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横浜F・マリノスを応援するイチファンによるブログです。

世界で戦える433とは 横浜F・マリノス視点で観るユーロ2024 スペインvsクロアチア

観てますかユーロ2024。

今回は横浜F・マリノス目線で観る、ユーロ2024です。

 

 

なんという無慈悲

 

欧州サッカーファンをやきもきさせ、ギリギリになって発表されたWOWOWのユーロ2024放映決定から僅か、AbemaTVから全試合無料での生中継が発表された。

 

しかも、日本では観るのが困難な深夜帯から明け方に行われるユーロ2024だが、

な、なんと、全試合見逃し配信も無料対応という太っ腹。

 

WOWOWの存在価値は一体…

 

ウマ娘マネーを1円でも取り戻す為、1試合でも多く見ねばと決意を固めたこの決定。

 

 

https://abema.tv/

 

 

という訳で

 

今回は既に行われた試合から、共に433の並びをベースにするミラーゲーム、スペインvsクロアチアを視聴し、マリノスの社長が新体制発表会で宣言した、マリノスが目指す世界で戦えるチームとはどのようにサッカーを行っているのか、マリノス目線でレビューしていきたい。

 

※前半だけで長くなったのと、比較として十分な要素があったので前半45分の話となる。

 

 

スペインが保持とハイプレスで序盤の主導権を握る

 

立ち上がりインサイドハーフのペドリが明確なアンカー番として4231でブロックを形成したスペイン。

 

闇雲にプレスを仕掛けないし、トップの所が1対3(2CBとGK)になってしまうのを許容して後ろのリスクを取らない。

 

 

 

ちなみにマリノスは後方にリスクをかけて常にハイプレス

 

 

 

ちなみに試合中に何度もこうなる

なんでやねん(後ろが追従していないのにCBとGKにラッシュを仕掛けるから)

 

 

 

スペインが仕掛けたのが前半6分、クロアチアゴールキック

ラッシュのハイプレスに行く構えを見せる。

 

インサイドハーフ2枚を投入して、CBとアンカーに同数の3枚をぶつける。

 

クロアチアの後方はGKを含むと7枚なので、5対7、GKと1人のインサイドハーフがオープンになる計算だ。最初の勢いで封殺できるかが問われる。

 

また、この敵ゴールキックにおけるラッシュモード時にバックラインはセンターラインから3m以上後ろだった。毎回この設定なので約束事だろう。

 

ロングボールを蹴られたら下がるのだから、最初から下がっているという事だ。

マリノスはなぜか毎回センターラインに立っているのでDFは下がりながら対応するケースが多い。

 

 

 

その結果、スペインの2列目とバックラインの間には広大なスペースが生じるが、気にしていない。ちなみにクロアチアもスペインのゴールキック時は同じような感じだったので、これが世界標準と言っても過言は無いのかもしれない。

 

ただクロアチアの方が最終ラインを3枚の同数にしたマンツーマンで前にオープンな選手を作らないリスクを持ったやり方をしていた。

 

 

 

ゴールキックの横パス、左CBに対して猛スプリントでラッシュが始まる。

 

瞬く間に圧縮が始まり、CBからの縦パスでロスト、スペインのショートカウンター

ボールを奪って5秒以内にモラタがショット、GKがセーブする。

 

 

 

6分、11分33秒、全く同じ形でボール奪取からのカウンターが炸裂した。

 

ゴールキックにはラッシュ、保持には4231ブロック、蹴らせて回収、安定した保持と序盤はスペインがペースを握る。

 

ラッシュ的な奪うハイプレスはリスクの観点から常時やる物ではないという判断が伺えるし、それを仕掛けやすいのはセットされたゴールキックと設定されている。

 

ボールが低い位置にある段階ではバックパスに詰める流れからウイングがCBに詰めたり、2人目のインサイドハーフが出てきたりするシーンもあるが頻度は高くない。

 

ゴールキックというタイミングは全体として、いつ仕掛けるのか(タイミングの意識統一)、スタートの立ち位置が決めやすいというメリットがあるのだろう。エネルギーの使い所が限定されているからこそ、行くべき時はフルパワーでいける、フルパワーだからハマるという要素もある。

 

 

 

スペインの怪しいミドルゾーン

 

序盤劣勢になったクロアチアだがゴールキックのラッシュには190㎝のブドミルへロングボール(14分51秒)で自陣を脱出すると(GKがサイドへクリア)

 

そこから2分以上敵陣、ミドルゾーンでボールを保持し続けスペインにミドルゾーンでの守備を強いる。そしてファールから16分45秒にはFKを獲得。こぼれ球を拾いそのまま保持攻撃を継続。

 

結局スペインは1本のロングボールの後、3分以上、ハーフラインよりも後ろで守備をすることになった。その後もハイプレス、ロングボール回収、保持の流れはクロアチアが行うようになり主導権は交代した。

 

結局の所、スペインは保持で大していい攻撃が出来ていない。なおかつミドルゾーンで守る状態になると、ペドリがタスク過多気味、若い両ウイングに高いというまでの強度が無く、ハイプレスでハメている時間だけが優勢の時間とマリノスとしては親近感を感じる展開。

 

スペインはこの初戦こそ快勝したが、優勝までは厳しいのではないだろうか。

 

またクロアチアはアンカーのブロゾビッチ(72タッチ パス成功率94%)の移動から連動が起きて、スペインのプレスを誘って交わすようなシーンが増えてくる。

 

 

 

クロアチアの保持がスペインのブロックを凌駕していく。

ゴールキックに対するラッシュはロングボールで回避すればいい。

 

21分にはついに破綻か、とオープンな選手からオープンな選手で縦パス2本でクロアチアに決定機が生まれかけるもラストパスが長かった。

 

更に21分43秒、DFラインのグバルディオルから中央で完全フリーだったインサイドハーフ2人の内、1人へ縦パスが通り、サイドからクロス、ゴール前のヘッドは枠外に。スペインはいつやられてもおかしくない雰囲気に。

 

クロアチアのセンターライン後方で起きる縦移動を伴いながらの保持に引き込まれ、ミドルゾーン守備は決壊寸前だ。このミドルゾーンで守備の展開になったら殴られ続ける感じは他人事とは思えない。

 

スペインのゴールキックには最終ライン3人同数、強気のフルコートマンツーマンで圧殺していく。

 

 

ロングボールの蹴り方と左右非対称なウイング

 

スペインもこうなるとゴールキックはロングボールしかねぇ!と蹴っていく

 

ここでスペインが左右共に逆脚ウイングを配している訳だが、右のヤマルがワールド級ヤンマテウスだとすると、左のニコ・ウィリアムスはスピード系ラインブレイカー。

 

この点、ヤマルはライン際に張ったプレーが多いのに対して、ニコは中よりでラインブレイクランを見せる事が多い。

 

またトップのモラタも左に流れてロングボールのターゲットとなる事で、受けるモラタとその裏を狙うニコという補完性、偶然ではない連動があるのを感じた。

 

22分過ぎのゴールキック、26分37秒のスルーパスなど典型例だろう。

34分30秒のラインブレイクランも中央エリアでCBに対応を強いている。

 

 

 

そして先制点が生まれる。

 

クロアチアのロングボール攻撃、セカンドを回収したスペインはミドルゾーンでオープンなパサーが発生。(ファビアン・ルイス

 

それに対して、先ほどの図と同じく、ニコがセンターバックに対してラインブレイクランを仕掛けた結果、中央のモラタが完全フリーになった所へ的確なスルーパスが通り、GKと1対1を制して先制点。主導権を失う中、一瞬のスキを突いた瞬間芸は見事。

 

しかし、ウイングでありながらサイドに立ちつつも中央気味でラインブレイクランを繰り返していた布石が効いたのも間違いないだろう。

 

この点、左サイドでのコンビネーション攻撃が上手く行っていないマリノスにとって、左右非対称なタスクを与える事で、ロペスとエウベルを近い位置でプレーさせるアイデアは活用できるかもしれない。

 

CBの持ち出しに呼応したニコのダイアゴナルなラインブレイクランとSBのオーバーラップ攻撃。(43分18秒)

 

 

ヤンに比べるとキック精度にそれほど自信がなく、左を担当するカットインプレーがあまり上手くないエウベルや、井上、宮市にとってニコのプレーとそれに伴う連動は大きなアイデアになるのではないか。

 

また、ウイングが低い位置でボールを持った時にサイドバックインサイドハーフが2人ともボールよりも前にいる様な状態は確認出来なかった。(ペナルティエリア角付近なら数回あった)

 

マリノスの場合、特にサイドバックは上がるタイミングが早すぎると感じる。

 

ウイングやインサイドハーフがスペースを開けたら、そこに飛び込んでいく連動性がない。ウイングよりも前でマークに付かれて立っている時間が長すぎる。

 

 

張り続けるヤマル

 

しかし、やはりスペインのミドルゾーン守備は危うい。ゴールからのキックオフ攻撃でクロアチアに中央でオープンを作られると、ゴール中央ペナルティアーク付近からシュートを被弾。シュートが当たり損ねたのもありGKセーブ。(26分55秒)

 

しかし自陣のスローインからゴールが生まれる。

 

内側でラインブレイクランを仕掛ける回数が目立つニコに対して、同じタスクは負わず張った立ち位置が多いヤマル。

 

スローインの落としから大体あの辺な対角線ロングキックが炸裂。広大なスペースがあるのだから精度はそこまでいらない。追いつければいいと言わんばかりなラフアタック。

 

 

これが刺さるのがサッカーの怖い所。

 

カットインプレーからのパスはカットされるが、こぼれ球で2次攻撃、ヤマル、ペドリ、横パス2本で先制アシストを決めたファビアン・ルイスがフリーになると、2人抜きからのショットで2点目を決める。

 

保持に拘る以上、サイドの低い位置で圧縮を受けるとして、ローリスクな脱出方法は用意する必要性を感じる。通ればハイリターンな質を持ったウイングがいるのだから。

 

ミドルゾーンで劣勢だったスペインはボール保持率46%ながら、両ウイングで後方のスペースを素早く狙う攻撃でスコア上の優位性を生み出した。マドリッドの様だが実にスペインらしくない。

 

 

 

インサイドハーフ(ペドリ)は上下左右でタスク過多

 

しかしスペインのミドルゾーン守備はやはり怪しい。またしてもキックオフ攻撃からあれよあれよとパスが通ると、ゴール中央、ペナルティエリア入り口でオープンなシューターが誕生し、コースを狙うシュート。(32分50秒)

 

40分40秒ごろにも、4141でブロック守備をしているにも関わらず、タスク過多なペドリと自陣ではルーズなヤマルの裏がオープンになり、決定機が生まれている。SBを活用したヤマルの裏は狙い目になるかもしれない。

 

しかし一方で47分、ショートコーナーからヤマルのこれぞクオリティというクロスで3点目。正にワールド級ヤンマテウス。やるかやられるか。

 

先ほどのピンチはGKの見事なセーブで事なきを得たのだが、スペインのミドルゾーン守備は優勝できるとは思えない脆さを露呈。もちろんクロアチアのブロゾビッチ、モドリッチコバチッチがリンクした高い流動性で上下に連動する保持攻撃は見事であり、正直マリノスではどれだけやられるのか想像がつかない。

 

両ウイングの裏を利用されまくり、天野か植中がヘロヘロになっているのが見える。

 

動ではなく静、白いマドリッドがシティにしたように、これだけの強豪相手になると後ろのスペースを消す方法で対応するしかないように感じる。トーナメントを勝つならレアル・マリノッスか。

 

世界で戦う水準は相当に坂の上の雲だ。

 

ちなみにこのゲーム、最終スコアはスペイン3-0クロアチアだが、ゴール期待値は2.01-2.38だった。