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戦評 天皇杯2017決勝戦・セレッソ大阪戦

天皇杯2017・決勝戦においてマリノスは最終的に負けた訳であるが、私はとても良いゲームだったと評価している。

 

終盤、松原と飯倉のミスを何とか取り戻すべく、全員で相手ゴールに向かう姿勢は感動的であり、これは正に今シーズン、少しでも上にと、全員で、もがき、あがき、だけれども、あと一歩足りなかった最後の演目として『忘れるべきではない銀メダル』だと思う。

 

チーム全員で取り組む、この一体感は根源的な揺るぎなきベース(基礎)だ。

 

 

 

 

戦術マルティノス

 

 

日本を代表する老舗のサッカーメディアであるサッカーダイジェストは素っ頓狂な見出しの戦評を公開していたが、筆者は戦術+選手名を使う意味を軽く考え過ぎていないだろうか。

 

【天皇杯|戦評】“戦術マルティノス”の限界と“全員攻撃・全員守備”の底力 | サッカーダイジェストWeb

 

 

これは、そもそもの話をすると、この戦術+選手名というのが一躍有名になったのは、ブラジル代表として活躍した”フェノーメノロナウドが元になっているのだが、サッカーマニアには今更過ぎる既知の話である。

 

 

それは、敵を1人を引きずりながら眼前、2人のDFの間を突破していき、更にとんでもないシュートを叩き込む、異常的な個人打開力のみで、

 

クライフ監督退任と共に崩壊してしまったバルセロナをリーガ2位に押し上げた、チームに依存しない、助けがいらない、という意味ではメッシ以上の存在に対しての表現であり、

 

更に言えば、勝っても批判されるバルセロナにおいて、近年稀に見る退屈極まりないチームを率いた監督の発言を晒し上げる、嘲笑的な皮肉である。

 

 

今のマリノスは、取り組み始めたがゆえに上手く行かない部分があるのは確かだ。

 

しかし我慢強くチャレンジを続け、団結力で決勝の舞台までたどり着き、120分、最後の瞬間まで健闘したマリノスというチームに対する戦評、評価として妥当なのか、言葉の経緯と歴史を学び、物を書く、文字を綴る事を仕事とする人間として、適切な言葉であるのか再考してもらいたい。

 

 

 

 

マルティノスが前半に活躍した理由

 

 

専門誌の記者にとっては、マリノスマルティノスの個人打開力のみに攻撃を依存していると感じたようだが、私は意見が異なる。

 

 

特にマルティノスが躍動したのは劣勢であった前半の45分間であるが、これには理由がある。

 

先ず、前半、マリノスがDFラインから試みたビルドアップにおいて、自陣でボールを失った回数は7回にものぼる。

 

これは、とにかく蹴り出して相手センターバックが難なく処理した回数や、裏を狙って通らなかったパス、ハーフライン付近でバブンスキーや両ウイングが受けたが取られた回数は除外しての数字なのだから、明確に劣勢になるのも当然といえる。

 

その劣勢の中で、マルティノスへのパス本数、ドリブル、アタッキングエリア侵入回数、チャンスクリエイトが増加したのは事実である。

 

 

だがそれは、ビルドアップで比較的持てる選手がいる左サイドに逃げるしかなくなる回数が増え、最終的に対角へのロングボールが数回通った事、

 

更に、そのまま自陣左サイドからセレッソの攻撃が始まる事により、マリノスのウイングを用いたロングカウンターの設計として、右サイドのマルティノスは前目に残りカウンターに備えるので、

 

切り替えの局面で飛び出していける、速攻時にパスを受ける機会が増える、といったように、あくまでも状況が生み出した傾斜に過ぎない。

 

 

後半、延長と、セレッソの脚が止まり、そしてDFラインが下がり、相手陣内まで容易にボールを運べるようになると、むしろ左サイドで攻撃機会が増えたのは偶然ではない。

 

初めて観た専門誌記者には解らなかったようであるが、マリノスを1年観た皆さんにはおなじみな、左傾斜のビルドアップと劣勢の時ほどマルティノス、である。

 

 

 

 

メタらなかった

 

 

ゲーム界隈にはメタる、というワードがある。

 

硬い金属で殴るということではなく、ここでは、相手を限定した1戦限りの戦い方を採用する事、と訳したい。

 

 

シーズン3戦3敗、相手が何をやってくるのか十分わかっている。

 

高いラインに対して例えば徹底的に裏を狙ってDFを後退させて守備エリアの間延びを誘い、最終的に蹴り合いに引きずり込む様な戦力、マルティノスを筆頭に走力を武器にする駒も揃っている。

 

事実、前のめりになったセレッソがバランスを崩したことでコンパクトさを欠き、激しく攻守が入れ替わる、切り替え勝負のハイテンポな展開になった後半5~15分において、立て続けにチャンスを作り出したのはマリノスだった。

 

 

だが、一戦限りのやり方、というのも選択肢にある中で、それを採用しなかったのが、天皇杯決勝のマリノスだ。

 

 

だから監督を勝負弱いのだ、とする声も上がるだろうが、私はそうは思わない。

 

攻撃陣が、特に齋藤さんのシュートが全然枠に飛ばない中で、1点差ゲームを全て物にして14戦無敗、1位すら手が届く状況にまで立ち回ったのは見事であるし、何よりルヴァンより運の要素が高い完全一発勝負のカップ戦で、決勝まで進出した監督に対する評価として適切ではないだろう。

 

1戦ではなく、シーズンでモンバエルツを見た時に、とても勝負強いチームを率いる監督といえるだろう。

 

 

周囲が騒ぎ立てる喧騒の中『マリノスの為にプレーする、忠誠心を持った選手が揃った』17シーズン、取り組み始めたことが上手く行かない中でも、団結して乗り越えてきたフィナーレとして、私はこれでよかったと思う。

 

いちファンとして、残念ではあるが、そこに悔しさや憤りといった感情的なものは一切ない。

 

 

そして、より高いレベルでは、メタって勝ったとしても評価しないという基準、それがビッグクラブであり、CFGの、シティグループの価値観だと思う。

 

これは日本初のプロゲーマーと言える彼の考え方にも通じる。

 

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