろ横浜の水が恋しくなってきた頃じゃないか。

 

 

ウイングの戦力補強③

 

今季のJ1リーグを見ていて、これぞパートタイマーという素晴らしいメンタルを持つウイングがいた。鳥栖でプレーする横山 歩夢だ。

 

J3の松本でブレイクし、今期は鳥栖へ移籍。本人は不服だろうが岩崎、長沼で固定された中、先発出場はゼロという徹底したパートタイマー運用をされた。

 

J1 鳥栖 17試合 全途中出場 367分 4アシスト

 

そのプレースタイルは一旦ボールが入れば、絶対にドリブルで仕掛ける必殺スタイル。

基本は左サイドだが右でもプレーは可能か。

 

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敵陣で仕掛ける一手が出ずに外側をボールが回っていく結果、彼だけが下げる事は絶対にしないので、ひたすら横山からクロスが蹴りこまれる状況も何度か見た。

 

無理仕掛けもあるのでドリブルの成功数&率は 0.9 (52%) と一流には届かないレベルだが、367分のプレーで4アシストは見事の一言。クロス成功率も悪くない (25%)

 

交代選手とはどうあるべきかを体現できるメンタリティ、次世代のエース候補な20歳。

 

 

横山君、世界を目指すならエウベルやヤンとレベルの高い競争をしてみないか。

君には是非とも横浜で夢をかなえてほしい。

 

 

マネーボール

 

この項目はJリーグの他チームは閲覧禁止である。

労力がかかっているので利用するなら是非とも金を払ってもらいたい。

 

マネーボールとは印象ではなく、統計データを元に求める能力があるのに、世間では評価されていないという差額を狙った選手獲得方法となる。

 

ブラジルのセリエA(一部)でプレーする攻撃的な全選手の中から、もっともマリノスに合致するお買い得な選手を探してみた。

 

その結果、今期はゴイアスでプレーしていた24歳のアルゼンチン人、フリアン・パラシオアスが浮上した。

 

ブラジル1部 27試合 19先発 1647分 1ゴール1アシスト

 

20代そこそこなマリノスが買える水準の選手はあまり活躍してもらっては困る。

この点、マルコスやエリキも、二桁得点をしていた訳ではない。

 

マネーボールにおいて、目立っては困るのだ。

 

先ず、特筆するべきは1試合平均のドリブル成功数と成功率

 

2.0 (62%)という数字はリーグでもトップクラスに位置する。

この数字はリーグを越えて通用する事が多く、信頼性が高い。

 

参考までに、今シーズン、かつてJ1リーグで猛威を振るった選手が特に前半、首位を快走するチームでウイングとして活躍していた。

 

ジュニオール・サントス ボタフォゴ所属

37試合30先発 2183分 7ゴール1アシスト

ドリブル成功数&率 2.0 (52%)

 

だから言ったでしょうポステコグルーさん、城福さん、ウイングだって。

 

 

強いチームの方が伸びやすいという点で、ゴールとアシストはチームの順位にも影響を受けるが、ドリブルに至ってはJリーグで三笘と同水準だったジュニオールサントス以上の数値なのが伺える。

 

シュートはエウベル同様にあまり上手ではないかもしれないが、何といっても特筆すべきはクロス成功数&率となる。

 

フリアン・パラシオアス ブラジル1部 1.3 (41%)

ヤン・マテウス J1リーグ 0.8 (29%)

エウベル J1リーグ 0.5 (23%)

 

これらの統計的な裏付けを持ったうえでハイライト動画を見ると、体格的に不利な相手にもボールをロストせずに反転するのが上手い事や、右足の精度に自信がある事も分かる。

 

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サビオラの系譜、名前まで同じなシティでプレーするフリアン・アルバレスがほぼ同世代にいるが、アルゼンチンは次々とこういう選手が生まれてくる。左右、セカンドトップ全てでプレーが可能。4231の選択肢を併用するなら重要な選手になるだろう。

 

また、実現性として毎年保有元のアルゼンチンーサンロレンソからレンタルに出されている。(売り先を探している?)そしてゴイアスとのレンタルは終了している。

 

ほか信頼性は目安程度だがトランスファーマーケットによると安い

K=1000 M=100万

 

ジュニオール・サントス 1.4Mユーロ 育ったな…

ヤン・マテウス 700Kユーロ

フリアン・パラシオス 600Kユーロ

 

例えば左ウイングで比較すると、U17歴もあるサンパウロのホドリゴ・ネストル23歳は 9Mユーロである。

 

彼もドリブル、クロスはそれなりに高いが ドリブル1.2 (67%) クロス0.4 (32%)

フリアンの方が上なのだ。

 

https://www.transfermarkt.jp/julian-palacios/profil/spieler/728262

 

これがマネーボールである。

 

もしもJリーグでプレーする事になれば、かなりの猛威を振るうだろう。その時はぜひトリコロールを着ていてもらいたいものだが…

 

 

 

2列目の陣容

 

 

ジョエルの移籍以降、特に手を打たずにシーズンを終えたが、ポジションが2から3になるのであれば人が足らなくなることが懸念される。

 

現状で、渡辺、喜田、山根、榊原がいるが、特に左右は攻撃能力が問われる事から選択肢は豊富だ。

 

能力とは別にハードワークは最低条件だとして、特に前にいるのがエウベルではない右サイドでは天野、ナムテヒといったセカンドトップ適正の選手、更には水沼も選択肢に入るかもしれない。終盤局面では左右の同時期用すらあり得るか。

 

また、左では現在臨時でサイドバックを務めている吉尾を含むと、全員復帰すれば4人になるが、エウベルのカバーといった相性を考えると、吉尾のサイドバック経験は活きてくるだろうし、全員復帰していれば特別な左足を持つ永戸も選択肢に入れていいのではないだろうか。

是非とも、ハマのアレクサンダー・アーノルドになって貰いたい。

 

2列目全て 渡辺 喜田 山根 榊原

右限定 天野 ナムテヒ 水沼

左限定 SB陣容拡充条件 吉尾 永戸

 

 

他に獲得候補としては千葉でプレーしていた見木、熊本の竹本などが想定されたが、既に移籍、契約更新で獲得は難しいだろう。

 

もはや説明不要な鳥栖の鉄人河原はかなりの争奪戦になっていると思うが、金銭以外にも同カテゴリーで絶対的レギュラーで買い手数多な選手が、渡辺と喜田がいる状況で、移籍しようと思わない可能性も高い。

 

この点、433化で3ポジション化する事はかなりの押しになるだろうが監督すら決まっていない現状ではどうだろうか。

 

 

センターバック

 

バックラインでは両サイドバックは既にケガからの復帰待ちを含めて人員が揃っている事から、センターバックに話を絞りたい。GKも一森の確保が最優先になるだろう。

 

 

さて、センターバックでの懸念事項は畠中の復帰時期と實藤の稼働率だろう。角田の海外移籍もリスクとして含んでいいかもしれないし、シーズンの前半ではサイドバックをこなす状況も検討する必要がある。

 

そして保持の局面にも慣れている選手でなければ上島の様に適応に時間を必要とする可能性がある。

 

これらの要素を加味すると、選択肢はほぼ無く、新潟の渡邊 泰基 24歳左利き 180㎝が候補になる。

 

J1 新潟 21試合出場 18先発 ( CB14試合 左SB4試合 )2ゴール1アシスト

 

新潟育ちだが高校経由、更にアルベル下では起用されずレンタルへ。その金沢においてヤンツーフットボールで保持局面も磨かれ今季から新潟復帰。

 

Sofascore 機会採点 では 畠中 7.08 渡邊 7.01 とそん色なし

 

畠中 - 渡邊 1試合平均 比較

 

パス成功数&率 53.4 (87%) - 55.5 (89%)

敵陣パス成功数&率 17.0 (79%) - 18.0 (85%)

ロングボール成功数&率 1.8 (39%) ー 2.7 (47%)

シュートにつながったパス 0.2 - 0.5

 

パスデータでは渡邊が上回る

 

 

デュエル勝利数&率 4.3 (65%) ー 4.6 (62%)

空中戦デュエル勝利数&率 2.2 (64%) ー 2.3 (62%)

 

デュエル局面でも差は感じない

 

微差だが、インターセプト数で畠中が上、タックルでは渡邊が上とチームの守り方で差がつく部分なのでこれは何とも言えない。

 

また時折見せるドリブルでの仕掛けは成功率がとても高い。

ドリブル成功数&率 0.2(83%)

 

 

www.youtube.com

 

 

渡邊君、居心地はいいかもしれないが、遂に新潟から巣立つ時がきたんじゃないか?

いつかは来る時が、遂に今、来たんだ。

 

 

さて、24シーズンの戦力編成を勝手に展望しましたがいかがでしょうか。

 

最終的にある程度スカッドが見えてきたら、またXのスペースでトーク会などを開催したいと思います。

 

そもそも監督は誰になるんでしょうかね…

 

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23年横浜F・マリノスシーズン批評 攻撃・守備・マスカット

今期は観ている側として、残した結果よりも、かなり苦戦した印象を持つ方が多いのではないだろうか。

 

数字の解釈、注目するポイント、なぜそうなったのかという個人的感想を盛り込み、連覇を目指しながらシーズン2位で終えた23シーズン明治安田生命J1リーグにおける横浜F・マリノスの戦いをデータ面から批評する記事です。

 

何をやっていたかよりも、結果として何が起きたのかを中心に見ています。

また、あくまでリーグ戦のみとなり、カップ戦は含まない物となります。

 

データ参照元 football-lab.jp,sofascore

 

 

<23シーズン 勝敗得失点及び前期比較>

 

23シーズン 34試合

勝ち点 64 19勝7分8敗 63得点 40失点 得失点+23

 

22シーズン 34試合

勝ち点 68 20勝8分6敗 70得点 35失点 得失点+35

 

 

勝ち点、勝敗、得失点を見ると、得失点が12も減った割には勝ち負けへの影響が余りでなかったと言える。

 

例えば1勝1分だったものが2敗になるというのは、得失点ベースで考えれると1勝1分は(+2)程度であり、2敗は(-3)程度であり、その差額は-5程度に収まる。昨季に比べて-12ともなれば本来はもっと勝ち点が減っていても不思議ではない。

 

 

23-22シーズン比較 左23 ー 右22

 

2点差以上勝利 10-15

 複数得点試合 19-23

 無得点試合 5-4

 

クリーンシート 9-13

 2失点以上試合 11-11 → 敗戦数 7-4

 

勝ち点への影響が薄かった部分として昨季は2点差以上の大差勝ちが5試合も多かった事が伺える。

 

一方で、2失点以上した試合は同数ながら、今期は7敗だが、昨季は4敗と殴り勝つ試合が減っているというか、今期は全8敗中7敗を占めるように複数失点したら殴り負けるという傾向が見える。立田のレッドカードが無ければもう一つ増えていた。

 

 

<攻撃>

 

inhttps://x.com/prompt_fmarinos/status/1726889106255622144?s

引用元URL https://x.com/prompt_fmarinos/status/1726889106255622144

 

数字は 23シーズン ー 22シーズン

 

1試合平均シュート数 13.9 - 15.9

ゴール期待値(ExG)1.449 - 1.849

 

 

少し余談だが、シュート数が減れば期待値も減りますよ、逆もまたしかりと、現状のサッカー界ではゴール期待値というデータが全く正しく使われていない気がする。

 

かつてマリノスシティグループと契約した時に、当時社長の嘉悦氏が選手を評価するデータについて一部を垣間見た後に、凄すぎて扱う人の能力が問われるという発言を行った事があった。

 

現状、ゴール期待値って、ただ足し算して結果的にシュート数と大して変わらない物を出してどうすんねんと疑問に感じないのだろうか。

 

例えばシュートの評価として、0.2以上をチャンス、0.3以上をビッグチャンスと定義し、0.2以上がX回、0.3以上がY回ありました、そういう見方、使い方をするのがゴール期待値の正しい使い方の1つでは?と疑問を呈する。

 

特にPKの数値を足すとか無駄であるし、PKがあった事を記載しないと数字を壊すのでは?

 

監督談話で「ウチのチームの方がチャンスは作った」というのがよくあるけれど、ほんとかな?とすぐわかるようになる。

 

 

閑話休題

 

今期のマリノスには大きな構造の変化があったのは説明不要だろう。走行距離に関する物ではスプリント数を意図的に抑制していたのは明らかであるし、ダブルアンカーとも呼ぶべきビルドアップ時におけるボランチの中央固定とサイドバックの行動制限、ウイングの中央裏抜けなど。

 

果たしてそれらは結果としてどれだけ有効だったのだろうか。

 

 

変化を試みた自陣ビルドの有効性は…失敗に終わった?

 

引き出しの1つ、対戦相手を見た上で用いるオプションとしてなら理解できるのだが、傾倒、全フリで行った変更。

 

自陣で敵を引き付けて、後方スペースを利用し一気に敵ゴールに迫る。

それが目的であったとするのであれば、失敗に終わったと評価せざるを得ない。

 

自陣ポゼッションからのゴール率、シュート率は共にリーグ9位、22シーズンがゴール率1位、シュート率2位だったのとすると、そのクオリティは大幅にダウンしている。

 

ロングボール使用率、空中戦使用率は共に昨シーズン同様に低いままで、敵を自陣に引き付けても蹴らずにコンビネーションでの打開に拘ったのが、所属選手の能力とのマッチングエラー、そして守備の進化を上回れなかったと言える。

 

また22シーズンの同パターンにおける得点者を見ると、仲川、ロペス、水沼、小池龍、西村となっており、更にドリブル使用率も高い事から、左で発生するエウベルの個人打開から右サイドで仕留める形がハマっていたと思われる。

 

これは想像だが、今期はビルドアップの出口としてエウベルに良い状態でボールが入らない状況が増えたのではないだろうか。いかに唯一無二の仕事ができるウイングだとしても限界があった。

 

また攻撃の指標として、攻撃時に良い位置に前進出来たのか、という点でも明らかな低下が見られる。

 

 23シーズン-22シーズン

 30mライン進入回数   42.4  - 51.2 
 ペナルティエリア進入回数  13.1  - 16.4

 

 

一方で、それにしては得点数が7しか減ってないのは何故か、というと、Sofascoreにおける今期の1試合平均ビッグチャンス(決定機)数は2.6、昨季の2.8から微減にとどまっている。

 

それは後述する得点、アシスト、ラストパスの依存度を見ても分かるように、今期のマリノス個に依存した局所的クオリティを押し付けるフットボールであり、敵にとってそれは無慈悲なまでに有効だったという事だろう。

 

また昨季に続いて、ボール保持率が高かったトップ3試合は全敗している。

 

もっとも昨季は3試合で62本シュートを放った、いわゆる”決まらない試合”だったが、今期は3試合で33本と、明確に抑え込まれて負けている。

 

 

副作用? カウンター機会の激減

 

更にフットボールラボの指標において激減している数値がショートS、ロングLのカウンター指数だ。

 

今季の数値はS43、L41と、ポステコグルーはおろかモンバエルツ以降でも特に低く、そらスプリント数は伸びないな、と納得の数字である。

 

ショートカウンターDAZN中継を見ている方であれば、そもそも敵陣で全然ボールが取れないから”ショート”のカウンターをやりようがない、数字が激減するのは分かる。

 

一方で低い位置で守る時間が増えたにも関わらずロングカウンターも激減しているのは意図的に行っていないのか、保持&つなぐ意識が強く反映しすぎたのか、どちらなのかは分からない。

 

それがなんにせよ、昨季はリーグでゴール率2位、シュート率4位の強力な武器だったものがスポイルされてしまったのは間違いない。

 

カウンター指数が激減して自陣ポゼッション指数が上がり、被シュート数が爆増する一連の流れはモンバエルツ最終年の2017年と非常に類似している。今の3トップならモンバエルツも3位までに入れたかもしれない。

 

 

得点から見える構造の変化

 

引用元URL https://x.com/prompt_fmarinos/status/1722087797442396598

 

 

今季得点者は上位3人に集中し、ロペス、エウベル、ヤンで37ゴールを計測した。

その依存度は58.73%に達し、昨シーズンの45.71%より得点者が限定された。

 

チーム内得点数4位以下の数字が顕著で、3得点の宮市、植中と出場時間が少なかった選手が並ぶ。22シーズンは4位がエウベルで8得点、5位が仲川で7得点だった。

 

今季、誰が出てもマリノスは過去の言葉だったと言える。

 

 

またラストパスも両ウイングに集中し、攻撃は彼ら2人ありきだった。

 

ラストパス数 比較

 23 エウベル 58 ヤン 57 水沼29 ロペス24 永戸19

 22 水沼54 永戸40 マルコス34 エウベル33 西村28

 

当然アシスト数も2人に集約した。

 

アシスト数 比較

 23 エウベル、ヤン 11 水沼7 ロペス4 エドゥアルド3

 22 水沼7 仲川6 エウベル5 永戸4 ロペス4

 

マリノスサイドバックは高い位置でプレーする機会が一定数あるが、今期の松原と永戸のアシスト数は各1しかない。

 

なぜか?

 

 

ロペスのエース化

 

34試合34先発、出場時間の2855分は最多出場を記録している。

 

ゴール期待値16.799に対して23得点、シュート成功率24.7%は歴代のファーストトップと比較してもそん色はない。

 

一方で、明確なゴールパターンと苦手パターンが存在していた。

 

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代名詞はWGのカットイン、または斜め後方から蹴られるアーリークロスからのヘディングシュート。

 

他にはスルーパスを受けてドリブルシュート、そしてウイングがドリブル突破を含むラインブレイクした後の折り返しクロス。

 

彼のゴールはほぼこの3パターンであり、PKを除くと例外は開幕浦和戦で永戸のクロスを西村が折り返したシーンと、34節エウベルのスルーパスを受けた山根のクロスの2つになる。

 

問題はマリノスで頻繁にみられる敵陣サイドでパス交換し、タッチライン際又はハーフスペースに走りこんだ選手から蹴られる、横からのクロスで得点は1つもない

 

シーズンも終盤になると、試合を見ていてついつい思ってしまうのは「無駄じゃねその攻撃、中にいるのはロペスだよ」と。

 

秋の神戸戦では30mライン侵入が神戸の35回に対して、マリノスは54回も記録したが、エリア内侵入では神戸の13回に対して12回にとどまり、ゴール期待値はシュート15本で0.709、ビッグチャンスは0回と、敵陣ゴール前で完全にスタックしたのが敗因であり、必然の敗北と言える。

 

ロペスをエースに固定したが、それならば上手くいかない試合ほど、強みを活かすような徹底する意思統一がチームにあったのかと問われると疑問を感じるし、ロペスが苦手なことを代わりにやる選手、補完性、シナジーを探すべきだった。

 

 

総じてみると、セカンドトップの迷走も含めて、前シーズンまでのベースを大きく変化させようとした結果、多くの箇所で上手くいかず、それはつまり上手くいかない中でも活躍できる=激流を泳げる魚しか生存できない環境であり、結果として個人依存度の高い、時には理不尽に、強い時は強いチームとなってしまった部分もあった。

 

 

 

<守備>

引用元URL https://x.com/prompt_fmarinos/status/1708836228249145663

 

 

個人能力でどうにかなった攻撃よりもさらに厳しい結果だったのが守備の項目だった。

 

23シーズン - 22シーズン

1試合平均
 被シュート 15.3 - 11.8
 被ExG 1.516 - 1.134

 

軒並み数値は悪化しており、特に被ゴール期待値は衝撃の1.516。まぁ被シュート数がリーグ16位なのだから当然ではあるが。

 

被ゴール期待値が1.2より多いチームはマリノス以外、全てボトムハーフのクラブであり、またハイプレス試行数が多い&ラインが高すぎるチームは多い傾向にある。

 

 

・ トレンドとの衝突と前線選手の守備

 

今期のJ1リーグではGKを含む保持&ロングボール使用での回避が流行した。

 

その中でも広島は被ゴール期待値で0.735と非常に優れた数値を記録。

 

これはハイボールに強いCBが裏を取られない”ほどほど”なライン設定を行い、ハイプレスも常時ラッシュするのではなく、マンマークでフリーを消して出した先を潰す、更にロングボールを活用して自陣ではプレーしないリスク回避を徹底した結果、最もトレンドにマッチしたと言える。

 


一方でマリノスの守備は多くの時間で上手くいかないシーンが多発しており、簡単に説明すると以下の構造になる。

 

先ずハイプレスには明らかな欠陥があり、1列目からして前にしか追わない2トップが、敵にGKを活用されるとCBへのパスコースばかりを意識して左右に開きっぱなしになり、ボランチがカバー出来ていないのに中央をガラ空きにしてしまう。

 

人数が足らなくなる状況なのにGKまでラッシュをかけて簡単に+1を後方に作られてしまう時も少なくない。

 

そしてボランチが前に出れば、今度は中央で何の制限もかかってないGKからロングボールを蹴りこまれる。すると今度はマリノスは1列目とボランチ1人は引き出されているし、ウイングも返ってこない。

 

特にサイドにロングボールを蹴られると、敵はサイドバックがロングボールに呼応して上がってくるので2対3を作られ、セカンドも回収されやすく、拾われたら数的不利でゴール前まで下がるしかない。

 

そして、前の4人は当分帰ってこないので6人で敵がシュートかクロスを蹴るまで守り切るしかなく、収支のバランスとしてマリノスの強みを簡単に回避した上で有利な状況で攻撃を継続できる。

 

更には保持意識が強くカウンターがとても少ない為、敵はそのままハイプレスにいく事でプレー位置は必然的にマリノス陣内が増加する。ボールを取れればまたクロスかシュートまでいける。マリノスの被シュート数が増えるのは必然の結果。

 

 

更には困ったことにミドルゾーンでも守れないシーンが目立った。ハイプレス状況じゃないのに前に意識が向いている前4人はバックパスを混ぜれば簡単に外せてしまう。柏や神戸の強度と比較するとかなり差がある。


9月には札幌、鳥栖戦で徹底的にハイプレスの穴を突かれ、続く鹿島戦ではGKへのラッシュを諦めミドルゾーンで構えたが、開始僅か1分50秒、エウベルが自陣で簡単に穴をあけてサイドバックのクロスから垣田にフリーでヘッドされる被決定機。


今季マスカットの振る舞いは問題は明らかなのに見えないふりをしているように感じた。

 

 

・ 失点は5しか増えていないぞ

 

にも拘らず失点は昨季の35から僅かに5増えた40に過ぎない。

 

なぜか?

 

マリノスが作った1試合辺りのビッグチャンス数が約2.6だった訳だが、では対戦したチームがマリノスに対して作り上げたビッグチャンス数はいくつだったのか。

 

Sofascoreによると23シーズン通算で敵チームが作り出した総ビッグチャンス数は78を記録しており、つまり1試合平均で約2,294。

 

仮にビッグチャンス数と得点数に関連性があるとするのであれば、マリノスは1試合平均2.6で63得点しているのだから、同じ基準で敵のビッグチャンス数が2.294だと…

 

55失点に該当する

 

 

おいおい、待てよ!マリノスの攻撃陣基準はおかしくないかと思った人もいるだろう。

ところがどっこいビッグチャンスと得点数に関連があるとすれば、人を選ばないのである。

 

例えば攻撃陣が乏しいと一部報道で話題の浦和レッズ

 

1試合平均のビッグチャンス数は約1.7回、つまりシーズン累計で約58回。

そして浦和の今季ゴール数は42得点で比率は 約72.41%

 

マリノスは2.6×34試合=88.4回 63得点 約71%

 

ちなみに最終戦で4得点してくれた京都は73.52%、ビッグチャンスさえ増えれば決める力あり!なるほど4失点!

 

今期の失点が40失点に収まったのは一森が人知を超えた神だったか、対戦相手がよほどヘボかったかのどちらかであり、ちなみに55失点はリーグ最小失点だった浦和の2倍以上となる。

 

また、フットボールラボにおける「守備の際にどれだけ相手を前進させなかったか、相手を自陣ゴールに近づけなかったか」という指標、KAGIにおいてポステコグルー就任以降最低の数値を記録しており、2018年の47.3を下回り、46.1となっている。

 

ちなみに2018年は年間で56失点している。

 

1試合辺りの被シュート数は今季よりも2本少ない13.2本だ。

敵がまともだったのかよほどツイてなかったのか。

 

結論として守備は上位を争う水準に遠く及んでいなかった、と言える。

 

また、余談だが改めて優秀選手賞、更にはベストイレブンの選出方法は甚だ疑問を感じる。

今季のJ1リーグで遥かにピンチを迎え、それを凌いでいたのは一森であり、監督、選手によるあいまいな印象で決めるべきではない。

 

 

<マスカット>

引用元URL https://x.com/prompt_fmarinos/status/1734925415192662412

 

 

22シーズンはプレータイムマネジメントという5人交代制の時代における1つの回答を見せる手腕を発揮しリーグを制覇した。

 

しかし、ゆえに、彼が率いるチームは属人性が低い状態を維持しなければならなかったのではないだろうか。

 

攻撃の項目で記載したように、今期のマリノスは”3人”に依存度が高く、その内誰かが欠けると急速にパワーダウンしてしまう、属人性の塊のようなチームだったのではないだろうか。

 

それはつまりマスカットが昨季みせた手腕と最も相性が悪い、彼の特徴と相反する状態であり、戦力編成だった。

 

 

またマスカット自身も対応力の無さを露呈した。

 

途中就任した21シーズンは戦力の把握、整備に時間を要し、シーズン後半の重要なところで、選手の交代によって明らかにチームが失速する場面が何度もあった。

 

プレータイムマネジメントを重視するあまり、交代によって起きる効果、選手の組み合わせに無頓着な所がある。22シーズンは戦術的な優位性が維持された上で、充実した戦力というバックボーンがあり顕在化しなかった。

 

 

水沼の起用

 

そして今季、この煽りを最も受けたのが水沼だろう。

 

昨シーズンは正にチームの中心として活躍を見せたが、それは全てエウベルとの組み合わせ、エウベル居てこその水沼だったのをマスカットはどれだけ理解していたのだろうか。

 

5月3日の鳥栖戦でヤンが右ウイングでポジションを掴むと、水沼はエウベルと交代で試合に入る事が多くなった。

 

水沼は今季リーグ戦で7アシストしているが、5アシストは先発でエウベルと同時起用されていた4月までに記録しており、残りの2つも16節のFC東京戦、17節の柏戦と相手にレッドカードが出てからの物だった。

 

以降、エウベルと交代がメインになる6月からシーズン最後まで水沼がリーグで記録したゴール、アシストは1つもない。使われる環境が変わるのだから、右ウイングの交代枠にはエウベルの助けがなくても活躍できる選手を模索するべきだった。

 

 

植中の起用

 

セカンドトップは何が正解か誰にも分からない中で、唯一可能性を見せたのが福岡戦で先発に起用された植中だった。

 

元から西村よりもデュエルに強く、試合でも自陣ビルド時にパスレシーブからのドリブルで得点を演出、下がるロペスとの連携でラインブレイクし自身もゴールを決めるなど、文句の出ない出来だった。

 

特に驚いたのが、今期悩みの種だった左サイド問題に一定の解決を示した事だった。今季はエウベルの守備意識がルーズで、左サイドでは数的不利で守らないといけない状況が多く発生していた。

 

ところが植中にはエウベルの穴を補填しようという明確な意思があり、1週後にルヴァンカップで浦和を破壊する福岡の主武器である右サイド攻撃を封じる事に成功。

 

この試合は23シーズンでセカンドトップが唯一機能的に輝いた試合だったと言っても過言ではなく、その答えが攻守に渡って周囲とリンクできる選手、と分かった

 

…筈じゃないのかマスカット?

 

その後の冷遇は理解に苦しむ所で、常にロペスの保険である6人目としてベンチに座り続けた…。

 

 

残念だけど終わりだよ サイクルの終焉

 

今期は多数のケガ人が出る不幸なシーズンでもあり、口には出さなかったが選手の入れ替えにも大いに不満があっただろう。監督の立場から言い訳にできる要素は沢山ある。

 

一方で、シーズンを通して守備の問題を解決できず、更には2度の新潟戦は象徴的だが、ルヴァンカップ準決勝の浦和戦でも、試合中に相手の変化に対応するという事が全く出来ないのがよく分かった。

 

対応力がある監督を相手にすると後半完全な劣勢に陥る事が何度も発生した。

 

更に、プレータイム管理による手腕を発揮するには確立された優れた戦術的ベースと、妥協なき2チーム分の戦力が必要であり、微修正で対応する選択肢もあったが、サイクルが終焉を迎えるのも納得の結果と言える。

 

上海のチームと5億円で契約、更には自ら鹿島や浦和に売り込みをかけていたという報道もあった。

 

思い出の話ではなくビジネスの話をするのであれば、ピッチ上での出来事を冷静に見て、より高い報酬を求められても、残念ながらそこまでの高額を払う必要があるとは思えない。

 

俺たちのセビージャでELを何度も制し、現在プレミアリーグを席巻するウナイ・エメリの半額が欲しい?

流石にそれはちょっと高望みでは…

 

 

最後に

 

さてデータとして何が起きたのかだけをベースに振り返っても、9000文字に迫る内容となってしまった。

 

23シーズンを振り返ると1つは広島という正解が示された中で、来期に向けてマリノスとして何を選択していくのか。

 

そして継続を選ぶにしても、今季は未整備さが目立つ結果になった準備段階での選択肢の用意と、試合中の対応力、この明確な課題を解決可能な監督を含むコーチ陣を探し出せるのか。

 

新たな構想に進むとなれば戦力の再編成も考えると、2か月という時間がとても短く感じるオフシーズンになりそうだ。

 

さて、現状で来期のスカッドは監督すら定まっていないので自由研究の様な内容になるが、次回は皆大好きな話題、24戦力編成について予定している。

マリノス選手個人スタッツ・データ批評2023シーズン32節終了時点 ボランチ&3番手ウイング編

今回は前回に引き続き、明治安田生命J1リーグ2023シーズン32節終了時点におけるマリノス所属選手の個人スタッツ・データを批評する。

 

マリノス選手個人スタッツ批評2023シーズン32節終了時点 ウイング&セカンドトップ編 - 横浜F・マリノス ファン

 

対象の選手はリーグ戦で一定以上の出場時間があるボランチ、そして3番手ウイングとなる。

 

 

確認された良くない点は良くないとはっきり書いているので、そういう話は見たくないと言う方は見ない方がいい。

 

データ参照元フットボールラボ、Jリーグ公式サイト、海外のデータサイトsofascore

 

 

 

ゴール前の質があれば…だけでは務まらないポジション、より攻守に渡り満遍なくタスクが求められるボランチ

 

項目が多いが故に、得手不得手を盛り込んだスタイル、更にはコンプリートする選手、様々なタイプの選手がいるポジションであり、大きく分けて攻撃面、守備面、そして活動量という3つのテーマで考えた。

 

 

総合力ナンバーワン 中心選手

 

マリノスの心臓部に君臨したと言えるのが渡辺皓太だろう。

 

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1701883559483699296

 

 

32試合出場、31先発、ロペスに次ぐ2608分の出場時間

ゴール期待値1.390 2ゴール シュート成功率9%

 

出場時間こそが価値のバロメーターとするのであれば、マスカットにとってロペスと同等に考える”エースの一人”であったと言える。

 

またボールへの関与が伺える数字で高い量と質を記録

 

1試合平均

ボールタッチ 63.4回

パス成功率 92% 自陣95%-敵陣89%

 ロングボール 1.3回(62%)

 チップパス 1.4回(59%)

 クロス 0.1回(40%)

 

キーパス0.5回

ドリブル成功 0.4回(64%)

ポゼッションロスト 6.8回

 

アシストが無いのは今後の課題だが、キーパス0.5はボランチ陣最多を記録している。

 

インターセプト 1.0回

タックル成功 1.3回

ボール奪い返し 5.4回

 

奪い返し(ボールリカバリド)もボランチ陣最多の5.4回

 

彼が見せる高い切り替えの意識と、小柄ながら鋭い出足は守備の要所であり、見せ場となっており、スタンドを沸かせるプレーがスタッツにも反映していると言える。

 

デュエル勝率では50%を若干割り込み苦戦傾向が見えるが、思ったより対空デュエルは悪くない。

 

1試合平均 デュエル勝利数(勝率)

総合 2.8(49%) 対空0.3(47%)

 

FC東京戦で90分に決めたミドルシュートは圧巻の一撃だった。

 

 

 

安定感の2番手

 

喜田 拓也

28試合出場 23先発 2021分出場

 

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1712434762236014830

 

 

今期は久しぶりにゴールを記録したが、シュート成功率は6%、もう一点くらい決めてもらいたい所。G大阪戦の振り向き様放ったポスト直撃が決まっていれば…

 

 

強みが見えるのはやはり守備面と活動量。

 

デュエル勝利数が渡辺よりも1試合平均で+0.8 総合3.6回(勝率54%)

一方、対空が0.2回(勝率29%)と小柄である事の苦しさも見える。

 

ボール奪い返しでも役割の差があるのかもしれないが、4.2と渡辺よりも低く、インターセプト0.8回、タックル成功1.4回はほぼ同数と言えるが、守備力こそ期待されている立場としては物足りない。

 

 

攻撃面を見ると渡辺よりも全体的に若干低く

 

パス成功率 89% 自陣91%-敵陣87%

 

また、ロングボール 0.6回 チップパス 0.3回 と”飛ばすパス”を選択しない=出来ない能力が伺える。

 

パスディフェンスを強いてくる相手には次の選択が読みやすいと言え、せっかくオープンになった後に見せる自信のなさそうなプレーも数値として表れていると言える。

 

ポゼッションロストもボランチ陣では最多の8となっており、敵にとって狙い目となっていた可能性もある。

 

キーパスも0.1とボランチ陣の中では最も低く、見事なダイレクトパスを見せた時も1度はあったがラスト30mでは輝かない結果となった。

 

キーパス

渡辺 0.5

喜田 0.1

山根 0.3

ジョエル 0.4

 

 

今期のスタイルに合致した可能性をみせた2人

 

山根、そして既にチームを去ったがジョエルについても触れていきたい。

 

ビルドアップの形式を大きく変えた今季、風間スタイル的に、という意味でボランチにはより高いスキルが求められたと言える。その中で世代別代表で中心を担う2人はボールを失わない強みを発揮した。

 

ポゼッション(ボール)ロスト

渡辺 6.8

喜田 8.0

山根 4.8 excellent‼

ジョエル 5.0

 

 

更に山根はジョエルの移籍、DFラインの緊急事態によって秋以降出場時間を大幅に増やしている。

 

序盤はチーム事情からリーグではサイドバックで運用されることが多かったが、特に鳥栖戦以降は5試合連続スタメンと中央のポジションを掴んだ。

 

19試合出場 9先発 962分出場

 先発9の内 RSB4試合 CH5試合

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1712117830345490665

 

 

総合的に見てみると3番手という評価が現時点では妥当と言えるが、彼のパラメーターは攻守、活動量ともにコンプリートされた方向性であり、来期は1番手になっても驚きはない。

 

既に攻撃面では高い才能を見せており、今後は質の向上、更には全体的な活動量、特に切り替えやボール奪い返しの点で渡辺から学ぶ事は大きいだろう。

 

ボールリカバリ

 渡辺 5.4

 喜田 4.2

 山根 2.3

 

パス成功率は89%だが自陣では94%に対し、敵陣で83%と一撃で打ち抜くパスを試みるチャレンジをする姿勢が反映していると言える。

 

プレー機会では4番手となっているのが夏に移籍したジョエルだ。

 

中々安定した出場時間を得られないでいたが、鳥栖3-1、京都4-1、湘南4-1の先発3試合で見せたパフォーマンスは今季ボランチ陣でベストと言える内容であり、また最も少ない623分出場で2ゴールを記録している。シュート成功率は18%

 

2-2の名古屋戦でも良いプレーをしており、更には今季ベストと言えるのが0-1の川崎戦であった。58分での交代はマスカットの失策と考えている。

 

問題があるとすると活動量の点であり、ボランチ陣で唯一1試合平均のデュエル勝利数が2に達しておらず、またボールタッチ数も40に届いていない。もちろん短い時間の途中出場が多い選手は機会がこないまま試合が終わるという要素はある。

 

 

だが、移籍先のベルギーでも機械採点的な評価は低く、中身として1試合中のボールタッチ数、デュエル勝利数やタックル数はマリノス時代よりも更に低下しており、U22の中では別格かもしれないが、CHとしてキャリアを進める上で、彼の改善点はこの辺にあるのかもしれない。

 

 

 

Jリーグの最高峰

 

ここで、目線を変えてJ1リーグ最高の選手を紹介したい

 

サガン鳥栖 河原 創

 

32試合 32先発 全試合フル出場

1ゴール 3アシスト ビッグチャンスクリエイト6

 

1試合平均

ボールタッチ 76.6回 (マリノス最多は渡辺 63.4回)

パス成功率 85% 自陣91%-敵陣74%

 ロングボール成功数 2.1回

 チップパス成功数 2.6回

 クロス成功数 0.8回(23%) 参考 水沼 0.6(24%)

キーパス 1.1回

ドリブル成功 0.5回(71%)

ボールロスト 13.6

 

深く差し込むパスを打ち込む分、全体的なパス成功率は下がっており、アシスト数やビッグチャンスクリエイトはセットプレーを蹴る分の補正はある。ボールロストが多いのは失っていい場所で、チャレンジを繰り返す結果と言える。

 

クロス成功は上位のアタッカークラスであり、機を見て見せる効果的なドリブルは成功率70%オーバー、更にロングボール、チップパスと豊富な選択肢を持つ最高クラスのクォーターバック性能を誇る。

 

 

そして活動量、ディフェンス面でも高い数値を記録

 

デュエル勝利数 3.0回(勝率49%)

インターセプト 1.7回 (渡辺 1.0回)

タックル 1.6回 (喜田 1.4回)

ボールリカバリド(奪い返し) 6.5回 (渡辺5.4)

 

sofascoreはJ1リーグ公式と計測方法が異なるがJ1公式でも以下になっている

 

1試合平均プレー数

 河原 70.1 渡辺 60.1

タックル成功数

 河原 1.9 渡辺 1.5

インターセプト

 河原 0.3 渡辺 0.1

 

この数値のベースとなっているのが1試合平均の走行距離が12㎞を越えるのは当たり前、時に13㎞オーバーも記録する圧倒的活動量。

 

90分×全試合に渡る貢献が伺える数値であり、今季、鳥栖は勝ち点こそ既に残留を決めているが、非常に苦しいゲームが多く、河原を獲得できていなかったら一体どうなっていただろうか。

 

 

J1ナンバーワンの狩れるボランチ

 

アルビレックス新潟 高 宇洋

 

29試合出場 26先発 2375分出場 1ゴール

 

外国籍選手の獲得に失敗し、中心選手が引き抜かれていく中でも安定した戦いぶりを見せた新潟の中で異質の強さを見せたのが高だった。

 

1試合平均のボールタッチ数は河原とほぼ同じ76回

 

パス成功率 87% 自陣 90-敵陣 85%

 ロングボール 1.8

 チップパス 1.4

 

またアシストは記録していないがキーパスは0.6 マリノス最多は渡辺 0.5

 

ほかドリブル成功数(成功率)が0.7(57%)と下手したらその辺の攻撃的選手よりも高く、ボールを運べる選手と言える。

 

しかし何といっても強みが見えるのは守備面だろう。

 

1試合平均のデュエル勝利数 4.7 勝率 55%

インターセプト数 1.9

タックル数 2.1

ボールリカバリド 6.0

 

 

別データのJ1リーグ公式によるとタックル成功率は77.9%

(参考 渡辺63.5% 喜田53.3% 福岡の井手口58.5% 名古屋の稲垣 68.9%)

 

成功率は神戸の山口が81.1%(1.2)を記録しているが、回数は高(2.6)が圧倒しており、インターセプト数1位で待ち受け方の山口、ボールハンターの高が、守備力の2強と言える。

 

この夏、ジョエルの移籍に伴った対応は行わず、山根、更に榊原の成長を待ったマリノスであったが、国内で上位互換は可能であり、更に言えば今回紹介した2人は他の上位チームにとっても格好のターゲットと言え、若い世代が直ぐに出ていきたがる昨今の風潮を考えると山根の動向次第ではマリノスも注視する必要があるのかもしれない。

 

 

 

3番手ウイング

 

井上健

13試合 2先発 366分出場 1アシスト

 

3節広島戦で先発に起用されるなど、シーズン前半では1番手の可能性があったかもしれないが右サイドがヤンと水沼、左サイドがエウベルのサブは復帰の宮市となるとカップ戦が主戦場となっていった。

 

左サイドで2番手を争った宮市と比較すると、決定機となるようなシーンが少ない印象があるのではないだろうか。それはデータでも表れている。

 

 

宮市 482分 2ゴール ビッグチャンスミス 5(もっと決めて…

井上 366分 0ゴール ビッグチャンスミス 0

 

 

全体的なパス成功率は宮市よりも高いが、クロス成功率は低いなど、ゴール前のクオリティが求められるポジションとして物足りなさが見受けられる。

 

パス成功率 80%  宮市 72%

クロス成功率 16% 宮市 27%

 

シュートに接続したキーパスは0.6と同じであるが、役割は2番手、つまり交代要員でもあり、よりFW的に自らがゴール前に入っていく宮市の方が好まれたという部分があるかもしれない。

 

前回、リフレシュ効果としてみた場合に宮市のデュエル勝率は55%に達し、強度の補強とカウンター機会に絡むという点で任務を果たしているとしたが、井上はその両方で宮市よりも低い。

 

 

またウイングとしてみた場合に、限られた時間とはいえ1試合辺りのドリブル成功数0.1、成功率17% と正直上手くない方の部類であり、自分がシュートを打つ側に回るのも含めて、もっと走力を活かすスタイルを見出す必要があるのではないだろうか。

 

参考までに、3試合先発したACLにおいても1試合平均のドリブル成功数0.3 成功率25%と残念な数値だった。

 

マリノスのアタッカーである以上、ゴール前のクオリティが求められているのに対して、ドリブル、クロス、シュート、現状では強みが見いだせない以上、左右の3番手であったのは妥当と言える。

 

 

帰還はあるのか?

 

最近は帰ってこない傾向があるアカデミー育ちのレンタル選手達。

中でも最も動向が気になるのはJ1新潟でプレーする松田詠太郎だろう。

 

20試合 8先発 830分出場 1アシスト

 

昨シーズンはJ2優勝チームで1982分出場し、飛躍が期待された今季であったが、それほど潤沢ではない戦力の中、なぜか彼のポジションだけは熾烈な競争が生まれ大きく出場時間を減らした。

 

4年目のJ1で昨季位の出場時間ともなれば、先輩の左ウイングと同じ成長曲線を描いていたが惜しまれる。終盤戦に向けて先発出場が増えていたがマリノス戦には出れない。

 

裏抜け、ドリブル、クロス、10月の鳥栖戦、直近のFC東京戦、ボールが入ればよい仕事をしていた。

 

パス成功率 81%

クロス成功数 0.4(23%)

キーパス 1.1 Good‼

ドリブル成功 1.0(65%) Good‼  参考 22シーズンエウベル 1.2(60%)

デュエル勝率 51%

 

目に見える問題として、1試合平均のタックル数が0.2と太田や三戸と比べても極端に少ない

マリノスのウイングの中では特に少ない水沼が0.3なので、それよりも少ない

 

エウベルやヤンが0.9、0.8であり、宮市でも0.5、井上は元WBらしく0.8と高め。

 

ドリブルはJ1の中でも上位に入るクオリティを見せており、攻撃面は全体的に高い水準に迫っている一方で、取り組むべき問題は明らかと言える。

 

 

以上、今回はボランチと3番手ウイングについて、データ面から評価してみた。

 

エウベルとヤンは正にJ1リーグのトップと言える選手であるが、ボランチに関してはより上位の選手が見つかったので、そちらも参考までに紹介した。

 

 

マリノス選手個人スタッツ批評2023シーズン32節終了時点 ウイング&セカンドトップ編

今回は明治安田生命J1リーグ2023シーズン32節終了時点におけるマリノス所属選手の個人スタッツを批評する。

 

(34節修正版 補足として34節終了を追記しました)

(2戦は新潟&京都戦なので 全体的に悪くなっています)

(補足追記部分は [] で追加 )

 

全員ではなくリーグ戦におけるウイングとセカンドトップの出場時間が一定数以上ある選手を対象としている。

 

また、確認された良くない点は良くないとはっきり書いているので、そういう話は見たくないと言う方は見ない方がいい。

 

データ元はフットボールラボ、Jリーグ公式サイト、海外のデータサイトsofascore

 

 

もはや神の領域へ(サカつく的に)

 

今のJ1リーグで最も過小評価されている選手はエウベルだろう。

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1712123804481364282

 

 

31試合出場 30先発 2269分 9G11A

[33試合出場 32先発 2397分 9G11A]

 

対策の対策、裏の表に向かったマリノスはシーズン序盤戦から今季Jリーグのトレンドにぶち当たり大苦戦するゲームが多く、正に不思議の勝ちを重ねる中で個の能力を炸裂させたのが不動の左ウイングだった。

 

従来、エウベルはスタイルとして成功率重視なのか、二酸化炭素排出量に気を遣っているのかは不明だが、ドリブル成功率はとても高いが1試合辺りの成功数は少ないタイプだった。

 

しかし、今期はせざるを得ないシーンが増えた事もあるのか、それによって隠されたシークレットギアが目覚めた。

 

1試合当たりのドリブル成功数と(成功率)は正に神の領域に達した

 

23シーズン 2.3 (68%)途中  [2.2(66%)]

22シーズン 1.2 (60%)

21シーズン 1.3 (58%)

 

参考J1リーグ

 

三笘 21シーズン 2.5 (51%)

マテウスカストロ 2.2(54%)ベスト
ルーカス 1.9(50%)
マテウス・サヴィオ 1.8(48%)

 

 

ちなみにこの数値はお手軽にモンスターを発見しやすい単純なのに信頼性の高い数値で、今期からマンチェスターシティに移籍し、プレミアリーグでも無双状態のドクはフランスリーグの時点でバケモノの様な数値を記録している。

 

ジェレミー・ドク

 22/23シーズン リーグ1 3.3 (66%)

 23/24シーズン プレミアリーグ 3.4 (63%)

 

フランス時代とプレミア移籍しても殆ど変わんねぇ!

三笘を見ても分かるように、このデータ=ドリブルは万国共通で効く武器なのだ

 

 

話をエウベルのスタッツに戻すと、昨シーズンは大幅に向上したシュート成功率だったが、今期はゴールの喜びに目覚めたのか難易度の高いシュートが増えた結果、シュート成功率は昨シーズンよりも若干のダウン。

 

17% → 14.5% 9ゴール

 

もっとも、ゴール数に対する決定機逸は 9-5 なので決めるべき所は決めている。

 

[9ゴール-8ビッグチャンスミス シュート成功率13.2%]

[最後の2節でビッグチャンスミスが3増えてしまった、2桁得点は可能だった]

 

 

初年度21シーズンはシュート73本5Gの成功率6.8%、決定機逸は13(5-13)だったのだから、日本に来てから最も伸びた部分である。

 

 

また、アシスト数及び、ビッグチャンスクリエイトも大幅に増加

 

23シーズン途中 11 アシスト  12 ビッグチャンスクリエイト[→13]

22シーズンフル 5 アシスト  8 ビッグチャンスクリエイト

 

味方がシュートを打ったパス キーパスも1試合平均で1.7と昨シーズンの1.1から更に増えている。

[→ 1.8]

 

出場時間が現時点で+500分なので加算系の数値が増えるのが当然だが、この様に1試合当たりの効率も向上しているのが分かる。

 

今期のMVPは大迫で仕方ないという空気感がある様に感じるが、三笘薫が簡単に現れない様に、それ以上とも言える、これだけのウイングを再びJリーグで見れる機会があるのかどうかを考えるべきだろう。

 

 

冴えわたる左足はゴールメーカー

 

左のエウベルが飛車とするなら、正に角と呼べるのがヤンだった。

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1722087797442396598

 

 

30試合出場 19先発 1637分

[32試合出場 21先発 1788分 6G11A]

 

エウベルと異なり、カットイン後からのアングルを好む右ウイングは自身のゴール数こそ 6ゴール ビッグチャンスミス5 成功率 約12% と向上の余地を残すが、チャンスメイクの領域では”左の先輩”に並ぶ数値を残した。

[6ゴール ビッグチャンスミス6 10.5%]

 

アシスト 11 ビッグチャンスクリエイト11 キーパス1.8

[ビッグチャンスクリエイトのみ増加 14]

 

出場時間がエウベルより600分も少ない事を考えると、より高効率なのはヤンであり、正にゴールメーカー”生産者”と呼ぶに相応しい。1試合平均のクロス成功数と成功率でもエウベルを上回る。

 

またドリブルに関する数値は既に昨シーズンまでのエウベルを越える域に達しており、個でチームを支える必要があった今季の中で光ったのが伺える。

 

1試合平均ドリブル成功数 1.4  (成功率 67%)  [1.5(68%)]

 

左利きのドリブルスペシャリストというと、海外に移籍した元札幌の金子が今季途中まで特筆した数値を記録しているが、それでも成功率は若干ヤンの方が高い。

 

金子 23シーズン 2.1  (63%)

 

今季序盤は明らかに不慣れな左サイドで使われる時間も多く、そもそも負傷などの影響でプレータイムが2000分に達しない事もあり、まだまだ向上の余地を残しており、特にマリノスでコンスタントに出場する事でシュート成功率が上がっていく現象が発生するのを期待したい。

 

 

2番手のウイング

 

引き続きゴール前のクオリティは見せた水沼と、リフレシュ効果に留まった宮市が2番手ウイングと言える。

 

水沼 31試合 9先発 922分 1G 7A[33試合9先発 951分 1G7A]

宮市 16試合 4先発 482分 3G 0A[18試合4先発 511分 3G]

 

この点、宮市は少ない出場時間ながら今季チーム4番目タイのスコアラーでありシュート成功率も約20%に達するのだが、3ゴールに対する決定機逸は5であり、収支としてはマイナスと言える。ヤンのゴール数に迫れたかもしれない。

 

(ちなみに海外データサイトだと2ゴールと判定され、シュート成功率は13%)

 

また、ドリブルの数値は成功数0.4(50%)だが、残り時間が少ない中で試合に出ると、機会が回ってこないまま試合が終わるという事情もあるので悪いとまでは言えない。

 
強みとして、デュエル勝率は55%とエウベルに準ずる物があり、特にハーフライン以降の守備時に機能性としてルーズな前任者よりも働いてくれる点も含めると、
 
得ている決定機の回数からも、試合後半のリフレシュ役として与えられた任務は果たしていると言える。
 
あとは決めてくれ。
 
 

一方で水沼は敵ゴール前ではクオリティ光るプレーがあったのは間違いがないが、そもそも今期はマリノス自体、

 

シーズン1試合当たりシュート数、ゴール期待値、更に関連数値が大幅に低下している様に、敵のゴール前以外の局面が増えた結果、今までよりも苦しさの見える部分が目立ってしまった。

 


更に確認された事実として、今期は前半戦しかエウベルと同時に出れず、その間は先発8試合で5アシストを記録していたが、

 

エウベルと同時出場の機会が無くなると、対戦相手に退場者が出た6月のFC東京戦、柏戦を最後にゴールもアシストも記録していない。

 

 

データ的には西村同様に、22シーズンの定番となっていたエウベルのミドルゾーン打開から始まる右側フィニッシュという構造の中でこそ輝いた選手と言える。

 
 
参考 今季マリノスの1試合平均数
 
シュート数・ゴール期待値
 
 22シーズン 16.3本 1.849
 23シーズン 13.9本 1.445

 

 

30mライン侵入回数

 

 22シーズン 51.2 リーグ1位

 23シーズン 42.1 リーグ4位

 

 

ペナルティエリア侵入回数

 

 22シーズン 16.4 リーグ1位

 23シーズン 13.0 リーグ4位

 

 

チームの戦況、攻撃の展開変化を受けて、恩恵を得る回数が減ったのは間違いなく、同時に恩恵無しでは活躍するのが難しいタイプと言える。

 

 

水沼 23シーズン

 

ドリブル1試合平均 成功数(成功率) 0.3 (44%)
デュエル1試合平均 勝利数(勝率) 1.1 (39%)  参考 ヤン 3.4(50%)
 
 
個が問われ、ボール争奪機会も増えるゲーム展開で苦しさを感じる数値となっている。
 
 
また敵陣での起点としても重要な役割があるが、起点力としても物足りなさが見える。
オープンになりにくい状態が影響しているのかもしれない。
 
 
1試合平均タッチ数
 
 エウベル 46.0
 ヤン 36.1
 水沼 22.7
 
 
1試合平均敵陣パス成功数
 
 エウベル 16.2
 ヤン 14.4
 水沼 9.4
 
また意外だがクロスの成功率が特別に高いタイプではなく、機会が多いので、アシストも多い選手だった。
 
今期は先に述べたゴール前機会の減少か、もしくはクロスを蹴る機会を自力で生み出す必要があるのか、成功率は変わらないのにクロス成功数が激減している。
 
 
1試合平均クロス成功数(成功率)
 
 22シーズン 1.4(24%)
 23シーズン 0.6(24%)
 
 
参考 同じ構造で右サイドを主戦場とするヤンとの比較
 
1試合平均クロス成功数(成功率)
 ヤン 0.8(31%)excellent‼
 
 
左のエウベルは元から少ないタイプだったが、むしろ今季は若干増えた
 
 22シーズン 0.4(23%)
 23シーズン 0.5(24%)
 
 

ほか、それほど守備貢献が高い様に見えないエウベルやヤンが1試合平均で 0.9、0.8とタックル数を計測しているのと比べ、

 

水沼の平均タックル数は0.3であり、途中出場が多いと若干ブレる事を考慮しても(宮市は0.5)、ボールホルダーにアタック出来ていないのではないだろうか。

 

この点、リフレシュ効果を狙った途中交代としては機能していないのではないか。

 

 

Jリーグは純粋なデータの比較から見て、世界でもトップクラスに走力を要求されるリーグであり、今後はクオリティを活かす為にウイングというポジション以外での運用も考慮した方がいいかもしれない。

 

 

大問題のセカンドトップ

 

今期変更の犠牲者なのか、それとも…判断をしかねるが、良くないのは事実として言わなければならない。

 

西村 30試合 22先発 1807分 3G 3A

 

今季はセカンドトップの役割が何を求めているのか、並列でロペスと同じ事をやれというのか、それは無理じゃないか、そんな序盤の迷走から迷宮に陥った結果、人間の感情を排する機械採点において今季のリーグ戦全出場選手で大学生の吉田を除外すると、最も低いのが西村である。

 

実際の数値も1試合平均のキーパスは昨シーズンの半分に下落、1.2→0.6

そして22シーズンは1試合平均0.2(成功率24%)あったクロス成功数は0になった

 

1800分前線でプレーして0というのは中々見ない数字である。

 

この点、ファーストトップの比較において大迫が0.2(20%)に対して、マリノスのロペスも西村と同様に0なので、仮にマリノスセカンドトップはロペスと並列的であり、つまりロペスと同タスクなのだから0でも問題ない、というのなら分かる。

 

所が夏に加入したナム テヒを見ると、そんな事はないのか、人によって変わるのか謎である。

 

ナム テヒ  7試合 先発3 285分

1試合平均クロス成功数(成功率) 0.9 (33%)

 

ナムさん、ヤンより高い!! 0.8 (31%)

 

ナムテヒのドリブル、パス、クロスは統計的に宮市、水沼、井上を完全に凌駕する別段のクオリティがあり、元から起用されていた左ウイングも検討されるべきポジションである。

 

 

またマルコスJrを祖とする中継機能を求められているのであれば、ナムテヒが圧倒する

※成功数は全て1試合平均数

 

パス成功数(成功率) 14.5 (79%) - 19.0 (88%)

 敵陣における同上  10.1 (77%) - 14.4 (80%)

 

ロングボール 0.3 (50%) ー 0.6 (67%)

チップパス  0.3 (47%) ー 0.6 (57%) いわゆる浮き球

キーパス 0.6 - 0.9

 

今期の試合内容において、西村はそもそもシュートシーンに絡めておらず、そして決定機逸こそゴール数より少ない2だが、得点力重視にしても11.1%のシュート成功率では収支が合わない。30%に達し7得点は欲しい所である。

 

シュート数 ゴール 成功率

 22シーズン 1747分 59本 10ゴール 16.9%

 23シーズン 1807分 27本 3ゴール 11.1%

 

 

現時点でセカンドトップのタスクにマッチしていないのは明らかだ。

 

そもそも、22シーズンはマルコスと西村で合計62本のラストパスを記録していたが、23シーズンでは上位5人以内にセカンドトップでプレーした選手は入っていない。

 

今期の上位3人は全てウイングであり、昨季の実質チーム最多だったセカンドトップはシュートに至る流れにすら殆ど関与出来ていないのが明白になった。

 

最前線でプレーしながら、ラストパス数、そしてチャンスビルディングポイント(シュート機会への貢献値)の両方で、サイドバックよりも低いのが確認できる。

 

果たして、リーグ屈指のウイングが両翼にいるチームにとって、セカンドトップは必要なのかという観点が必要なのではないだろうか。

 

 

競争は必要だ

 

さて一方で、福岡戦はセカンドトップに入り、今期の正解を見せた選手が植中と言える。

 

この数日後には”浦和を食った”難敵に圧勝したのには理由がある筈だ。

 

引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1718163291615445421

 

 

負傷の影響もあったが リーグ戦は 9試合出場 2試合先発 302分 3G

 

ルヴァン得点王に輝いた様に、リーグ戦でもシュート成功率は20%に達しており、19歳の時点においてJ2長崎で10G シュート成功率27.8%を記録した才能が特筆するべきものである事を証明した。

 

途中から入るのでスペースがある状況が多いという見方もあるだろうが、1得点に要した時間は西村が600分であるのに対し、植中は105分である。

 

ただ、宮市同様に決定機逸が5あるので、イージーショットを沈めて、あと2得点していればシュート成功率が30%に達していた。

 

 

また西村が苦手とするデュエルの局面においても優位性を見せている。

※1試合平均デュエル勝率 植中ー西村の比較

 

総合 45% ー 37%
 対地 43% ― 36%
 対空 50% ― 39%
 
一応、出場時間(母数)が少ない事によるブレ、残り少ない時間から入るので疲れた敵と戦うので有利という部分はあるのかもしれない。

 

 

だが中継能力を見ても、パス成功率&敵陣パス成功率、キーパス数で西村を上回っており、直近のC大阪戦では最後までベンチに座らせたマスカットだが、平等な競争を行うべきではないのだろうか。


勿論、チーム戦力の運用として、植中をファーストトップの2番手として置いておきたかったというのはあるかもしれない。

 

だが、ロペスが絶対的なエースの今季において、それは使われない事が多い保険枠となる試合が多く、より優れた結果を示した選手がピッチに立つ時間を増やすべきとするのであれば、6人目は西村か杉本でも良いのではないかと感じる。

 

 

以上、今回はウイングとセカンドトップについて、データ面から評価をしてみた。

 

他にボランチや3番手のウイングも考えていたが、長くなりすぎるので書かなかった。

また別記事で書くかもしれない。