横浜F・マリノス ファン

横浜F・マリノスを応援するイチファンによるブログです。

横浜F・マリノスで敗北を知った日 (リライト 2013)

新潟のFW鈴木武蔵が放ったシュートがキーパーの榎本を破り、ボールがネットに収まった時、スタジアムは完全に冷え切った。

その光景を、見ていて少し惜しく思ってしまった。


これが最終節ならマリノスにとって凄い歴史になっただろう。



Jリーグ2013シーズン総評


2013年のJリーグは勝てば優勝という横浜Fマリノスが連敗し、広島が逆転で昨年に続き、史上4チーム目の連覇を達成し、幕を閉じた。

昨シーズン降格したG大阪に続き、一時期は黄金時代を築き上げた磐田が降格するなど、浦和、鹿島、名古屋と言った近年の上位陣にサイクルの終了や、変革の苦しみが見えた。


一方、川崎や新潟、C大阪など、監督によりチームの方向性が確かになったチームからは大久保、川又、柿谷と言ったエースストライカーの出現も重なり、チーム共々、躍進を遂げた。


また近年、残留番長の称号を誇り、あそこより下に言ったら降格と言われた大宮が、前半戦Jリーグ無敗記録を更新する快進撃を見せ、首位に躍り出たときは他全チームが得体の知れない降格の恐怖に襲われた。

だが結局、大宮は後半戦、17戦1勝に終り、いつも通りギリギリ残留のライン収まり、残留番長の異名を守った。




横浜Fマリノスの2013


リーグ戦2位、ナビスコ杯ベスト4、天皇杯優勝。

ACL出場権(リーグ3位)獲得を目標にしていたチーム、総じて見れば成績的にほぼ完璧なシーズンと言っても過言では無い。


特に素晴らしかったのは攻撃時に攻撃から守備への切り替えの早さ、つまり失ったボールを相手の陣内で高い位置からすかさずに奪い返しに行く、勇敢な姿勢を貫いた事だと思う。



攻撃サッカーの信奉者、ルイス・ファンハールアヤックス黄金時代に言った言葉

「私の理想は90分間を相手のコートで過ごす事だ。」


もちろんこれは到底無理な理想ではあるが、昨今のトップレベルにおけるトレンドとして、FCバルセロナのパス回しを真似るのではなく、ボールを失った後の早さを取り入れる風潮がある。

そこをよりハードにフィジカル的に洗練させたのがバイエルンであり、昨シーズンはリーグ制覇だけでなく、バルセロナを倒し欧州王者にも輝いている。



現行のトレンドに乗っているだけでなく、チームとして機能・実行出来ていたのが、リーグMVPに輝いた中村俊輔のプレー以上に、とても見ていて痛快だった。

サッカーはあくまでもチームスポーツであり、チームとしての連動が見せる機能美に優る、名プレーは無いと考える。




マリノスに生じた綻びと限界の露出


9月以降、マリノスのゴールシーンは凄かった。

どのゴールも毎週、今週のベストゴールにノミネートされ、更には実際に月間ベストゴールも次々と誕生した。


ただそれは、とんでもない個人技が炸裂した時しか、得点が決まらなくなっていたのと同義だった。

イージーゴールが無かった。


これが何故かと考えると、首位になってからは勝たないと順位を守れない中で、慎重なゲーム運びが増え、成功率が低い速攻の数が減ったと言う節もあるがハッキリとしない。

 

確実なのは、速攻が減っただけでなく、更に研究された点も含め、以下のような型にはまったゲームが多くなった。

 

1,ボールを持つ時間が長い攻撃が増えた(=戦略として持たされる)

2,ビルドアップ能力の低さを狙われる

3,サイドに逃げる事でしか前に進めない

4,結果、ワントップ以外は皆ペナ角に集まって攻撃を開始するが、中は圧倒的数的不利でクロスを送っても意味がない

 

5,その内カウンターを食らう(新潟戦、川崎戦)



この点、今シーズン16点を取った、マルキーニョスは確かに不調ではあったが、誰がFWを勤めていても厳しかったかもしれない。

ただ、千葉から獲得した藤田、レンタル移籍から復帰した端戸、どちらも監督からの信頼が低かったのは間違いがない。

実際、リーグ戦では一度たりとも、マルキーニョスの代わりに使われた事は無い。

メンバーの固定化は抜群の安定感をもたらしたが、歯車が欠けると打開策が無く、特に肝心な時に使えない選手、使わない様な信頼度が低い選手を、何故、シーズン後半まで置いておいたのか疑問でしかない。

それは結局の所、フロントが動かない、動けない部分も含めて、総じてチーム力が無かったと言う事なんだと思う。




入場62,632人、Jリーグ最高記録更新


11月30日Jリーグ第33節横浜-新潟戦、62,632人という観客数はJリーグ史上最高記録を更新した。


過去6万人規模のゲームを日産スタジアムで観戦した事が何度かあったが、思い起こせば全てがJリーグのゲームではない、W杯やクラブ杯のような全席指定席のゲームだった。

いつもの東口に向かうと、入り口を案内され、一旦南口迄行って折り返し、また東口に戻ってくる列に並ぶ事となった。


ただ、これを大変とも何とも思わなかった。
体験を楽しむってこういう事、日常じゃない物だからこそ価値があるんだ。


例えば、立地が最高の日産スタジアムでも駅からスタジアムまでの道を歩くと10分近くかかる。
行きも帰りも、酷いゲームの後も、この道を歩く時間がとても大切だ。

サッカーの試合を楽しむのはスタジアムだけでなく、スタジアムへと続く道から始まってる。

また一つ、「あの時は~」と語られる歴史が、チームに増えた事を嬉しく思う。




敗北を知る


最終節川崎戦、新潟戦同様に、マリノスは0-0の均衡の中で、勝たなければ行けない苦しさに耐えられなかった。

人目もはばからず号泣する選手達を見るのは辛かったが、正直な話、心の底からは、その絶望の縁まではどこか同調(シンクロ)できず、この結果に一定の満足みたいなものを感じてしまっていた。

 

『これはこれで悪くないぞ』と

 


そんな感覚は、何が何でも優勝を決めると意気込んだにも拘らず敗北した、新潟戦でも同様に感じた違和感だった。

マリノスを自分のチームと想い、ワンプレーに一喜一憂して1年を過ごしたが、私は、まだどこか他人事だったのだろうか。


いや、違う、そうじゃない。


また、Jリーグ最高入場者記録を塗り替え、敗北した新潟戦が最終戦だったら良かったのにと思っているが、別に苦しみを喜ぶ、ドMな訳でもない。


終わってみて思うのは、勿論優勝を願っていたが、結果として頂点の喜びも、屈辱の敗北も、明と暗、極と端、ピンとキリではあるが、どちらも味わった事が無い体験だったから、私としては、どちらでも良かったのではないだろうか。

これも1つの体験と、サッカーチームに寄り添った中で味わえる体験として、すんなりと受け入れることが出来てしまった。

かつてもっと劇的に優勝した歴史があるのだから、どうせならもっと劇的な悲劇でも良かった、と思ってしまうのは流石にイカれてるかもしれないが。



20年経った今でも語られるドーハの悲劇の様な、激痛と共に刻まれる敗北の歴史は、これまでのマリノスには無かった。

いつか、必要だったと思う日であり、この歴史を体験している事を自慢として語る日が来るんだと思う。

 

プロ野球のモット良いプレーオフ制度

スポナビブログが潰れる事もあり、引っ越した記念も含めて、例外中の例外として、今話題の野球の記事も書きます。

 

筆者は小学生時代は大洋ホエールズ友の会に参加して、日夜、自転車で横浜スタジアムへと通っていた野球小僧でしたが、今は全く観てないのでそれほど詳しくないです。

 

(中畑さんが監督をやっていた頃の、年間まとめDVDは大変楽しく観ていました。マリノスベイスターズに学ぶ事は本当に多い。)

 

『ダグアウトの向こう』Blu-ray BOX

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ただ、年間を通して行ったリーグの結果をチャラにしてしまうようなプレーオフ制度というものは、サッカーでも最近まで採用されていたこともあって、関心がある話題でした。

 

 

 

プレーオフ制度には賛成だ

 

私の考えとして、現状の制度には否定的です。

 

ですが、一方で、世間の関心を集め、ビジネス的に重要かつ、それがひいては競技の普及に貢献するような、華試合としてのプレーオフ制度の開催は、むしろ積極的にチャレンジするべきだと思います。

 

この点、Jリーグは一定の成功を収めていたプレーオフを、ただ消滅させてしまったのは残念というか、勿体無いといえます。

 

※ 今後J1昇格プレーオフにJ1下位チームを参加させて、そちらを発展させる意図はある模様。

 

ですが、1年をかけてチームの総力を問うリーグ戦の結果を台無しにしてしまうような制度は、そこに、あまりにも納得感が存在しないのではないでしょうか。

 

 

おい野球 磯野しようぜ (もっと儲けようぜ)

 

今回、14.5ゲーム差もの大差を逆転したことで、見直しの声も、特に広島方面からでているのは理解します。

 

ですが、開始時点では、自身が下位になった場合に恩恵を受ける可能性もあった訳で、ルールは誰に対しても平等という点で、今年の結果は今年で仕方がないと思います。

 

一方で、私は、もっと納得感が高いプレーオフ制度があるのではないか、と考えています。

 

現状の制度よりも、もっと全球団が参加できて、つまりビジネスとしても最大化する制度です。

 

 

 

セパ全面戦争式プレーオフ制度 最弱決定戦

 

もともと、日本シリーズは各リーグの1位が存在していて、ではどっちが強いのか、日本一のプロチームはどっちなのか、という興味を売りにしていた大会です。

 

それを拡大するにあたり、2位と3位を巻き込むという判断をした結果、リーグの順位逆転、下克上が起きまくる、という結果になり、特にリーグを圧勝した1位チームに納得感がない制度になっています。

 

ここで私からの提案は、セパの1位同士が戦う日本シリーズは復活した方がいい。

 

同時に、6位同士も戦って、日本ドベ球団決定戦もやればいいんでは?と考えます。

 

更に、別に、交流戦の発展として、2位同士、3位同士、4位同士、5位同士も、それぞれ戦うのはどうでしょうか。

 

 

つまり、12球団の順位決定戦です。

 

 

何がいいって、12球団みんなが踊れるプレーオフ、単純な規模が今の2倍になります。

 

日程としては注目度が高いドベ決定戦が単独で始まり、2~5位の順位決定戦は各地で同時消化、トリを飾るのが日本シリーズ、という日程でいかがでしょうか。

 

 

傍から見ていて、野球もっと儲かるし、Jリーグよりも遥かに納得感ある制度作れるのに勿体無いなぁ、と感じたので書きました。

 

 

ドベ決定戦のチームに送りたい本

 

洞察力――弱者が強者に勝つ70の極意

洞察力――弱者が強者に勝つ70の極意

 

 

横浜・F・マリノス マルティノス先生から学ぼう

マルティノスがパスを出さない?

 

そんな声を加入以来、聞く事が絶えないマルティノスだけど、彼の方が正しい判断をしているという視点が必要ではないだろうか。

 

 

マルティノスの行動様式

 

フローチャートでロボットの思考回路を組み立てるみたいなゲームをやった事があると分かりやすい説明です。

 

状況① ファーストタッチでゴール方向に向けるパスを受ける、尚且つ、数的に同数で対峙(つまり1対1)。

 

1,先ずドリブルを仕掛ける。

 

 1-1 成功

   → 次の段階として、更に自身が決定的な仕事を担うアクションを継続する

 

 1-2,失敗 時間を使ったが相手を剥がす事が出来ない

   → 周囲との連携、及び利用、再起動

 

 1-3,大失敗及びその可能性 ボールロストのリスクが発生、又はその可能性が高い数的不利に陥る

  → パスで逃げる、サイドラインに逃げる

 

【要点】1か2ではなく、あくまで先ず1択、その結果により分岐する。

 

 

状況② 相手を背負った状態でパスを受ける

 

2-1,ボールキープ、サポートを待つ

2-2,持とうとしないで次の展開に動き直す

 

【要点】こちらは2択、攻撃の速度が加速している段階なら2,遅い段階なら1が多い。

 

これを踏まえて見ていると、実に、彼は自分のルールに忠実に動けているのか解ります。

 

ブレがない。

 

 

状況①

 

 

 

http

s://twitter.com/Speir_s/status/91437015329

状況②

 

 

 

 

マルティノスの判断

 

ではその選択肢の結果として、上手く行かないことが多いのですが、果たしてそれはマルティノスの責任なのか。

 

天野、山中の判断と、マルティノスの判断、について、ボールをロストしない事や、クロスを上げる事ではなく、目的であるゴールの確率を高めるのはどちらなのかを再確認する必要があると考えます。

 

 

ガンバ戦であった象徴的なシーン

 

 

 

これはマルティノスが右にいても、度々、起きてしまう、結果として、マルティノスがチャンスを潰してしまった様に見えるシーンです。

 

ですが、マルティノスの行動様式を理解し、その意図を汲み取る事で、ゴールが少なすぎる現状を大きく打開するだけでなく、天野や山中は、プレーヤーとして飛躍する事にもつながります。

 

 

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マルティノスを皆がフォローしすぎて、失敗した図。

 

チームとして、もっと良い条件でドリブルでの打開(1対1)をさせる為にはどうすれば良かったのか。

 

 

 

私が思う この局面で天野が優先するタスク

 

 

前回の記事でも書きましたが、セカンドトップとして最優先するのはゴール前のスペースで、サイド補助ではないのですが、このカウンターが決まるかどうかの局面でも、ゴール(得点)の可能性を上げる為の判断にミスがあったと思います。

 

 

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彼が近寄らないことで、同時にセンターバックを引き剥がし、マルティノスにスペースをもたらす事にもつながります。

 

フォローしないことがフォローになるという理解であり、やはり、役割の優先度として、チャンスメイクよりもゴールなんだ、と考える必要がありそうです。

 

 

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エリア内が数的同数の所へ、発射されるマルちゃんミサイルの図。

どうです、ワクワク感ありませんか。

 

  

山中の動くタイミング

 

この局面において、これは右の松原も良くありましたが、絶対にマルティノスからはパスが出ないタイミングで、オーバーラップしてしまっています。

 

 

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再度、失敗の図を見て考えますと、逆に、マルティノスがサイドラインに勝負できるスペースを奪ってしまいました。

 

これにより、カットインの1択しかなくなったドリブラーを止めるのは難しくない、と相手の守備を助けてる事になっています。

 

 

ここで、山中がどう動くのかは、マルティノス次第となる理解が必要です。

 

 

例えば、マルちゃんがカットインを選択したら…

 

 

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サイドバックを吊り出して、開いてるスペースへオーバーラップ

 

 

逆に、縦を狙ったら…

 

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ダメだった場合にアーリークロスをダイレクトで蹴れる位置

 

 

そして時には大失敗に備えてのリスク管理

 

 

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アカン…カウンター食らう

 

 

彼らは全員プロ、つまりは専門家であり、例え年齢が若かろうが、私のような趣味の素人が偉そうにダメ出しをする事は、本来、おこがましい行為です。

 

ですが、上手く行かないのは、個人の問題ではなく、あくまでチームであり、マルティノスが悪目立ちしてしまう部分はあるかもしれないですが、あまりにもファンやサポの間でもマルティノスに対する理解が進まない事もあり、書きました。

 

 

彼がサイドアタックの国、オランダで育ち、育成年代別代表も経験し、プロとしても150試合近いキャリアを持つ、正にサイドアタックの専門家である点を強調したいです。

 

 

マルティノスが正しいんじゃないか、という視点は、プロとしてのキャリアを積み上げ始めたばかりの天野や山中がマルティノスに合わせる事で、最適解や、定石を身に着ける事で、プレーヤーとして大きく成長するチャンスであると考えています。

 

 

横浜・F・マリノス 進歩の現在地

理想的なゴールが再現性を持った上で決まった、セットプレーからも得点できた。

 

枠に飛んだシュートのプロセスを見れば、2-1こそが順当なゲームであったと私は思うし、

アンラッキーがフットボールの一部であるとしても、ドローで勝ち点1は得られる筈であった。

 

少なくない賞金(DAZNマネー)を睨む争いをする上で、手痛い結果となったゲームではあるが、好調と不調、上位と中位の分水嶺にいるチームにとって、今後の指針が見えた甲府戦と言える。

 

 

モンバエルツのコンセプトと進捗状況

 

ボールを保持して素早く攻める、監督のメッセージはシーズン当初よりブレることがない。

 

この点において、明らかにピッチ上で監督の意図が反映され始めた昨秋以降、チームには確実な進歩があるのは間違いがない。

 

中断明け、勝負の9月、ディフェンス時のディティール的なミスから自滅してしまった川崎戦は残念であったが、今季一回目の対戦ではボール保持練習の稽古をつけて頂いた様な、お粗末な内容に終わった柏に対して、パーフェクトな45分を見せつける等、チームとして伸びを感じる部分は間違いがなくある。

 

この甲府戦においても、リスクを感じるような自陣でのボール保持から、一気にマルティノスペナルティエリア内でシュートを打つシーンに展開する等、偶発的にロングカウンターが出来た時は良い攻撃が出来る、だけではなくなっているのを多くの方が感じているのではないだろうか。

 

その一方で、リスクに見合うメリットが得られていないボール保持と攻撃、というのが、あるように思える。

 

 

スピードアップ出来ない左傾斜の袋小路

 

多くの場合は、崩せたと言うか、ゴール前にパスを送れたとしてもこういう形であり、この軌道を描くクロスが出るのが、左傾斜なマリノスのフィニッシュシーン。

 

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これは肝心のウーゴが得意なパターンではない上に、そもそも形として、ファーストトップはニアで潰れ役になる確率が高い。

 

なので、クロスはファーに流れる、又はニアを囮にその裏を狙うとして、マルちゃんはそこまでクロスに合わせるのが上手い訳でもない。

 

じゃ、中町上がれよと言っても、扇原まで左に出動してしまってる中ではリスク管理上、クロスに合わせるタイミングでそこにいるのも厳しい。

 

クロスを上げて惜しいシーンを作ってるというよりも、敵にコントロールされた結果として、深い位置からのクロスで勝負せざるを得ない形にされている様に受け取れる。

 

つまり、この形で終わることが多い事を鑑みるに、その実効性において、マリノスの左サイド攻撃は本当に上手く行ってるのだろうか、となる。

 

山中がレギュラーポジションを奪取した勢いと共に、存在感を増した事で、左へ大きな傾斜が起きているのは、誰の目にも明らかだが、スピードダウンによる相手の準備時間と、それに対する枚数不足という意味で、決定機に中が空洞化する問題から、労力とリスクに見合うほど、成果を上げていないのではないだろうか。

 

 

モンバエルツの寛容さと理想

 

モンバエルツは特に攻撃に関しては自由を許容する部分があると思う。

 

この点で、いわゆる ティキ・タカ(狭いスペースに集まった選手による連続的なショートパスでの攻撃という意) が好きな選手が左サイドに集まって、即興に興じるのを許している部分がある。

 

許しているとはどういうことかというと、本来は、相手の陣内(ピッチに対してではなくDFラインに対して深い位置)に入った段階でのスピートUP(チェンジ)を彼は理想としているが、攻撃に関しては選手の自主性を尊重している懐の深さを感じる。

 

だけれど、それも時に我慢の限界を迎える。

 

絶対に勝ち点が欲しいゲームで0-2となった瞬間にモンバエルツは動いた。

 

この時、デゲネクが下がっただけではなく、ウイングが左右配置転換をしたのは行き過ぎた傾斜(自由)を修正するものだと考える。

 

 

少し遡り失点シーンをみると、もちろん、デゲネクのミスは個人の物だが、あまりに選手が左に密集し、その傾斜により左サイドでしかボールが動かない状況になってしまった一連の結果でもある。

 

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センターバックタッチラインを越えてサイドに張り出している中で、バックラインに入ってボールを受けた中町はデゲネクにパスを預けると敵陣へまっすぐ突進、この時、扇原も左側で高い位置にいる状況。

 

片サイドの狭いスペースへミッドフィルダー全員が集結していく様は、ティキ・タカという幻想へ、全員が引き寄せられていくようなシーンであり、最終ラインで受けた中町の選択肢としては、自身はリスク管理で最終ラインに残った上で、攻撃サイドを転換する事での加速化を試みるのが妥当だったと感じる。

 

 

再現性のあるパターンゴールが決まる

 

ウイングの左右配置転換から、僅か数分でマルティノスは決定的なクロスを2回蹴り、その内一回が決まった。

 

今季2回目のホーミングなクロスからゴール。

(90年代後半、マンチェスターユナイテッドベッカムのクロスからコール&ヨークがゴールを量産した時代にベッカムのクロスをホーミングミサイルに例えられたが、クロスの軌道が似ているのでそう呼ぶ)

 

 

 

 

 

マリノスのゲームを今期見ている人なら、直ぐに清水戦のアレが思い浮かぶだろう。

 

この時、0-2となったこともあって、甲府のDFラインはとても深く、ハーフラインを大きく越えた所でもマリノスは容易にボールを保持出来る状況であった。

 

故に加速化出来なければ、最終局面でスペースが無い&数的に不利という状況において、マルティノスは、タッチライン沿いでマークを外して山中からボールを受けると、直ぐ様に対面のサイドバックに1対1を仕掛け、縦に突破するや速いクロスをゴール前に送った。

 

正に、確かな技術は元より、タイミングと物理的速度の両方で、彼が攻撃の加速化を行った結果、スペースと局地的な数的同数が生まれたと言えるゴールだった。

 

勿論、それを完結させる、ウーゴの得意な形になった時の決定力というのも素晴らしいが、何より、この再現性こそが、監督の意図する物、戦術が生み出すゴールと言えるのではないだろうか。

 

 

攻撃の加速化

 

ロジティクス部隊が弾薬の確保と供給を行い、ウイング&セカンドトップの1.5列目はそれを最終局面へと、同速度ではなく、加速化した上で発展させる、又はそれを意識させて囮にして迂回路(サイドバック)を使う、モンバエルツの意図は明確だ。

 

だからこそ、今は代表で地球の反対側に何度も呼ばれた結果、コンディションを落としているが、開幕戦から数試合はターンとドリブルに優れたバブンスキーが真ん中担当(セカンドトップ)であったのも頷ける。

 

この点、齋藤の課題はシュート数に対するゴール数(つまり決定力)だけでなく、ゴールまで距離があっても攻撃としては最終局面と言えるトップスピードでボールを受けれるロングカウンターとは異なり、対面する相手の前でボールを受けた後に、加速化させる部分でも期待に応えられていない。

 

打開を期待する選手として、遠藤は縦への勝負に徹する事で、個人での加速化において優位性を見せることができれば右サイドでポジションがあるかもしれないし、私は彼が、この終盤戦に必要なオプションになると考えている。

 

他に、甲府戦で出番が来た様に、評価が高まっているシノヅカは、どちらかと言うとトップ下で天野の競争相手ではないかと感じた。

 

天野というと、主力としては事実上のルーキーシーズン、奮闘をしているが物足りなさも感じる。

 

現状で、中央からの攻撃が不足している理由にはロジティクスだけでなく、セカンドトップである彼が仕事の優先度として、ウイングと同様に、アタッキングゾーン中央において、

 

マークを外してボールを受けるか、又はターンして1対1を仕掛けるなど、加速化を試みた上でスルーパスやワンツー、ミドルシュートを狙うプレーをもっとしなければならず、現状では成功失敗を問わず、そもそも、それらを試みる回数が物足りない。

 

今のシステムで優先度を考えると、サイド攻撃の補助は2番目以降の仕事であり、彼にはFC東京戦のゴールみたいなプレーが1試合で何回出せるのか、という、例えば日本代表で言えば香川の様なプレーモデルをテーマに持って貰いたい。

 

 

 

 

かつて代表監督時代にトルシエがアレックスに言っていたフレーズが思い出される。

 

『君は45分で3回はそういうプレー(飛び出してボールを受けクロスを上げる図を指差して)をしなければいけない、見せないといけない、解ってるね。(byダバディ)』

 

ロジティクス部隊がボールを保持してハーフラインを越えた時、ウイング、トップ下、チームの攻撃を加速化させるキーパーソン、彼らが45分間で何回、最優先事項の仕事をしたのか。

 

評価の第一ポイントはそこに置きたい。

 

 

パスを回して相手を崩すというのは面白い、それには魔力が有るし、楽しく勝てれば最高だ。

 

だが、面白さよりも優先度を持って追求しなければならない物があるのを忘れてはならない。

 

例えば、皆さん鹿島は凄いと簡単に言うが、その中身として、点が必要な状況ではサイドバックアーリークロス蹴るだけなんだけど、それに必ず3人が飛び込んでいる、みたいな地味で面白くない攻撃を淡々と繰り返す攻撃が行われているのを知ってのことだろうか。

 

「攻撃とは、結果が出るまで繰り返す行為の呼び名である」とは手段が目的化してしまいがちな本質を突いた言葉であり、つまらない行為であっても、徹底的に、相手が折れるまで繰り返す精神的なタフさこそが、勝負強さと言われる物の根源ではないだろうか。

 

マルティノスや山中が延々とクロスを上げ続けるだけの攻撃が繰り返される光景、今のマリノスには、まだ、そんな、クンフーの精神に通じる様なタフさはない。

 

 

ブーイングでチームは強くならない

対戦している相手選手や審判に対する物ではなく、自分の応援、サポートするチームに対するブーイングについて論じる。

 

一般的に、ブーイングとは観客による不満の意思表示である。

 

お金を払った権利において、演目の内容や演者に対する批評として、「つまらない、気に入らない、納得がいかない」を、その場で示す必要があった時代に生まれた物だ。

 

故にブーイングという行為は、有料の観客であれば誰もがやっていい行為であり、そもそもとして行為そのものを罵倒や文言は別として、悪い行為とは考えない。

 

 

一方で、私の様なファン、お客さんではなく、サポーターを名乗る立場でありながら、試合後には批評側になる行為は矛盾を感じる。

 

それは、12番目の選手を自称し、つまり共に闘うチームの一員であると、勝つ可能性がある時は向こう側に属していながら、負けた途端に、お客さんに戻り批評者になる、というのは筋が通らないと考える。

 

共に勝ちたければ、負けた責任も共有しなければならないし、その覚悟はないのだろうか。

 

ブーイングをする前に、自身の立ち位置は何処にあるのか、自覚が必要だ。

 

 

次に、この論に対する反論として出てくるのが「チームが強くなる為には時に厳しいネガティブなリアクションも必要」という物だ。

 

その根底にあるのは、拍手等の労いだけでは選手たちが甘える、という考えがあると思われるのだが、よく考えてみて欲しい。

 

それを是正する為に、サポーターからのブーイングが必要なチームって、強くなる訳がないじゃないか。

 

先ず、専門的にテクニカルな修正が出来るとして、ブーイングという不満を伝える行為でそれが出来る訳ではないし、サポーターにブーイングされないと、やってしかるべき当然の対応が出来ないチームが強くなる訳ない。

 

つまり、強くなる為にはブーイングが必要だという条件設定が、正当なスキームが崩壊している、更には選手が負けても叱責されないと甘えるという、メンタル的な部分まで崩壊している訳で、

 

その条件設定の段階になった時点で、スタンドから何をしようが、もう一旦落ちる所まで落ちて、ゼロからのリスタート、再構築が、つまり経営的判断が必要な段階と言え、どの道、効力を発揮しないのである。

 

 

 

勿論、サポーターであっても、同時にお金を払ったお客であるのだから、ブーイングしたければすればいいだろう。

 

その際に、『こんなチームのサポーターなんてやってられるか、俺はお客として、金を払った権利において不満を伝えなければ気が済まない』とは言えないので、大義名分として「チームが強くなる為に」が必要とされると考える。

 

ただ、既に上で述べたように、ブーイングはチームを強くしない、風が吹いても桶屋は儲からない、論理がつながらないのである。

 

チームの一員であるのであれば、時に我慢を強いられる。

 

そこで我慢できずに、不満を意思表示したければ、ただ行えばいい。

いつでもドアは開いていて、お客と支援者の間を行き来するのは自由である。

 

「今日はもう我慢ならないので、お客として物言わせて貰いますわ」だけでいい。

 

『あいつサポーターとして共に闘うと言ってたのに、負けたら責任は背負わないのかよ』という批判を自身が甘んじて受ける覚悟が必要だというだけなのだ。

 

そこで自分だけは綺麗でありたいからと言って、チームが強くなる為にという大義名分を用いるのは、それこそ甘さであるし、甘いからこの様に私から批判を浴びるし、筋が通らないのである。