横浜F・マリノス ファン

横浜F・マリノスを応援するイチファンによるブログです。

データから見る 2017年に横浜F・マリノスは何を目指したのか

当初にはデータをベースに、翌シーズンを見据えつつ、『2017年にマリノスは何をしようとして、何が出来て、何が出来なかったのか』を、サポーター、ファンが出来るだけ理解できる様な記事を予定していた。

 

 

ところが、皆さんもご存知の例の件もあり、若干、そちらに比重を置いた構成に変更する事にした。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

<データ引用元>

サッカーをデータで楽しむ | Football LAB[フットボールラボ]

Yokohama Marinos live score, schedule and results - Football - SofaScore.com

 

 

 

 

17年 齋藤学は前年から大幅に減衰した数字を記録

 

 

2016年に大ブレイクし、海外移籍を模索したことで、キャンプ後にチームへ正式合流するなど、オフシーズンに失ったファンの信用を取り戻すべく、マリノスのエースを自身でも宣言して迎えた2017シーズン。

 

残されたデータでは前年から大幅に減衰した数字を記録しているように、空回りに終わったと評する事が出来る。

 

特に、49~51本(シュートの判断が別れる)で1得点に終わったゴール数の激減は1点差ゲームを制してこその強さを誇ったマリノスにとっても、特に下位チーム相手に、大きく勝ち点を落とした要因と言える。

 

 

もちろん、シュートが警戒された事で難しくなり、結果として役割りとしてアシストに回る傾向が多くなった、という理由も想定されたが、データでは、チームでトップクラスにシュートを打った選手と言える。

 

 

出場時間辺りのゴール数は、流石に意地が悪いので掲載しないが、出場時間辺りのシュート数は以下になる。(リーグ戦のみ)

 

齋藤 1.6 本  1ゴール

マルティノス 0.7本  5ゴール

ウーゴ 1.5本  10ゴール (正にストライカー!!)

天野 1.0本 5ゴール

前田 0.9本 4ゴール

バブンスキー 0.7本 3ゴール

 

攻撃を終わらせる役割を、最も担ったという事実が、データでは残っている。

端的に言えば、マルティノスよりも2倍以上、ゴールチャンスがあった、と言える。

 

明らかな決定機のミスは、マルティノスが5ゴールに対して3、齋藤は1ゴールに対して6である。

 

 

更に、8アシストを記録しているが、これはバブンスキーや、前田が極めてテクニカルなシュートを決めたような、シューターの技術に依存している傾向も多く、

 

味方が決定機をミスした、チャンスクリエイト(決定機創出)も含めた数字ではマルティノスの方が、遥かに高い数字を残している。(途中交代、累積イエローもあって出場時間はほぼ同じ)

 

齋藤 8アシスト チャンスクリエイト 7

マルティノス 6アシスト チャンスクリエイト 14

 

 

また、フットボールラボのチャンスビルディングポイントにおいても以下の通りである。

2016、2017(記事表記上 00 を使用)

 

攻撃   72.24 59.86

パス   40.08 30.63

ドリブル 22.68 19.94

クロス  09.44 09.30

シュート 03.99 -8.56

 

 

※注意 

チャンスビルディングポイント はシュート以外は純粋な加算方式である為、出場時間による差異を考慮して、2016年データの2割減を行い、記事内容を修正しました。

 

この出場時間に伴う修正を行った場合、2015年とは各項目で微増、微減となり、どちらが上とは言い切れない数字となります。

 

一方で、出場する事もチームに対する貢献なのであって、貢献度を推測する指数において、出場時間が減ったからといって、減衰計算する必要はないのでは、という考えもあります。

 

 

 

キャリアベストを記録した2016年シーズンには遠く及ばず、あらゆる項目でマイナスを記録、特に打ったのに入らなかったシュートの極めて低い数値が足を引っ張り、総合的な攻撃(貢献度)も大幅に下落している。

 

チャンスビルディングポイントとは | Football LAB ~サッカーをデータで楽しむ~

 

 

昨年初頭、マリノスは主力が流出と騒がれたが、データ的に、それは大きく間違った見解であると、私は反論を行った。

 

今年も世間は騒がしいが、齋藤が17年シーズンにおいて、つまり、最新の状態のチームにとっては、上記のデータを論拠として、チームへの最終的な貢献度において、皆で攻撃の中心となるようにお膳立てをしたが、期待に応えられずエースと呼ぶには程遠い結果だった と主張します。

 

ギリギリ攻めた表現ですが、4つの属性における『無能な働き者』になります。

 

 

では、何故、この様な変化が起きたのか。

 

冒頭で述べた、『2017年にマリノスは何をしようとして、何が出来て、何が出来なかったのか』について、引き続き、残されたデータから引用して紹介したい。

 

 

 

カウンター頻度の激減

 

 

17シーズンにおける最も顕著な傾向を一言で言うと、カウンター(相手ゴール迄に少ない時間で迫る、もしくはシュートで完結した攻撃) が激減している。

 

また、同時に、これは出来なかった、のではなく、選択として行わなかった、つまり使用頻度を下げた、と言える。

 

 

左からフットボールラボにおける2015年、2016年、2017年の指数(※回数ではない)。

 

ショートカウンター  51 49 35

ロングカウンター   43 61 49

 

ショートカウンターの35はJ1リーグの所属チームで最も低い数値である。

 

特に、2016年に大ハマリした、ロングカウンターの使用頻度を大きく落としたのが顕著な傾向といえる。

 

 

一方で、カウンターによる攻撃自体の成功率は極めて高い。

 

ショートカウンターを行った際のゴール率はリーグ1位、ロングカウンターにおいてもリーグ2位となっている。

 

つまり、2017年は使い所を見極めて使っている状態であり、2016年がロングカウンターへの傾倒だとしたら、攻撃における選択肢の一つ、に変わったと言えるだろう。

 

ロングカウンターが大ハマリした2016年は確かに痛快であったが、それに傾倒し、一辺倒では手詰まり感があったのも事実であり、新シーズンにおいて、攻撃の選択肢、その1つに過ぎない状態へと戻すのは、リーグ上位で戦い続ける事を目標にするのであれば、当然の帰結と私は考える。

 

 

そして、これこそが、齋藤が大きく攻撃に関するデータを落とした要因であると考える。

 

開幕戦のように、まんまとやられてくれるチームとディフェンダーもいたが、それ以降に、特に力差が無い上位陣で、柏やセレッソ、鹿島と川崎のゲームで、齋藤があれほどハマったゲームがあっただろうか。

 

チームの政治に問題を抱えたモンバエルツが、シーズン中に行った大改革、故に簡単で、極めて偏ったやり方が、個性とマッチしたからこその2016年シーズンのブレイクであったと私は考える。

 

だが2017年、『あるプレーモデル』とモンバエルツが語った、チームの整備を進めれば進めるほど、齋藤はデータ的には活躍しなくなっていった。

 

 

 

2017年にマリノスは何をしたかったのか

 

 

2017シーズン、マリノスの理想は何だっただろうか。

 

私が考えるに、出来るだけ失点をしない、という前提条件の上で、出来るだけゴールを奪って勝利したい、というのが、新体制発表会で利重氏が『堅守』というキーワードを強く提示した2017年におけるマリノスの理想だと考える。

 

これは、失点を気にせずにとにかくゴールを目指す、更には先ず最初のワードとして、見てる観客を魅了する、等が来ることは無く、それらは、あくまでも前提ありきの二番目になる、という事を意味する。

 

では、この理想を実現する為に、何をするのか。

 

これこそが戦術であり、そもそも戦術とは、戦争において、攻撃(守備)目標と攻撃(守備)方法の決定を意味し、それはもっとシンプルに言えば、目標を設定し、何の兵器を使いたいか、それをどこに置けば最も効果的か、そこに配置するにはどのようにしたらいいのか、という考えである。

 

 

この点で、マリノスが2017年に最も取り組んだ事は、攻撃頻度のバランスを調整する事であり、それは一定時間、ボールを保持した攻撃の再構築である。

 

もっとゴールを奪う為に、得点機会の創造において、セットプレーとカウンター以外の選択肢を増やす意図があり、いわゆるポゼッション、ボールを一定時間、保持した攻撃に注力した。

 

 

その成果として、データでは自陣ポゼッションからの攻撃指数は、2016年の56から60と、微増に過ぎないが、ゴール率は、0.3%(リーグ13位)から、1.2%(リーグ3位)という結果を出している

 

 だが、皆さんは印象として記憶に残っているだろうが、数多くの失敗と、それに伴う代償も発生させてしまっている。

 

 

 

ポゼッションに取り組んだ代償

 

 

自陣脱出率というのは私の造語だが、カウンターの頻度を低下させてボール保持攻撃の比率を上げようとした為、反発力を失った。

 

 

これは、どういうことかと説明をすると、自陣ポゼッションは、本来であれば、そのまま敵陣ポゼッションに移行する可能性も高い。

 

例えば浦和レッズであれば、その指数は、自陣70→敵陣65となっているし、今年降格争いをした、つまり全く上手く行ってなかったチームである広島ですら、自陣66に対して敵陣55となっている。

 

これに対して、マリノスは自陣60、敵陣42と、広島より低い数値を記録し、降格した大宮に極めて近い数値だった。

 

 

更に、広島と異なる点として、抜群の成功率を誇ったカウンターも、使用頻度自体は低かった事から、 ① 自陣から中々脱出出来ない、という皆さんの印象が、そのままデータとしても残っている、と言える。

 

 

これは、更に、② 守備の開始地点が必然的に下がる事を意味し、シーズントータルでのディフェンスラインの高さ平均値を大きく押し下さげた と言えるだろう。

 

 

フットボールラボによると、最終ラインの位置は、新潟の27m(ゴールラインからの距離)に次ぐ、J1リーグ17番目の38mとなっている。

 

ちなみに甲府はリンスとドゥドゥによるロングカウンターを連発する事で反発力を高めるので、43mであり、マリノスもロングカウンターという反発力を活用した2016年は42mだった。

 

上記した反発力が低下し、自陣に押し込まれ、自陣で守備をする時間、機会が増えた結果として何が起きたのか、というと、最悪レベルに悪化したデータとして、チャンスを構築された率、そして平均被シュート数だった。

 

被チャンス構築率 12.2%(リーグ17位)

平均被シュート数 14.4本(リーグ16位)

 

 

まとめると

 

・ マリノスはセットプレーとカウンター以外の得点比率の向上に注力した。

・ それは一定の成果を見せたが、同時に、上手く行かないことも多かった。

・ 上手く行かなかった影響として、自陣でプレーする事が多く、敵の攻撃を多く受けた。

 

 

この結果として、PK、直接FKを含む、セットプレーの失点が過去最悪に大幅増加、更に、その他に分類されるような(こぼれ玉は含まれない)、自陣での致命的ミスによる失点が散見された

 

 

余談ではあるが、同時に、代表戦で日本対策として、中東下位、東南アジア勢、北朝鮮などが、とにかくゴール前を 固めるやり方の有効性が見える。

 

シーズン終盤にいくつかの大量失点があったが、敵ウイングがサイドで抜けてもサイドバックは出ないでエリア内のゾーンを守るように、徹底すればリーグ1位を狙える堅い守備が作れるとも言える。

 

 

 

 

 2018シーズンへ向けて

 

 

 新体制発表会で改善目標として先ず上げられた項目が、攻撃を仕掛ける、仕掛ける回数を増やす、更に『早くアタッキングサードへボールを入れなきゃいけない』というコメントがドル氏からあったが、

 

これはカウンターを選択する比率をまた増やすという回帰ではなく、自陣ポゼッションから敵陣ポゼッションへの素早い移行を意味すると思われる。

 

 

その説明にあたり、チームの取り組む成長として、2016年から遡って考えるんだと、イメージ図が示されたが、データから判断すれば、2016年のテーマはカウンター成功率であり、2017年は自陣ポゼッションのゴール率と言える。

 

よって、順番としてみると、2018年の目標は、自陣ポゼッションの比率を敵陣ポゼッションへの素早い以降による自然減を想定し、指数として、自陣50台、敵陣60台にする事ではないだろうか。

 

これがなされる事で、自然と、自陣ポゼッション失敗の結果として、あまりにも低すぎる2つ指数、ディフェンスラインの位置、更にはショートカウンター指数も改善するだろう。

 

 

 

結論

 

以上をもって、私の結論として、齋藤学は、居るに越したことはなかったが、絶対的なエースではなかったし、今季の重要度も、昨年同等程度だったと推測する。

 

ちなみに移籍先のチームは、データ的にみると、意外とショートカウンター魔なので、適合出来れば、その局面では活躍するだろうし、早く怪我が治り、ワールドカップに間に合うといいですね。

 

 

私の結論としては、2017シーズン、マリノスのベストアタッカーはデータから、天野であり、新シーズンに向けて、彼をビルドアップ作業から開放し、最終局面に参加させる事こそが、チームにとって最大の補強と言える。

 

補強とは、選手を獲得するという意味だけではなく、弱い所を補い、強くする、というのが本来の意味だ。

 

 

この為、ここでパニックになって行動する必要はなく、弱い所は別にあるのだから、ウイングの代わりはもう要らないと思う。

 

発想の転換的アイデアとしては、誰が入っても上手く行かなかった右サイドの再構築も含め、より最終局面への関与へシフトするという意味でも、天野にとって、右ウイングというポジションも検討の余地はあると考える。

 

 

このゴールは2018年のチームで再現可能だ

 

www.youtube.com

 

また、個人的には、ドリブルでセンターラインを進撃し自陣ポゼッション攻撃の完結、カウンターの起点、更には敵陣ポゼッションへの移行が出来るセンターハーフが必要だと感じている。(モドリッチ超必要だぞ、頑張れ)

 

ウイングは大津の加入、仲川の帰還もあり、駒が十分ではないだろうか。

 

 

ここからは蛇足の話になるが、この比較的リスクをとれるポジションこそ、若い選手が、才能を早い段階で輝かせるべきポジションであり、遠藤はもうアマチュアじゃなく、結果が人生に跳ね返るプロとして、座席が空く齋藤の移籍を心から喜ばないといけないし、それはホリケン(要望通り)も、まだ18歳ですから、なんて言ってる場合ではないと思う。

 

今季の放出を見れば、マリノスにとって23歳という年齢は若くない、『そこそこの選手であれば許される』育成対象と見てもらえないのは間違いがなく、これは既に世界的な傾向であり、今後も変わる事はないだろう。

 

 

U-23を解体 

 

もはやRBライプツィヒにとって、ただのタレントでは満足できない。ラングニックSDは「もっと早い段階で才能を手に入れたい」と語り、EU加盟国の16歳のタレント獲得にさらに投資する方針を固めた。

 

www.footballista.jp

 

 

彼はアマチュアなので、まだ椿君と呼ぶが、世界大会での活躍を見れば、(本人が望むのであれば)彼のデビューを来年まで待つ必要があるのだろうか。

 

FC東京、16歳・久保建英とプロ契約を締結!今季中のJ1デビューも視野に - サッカー - SANSPO.COM(サンスポ)

 

 

アーセナルは若手が次々と活躍して凄い、ヴェンゲルは凄い、いや、彼らは見つけるから凄いのではなく、見つけた選手をプレミア上位を争うプレッシャーの中でも使うから凄いんだよね。

 

18歳であろうと、所属してマリノスのユニホームを着ている以上は、戦力として考えたい。

 

そしてA契約は契約解除金を設定した3年程度の複数年契約で。

 

 

つづく ↓ 補足記事

 

speir-s.hatenablog.jp

齋藤学の計画的0円移籍という最悪の決別

既報の通り、齋藤学の移籍についてファンとして、2点、主にビジネス面と、スポーツ面において述べたい意見があるが、記事を分けることにした。

 

この記事では、題名の通り、ビジネス面について意見を述べる。

 

www.f-marinos.com

 

先ず、契約終了に伴う移籍金無しでのいわゆる0円移籍について、複数のメディアによる情報から、事実として語る。

 

後に間違っていたことが判明した場合、謝罪文の掲載、及びこの記事を削除します。

 

マリノス・斎藤学、川崎移籍へ 俊輔に続き「10番」流出 (カナロコ by 神奈川新聞) - Yahoo!ニュース

 

 

私の考えとして『このチームでプレーしたくない』という意志は自由であり、尊重されてよく、出ていきたい選手が出ていくのは仕方がない事だと考える。

 

今回の移籍案件に関して、前年の経緯、それは10番とキャプテンの志願や、メディアを通じて行った数々の発言の責任を問う、感情的な意見があると思うが、私は一切問題にしていない。

 

とにかく 問題なのはフリートランスファー(=0円移籍)での移籍 なのを、多くのサポーター、ファンには再確認をして貰いたい。

 

ましてや、それが、多くの信用を利用した裏切りによってなされたのであれば、極めて非常識なことだ。

 

 

 

 

そもそも何故、選手は0円移籍をしたがるのか

 

 

海外移籍でこの手段が用いられるケースとして、買い手が、それほど金銭的余裕はないが4大リーグの下位または、2部に属していたりするケースで、お試し気分で契約するアジアの選手に1億を超える金額を用いたくない場合が、初期には見られた。

 

だが、国内移籍である今回のケースはもっと利己的な物だと断ずることが出来る。

 

 

簡単に説明すると、支払われる人件費のリソースは、年俸だろうと移籍金でも、基本的に同じ釜の中にある。

 

 

・ 移籍金1.5億円+年俸5千万円×3年であれば 総額3億円。

・ 移籍金0円+年俸7千万円×3年で 総額2.1億円と言える。

 

※ 会社の会計で一括や分割が有るかと思うが、欧州やアメリカスポーツシーンでは総額という考え方が一般的。

 

 

0円移籍なら、新しい移籍先も、移籍する選手も金銭的メリットが高く、WIN-WINになる。

 そして差額の損を担うのは、0円移籍をされた移籍元チームだ。

 

 

今回の0円移籍は、より高い年俸で契約する為に画策された物であり、その為には移籍するチームにいかなる損失が生じようが、気にかけない判断であると私は断定する。

 

人の信用を決めるのは、言葉よりも行動である。

 

 

つまり、昨年移籍しなかったのは、移籍金が重しになって高額の年俸が得られないからであり、マリノスの為ではなかったと認識するのが、行動から見るに、正しいだろう。

 

※ 昨年の移籍に関する決断については誤った認識である、との指摘があり訂正いたします。

 

 

 

してやられたマリノスのマネジメント

 

 

多くの人は平和な世界に暮らしている。

 

 

皆さんの日常には、ニュースなどの情報で見たり知ることはあっても、やったもん勝ち、歴史に名が残るのは勝者のみ、騙すより騙される方が悪い、そんな生き馬の目を抜く世界は存在しないのかもしれない。

 

ちなみに私は嫉妬から自転車のタイヤに釘を打たれた事が3回あるが、そういう一線を越えた悪意に直面する経験は、多くの人は、周囲に子供しかいない学生時代や、ドメスティックな問題である痴情のもつれを除くと、なかなか無いかもしれない。

 

マリノスのフロント陣が、ともに仕事をする仲間として、信用するのは良いことだが、信用とは悪意に対して無防備とイコールではない、と学ぶ必要がある。

 

悪意の多くは先ず、いかに信用を利用するか、から始まるのだ。

 

認識を変えなければ、何度でもやられ続けるだろう。

 

 

今回の件について、マリノスのマネジメントは人が良すぎた、お人好しすぎた、もっと言えばサッカー後進国として、日本過ぎたと言える。

 

シティ・フットボール・グループは日本においてもマリノスでも、世界基準への準拠を明確化するべきだ。

 

 

 

契約更新拒否はチームへの忠誠心低下である

 

 

現在、日本代表で不動の左ウイング・レギュラーと言える原口が所属チームで苦境に陥っているのを皆さんはご存知だろうか。

 

 

原口元気の受け入れ先を待つヘルタだが、残留についても「扉は開けている」と首脳陣 | サッカーダイジェストWeb

 

 

シーズン開幕前に、残り1年となる契約の更新を拒否したことが原因で、チームの信用を失い、大幅に試合出場を減らしている。(今季、全公式戦で先発は3試合のみ)

 

 

チームのレギュラーと呼べる試合出場数がある選手でも、契約が1年を切った選手が更新を拒否した場合、大幅に評価を下げて試合出場数を制限するのは定石である。

 

これは、懲罰や、嫌がらせが目的ではない。

 

0円移籍を画策する、という行為そのものが背信行為であり、そんな行為をする選手は、チームへの忠誠心が存在しないとみなされても仕方がないのである。

 

どんなに頭脳が明晰だろうが、屈強な肉体を誇ろうが、忠誠心が無い兵士というのは、もはや敵とイコールである。

 

 

口でどんな綺麗事を述べようが、0円移籍を画策しているといえる状態、特にJリーグであれば8月以降に、契約期間が半年未満でも契約更新をしないケースであれば、戦力として考えられないので外す、という判断を今後しなければならないと考える。

 

 

今回の件で、マリノスのフロント陣を責める人もいるだろうし、それは上記したように、齋藤学が移籍したからではなく、世界基準を謳いながら、全く出来ていなかったという点 でやむを得ないだろう。

 

ただし、何より、これはファン、サポーターの中でも、0円移籍を画策する事の意味、認識を深め、いざという時に、0円移籍を許容しない世論の土壌形成が必要となる。

 

 

あえて問いたい、甘かったのはフロントだけか。

 

ヨーロッパなら『◯◯(選手名)は残り契約1年切ってるのに更新してないってどういうことだ』と、ファン、サポーターも0円移籍を絶対に許さないという監視の目が光っている。

 

かつて、ビルバオ人しか雇わないのにスペインでリーガの1部に在籍し続けるユニークな存在、アスレティック・ビルバオ において、エースストライカーのジョレンテが契約更新を拒否してシーズンインした時には、毎試合ブーイングと怒号が飛び交った。

 

 

 

今回の件で、マリノスのフロントは世界での定石、判断基準を導入しやすくなった筈だ。

 

いつまでもやられっぱなしではいけない。

 

 

この案件について、スポーツ面での意見は別記事に書きます。

 

 

つづく ↓ スポーツ面ではこちら

 

speir-s.hatenablog.jp

 

 

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戦評 天皇杯2017決勝戦・セレッソ大阪戦

天皇杯2017・決勝戦においてマリノスは最終的に負けた訳であるが、私はとても良いゲームだったと評価している。

 

終盤、松原と飯倉のミスを何とか取り戻すべく、全員で相手ゴールに向かう姿勢は感動的であり、これは正に今シーズン、少しでも上にと、全員で、もがき、あがき、だけれども、あと一歩足りなかった最後の演目として『忘れるべきではない銀メダル』だと思う。

 

チーム全員で取り組む、この一体感は根源的な揺るぎなきベース(基礎)だ。

 

 

 

 

戦術マルティノス

 

 

日本を代表する老舗のサッカーメディアであるサッカーダイジェストは素っ頓狂な見出しの戦評を公開していたが、筆者は戦術+選手名を使う意味を軽く考え過ぎていないだろうか。

 

【天皇杯|戦評】“戦術マルティノス”の限界と“全員攻撃・全員守備”の底力 | サッカーダイジェストWeb

 

 

これは、そもそもの話をすると、この戦術+選手名というのが一躍有名になったのは、ブラジル代表として活躍した”フェノーメノロナウドが元になっているのだが、サッカーマニアには今更過ぎる既知の話である。

 

 

それは、敵を1人を引きずりながら眼前、2人のDFの間を突破していき、更にとんでもないシュートを叩き込む、異常的な個人打開力のみで、

 

クライフ監督退任と共に崩壊してしまったバルセロナをリーガ2位に押し上げた、チームに依存しない、助けがいらない、という意味ではメッシ以上の存在に対しての表現であり、

 

更に言えば、勝っても批判されるバルセロナにおいて、近年稀に見る退屈極まりないチームを率いた監督の発言を晒し上げる、嘲笑的な皮肉である。

 

 

今のマリノスは、取り組み始めたがゆえに上手く行かない部分があるのは確かだ。

 

しかし我慢強くチャレンジを続け、団結力で決勝の舞台までたどり着き、120分、最後の瞬間まで健闘したマリノスというチームに対する戦評、評価として妥当なのか、言葉の経緯と歴史を学び、物を書く、文字を綴る事を仕事とする人間として、適切な言葉であるのか再考してもらいたい。

 

 

 

 

マルティノスが前半に活躍した理由

 

 

専門誌の記者にとっては、マリノスマルティノスの個人打開力のみに攻撃を依存していると感じたようだが、私は意見が異なる。

 

 

特にマルティノスが躍動したのは劣勢であった前半の45分間であるが、これには理由がある。

 

先ず、前半、マリノスがDFラインから試みたビルドアップにおいて、自陣でボールを失った回数は7回にものぼる。

 

これは、とにかく蹴り出して相手センターバックが難なく処理した回数や、裏を狙って通らなかったパス、ハーフライン付近でバブンスキーや両ウイングが受けたが取られた回数は除外しての数字なのだから、明確に劣勢になるのも当然といえる。

 

その劣勢の中で、マルティノスへのパス本数、ドリブル、アタッキングエリア侵入回数、チャンスクリエイトが増加したのは事実である。

 

 

だがそれは、ビルドアップで比較的持てる選手がいる左サイドに逃げるしかなくなる回数が増え、最終的に対角へのロングボールが数回通った事、

 

更に、そのまま自陣左サイドからセレッソの攻撃が始まる事により、マリノスのウイングを用いたロングカウンターの設計として、右サイドのマルティノスは前目に残りカウンターに備えるので、

 

切り替えの局面で飛び出していける、速攻時にパスを受ける機会が増える、といったように、あくまでも状況が生み出した傾斜に過ぎない。

 

 

後半、延長と、セレッソの脚が止まり、そしてDFラインが下がり、相手陣内まで容易にボールを運べるようになると、むしろ左サイドで攻撃機会が増えたのは偶然ではない。

 

初めて観た専門誌記者には解らなかったようであるが、マリノスを1年観た皆さんにはおなじみな、左傾斜のビルドアップと劣勢の時ほどマルティノス、である。

 

 

 

 

メタらなかった

 

 

ゲーム界隈にはメタる、というワードがある。

 

硬い金属で殴るということではなく、ここでは、相手を限定した1戦限りの戦い方を採用する事、と訳したい。

 

 

シーズン3戦3敗、相手が何をやってくるのか十分わかっている。

 

高いラインに対して例えば徹底的に裏を狙ってDFを後退させて守備エリアの間延びを誘い、最終的に蹴り合いに引きずり込む様な戦力、マルティノスを筆頭に走力を武器にする駒も揃っている。

 

事実、前のめりになったセレッソがバランスを崩したことでコンパクトさを欠き、激しく攻守が入れ替わる、切り替え勝負のハイテンポな展開になった後半5~15分において、立て続けにチャンスを作り出したのはマリノスだった。

 

 

だが、一戦限りのやり方、というのも選択肢にある中で、それを採用しなかったのが、天皇杯決勝のマリノスだ。

 

 

だから監督を勝負弱いのだ、とする声も上がるだろうが、私はそうは思わない。

 

攻撃陣が、特に齋藤さんのシュートが全然枠に飛ばない中で、1点差ゲームを全て物にして14戦無敗、1位すら手が届く状況にまで立ち回ったのは見事であるし、何よりルヴァンより運の要素が高い完全一発勝負のカップ戦で、決勝まで進出した監督に対する評価として適切ではないだろう。

 

1戦ではなく、シーズンでモンバエルツを見た時に、とても勝負強いチームを率いる監督といえるだろう。

 

 

周囲が騒ぎ立てる喧騒の中『マリノスの為にプレーする、忠誠心を持った選手が揃った』17シーズン、取り組み始めたことが上手く行かない中でも、団結して乗り越えてきたフィナーレとして、私はこれでよかったと思う。

 

いちファンとして、残念ではあるが、そこに悔しさや憤りといった感情的なものは一切ない。

 

 

そして、より高いレベルでは、メタって勝ったとしても評価しないという基準、それがビッグクラブであり、CFGの、シティグループの価値観だと思う。

 

これは日本初のプロゲーマーと言える彼の考え方にも通じる。

 

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

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セレッソ戦を終えて 勝ち点60への道 横浜F・マリノス

敗戦は何度もあるし、いずれにせよ辛いものだが、セレッソ戦は気持ち的にも数字的にも、なかなかの手痛い敗戦だった。

 

それでも、まだシーズンは残っているし、意味合いとしてもACL出場権、順位というあくまでも相対的な物ではなく、目標として勝ち点60を目指すという小さくないターゲットが残っている事を忘れてはならない。

 

またしても審判への態度という感情的なもので累積8枚目となるイエローカードの提示を受けたことでマルティノスのリーグ戦は終わり、大怪我をしてしまった斉藤と合わせ両翼を完全に失ったとしても、より良い未来の為に、誤差の範囲ではない明確な進歩を多くの人が感じられる結果、数字が今のチームには必要だ。

 

まだ目標はあるんだ、として、シーズンも最終盤へと局面が映った段階のマリノスでは、両翼が居ないぞ、という問題を含めて様々な人的問題が生じているが、先ずはセレッソ戦を振り返りたい。

 

 

 

盾が崩壊した

 

 

さて、Twitterで失点シーンを振り返った局面。

 

 

 

 

 

失点が多ければ守備が崩壊というワードがあてがわれるが、印象ではなく、実際にどう壊されたのかを理解できていない人もいるだろうと、簡単にまとめた。

 

どちらのシーンも、フィニッシャーにラストパスが出る局面で、ゴール前の4枚という、モンバエルツが監督のマリノスにおいて、特徴的とも言える、盾が崩壊しているのが解る。

 

この盾と言う概念は被シュートが多い、ボコボコにやられてる試合が多いという印象があるのに、失点は少ない、という一見、幸運なだけに見えてしまうマリノスの堅守における重要な要素となる。

 

 

 

リスク管理の鬼

 

 

ペトロビッチの浦和や、川崎の様に、リーグで突き抜けた数字を残すチームというのは、やはり強固な意志が介在している結果だと私は思う。

 

この点、前述の彼らは得点だが、マリノスは失点数において(昨日の4失点は痛恨だが)リーグトップを毎年争って来たのも、たまたま優れた中澤のようなセンターバックがいるからという偶然性の物ではなく、我々のアイデンティティは堅守なんだ、というペトロビッチや風間、両氏に負けない位の強い意志が介在してこそだと考える。

 

それが形として伺えるのが、徹底したリスクの管理であり、前から敵ボールを取りに行く、攻撃を制限する、ゴール前を固めよう迄じゃなく、最終的にシュートを打たれる場合までを想定したリスク管理というものが、モンバエルツリスク管理に対する強い意志を感じる部分である。

 

 

それは敵の攻撃に対してどう守るか、という段階において、ボクシングに置き換えて考えると、そもそも攻撃をさせない、届かない位置にいる、出を止める、任意の場所に打たせる(避ける)、受け流す、などが有るが、

 

マリノスは、それらが上手く行かずに被弾するとしても、いや被弾する事も最初から想定して、ガードの上から打たせダメージを最小にする、という準備ができていると言える。

 

これをどの様に実現しているかというと、4人のDFが我慢強くブロックを維持、シュート、またはラストパスの局面まで4枚のDFが距離感を維持している姿(=盾を構えて受ける)に垣間見える。

 

例えば、日本代表には食らったら終わり的な意味で、この辺の意識が薄いように見える。

 

以上を踏まえてセレッソ戦の失点シーンをもう一度、考えてみると、盾が崩壊しているのが解る。

 

 

 

何が起きていたのか

 

 

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遠藤は1対1で危険性を感じなかったし、スピードもある選手でフォローの必要性は無いと思ったが、松原がジワジワと近寄ったのは非常に嫌な感じがした。

 

その結果、まぁ、昨日のマリノスの前線ではなし得ない程、レベルが高いパスからシュートのクオリティではあるが、極めて痛烈な同点弾を食らってしまうことになる。

 

 

この同点弾は、2点目につながる。

 

正直、前線はカウンターの局面においてミスだらけのボロボロで、もうマリノスは1-0で終わらせるしか無いという状態だったのはスタンドの皆が感じてたし、それは中澤も痛切に感じていたがゆえに、彼のメンタルに悪く影響したと思う。

 

 

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中澤が、引いた柿谷についていった事で大穴が空いたとして、扇原がカバーするのかと言えばそうでもなく、誰が埋めるんだというのが解決しなかった。

 

中町も見てしまってる状態で、これを中澤が悪いとは言えないが、良くない形になってしまう周囲の状況も想定して冷静に我慢をして、最終局面で大ダメージを受けない状態を維持するのが正解だった。

 

 

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更に、杉本がファーに流れて代わりに右にいた水沼が中に入った事で、下平は杉本を見るけど、栗原はついていけないし、扇原は見えてないし、マルティノスは人数足りてるやろ、と構えるし、という結局、周りにマリノスの選手はいるんだけど完全にフリーになった。

 

盾に開いた大穴と、それを狙う完全フリーの選手、そこへ素晴らしいアイデアとそれを実現する完璧なテクニックでラストパスが出たのではどうしようもない、シュートもノーミスだ。

 

 

 

ロングカウンターが出来ない

 

 

25分くらいまで、練習でやってきました、というセレッソを空転させる術が尽く上手く行って、2点目も狙えるのではないか、という状態だった。

 

もちろん早い時間の先制点という事で、引きすぎてしまったという反省の弁にあるような態勢になってしまったのはあるかもしれない。

 

だが、その状態になったとして、それはそれで上手く利用してきたのが昨秋以降のマリノスであるし、その環境下で大ブレイクしたのが斉藤学でもあった。

 

 

ところが、昨日の前線は、スピードやドリブルどうこうではなく、ロングカウンターが十分できる局面でミスを多発してしまい、アタッキングエリアにも入れずに攻撃が終わる、つまり相手ボールにしてしまうパターンを連発してしまった。

 

 

セレッソの攻撃が左に偏っていたが故に、ターンやドリブル、デュエルにおいて良さを見せるバブンスキーが起点になる回数が極端に少なく、カウンターの局面でアタッキングエリアまでは入るという最低限の攻撃機会すら作れないのは、

 

クオリティを持ったアタッカーを揃えるセレッソ相手に、攻撃を受け続ける事を意味し、確率論として、ミスはどうしても発生してしまうものでもあり、失点は時間の問題であったと言える。

 

 

 

モンバエルツに何か出来ただろうか

 

 

彼が能動的にゲームを動かせない、という評は私の印象とは異なる。

 

最初からそういうプランを用意していない、というのが正しく、逃げ切りの局面ではセンターバックを投入しての5バックというプランは用意されている。

 

つまり、ゲームの情勢を読めない訳でも、意気地がないから動けない訳でもなく、ゲーム中にベーシックを大きく崩す様な転換を好まない、というのが正しい評ではないだろうか。

 

それは先程のリスク管理という意味で、安定を何よりも重視している姿勢が現れていると言える。

 

 

それに雨が強くなって以降、急に精度を落とし始めたビルドアップを改善するというのは難題であるし、昨日のゲームで何かを出来たとすれば、

 

後半の開始からロングカウンターの成功だけを見据えてマルティノスバブンスキーの2TOP(天野がサイドに落ちて4-4-1-1)化という、駒の性能だけを考えた盤上でしか成立しない配置転換ではないかと思うが、ここまでを読んで、リードが有る状況でモンバエルツが準備もしていない博打をする事は無いのが理解できるだろう。

 

 

一方で、マルティノスすら居ないのが確定した2試合がマリノスには残っている。

 

勝ち点60へ向けて、何が何でも勝ちたい2ゲームでは同じくビルドアップが上手く行かない状況も想定される。

 

敵の攻撃は盾で受け止める事を再確認するとして、必然的に浮上するエース級の両翼無しでロングカウンターの再設計という大問題は、天皇杯とは別に、モンバエルツ最後の大仕事であり、チームの再浮上を何度も行ってきた彼の手腕に期待したい。

 

 

横浜F・マリノスで敗北を知った日 (リライト 2013)

新潟のFW鈴木武蔵が放ったシュートがキーパーの榎本を破り、ボールがネットに収まった時、スタジアムは完全に冷え切った。

その光景を、見ていて少し惜しく思ってしまった。


これが最終節ならマリノスにとって凄い歴史になっただろう。



Jリーグ2013シーズン総評


2013年のJリーグは勝てば優勝という横浜Fマリノスが連敗し、広島が逆転で昨年に続き、史上4チーム目の連覇を達成し、幕を閉じた。

昨シーズン降格したG大阪に続き、一時期は黄金時代を築き上げた磐田が降格するなど、浦和、鹿島、名古屋と言った近年の上位陣にサイクルの終了や、変革の苦しみが見えた。


一方、川崎や新潟、C大阪など、監督によりチームの方向性が確かになったチームからは大久保、川又、柿谷と言ったエースストライカーの出現も重なり、チーム共々、躍進を遂げた。


また近年、残留番長の称号を誇り、あそこより下に言ったら降格と言われた大宮が、前半戦Jリーグ無敗記録を更新する快進撃を見せ、首位に躍り出たときは他全チームが得体の知れない降格の恐怖に襲われた。

だが結局、大宮は後半戦、17戦1勝に終り、いつも通りギリギリ残留のライン収まり、残留番長の異名を守った。




横浜Fマリノスの2013


リーグ戦2位、ナビスコ杯ベスト4、天皇杯優勝。

ACL出場権(リーグ3位)獲得を目標にしていたチーム、総じて見れば成績的にほぼ完璧なシーズンと言っても過言では無い。


特に素晴らしかったのは攻撃時に攻撃から守備への切り替えの早さ、つまり失ったボールを相手の陣内で高い位置からすかさずに奪い返しに行く、勇敢な姿勢を貫いた事だと思う。



攻撃サッカーの信奉者、ルイス・ファンハールアヤックス黄金時代に言った言葉

「私の理想は90分間を相手のコートで過ごす事だ。」


もちろんこれは到底無理な理想ではあるが、昨今のトップレベルにおけるトレンドとして、FCバルセロナのパス回しを真似るのではなく、ボールを失った後の早さを取り入れる風潮がある。

そこをよりハードにフィジカル的に洗練させたのがバイエルンであり、昨シーズンはリーグ制覇だけでなく、バルセロナを倒し欧州王者にも輝いている。



現行のトレンドに乗っているだけでなく、チームとして機能・実行出来ていたのが、リーグMVPに輝いた中村俊輔のプレー以上に、とても見ていて痛快だった。

サッカーはあくまでもチームスポーツであり、チームとしての連動が見せる機能美に優る、名プレーは無いと考える。




マリノスに生じた綻びと限界の露出


9月以降、マリノスのゴールシーンは凄かった。

どのゴールも毎週、今週のベストゴールにノミネートされ、更には実際に月間ベストゴールも次々と誕生した。


ただそれは、とんでもない個人技が炸裂した時しか、得点が決まらなくなっていたのと同義だった。

イージーゴールが無かった。


これが何故かと考えると、首位になってからは勝たないと順位を守れない中で、慎重なゲーム運びが増え、成功率が低い速攻の数が減ったと言う節もあるがハッキリとしない。

 

確実なのは、速攻が減っただけでなく、更に研究された点も含め、以下のような型にはまったゲームが多くなった。

 

1,ボールを持つ時間が長い攻撃が増えた(=戦略として持たされる)

2,ビルドアップ能力の低さを狙われる

3,サイドに逃げる事でしか前に進めない

4,結果、ワントップ以外は皆ペナ角に集まって攻撃を開始するが、中は圧倒的数的不利でクロスを送っても意味がない

 

5,その内カウンターを食らう(新潟戦、川崎戦)



この点、今シーズン16点を取った、マルキーニョスは確かに不調ではあったが、誰がFWを勤めていても厳しかったかもしれない。

ただ、千葉から獲得した藤田、レンタル移籍から復帰した端戸、どちらも監督からの信頼が低かったのは間違いがない。

実際、リーグ戦では一度たりとも、マルキーニョスの代わりに使われた事は無い。

メンバーの固定化は抜群の安定感をもたらしたが、歯車が欠けると打開策が無く、特に肝心な時に使えない選手、使わない様な信頼度が低い選手を、何故、シーズン後半まで置いておいたのか疑問でしかない。

それは結局の所、フロントが動かない、動けない部分も含めて、総じてチーム力が無かったと言う事なんだと思う。




入場62,632人、Jリーグ最高記録更新


11月30日Jリーグ第33節横浜-新潟戦、62,632人という観客数はJリーグ史上最高記録を更新した。


過去6万人規模のゲームを日産スタジアムで観戦した事が何度かあったが、思い起こせば全てがJリーグのゲームではない、W杯やクラブ杯のような全席指定席のゲームだった。

いつもの東口に向かうと、入り口を案内され、一旦南口迄行って折り返し、また東口に戻ってくる列に並ぶ事となった。


ただ、これを大変とも何とも思わなかった。
体験を楽しむってこういう事、日常じゃない物だからこそ価値があるんだ。


例えば、立地が最高の日産スタジアムでも駅からスタジアムまでの道を歩くと10分近くかかる。
行きも帰りも、酷いゲームの後も、この道を歩く時間がとても大切だ。

サッカーの試合を楽しむのはスタジアムだけでなく、スタジアムへと続く道から始まってる。

また一つ、「あの時は~」と語られる歴史が、チームに増えた事を嬉しく思う。




敗北を知る


最終節川崎戦、新潟戦同様に、マリノスは0-0の均衡の中で、勝たなければ行けない苦しさに耐えられなかった。

人目もはばからず号泣する選手達を見るのは辛かったが、正直な話、心の底からは、その絶望の縁まではどこか同調(シンクロ)できず、この結果に一定の満足みたいなものを感じてしまっていた。

 

『これはこれで悪くないぞ』と

 


そんな感覚は、何が何でも優勝を決めると意気込んだにも拘らず敗北した、新潟戦でも同様に感じた違和感だった。

マリノスを自分のチームと想い、ワンプレーに一喜一憂して1年を過ごしたが、私は、まだどこか他人事だったのだろうか。


いや、違う、そうじゃない。


また、Jリーグ最高入場者記録を塗り替え、敗北した新潟戦が最終戦だったら良かったのにと思っているが、別に苦しみを喜ぶ、ドMな訳でもない。


終わってみて思うのは、勿論優勝を願っていたが、結果として頂点の喜びも、屈辱の敗北も、明と暗、極と端、ピンとキリではあるが、どちらも味わった事が無い体験だったから、私としては、どちらでも良かったのではないだろうか。

これも1つの体験と、サッカーチームに寄り添った中で味わえる体験として、すんなりと受け入れることが出来てしまった。

かつてもっと劇的に優勝した歴史があるのだから、どうせならもっと劇的な悲劇でも良かった、と思ってしまうのは流石にイカれてるかもしれないが。



20年経った今でも語られるドーハの悲劇の様な、激痛と共に刻まれる敗北の歴史は、これまでのマリノスには無かった。

いつか、必要だったと思う日であり、この歴史を体験している事を自慢として語る日が来るんだと思う。