見れなかった試合についてどうこう言うつもりはないが、この試合後インタビューを見て危機感はより一層高まった。
世界的アクションスターとしても知られるジャン・クルード選手の加入はACLファイナルの惨敗以降、リーグでも勝ち点が積めず暗い話題ばかりが続いている横浜F・マリノスにとって、久しぶりの明るい話題だが、現実的な戦力補強としてはまだまだ大きく足りない。
ポステコグルーの流派に属せず、マスカットも継承しなかったキューエルの見据える先にいるスペイン代表には…それが笛吹けど踊らずなのか、置物だからなのかは最早分からないが、ピッチ上で行われている事は程遠いからだ。
何としても彼を助ける為に、絵空事の様に聞こえるかもしれないが、改善案と補強プランを至って真面目にだが、あくまでも冗談として考えてみた。
同じ選手でどうしてこうなった
とにかく先ずは攻撃だ、三度の飯より攻撃だ、攻撃の話をしよう。
今や守備時と攻撃時で配置、その形が異なるのは当たり前だが、少なくともボールを持つ時は同じアンカーを採用し433と言われる形式で戦うスペインとマリノスでは大きく異なる事がある。
マリノスでは一旦、ウイングにボールが入ると近距離に人が集まりだし今やスペインですらやらないティキタカ(小道のフットボール)が始まる。
ウイングにボールが入った瞬間にインサイドハーフがスペースに入り、ドリブルの選択肢を潰しながら前に流れ、サイドバックが敵を引き連れ斜め前に突撃し、内側の可能性を消していく。
そこに更に4人目として、逆のインサイドハーフかアンカーが応援で駆けつけると自ら作る行き止まりの完成である。
おまけに最悪のパターンとして、形として終わっている、可能性が乏しいのに一旦下げてやり直さずに、そのまま無理筋のワンツーやドリブルを仕掛けてボールロストし、関わった4人が、ボールを奪った前向きの守備者に置き去りにされて、エドゥアルドがスピードのあるアタッカーにサイドで1対1に晒される。彼はそれが一番苦手なのに。
そりゃ、同じ前線選手なのに攻撃効率が激減した上で、その反響としてロングカウンターが痛くなりますよ。また、この問題は属人的な話ではないので右でも特に変わらない。
お手本のスペインからみる正解
ユーロ2024で快進撃を続け、遂に決勝進出を果たしたキューエルが恐らく多分理想とするに違いないであろう、スペイン代表を見てみよう。
先ず、右には今話題沸騰中の左利き技巧派ウイング、16歳ヤマルを置いているのに対して、左にはスピード、ラインブレイク、ドリブル突破がキーワードとなるニコ・ウィリアムズと、左右はヤンとエウベルの関係に近いキャラクターで構成されている。
この点、左のニコは試合中に度々ハーフスペースに侵入して、と言ってもエウベルの様に下りてインサイドハーフ的に振る舞うのではなく、時に2トップ的にCBに対してラインブレイクランを仕掛ける事が目立つ。
マリノスの左サイドはスピードとラインブレイクランに特徴を持つ選手ばかりなのに、この左右非対称の構造を用いないのは勿体ない。
更に、ウイングなので当然サイドでもボールを受ける事があるが、マリノスではエウベルの選択肢がもはやダイレクトパスでワンツー等を仕掛けるしかない位のタイミングで早く選手が近寄る事で、逆にエウベルの選択肢を奪っているのに対して、スペインでは周囲がポジションを動かない事で、先ずウイングにプレーの選択肢を与えている。
またマリノスと決定的に異なるのが、ウイングがダブルチームで対応された場合など、人数をかける時に、サイド攻撃はひし形のボール保持が徹底されている。ラポルテが上がり要になり、ロドリが下がって後方のルートを確保。
これにより相手が5バックでも、広い空間を保ったままサイド攻撃を実践している。マリノスが大の苦手とするタイプ、試合開始から後方スペースを潰す事を重視してきたジョージア戦でも安定した敵陣ボール保持だった。
勿論、最後には仕掛けようとする事で形が悪くなったりするが、その際は直ぐにロドリを経由してやり直しを行う。先に自分たちが焦れてしまい、無理攻めをして悲惨なボールロストする事は良くない事だ、という共通認識が徹底して仕込まれているのを感じる。
勿論、カウンターリスクもゼロではなく、試合では被カウンターからクロスを受けてオウンゴールから実際に先制点を献上しているが、マリノスの様な次々と被弾するフルボッコシーンは皆無だ。(オウンゴールは被カウンターのクロスに対して、きちんと守備者が着いていたという意味でもある)
ポルトガルを2-0で倒し、初の決勝ラウンドに意気揚々と挑んだジョージアのシュート数は90分で4本、ビッグチャンスは0、ゴール期待値は0.25だった。むごい。
フランス人の言葉と治安の悪化
引用元
https://www.jleague.jp/news/article/10518
メンテイン・ポジション(立ち位置を維持する)
ポステコグルーのフットボールからテンポを奪った結果、次々と選手がスペースへ飛び出す行動(前にいる選手にパス&フォローを繰り返し素早くスペースを突く)、ボールに密集する行動(奪われたら皆で襲い掛かれ)、この2つの行動は意味がなくなった。
この結果、残された物は意味の無い2つの行動であり、いわゆる界隈で侮蔑的に使われる和式の典型になっていないだろうか。
ビルドアップの開始時点で保たれているポジションをスペインは残り30m、ゴール前で最後の仕掛けの瞬間まで維持するのに対して、マリノスは直ぐにグチャグチャにしてしまう。
昨シーズン、マスカットのフットボールにおいてスペースはあるんだから個の能力でどうにかしろという中、その厳しい激流で溺れる選手が続出し、特に西村と水沼は苦労をしたが、今期は…
「ストリート(小道)で生き残れるのか?」
と、アウトロー感溢れるキーワードの中、オラオラしている天野は気にしていないが、左ではエウベルすら悪化する住環境に引っ越しをしたそうな顔をしている。
公式戦を30試合以上しているのに、全く攻撃時の立ち位置すら整備される気配が無いのだが、私がキューエルの見据える先にスペイン代表があると思っているのが間違っているのだろうか。
また、アイデアとしてマリノスでは再現性が乏しいアンカー、CFとIHが連携した中央攻撃として、アンカーからの縦パスをCFに当てて、IHが3人目の動きでゴール前オープンになるケースだ。中央ひし形アタック。
例えばヴェルディ戦、喜田からロペスへのパス成功は0本、福岡戦、山根からロペスへのパス成功は0本だった。誰かの能力の問題じゃなく、更に改めて言うがシーズン序盤の試合ではなく直近のゲームの話だ。
これをやる為に、IHは高い位置をキープするんじゃないのかい?(汗)
内側を進めるなら、CBからIHに当ててアンカーに落とし、更にCFへ縦パスを当ててIHがオープンとか理想の攻撃だろう。
サイドのひし形と中央のひし形、マリノスでは両方が機能していない様に感じる。
社長!ここは選手の質でキューエル式を深化するしかない
最早、アタッキングフットボールを深化させてる場合ではなくなった。
コーチ陣の思惑を感じ取り、説明するまでもなくキューエル監督の意思をピッチ上で忖度可能な選手を並べるしかない。問われるのはニュータイプ能力。
433! と言えば おかのした! と返せる選手であり、自然とハマる事を期待して想定される局面に特化した能力を持つ選手を誠に勝手ながらセンターラインをメインにリストアップさせて頂いた。
・アンカー
ファルジャニ・サッシ
引用元 https://x.com/GoalJP_Official/status/1536694964775550976
2022年、森保ジャパンをアウェーの日本にて3-0で撃破したチュニジア代表の13番。
代表キャップ80を誇り、カタールリーグ、アル・ガラファでプレーする32歳。
185㎝の恵まれたフィジカルを活かした抜群のボール奪取能力を持ちながら、変幻自在の多彩なキックは観る物を魅了する、アジア圏でプレーする中で最高の司令塔。
随所に見せる変態的アウトサイドキックはもうそれだけでタダ者じゃない雰囲気を醸し出す。
1年の契約を残すが、トランスファーマーケットでは150万ユーロとお買い得。
彼のプレーが毎試合見れるなら、もうスコアはどうでもいい。
もっとも彼が中央に君臨する事で、自然と中央攻撃が増える事で自らサイドに圧縮されていく歪な攻撃が是正される効果に期待したい。
グスタボ・マルチンス
引用元
第2のマルチンスは21歳、ブラジル世代別代表。
191㎝の恵まれた体格はサイドバックもこなせるスピードも持ち、一列前でもプレー可能な確かなボールスキル、相手の逆を突くドリブルでの持ち上がりと理想のセンターバック像に合致する。
クラブとは2027年まで契約を残すなど、獲得に動くとなればビッグディールになるだろう。ブラジルセリエAでは通算28試合出場。
ディフェンスの選手だからトランスファーマーケットでは310万ユーロだが、もしも前線ならマリノスにレンタルで来た時のアデミウソンと同等の金額(一説では10億円)でもおかしくない。シティパワーでどうにかしてもらいたい。
・ファーストトップ
デリック・ラセルダ
引用元
http://cuiabaesporteclube.com.br/cuiaba-anuncia-atacante-derik-lacerda/
生き別れたお兄さんに前田って人いますか?
ビジュアル面にもこだわりつつ、アタッカーは高い…ので将来投資をするしかない。
求めるのはハンマータイプ、エリア内での強さ、ロングボールの強さ。
その点でゴールは今期2得点シュート成功率は25%(ちなみにリーグ1位が6得点というブラジルは塩サッカー)と未来に期待だが、スペイン2部やポルトガル2部を渡りあるいている中で、エアバトルの勝率が安定して高い(50%オーバー)、190㎝の24歳。
※前線の選手だと大迫は去年48%くらい。
トランスファーマーケットでは50万ユーロも、移籍金120万ユーロで獲得した契約が2028年まで残るので若干、高い。
ちなみに稀に思い出す人がいるかもしれないジュニオール・サントスはリーグ上位で好調なボタフォゴでレギュラーに収まり、日本にいた時の8倍、現在はロペスの2倍となる400万ユーロまで上昇している。買戻しは不可能だ。
・左ウイング
チームには既に沢山いるが、エウベルすら苦しむキューエルのやり方に合致出来る、ストリートで生き残る選手が望ましい。
名門サンパウロの右効き、逆脚の左ウインガーとしてブレイク中のフェレイラは素晴らしい選手だが、もう資金が無いだろう。値札は500万ユーロだが、それ以上が必要だ。
何度も紹介しているアルゼンチン人フリアン・パラシオスはお買い得だが、アタッカーはゴールを重ねるとあっという間に高くなるのでシュート性能は目をつぶる必要がある。
となれば見据えるのは国内。
いま、J2ナンバーワンのドリブラーは誰か?
スペースを必要とせず、1対2ですら破壊可能な個を持つ
環境で死なない本物の才能。
真っ先に思いつくのが長崎に所属する松澤海斗だろう。
長崎では同ポジションに笠柳というこれもまたJ2では優れたドリブラーがいるのだが、それを遥かに凌駕するドリブルに生きる選手。
同じ構造の中、ドリブルを仕掛けた回数が、笠柳が1273分で85回なのに対して、松澤は698分で72回に達する。
そのプレー選択は正にJ2のジェレミー・ドク
まだまだキックに課題はあるが、176㎝のスケールを持ち、前傾姿勢で突貫していく彼が2人を引き付けて十分に確保したスペースから、永戸か加藤聖がクロスを蹴ればいい。シナジー。
既に昨シーズンにブレイクの兆しを見せていた横山歩夢や島村拓弥を取り逃してしまったマリノスにとって、絶対に譲れない争奪戦は既に始まっているかもしれない。
という訳で、至って真面目に冗談の戦力補強プランを検討してみたが、いかがだっただろうか。
勿論、絵空事で夢物語な補強案ではなく、バックエンドの補強、ミドルゾーンのプレスとブロックを修正し、ハイプレスを再設定出来るディフェンスコーチ、そしてスペイン流を理解し、選手にボール保持時の立ち位置を理解させチームに落とし込めるコーチを採用するのが現実的で、最も安上がりだと思う。
更には試合後に先ずは自分のチームを振り返り、審判や選手の不出来を嘆くのではなく、自分の仕事と責任を問う様に促せるアドバイザーもいると安心だ。