今回は明治安田生命J1リーグ2023シーズン32節終了時点におけるマリノス所属選手の個人スタッツを批評する。
(34節修正版 補足として34節終了を追記しました)
(2戦は新潟&京都戦なので 全体的に悪くなっています)
(補足追記部分は [] で追加 )
全員ではなくリーグ戦におけるウイングとセカンドトップの出場時間が一定数以上ある選手を対象としている。
また、確認された良くない点は良くないとはっきり書いているので、そういう話は見たくないと言う方は見ない方がいい。
データ元はフットボールラボ、Jリーグ公式サイト、海外のデータサイトsofascore
もはや神の領域へ(サカつく的に)
今のJ1リーグで最も過小評価されている選手はエウベルだろう。
引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1712123804481364282
31試合出場 30先発 2269分 9G11A
[33試合出場 32先発 2397分 9G11A]
対策の対策、裏の表に向かったマリノスはシーズン序盤戦から今季Jリーグのトレンドにぶち当たり大苦戦するゲームが多く、正に不思議の勝ちを重ねる中で個の能力を炸裂させたのが不動の左ウイングだった。
従来、エウベルはスタイルとして成功率重視なのか、二酸化炭素排出量に気を遣っているのかは不明だが、ドリブル成功率はとても高いが1試合辺りの成功数は少ないタイプだった。
しかし、今期はせざるを得ないシーンが増えた事もあるのか、それによって隠されたシークレットギアが目覚めた。
1試合当たりのドリブル成功数と(成功率)は正に神の領域に達した
23シーズン 2.3 (68%)途中 [2.2(66%)]
22シーズン 1.2 (60%)
21シーズン 1.3 (58%)
参考J1リーグ
三笘 21シーズン 2.5 (51%)
マテウス・カストロ 2.2(54%)ベスト
ルーカス 1.9(50%)
マテウス・サヴィオ 1.8(48%)
ちなみにこの数値はお手軽にモンスターを発見しやすい単純なのに信頼性の高い数値で、今期からマンチェスターシティに移籍し、プレミアリーグでも無双状態のドクはフランスリーグの時点でバケモノの様な数値を記録している。
ジェレミー・ドク
22/23シーズン リーグ1 3.3 (66%)
23/24シーズン プレミアリーグ 3.4 (63%)
フランス時代とプレミア移籍しても殆ど変わんねぇ!
三笘を見ても分かるように、このデータ=ドリブルは万国共通で効く武器なのだ
話をエウベルのスタッツに戻すと、昨シーズンは大幅に向上したシュート成功率だったが、今期はゴールの喜びに目覚めたのか難易度の高いシュートが増えた結果、シュート成功率は昨シーズンよりも若干のダウン。
17% → 14.5% 9ゴール
もっとも、ゴール数に対する決定機逸は 9-5 なので決めるべき所は決めている。
[9ゴール-8ビッグチャンスミス シュート成功率13.2%]
[最後の2節でビッグチャンスミスが3増えてしまった、2桁得点は可能だった]
初年度21シーズンはシュート73本5Gの成功率6.8%、決定機逸は13(5-13)だったのだから、日本に来てから最も伸びた部分である。
また、アシスト数及び、ビッグチャンスクリエイトも大幅に増加
23シーズン途中 11 アシスト 12 ビッグチャンスクリエイト[→13]
22シーズンフル 5 アシスト 8 ビッグチャンスクリエイト
味方がシュートを打ったパス キーパスも1試合平均で1.7と昨シーズンの1.1から更に増えている。
[→ 1.8]
出場時間が現時点で+500分なので加算系の数値が増えるのが当然だが、この様に1試合当たりの効率も向上しているのが分かる。
今期のMVPは大迫で仕方ないという空気感がある様に感じるが、三笘薫が簡単に現れない様に、それ以上とも言える、これだけのウイングを再びJリーグで見れる機会があるのかどうかを考えるべきだろう。
冴えわたる左足はゴールメーカー
左のエウベルが飛車とするなら、正に角と呼べるのがヤンだった。
引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1722087797442396598
30試合出場 19先発 1637分
[32試合出場 21先発 1788分 6G11A]
エウベルと異なり、カットイン後からのアングルを好む右ウイングは自身のゴール数こそ 6ゴール ビッグチャンスミス5 成功率 約12% と向上の余地を残すが、チャンスメイクの領域では”左の先輩”に並ぶ数値を残した。
[6ゴール ビッグチャンスミス6 10.5%]
アシスト 11 ビッグチャンスクリエイト11 キーパス1.8
[ビッグチャンスクリエイトのみ増加 14]
出場時間がエウベルより600分も少ない事を考えると、より高効率なのはヤンであり、正にゴールメーカー”生産者”と呼ぶに相応しい。1試合平均のクロス成功数と成功率でもエウベルを上回る。
またドリブルに関する数値は既に昨シーズンまでのエウベルを越える域に達しており、個でチームを支える必要があった今季の中で光ったのが伺える。
左利きのドリブルスペシャリストというと、海外に移籍した元札幌の金子が今季途中まで特筆した数値を記録しているが、それでも成功率は若干ヤンの方が高い。
金子 23シーズン 2.1 (63%)
今季序盤は明らかに不慣れな左サイドで使われる時間も多く、そもそも負傷などの影響でプレータイムが2000分に達しない事もあり、まだまだ向上の余地を残しており、特にマリノスでコンスタントに出場する事でシュート成功率が上がっていく現象が発生するのを期待したい。
2番手のウイング
引き続きゴール前のクオリティは見せた水沼と、リフレシュ効果に留まった宮市が2番手ウイングと言える。
水沼 31試合 9先発 922分 1G 7A[33試合9先発 951分 1G7A]
宮市 16試合 4先発 482分 3G 0A[18試合4先発 511分 3G]
この点、宮市は少ない出場時間ながら今季チーム4番目タイのスコアラーでありシュート成功率も約20%に達するのだが、3ゴールに対する決定機逸は5であり、収支としてはマイナスと言える。ヤンのゴール数に迫れたかもしれない。
(ちなみに海外データサイトだと2ゴールと判定され、シュート成功率は13%)
また、ドリブルの数値は成功数0.4(50%)だが、残り時間が少ない中で試合に出ると、機会が回ってこないまま試合が終わるという事情もあるので悪いとまでは言えない。
一方で水沼は敵ゴール前ではクオリティ光るプレーがあったのは間違いがないが、そもそも今期はマリノス自体、
シーズン1試合当たりシュート数、ゴール期待値、更に関連数値が大幅に低下している様に、敵のゴール前以外の局面が増えた結果、今までよりも苦しさの見える部分が目立ってしまった。
更に確認された事実として、今期は前半戦しかエウベルと同時に出れず、その間は先発8試合で5アシストを記録していたが、
エウベルと同時出場の機会が無くなると、対戦相手に退場者が出た6月のFC東京戦、柏戦を最後にゴールもアシストも記録していない。
データ的には西村同様に、22シーズンの定番となっていたエウベルのミドルゾーン打開から始まる右側フィニッシュという構造の中でこそ輝いた選手と言える。
30mライン侵入回数
22シーズン 51.2 リーグ1位
23シーズン 42.1 リーグ4位
ペナルティエリア侵入回数
22シーズン 16.4 リーグ1位
23シーズン 13.0 リーグ4位
チームの戦況、攻撃の展開変化を受けて、恩恵を得る回数が減ったのは間違いなく、同時に恩恵無しでは活躍するのが難しいタイプと言える。
水沼 23シーズン
ほか、それほど守備貢献が高い様に見えないエウベルやヤンが1試合平均で 0.9、0.8とタックル数を計測しているのと比べ、
水沼の平均タックル数は0.3であり、途中出場が多いと若干ブレる事を考慮しても(宮市は0.5)、ボールホルダーにアタック出来ていないのではないだろうか。
この点、リフレシュ効果を狙った途中交代としては機能していないのではないか。
Jリーグは純粋なデータの比較から見て、世界でもトップクラスに走力を要求されるリーグであり、今後はクオリティを活かす為にウイングというポジション以外での運用も考慮した方がいいかもしれない。
大問題のセカンドトップ
今期変更の犠牲者なのか、それとも…判断をしかねるが、良くないのは事実として言わなければならない。
西村 30試合 22先発 1807分 3G 3A
今季はセカンドトップの役割が何を求めているのか、並列でロペスと同じ事をやれというのか、それは無理じゃないか、そんな序盤の迷走から迷宮に陥った結果、人間の感情を排する機械採点において今季のリーグ戦全出場選手で大学生の吉田を除外すると、最も低いのが西村である。
実際の数値も1試合平均のキーパスは昨シーズンの半分に下落、1.2→0.6
そして22シーズンは1試合平均0.2(成功率24%)あったクロス成功数は0になった
1800分前線でプレーして0というのは中々見ない数字である。
この点、ファーストトップの比較において大迫が0.2(20%)に対して、マリノスのロペスも西村と同様に0なので、仮にマリノスのセカンドトップはロペスと並列的であり、つまりロペスと同タスクなのだから0でも問題ない、というのなら分かる。
所が夏に加入したナム テヒを見ると、そんな事はないのか、人によって変わるのか謎である。
ナム テヒ 7試合 先発3 285分
1試合平均クロス成功数(成功率) 0.9 (33%)
ナムさん、ヤンより高い!! 0.8 (31%)
ナムテヒのドリブル、パス、クロスは統計的に宮市、水沼、井上を完全に凌駕する別段のクオリティがあり、元から起用されていた左ウイングも検討されるべきポジションである。
またマルコスJrを祖とする中継機能を求められているのであれば、ナムテヒが圧倒する
※成功数は全て1試合平均数
パス成功数(成功率) 14.5 (79%) - 19.0 (88%)
敵陣における同上 10.1 (77%) - 14.4 (80%)
ロングボール 0.3 (50%) ー 0.6 (67%)
チップパス 0.3 (47%) ー 0.6 (57%) いわゆる浮き球
キーパス 0.6 - 0.9
今期の試合内容において、西村はそもそもシュートシーンに絡めておらず、そして決定機逸こそゴール数より少ない2だが、得点力重視にしても11.1%のシュート成功率では収支が合わない。30%に達し7得点は欲しい所である。
シュート数 ゴール 成功率
22シーズン 1747分 59本 10ゴール 16.9%
23シーズン 1807分 27本 3ゴール 11.1%
現時点でセカンドトップのタスクにマッチしていないのは明らかだ。
そもそも、22シーズンはマルコスと西村で合計62本のラストパスを記録していたが、23シーズンでは上位5人以内にセカンドトップでプレーした選手は入っていない。
今期の上位3人は全てウイングであり、昨季の実質チーム最多だったセカンドトップはシュートに至る流れにすら殆ど関与出来ていないのが明白になった。
最前線でプレーしながら、ラストパス数、そしてチャンスビルディングポイント(シュート機会への貢献値)の両方で、サイドバックよりも低いのが確認できる。
果たして、リーグ屈指のウイングが両翼にいるチームにとって、セカンドトップは必要なのかという観点が必要なのではないだろうか。
競争は必要だ
さて一方で、福岡戦はセカンドトップに入り、今期の正解を見せた選手が植中と言える。
この数日後には”浦和を食った”難敵に圧勝したのには理由がある筈だ。
引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1718163291615445421
負傷の影響もあったが リーグ戦は 9試合出場 2試合先発 302分 3G
ルヴァン得点王に輝いた様に、リーグ戦でもシュート成功率は20%に達しており、19歳の時点においてJ2長崎で10G シュート成功率27.8%を記録した才能が特筆するべきものである事を証明した。
途中から入るのでスペースがある状況が多いという見方もあるだろうが、1得点に要した時間は西村が600分であるのに対し、植中は105分である。
ただ、宮市同様に決定機逸が5あるので、イージーショットを沈めて、あと2得点していればシュート成功率が30%に達していた。
また西村が苦手とするデュエルの局面においても優位性を見せている。
※1試合平均デュエル勝率 植中ー西村の比較
だが中継能力を見ても、パス成功率&敵陣パス成功率、キーパス数で西村を上回っており、直近のC大阪戦では最後までベンチに座らせたマスカットだが、平等な競争を行うべきではないのだろうか。
勿論、チーム戦力の運用として、植中をファーストトップの2番手として置いておきたかったというのはあるかもしれない。
だが、ロペスが絶対的なエースの今季において、それは使われない事が多い保険枠となる試合が多く、より優れた結果を示した選手がピッチに立つ時間を増やすべきとするのであれば、6人目は西村か杉本でも良いのではないかと感じる。
以上、今回はウイングとセカンドトップについて、データ面から評価をしてみた。
他にボランチや3番手のウイングも考えていたが、長くなりすぎるので書かなかった。
また別記事で書くかもしれない。