横浜F・マリノス いざACL2020!最強の攻撃陣を統計的に考える
アタッキングフットボールを標榜し、完遂した3シーズン※。
多くのチームが掲げるだけに終わる、景気づけの標語みたいなワードを現実へ実装する事に成功した横浜F・マリノス。
今季最大目標のACL2020へ挑む、チームの攻撃的ポジションを統計的に最高効率なユニットを考えたい。
※カレンダー上は、まだ34節が残っているが、ACL決勝戦と同日に開催予定である事を考えれば、形式上の物に過ぎないことは説明するまでもないだろう。
また、2020年において、特にマリノスは常規を逸したスケジュールがあり、それのみならず、5人交代制、そして夏季が終わった以降も継続される、謎の飲水タイムによる実質4クォーター制など、マリノスの競技力を正しく測るシーズンでは無かった点は前提としたい。
ファーストトップ
引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1329065727689510912
httpshttps://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1329065727689510912?s=20://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1329065727689510912?s=20
ACLの外国籍枠と関係なく、断然、エリキを推す。
何故なら、ジュニオールサントスとエリキ、この2択において、途中加入ながらゴールを量産したのが素晴らしいとしても、ジュニオールサントスを選ぶ理由が、全く分からなかった。何しろ比べる相手が悪すぎる。
以下はエリキがコンスタントに出場するようになった後半戦において、2つの異なるポジションでプレーした際の比較データとなる。
合計プレータイム 625分
シュート本数 24本(シュート1本を打つのに要した時間 約26分)
ゴール数 10得点(1得点に要した時間 62.5分)
シュート成功率 46.66…%
チーム全体の攻撃効率 1試合平均 約2.33得点
② 3トップのウイング アウトサイドでプレーした7試合
合計プレータイム 514分
シュート本数 9本(シュート1本を打つのに要した時間 約57分)
ゴール数 2得点(1得点に要した時間 257分)
シュート成功率 22.22…%
チーム全体の攻撃効率 1試合平均 約1.57得点
※ エリキは出ていないので浦和戦は含まれず
※ シュートブロックも計測する方式
事情や思惑があって、並びを3トップにしたかったとしても、エリキのシュート機会を減らして、別の仕事を任せたら、チームとしての攻撃効率も大幅に低下した、という実験結果が出た。
また”ウイング”エリキの2ゴールは東京戦と鹿島戦、どちらもロングカウンターに類する物だった。
補足1
昨季ファーストトップに固定されたエリキが1ゴールするまでに要した時間、105分
今季ジュニオールサントスが1ゴールするまでに要した時間 113.84分
エリキの2シーズントータルなシュート成功率 23.59%
ジュニオールサントスのシュート成功率 17.8%
能力が高いので必要な時間が少なくて済む
補足2
ウイングエリキの対戦相手は上位陣だから、という指摘があるかと思うが、90分フル出場して1本もシュートを打てなかった試合は3試合あり、その対戦相手はC大阪
そして、広島と湘南である。
一方で、インサイドで出場してシュート0本の試合は9試合中、ゼロ。(インサイドでのフル出場は1試合のみ、平均出場時間は69分)
セカンドトップ
セカンドトップは不動のマルコスがいるので議論の余地は薄い。
今シーズン”も”シュート成功率は20%を越えており、起点となるパスを打ち込みながらフィニッシュに関与する理想の選手と言える。アシスト数が1に留まるが、ビッグチャンスクリエイト(味方が下手打った)は7本計測しており、ウイングエリキや仲川の離脱した影響を伺わせる。
故に、代わりとなる選手には高いハードルとなっていたが、浦和戦で発見があった。
フィニッシュワークでは残念なシーンが目立ったが、シンプルなプレーで速いテンポを生み出し、正確なパスを次々と前方に打ち込んだのがオナイウだった。
パス成功率はセカンドトップの選手として 別次元な93%(40/43本)を記録し、キーパス2、アシスト3と、これまでの2シーズン、誰も代わりが務まったとは言えないポジションに、たった90分で答えを出した。
引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1327502761525616641?s=20https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1327502761525616641
また、175cm/75kgという肉体的スペックは敵陣空中戦、イーブンボールの競り合い、カウンターで先に触れるかどうか、という局面で強さとして発揮され、マルコスに対するフィジカル的な優位性を感じさせるに十分なプレーだった。
両者にはボクシングの様なコンタクトを前提とした競技であれば、危険とされるスペック差がある。
右ウイング
水沼、アシスト数10、恐らく満足とは言えない約1000分の出場時間ながら、アタッキングフットボールに別のパターンゴールを確立させたと言える活躍をみせた。
引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1327589468505731073
また、決める側の能力が問われるビッグチャンスクリエイトは13にも達しており、2010年代マリノスで最高のサイドハーフと言って過言ではない数字を残した。
参考
2017年
マルティノス 2300分 アシスト6 ビッグチャンスクリエイト14
今季の仲川が、もちろん計算はできるが、計測は不能なだけに現状では右サイドで最高効率な選手と言える。
左ウイング
もっとも意見が分かれるポジションだろう。
2018年のオフに戦力を補強出来ず、代わりが居ないのにデゲネクを送り出した事態を思い出す、編成やっちゃった案件とも言える。
そもそも、エリキ、エジガル、オナイウとファーストトップが揃う中で、ウイングが居ないからジュニオールサントスを獲得したのではなかったのか…
高野が594分で4アシスト、松田が500分で4アシストする一方で、前田は923分プレーしたが、0アシストに終わった。
勿論、前田には走力での貢献というのがあるかもしれないが、優先順位として、ウイングが0アシストでアタッキングフットボールは成立するのだろうか、疑問を感じ得ない。
まだ利き足でクロスが蹴れる、右サイドの方がチャンスありそうじゃないですかね
そしてドリブラー、今シーズンは各チームでウイングが暴れてる中、川崎の三笘に、C大阪の坂元に、札幌のルーカスに、マリノスのサイドバックが1対1に晒されて無残に破壊される光景を見て、どうだろうか。
今のJ1リーグ最強ドリブラーは彼らではなく、ジュニオールサントスだと言うのに。
引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1327619462690787333
フットボールラボのドリブルポイント1位 13.37を計測
マリノスは試合数が多いので加算値系は有利だとしても、90分での換算は0.80で4位。
これらの数字をサイドプレーヤーではなく、スペースが得られにくい3トップのファーストトップというポジションでプレーする、ジュニオールサントスが記録している。
主なサイドプレーヤーの90分換算
三笘 0.97
坂元 0.46
ルーカス 0.45
昨年のマテウス 0.58
昨年の遠藤 0.74
昨年の仲川 0.66
2017年のマルティノス 0.57
ジュニオールサントス 0.80
また、よく分かった能力として、ダイレクトシュートがとても苦手で、逆に、走っていようが、止まっていようが、とにかく一度ボールにタッチして自分で置いたボールを蹴り込めば、シュートの難易度は関係ない。
なので、クロスが沢山飛んでくるマリノスで、ジュニオールサントスのシュート成功率は17.8%と、マリノス的な水準(みんな20%以上)でみると高くない。
そりゃー、江坂やクリスティアーノのパスをダイレクトで決める重要な仕事があるオルンガの代役は務まらんでしょうな…。
典型的なドリブルシューターであり、クロスをファーで立って待ってる感じと併せ、「あれ、なにか見たことがある…」という感覚は、正に 伊藤翔VスペックNISMO仕様、と呼ぶに相応しいだろう。
データ的にはオルンガやエリキと比較すれば見劣るファーストトップ、だが、カットインマシーンとして左サイドに立っているだけで、
もはや厄災レベルの脅威となるだろう。
中央のエリキと、サイドにいるジュニオールサントスというシナジー(相乗効果)を生み出せなかったのは、もしかしたら今シーズン限りのチャンスかもしれない事を思うと、川崎戦での片鱗しか見られず、残念に他ならない。
手放すんですかね、例えば川崎がウイングとして獲得したら大変なことになると思います(白目)
で、ACLはどうすんねん
外国籍枠3人、問題がいくつか起きる。
特に今シーズンの流行語大賞を受賞しそうな左ウイングレスは再燃するし、オナイウがマルコスの代役なら、エリキの代役はどうするんや、結局、シーズンを通してファーストトップをACLで使えないと分かっていた外国籍選手に頼っていたので、誰もおらんやんけ、と。
これまでのポステコグルー監督をみると、ファーストトップはエリキとオイナウ、セカンドトップにマルコスと天野、右に水沼、左に前田、仲川は状態次第で遊軍的に、大津や松田もプレータイムがあるだろうし、高野や小池がやる試合もあるかもしれない。
ただ、それで攻撃効率は高まるのだろうか。
オナイウが浦和戦において良い確率でプレーしたのは、決定機ミスを1回、成功0/3を記録したシュートではなくパスである。
前田はウイングならせめて利き足でクロスを蹴れる右、もしくはクロスからヘディングでゴールを決めているようにファーストトップが適していないだろうか。
良い精度のキックを持つ選手がもたらす、サイドアタックの攻撃効率はリバプールを見るまでもなく、今季のマリノスでは水沼がウイングの定義を変えたのではないだろうか。
そこで、ベルギーに行ったら何故かドリブル小僧になって帰ってきた天野の適正ポジションはインサイドかい?と。
ビフォー 2019天野(フットボールラボ プレイスタイル指標)
アフター(2020天野 フットボールラボプレイスタイル指標)
鳥栖戦の後半は天野が左ウイング(3バックのセカンドトップ)的にプレーしていた訳ですけど、クロスじゃなくとも、このラストパスが前田では出ないでしょう、と。
確率から見る攻撃効率を求めた前線ユニットは…
・ファーストトップ
エリキ(第1選択)
前田(今季3得点全てクロスをダイレクトシュート 頭2右足1)
マルコス(第1選択)
オナイウ(マリノスの水準で”良い確率”なのはパス能力)
オナイウのシュート成功率は8.1% 3得点 5アシスト
前田大然のシュート成功率は15.8% 3得点 0アシスト
何より得点を求めるアタッキングフットボールを標榜するチームとして、どっちに、どこで、何の、機会を与えたいか。
・左右ウイング
仲川(コンディション次第 パートタイム運用?)
松田(時間限定 パートタイマー)
大津(困った時はなんでも屋)
・右ウイング
水沼(10アシスト 今季の武器)
・左ウイング
天野(連携からスペースに走るのが得意プレー、左足のクロスは随一)
高野(4アシスト 水沼以上のクロススペシャリスト)
※90分換算クロスポイント 水沼1.04 高野1.28
・臨時招集 主に右
前田(せめて右の方が良いのでは?)
小池(左サイドバックの可能性もあるのでウイングまでは無理か)
2.5列目問題
今季のマリノスにおける特徴として、両翼に高いドリブル能力を持ったウイングが居なくなってしまった中で、更に敵陣プレスなどに取り組むチームが増えたことで、2.5列目が攻撃を前進させられるのか、攻撃性能が問われる様になった。
そこで、2.5列目の4人が獲得したパスでの攻撃関与をポイント化した数値(フットボールラボ パスポイント)を、出場時間で割った数値が以下になる。
高い方が優秀。
喜田 0.018846
扇原 0.028229
渡辺 0.030639
和田 0.024847
皆さんが何となく感じ取っている物が、数字上でも確認出来たとして、喜田の守備力が必要な試合、必要だとして使うべき時がある訳で、ならばその時は喜田が前でボールを受けて、攻撃を前進させる役割を請け負わなくて良い構造をチームとして持つべきではないか、と思う。
全ては両翼に、高いドリブル性能を持った選手がいれば問題なかったんや!として、
この異常なスケジュールでは出来ることなんてなかったんや!としても、
もう少し柔軟な、統計的に見える選手の能力を活かす運用を検討してもらえれば、確率論的には攻撃効率が高まるのではないか、と感じる。
まぁ今季、年間100億円のチームには及ばずとも、あれだけの陣容で勝ち点47に終わるに至った大問題は、敵陣プレスの回避方法が知れ渡った事が響いた、失点数なんですけどね。
しかし、なんで急に3バック辞めたんやろなぁ、最初の名古屋戦は論外にしても、守備は安定してたやん。
3バック 9試合 5勝2敗2分 21得点 10失点
元に戻した4バック 8試合 3勝5敗 17得点 17失点
連戦を迎える中で、上位陣には通用しないとか思ったのか、左右にスライドしたり、喜田を押し出したり、システム的に複雑すぎて選手をローテさせる状況じゃ、ムリムリカタツムリ!とか思ったのかもしれないけど、結局は1試合平均2を越える17失点ですぞ、と。
9試合10失点って、神戸にシュート3本で3点取られた、あの試合を入れての数字なので、去年平均を越える守備力(失点しない性能)だったのに。
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横浜F・マリノス 復活へのウイングレス
3連敗目の相手がセレッソだったのは偶然か。
あの時はシーズン最後の敗戦となった2019年セレッソ戦から約1年。
優勝が具体的な目標となる中、手痛い敗戦に批判的な意見を多く目にしたが、全く異なる感想を持ったので、以下の記事を書いた。
統計に基づく確率では勝利に近かったという結論であり、サイドよりも中での適正を見せたエリキ、そしてサイドで質的優位を発揮したマテウス、絶望ではなく希望の一試合であると共に、今にしてみれば、正に優勝へ向けて陣容が固まった一戦であった。
そして今シーズン、現在は6勝3分8敗、状況はかなり異なるが、それほど悲観する試合ではなく、まだ2つのタイトルが目指せるルヴァンカップやACLへ向けて、復活を感じる試合だったと感じた、その理由を書く。
個人の感想よりも統計を信じる
試合中継というのはバイアス(かたより)を受ける。
解説の福田正博氏はセレッソが計画通りで、マリノスの攻撃は効果的でないと繰り返し述べていたが、統計学的には正しくない。
フットボールラボが今季から提示しているゴール期待値というデータがある。
これは、簡単に述べるとAIを用い、シュートが打たれた状況を統計学的に積み重ねる事で、シューターがリーグの標準的な能力を発揮した場合に発生する得点数を数値化した物である。
マリノスのセレッソ戦におけるゴール期待値は 2.314 であり、今季の1試合平均1.611を大きく上回る物で、AI的にはマリノスは効果的な攻撃を行っていたと言える。
(参考 2019シーズンは1.834)
人類とAIの関係で言えば、近年、チェスの天才も、将棋の名人も、囲碁の偉人も、AIには完膚なきまで敗れ去っており、人の感想は自由だが、その感想が正しいか、という考察は必要だ。
ちなみに今季、1試合平均3.1得点している川崎フロンターレのゴール期待値は2.486であり、この試合においてマリノスが記録した数字は、リーグの水準として、かなり高い物と言える。
更に、セレッソのシーズン被ゴール期待値(対戦相手に作られたゴール期待値)は1.42であり、他の試合と異なり、マリノスの攻撃をコントロール出来ていなかったと言える。
※試合における期待値は加算式の為、例えば”難し目なシュート”でも30本打てばそれなりの期待値になるが、そもそも統計的には”難し目なシュート”だろうと30本打てば並の選手なら何本か決まる、という話である。
一方で、セレッソが記録したゴール期待値は1.832と2得点も納得の数値だが、14本のシュートにおいて、内8本は65分以降、つまり伊藤の退場以降に打たれたものであり、2回フリーで打たれたヘディングのフリーキックも含め、全ては清武という偉才に、してやられただけの試合だったと評したい。
いや、三笘に続いて、余りにも無頓着すぎねぇか、ともツッコミたい。
ちなみにはてなブログではこんな風にDAZN動画が埋め込み出来るようになった。
そもそも敵陣プレスは形としてはハマってるのに、畠中がヘディング出来ずに坂元にフリックされた上で、置き去りにされたのが同点の理由である。
敗戦は誰の責任か
確かに喜田の攻撃性能には不足を感じる。
だが、不足を感じたのは別に喜田だけではない。
結局の所、サッカーという競技において最も重要で、勝敗に対するウェイトが大きいのはゴール前のクオリティであって、特にアタッキングフットボールを標榜するマリノスにおいては、何よりも重視するべきテーマである。
どんなに『良いサッカー』をしようが、ゴール前で質が出なければ、質の差で負ける。
ギャラクティコ…!
ゴール期待値は『並の選手なら2.314得点』という意味であり、実際に川崎は期待値を大きく上回る3.1得点をしているように、マリノスの前線が並では物足りないのだ。
この点において、ポステコグルー監督はチームに充分な機会を生み出したが、ジュニオールサントスは2度ヘディングで得点できず、エリキのシュートは2回クロスバーを叩いた。
何より、エースのマルコスは並の仕事はしたかもしれないが、清武が針の穴を通すような少ない機会を2回ともに致命傷に繋げたのに比べると、遥かに機会を得ている中で一本のラストパスが出なかった。
ゴールの期待値が2.314なら最低でも3得点、さらに言えば4得点を出来るような、並じゃないクオリティこそがマリノスの前線に必要な能力である。
誤審がなければゼロ得点だぞ!
仮に、レアルマドリードのエースが1シーズンで10得点だったら、どの様な評価になるだろうか。
名古屋戦のゴール期待値は 0.51 とお粗末という他にない物で、全て監督の責任だが、並以下に終わったセレッソ戦で最も責任が重いのは監督でも、ましてや10人になってから出場した喜田でもない。
敵陣プレスの為の3バック
3トップにマルコスで、アンカー喜田、名古屋戦は余りにも無茶苦茶だった。
今季、ゴールキーパーまでファーストトップがアタックに行く特攻的プレスを繰り返すマリノスにとって、サイドバックを逃し所に置く敵のボール保持攻撃は悩みのタネであった。
マリノスのサイドバックを自陣に釣り(吊り)出せたら闇雲でもいいからDFラインの裏へ蹴っていく、マリノスのサイドバックが出てこなければ、オープンになったボールホルダーが、更に逆サイドの裏に誰でも蹴れるような質でいいから蹴っていく。
得点源のショートカウンターが激減し、唐突な失点が生まれ、全体的な撤退で体力も削られる、正にボディブロー。
これは昨シーズンよりもDFラインの平均位置が高いのに、縦のコンパクトネスが1.2mも悪化(守備陣形が縦に広がり空間が出来ている=FWも釣り出されてる)というデータでも反映している。
前が引き出されて、後ろもついて行くが罠です、という感じ。
この改善策として3バックなのだが、これを守備、失点減少の為と取るか、より高い位置で奪って攻撃する為と取るか、もちろん監督は後者だろう。
まぁ余りにも後者過ぎて、初登場の名古屋戦はオーガナイズ(整理されている)という点で、論外だった訳だが、徐々に仕上がってきた。
例えば、前半10分に敵GKから始まる攻撃に対する動きが分かりやすいが、GKにファーストトップ、2人のCBをセカンドトップの2人が見る中で、サイドバックに蹴られたボールへ小池がプレスに行くと同時に、後ろは伊藤が右で、ティーラトンが左の4バック化して、敵の両サイドハーフを見る。
この時に最大のリスクは逆サイドの敵サイドバックだが、例えば32分、前半にGKのボール保持攻撃からプレスを回避された数少ないシーンだと、以前であれば破局的状況となっていた所だが、クロスが上げられる際に、敵2人に対して、DFラインとして4人が揃っている普通のリスクで収まっている。
また、前半29分頃に中央でエラーが起きてしまい、センターサークル付近で敵にフリーにボールを持たれた際に、5バックで下がる事で両サイドへのロングパスを封じている。この時、中央の裏はチアゴの守備範囲なので蹴られるリスクは低い。
イニエスタなら分からないが、ボールホルダーにとってサイドがフリーに見えない事で蹴りにくい、狭くて難しいと感じる状況にしていると言える。
川崎戦における三笘のゴールが分かりやすいが、4枚で下がると両脇を捨てる事になり、簡単で蹴りやすく、強力なウイングがいるとかなりキツイ。
タレント力で勝負をしてくるチームも想定されるACLを見据える上で重要な進歩ではないだろうか。
前が余って後ろが足りない
『ウイングが重要なのにウイングレスな編成という歪(いびつ)さ』から始まった攻撃効率の著しい低下、それがウイングというポジションを無くす事で改善に向かう辺り、ポステコグルー監督は攻撃に関しては柔軟であり、引き出しは豊富と言える。
ところが難しいのは流石に編成が追いつかない。
中でも痛いのは實藤の怪我でさらなる駒不足が予見されるセンターバックだろう。松原をコンバートするにしても、この過密日程で3ポジションを4人で回すのは現実的ではない。累積警告、退場などのファウルトラブルもある。
なんということだ、設計図を書いて大工を揃えたが、材料がない、昨季のシティかよ。
この際、前に出ても、というよりも前でボールを受ける機会が増えた今季は攻撃性能が大いに問われている喜田をコンバートしてみるか。縦パスを受けるFWを潰す仕事がメインになるなら有りかなしか。
臨時運用した扇原は既に視野に入っているかもしれないし、センターバックの枚数はこれで大丈夫だが、そうすると、和田と渡辺がちぬ。
こうなってくると前から順送りで、大津や仙頭をここに”ズラす”しかなく、この実験は未知数にもほどが有るが、その内やりそうである。ただ、今の天野はやめておこう。
一方で前は豊富なラインナップが揃う。
2つのセカンドトップにはマルコスは勿論、エリキも11キロ走って35回スプリントする本来の片鱗を見せ、10人の中でも何度もボールを引き出す動きで起点となった仲川も何の問題もなくこなせるだろう。
更に、そもそもジュニオールサントスはファーストトップも出来るウイングであって、今の役割ならベターはセカンドトップであり、エジガルが復帰したら本職の2人、エジガルとオナイウで回した方が、今後多くなると推測されるウイングバックからのクロスに対する動きも含めて、ゴール数が増えるかもしれない。
ちなみにセレッソ戦でのクロス数は今季平均22本を大きく上回る32本である。
また、外国人枠も絡んで来るが、5人交代を活かすという点でもエジガル、マルコス、仲川でスタートした後に、オナイウ、ジュニオールサントス、エリキへのチェンジは強烈に他ならない。前田はシュートをミスし続ければ簡単に信頼を失うかもしれない、この点、監督はかなり厳しいと思う。
更に、センターバックの事情を考慮すると、水沼には右ウイングバックの役割をこなしてもらいたい。質的優位を求めるなら博打的に松田を入れる状況もあるだろうし、左利きが天野しか居ないという時もあるかもしれない。
とにかく泣き所はセンターバックの枚数で、合わないコンバートが繰り返されたりして、今度は3バックなのにセンターバックレス、とならない事を祈るのみである。
この問題さえ、脅威の獲得力で今季中に解決出来れば、復活は近いのでは無いでしょうか。流石に無理か。
今という確定した未来から”超越的立場”で過去を見た時に、正解は例えば遠藤の移籍が決まった時のような、もっと早い対応であり、そうであれば杉本、前、山本はチームに残り、松田の復帰、ジュニオールサントスと前田の獲得は必要なかったかもしれないし、リーグを諦める様な状況もなかったかもしれない。
ただ、まだ確定していないマリノスの未来には2つの重要なタイトルが残っているし、そのどちらか、又は両方を制する事ができれば、誰も今シーズンのマリノスを失敗とは言えなくなるだろう。
まだ終わってない、カムバックを期待したい。
ところで余談ですが、「マリノスも誤審やんけ」みたいなクソリプを頂戴する事が想定されましたので触れませんでしたが、セレッソの決勝ゴールにおいて、坂元がクロスを蹴った瞬間、手前の鈴木はオフサイドポジションに居て、更にクロスを触っている(ボールの軌道が変わっている)のでこれも誤審である事をお伝えします。
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横浜F・マリノス NEW天野の運用と常軌を逸した日程
今回は主に競技面から2020年8月末日の時点で、横浜F・マリノスはこの先どうするんだろうか、というポイントを主に綴りたい。
先ず、久しぶりにブログ記事を更新すると、あろうことか、随分サボっていましたね的な反応を受ける事がある訳だが、原則として書きたい事がある時に書く物であって、はてなブログから『お前、90日更新がないから広告貼り付けなぁ(笑)』みたいな、理不尽な所業を浴びようが、そこはブレる事はない。
書く以上は、書いた事、それは伝えたい事であり、その伝播という点でPVを求めるが、別に常時必要なものでもない。
この点で、個人的な感想ではあるが、昨今は試合の分析記事という物が増えている傾向を感じるが、テンプレートが用意され、製造しやすく、日々PVを得るのに良い手段だとして、その内容があまり刺さるものではない。
というのも、ざっと見た感じではあるが、その分野の第1人者には有る、何故分析をするんですか、何を伝えたいのですか、という目的が希薄だからではないかと思う。翻って、貴方にとって、そのPVは常時必要かね?みたいな。
そこに、数値には出にくい選手、その選手がいかに素晴らしいか伝えたいんだ!みたいな目的があれば、残るものがあると思うんですよ。
と何で書くんだ、みたいな話を無駄に長く触れるのも、先日、これぞ地元チーム、Myチームを語る素晴らしい記事だ!というのを久しぶりに見たので、面倒くさい事を言いたくなった。
伝えたい事がある記事は面白いんだよ、とにかく。
そして自分のモチベーションを振り返ると、このブログはスポナビ時代に始めた訳だけど、当時の状況として、マリノスに対して好意的なメディアが殆ど居ない、むしろ悪い事ほど面白がって書き立てられる事に対するカウンターとして、ファクトに基づく反論をしたかったという経緯があり、
その環境が、いまマリノスに触ればPV稼げる的な環境になって、まぁ去年に優勝して大きく変わったよね(笑)みたいな事もあり、最後に勝ち誇って勝ち逃げしておくか、次の機会までしっかりと爪を研いでおくか、みたいな状況であった。
一方で、混迷のシーズンも若干、先に対する見通しが、少なくとも競技面では立つようになったので、Twitterで垂れ流すには長過ぎるという理由で、一度、今感じている事をまとめる事にした。
ニューアマノの○○○○化
タイムラインとか見てると、みんな天野に対してちょっと厳しいんじゃないですかね。
気持ちの問題で、変化して帰ってきた今の天野と、喜田を組み合わせて、天野×喜田(※あいうえお順です意図はありません)=喜田純にすると、すごい選手になるんやないか、みたいな妄想も捗りますが、
私のもう一つの専門分野である、長い品種改良の歴史を持つ競走馬の世界的に、両親の良い所を伝えようとしたら、気性が悪くて、スピードが無く、脚の形も良くない、みたいに悪い所しか伝わらない事が多い訳で、安直な掛け算は危険なのです(真剣)
戦術的ポジションニングが苦手で、狭いスペース、敵の選手間で受けるのが苦手で、いざ自分の前がオープンになっても、なぜか機能停止してしまう、みたいな。
この点で、戻ってきたニューアマノは光る要素を見せつつも、「うーん、何かハマらない」感が漂うわけですが、今季は特にエリキ問題が顕著ですが、ポステコグルー監督は獲得してきた選手を直ぐにマッチさせるのが上手い一方で、どうみても向いていない謎の運用にやたらこだわる性質があります。
エリキも辛いですよね、昨年を観てない人にしてみたら、優勝の立役者?何が良い選手なの、みたいな
この適した運用なのか、という点で、ある意味、天野は最適な位置を探し続けてる選手ではないかと考えます。
偉大な10番の先輩と比較され、マルコスや三好がいる中で扇原と2.5列目のポジションを争う事になり(不満で飛び出したけど)、今はマルコスが突き抜けたクオリティを示す中、更に渡辺の様なポジショナルプレーの申し子のような世代と争う。
いや、でもさ、今のニューアマノのプレー指標を見ると適材ポジションは、マリノスがオフシーズンに失った重要なピースと合致するんじゃないの?みたいに思うわけです。
DATA by フットボールラボ https://www.football-lab.jp/
1366分 インサイドと2.5列目でプレーした2019年の天野
そして、2020年帰ってきたニューアマノ 482分
この傾向、どっかでみたよな…!?
2019年左ウイングで730分プレーしたマテウス
現状、天野のプレー指標に類似するのは各チーム、サイドハーフの選手ばかり
ニューアマノ、左ウイングが合致するんでは?
まぁでもインタビューの受け答えを見ると、監督は怖いですよね。
自ら志願しても、全く別のテーマについて話し出したりされたら(笑)
ただ、これは同時に、エリキや他の選手がハマらずに仕方なく高野を活用している、故に、チームの中で左サイドバックだけが疲労度やばくね問題を解決する重要な運用になりそうである。
また、真ん中を一つ開ければ、大津や仙頭も活用できるし、更に左サイドバック問題は最早、質を落としてでも何とか数を間に合わせないといけないかもしれない。
なにせよ、とんでもない日程が待ち受けるからだ。
マリノスはシーズンを完走出来るのか!?
気持ちとして高く置く、より良い位置を目指すってのはいいとして、精神は物理を越えられないので、現実問題、マジで無理じゃないですかね。
マリノスが参加する、セントラル開催が告知されたACLの日程が以下になります。
会場未定(開催国未定と同義)
10月23日、10月26日、10月29日、11月1日(これは絶対にやる総当たり戦)
で、勝ち上がったらそのままの会場で、11月4日にベスト16を開催
一発勝負のルヴァンカップは2試合勝つと決勝進出として、現在ある帰国者14日間の待機要請を、帰国即検査して陰性ならOKみたいな、特例でゼロにする事が出来ないと、ACL組の出場は不可能なんですよね。
またACLは、11日間で最大5試合を戦う想定でスカッドを組まなければいけないので、少なくともGK3人の22人体制で現地入りしないと戦えない、20人でいけるか?
となると、GKはパクと中林、ユース選手でACLに行って、梶川とユース選手で決勝戦みたいな。
ここで、準決勝が10月7日開催に対して、ルヴァンの選手登録は10月2日締め切りなので、勝ち上がったらオビ・パウエルを呼び戻す、ということは出来ない為、ルヴァン準々決勝を勝ち上がった時点で追加レンタルするしかない。
また、リーグ戦も11月11日、14日に入っており、帰国後は14日間待機となると、こちらもそのままACL組の出場は無理になります。
更にACLを勝ち上がった場合は、25日に準々決勝があり、勝ち上がれば28日に準決勝。
この場合、ベスト16突破の時点で、28日の川崎戦が18日に移動するので同日開催は避けられますが、14日待機要請を回避する方法が無い場合に受ける影響は、カップ決勝以外にも、リーグ戦3試合が確定します。
11月5日(帰国日)→19日?
更に、更に、ACLを決勝まで勝ち上がると12月5日に開催が予定されている為、同日予定のホーム鹿島戦は当然開催できず、この試合は12月1日に移動しますが、ACLに出場する選手は恐らく誰もこのホーム戦には出られないでしょう。
だって準決勝と決勝戦は別の国でやるんだもの(多分)
11月28日(どっかの国)準決勝 これは東アジア地区同士の対戦なので普通は東アジア
12月1日 横浜で鹿島戦
もう14日の待機要請すら関係ねぇ!感じになってきました(皆がんばれ)
この時点で、リーグを後ろにスライドできる、開いてる日程は12月9日のみ、条件付きで両チームが天皇杯に出場していなければ(なおかつ1位、2位の順位決定に関係がない順位なら?)リーグ全日程終了後の、12月23日、27日に出来なくは無い感じですかね。
オフサイドの誤審で、あーだこうだと騒ぐとか、もう、どうでもよくないですかね。
もう今季は、公平に競技力を競うシーズンじゃないんですよ。
皆で無事にゴールまで辿り着こうぜってシーズンです。
もちろん入場制限により、大幅な減収減益は必至な訳で、とにかくみんな生き残ろう
Twitterはこちらです
横浜F・マリノスが突き抜けた数値を記録 走り勝つ=サッカーに勝つ
ただ漠然と、1試合で何キロ走ったのか、ではなく、対面する敵に対して走り勝ったという結果は、最終的にスコアとしての勝利にどれだけ関連したのか、優勝を争った4チームで比較してみた。
果たしてその実効性は、エネルギー(走行量)の差は、パワー(勝利貢献度)の差になったのか。
https://twitter.com/NissanJP/status/1215931231046492160
備考
自チームに退場者が出た試合は、10人になるので、当然に走り負けしやすく、総走行距離も落ちるが、特に、11人換算をしたり、除外するなどの考慮はしていない。
また小数点以下は3桁で切り捨て
記事中で使用しているデータはフットボールラボが提供しているものです。
4位 川崎フロンターレ 1試合平均の総走行距離 105.685km
https://twitter.com/frontale_staff/status/1215062001333886976
総走行距離だけを見れば「走るのはボールだ!」を実践、突き抜けて走らないチーム。
ところが、相対する眼前の敵に対して、という視点で見ると、真実が見えてくる。
① 明確に走り勝った試合(敵に対して3km以上) 1試合 1勝
② 僅かに走り勝った試合(敵に対して1~3km未満)2試合 2勝
③ 走行距離は僅差(-1~+1km) 8試合 5勝1分2敗
④ 僅かに走り負けた試合(敵に対して-1~-3km未満)4試合 2勝2分
⑤ 明確に走り負けた試合(敵に対して-3km以上)19試合 6勝9分4敗
そもそも優勝を争った上位陣の成績なので、基本的に勝率は良い、という前提になる。なので見るべきは、勝率の逆、勝ち点喪失率を見るべきだと考える。
③と④では、全勝した場合の勝ち点に対して獲得した勝ち点は共に、66.666…%
それに対して、⑤においては、0.47368…%と著しい低下が見られる。
これらから分かることは、川崎は走らないチームだが、同時に対戦相手を走らせなくさせてしまう必要があり、明確に走り負けたというゲームは、それが失敗した事(=主導権を失った事)を意味している。
それは、ボールを持つ度に、確実に敵陣に押し込んでペナ角を中心とした狭いエリアでのボール回し攻撃を続けられたら、敵は走りたくても走れない、ということだ。
ちなみに総スプリント数で-20回以上負けている試合は0勝1分3敗。
https://twitter.com/NissanJP/status/1215931231046492160?s=20
3位 鹿島アントラーズ 1試合平均の総走行距離 109.877km
https://twitter.com/atlrs_official/status/1212562940156530692
走行距離は平均程度、では敵に対しての実効性は…
① 明確に走り勝った試合(敵に対して3km以上) 2試合 1勝1分
② 僅かに走り勝った試合(敵に対して1~3km未満)6試合 5勝1分
③ 走行距離は僅差(-1~+1km) 8試合 6勝1分1敗
④ 僅かに走り負けた試合(敵に対して-1~-3km未満)12試合 5勝3分4敗
⑤ 明確に走り負けた試合(敵に対して-3km以上)6試合 1勝3分2敗
④の時点で大きく勝点を落としているように、走り負けイコール負け、川崎よりも関連性が高い結果が見えた。
また、シーズン終盤に過密日程があり、11月は3試合で勝点を落としたが、神戸と広島には④の走り負け、また川崎に対しても、3km走り勝った1度目の対戦ではドローであったが、走行距離が、ほぼ同数になった11月の対戦では0-2負けと、疲労の影響が走力に出ている可能性が伺える。
また、鹿島単体で見てみると、結果として沢山走った試合(1試合総走行距離116km以上)において、1勝1分2敗と成績を落としており、鹿島もある程度相手をコントロールして、110km前後で走り勝てる展開に持ち込まないと、苦しいのかもしれない。
1つの指標として、走り勝てば勝てる、という関連性がみつかる中で、走り負けた試合が全体の半分以上、18試合にも達したのが、3位という順位の割に強い印象がなかった要因かもしれない。
2位 FC東京 1試合平均の総走行距離 109.869km
https://twitter.com/fctokyoofficial/status/1203284926201597952
前線に速いアタッカーがいるとして、総走行距離は特に目立った数値ではなかった。
① 明確に走り勝った試合(敵に対して3km以上) 5試合 4勝1分
② 僅かに走り勝った試合(敵に対して1~3km未満)9試合 6勝1分2敗
③ 走行距離は僅差(-1~+1km) 10試合 6勝1分3敗
④ 僅かに走り負けた試合(敵に対して-1~-3km未満)5試合 1勝2分2敗
⑤ 明確に走り負けた試合(敵に対して-3km以上)5試合 2勝2分1敗
走り負けた試合がそもそも少ない。だが、走り負けると、優勝争いをするチームとしては良くないね、程度に成績が落ちる、やはり関連性があると言える。
また、明確に走り負けた5試合では、そこまで成績が落ちていないと言えるかもしれないが、実はその内、4試合の対戦相手が松本と湘南であり、当該2チームには2勝2分だったが、相手がセレッソになると0-3負けを喫している。
走り負けイコール負けの関連性は見えるが、FC東京も総走行距離は平均的であり、相対する敵を自由にさせない、ゲームコントロールの成果として、走り勝ちを達成していると言える。
ここで、マリノスに行く前に若干のおさらいをすると、今までの3チームにおいて、明確に走り勝った試合において無敗、僅かに走り勝った試合でも、東京が退場者が出たマリノス戦を含めて2敗しただけとなっている。
① 計8試合 6勝2分
② 計17試合 13勝2分2敗
この様に、記事の趣旨として、ここまでにおいて、既に高い関連性は見つかっているが、1位のマリノスは更に別次元であった。
チームとして、選手個人として、パス数、オフサイド数…様々な異常値を2019年のJリーグに残したマリノスだが、ある意味で最も異常な数値が最後に見つかったのかもしれない。
1位 横浜F・マリノス 1試合平均の総走行距離 116.647km
先行予約受付は1月26日まで!
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もうむちゃくちゃだよ…
ワーストはレッドカード+真夏の鹿島戦で104.33km、最高値は4月の浦和戦で記録した127.84km。
① 明確に走り勝った試合(敵に対して3km以上) 14試合 11勝3分
② 僅かに走り勝った試合(敵に対して1~3km未満)3試合 3勝
③ 走行距離は僅差(-1~+1km) 9試合 4勝5敗
④ 僅かに走り負けた試合(敵に対して-1~-3km未満)6試合 2勝1分3敗
⑤ 明確に走り負けた試合(敵に対して-3km以上)2試合 2勝
見るまでもないのだが、その走り勝ちの中身も凄まじい、他のチームとは次元が異なる。
マリノス以外の上位陣が記録した、明確な走り勝ちの数値は、殆どが3kmをちょっと越える程度、例外的な最高値でも5kmにとどまるのに対して、マリノスは5km以上走り勝った試合が12試合、もっとも差が出た試合は4月の神戸戦で、
なんと9.61kmと選手一人分だ。
敵に退場者が出ている訳でもないのに、1人分多い優位性、スペースを埋める力、カバレッジパワーを発現させている。
マリノスに付き合う結果として、多くのチームが普段よりも多い、112km程度は走らされる事になり、そこから更に119kmまで数字を伸ばすマリノスに、敵チームはふるい落とされる形になる。
他の上位陣3チームが、相手をコントロール出来た成果として走り勝ちしている傾向が見えるのに対して、マリノスでは自身が伸ばしていく結果、敵がついてこれなくなる、まさにブッチギリと言える爆走だ。
「俺の走りについてこれるか」
また、退場者が出た試合を含めて、チームの総スプリント数が150回を下回ったゲームは、1試合も無い。
FC東京 6回
鹿島 7回
川崎 16回
面白い傾向としては、松本には2試合とも明確に走り負けているが勝利した。
これは松本のスタイルもあるが、そもそも2試合ともマリノスのボール保持率が70%を越える異常な形式で行われており、正に参考外と言えるだろう。
さて、走行距離と勝敗への影響、関連性について『敵チームに対して』という視点を入れてみたがいかがだっただろうか。
最後にマリノスの数値を足すと2019シーズン、Jリーグで優勝を争った上位陣の数字は以下になる。
明確に走り勝った試合 22試合 17勝 5分
僅かに走り勝った試合 20試合 16勝 2分 2敗
ちなみに比較は以下
僅かに走り負けた試合 27試合 10勝 8分 9敗
明確に走り負けた試合 27試合 11勝 14分 7敗
補足としては、松本の様な特殊なチームが、各チームの『明確に走り負けた』の数値を若干、曖昧にしている傾向が確認できた。
サッカーでは走らなければ勝てない。
ドイツの空に虚しく響いた中田英寿の言葉を思い出す、対面する敵に対しての走力と勝敗、その関連性が示された。
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横浜F・マリノスはストーミングなのか
https://twitter.com/adidasFTB_jp/status/1203206742370217986
ボールを巡る4つの状況、ボールを保持してる、ボールを持たれている、ボールを失った、ボールを奪った。
それらが高速で転換する激しいテンポのプレーを見て言われたとする言葉がストーミング。
ストーキングではないし、ストリーミングでもない(`・ω・´)
現在、プレミアで覇権をめぐる二強のシティとリバプールの関係において、グアルディオラのポジショナルプレーと比較して、クロップのストーミングと対比されるが、果たしてその認識は正しいのだろうか。
また、高速アタッカーを有し、敵陣でハイテンポな攻守の切り替えが行われるマリノスにおいて、ストーミングは行われているのだろうか。
ストーミングとは状況を表現した言葉に過ぎない
重要なのは、ボールを巡る4つの状況が混沌的に激しく循環する状況を、第三者が見て表現した言葉であり、ポジショナルプレーのように、構築する立場から出てきた言葉ではない。
日本的に言うなら、嵐のようなサッカーだ、みたいな?
つまり、構築する指針となる概念ではなく、あくまでも第三者目線において、目の前で起きている状況を批評、述べている際の表現に過ぎない。
これが前述のライバルクラブの関係もあり、対比する構図で持ち込まれ方をした為に、誤った認識が広まったのではないだろうか。
例えば、目の前で起きている天候を表す言葉として「暴風雨だ」として、それは台風によって引き起こされている時もあれば、春一番であったり、より局地的な積乱雲により、発生している事もある。
この点において、マリノスも、そして例えば湘南も、それぞれ異なるプレー指針の元に、ピッチ上ではストーミングを起こしていると言える。
OSとアプリケーションとモニター上で起きていること
今、皆さんは、何でこの記事を読んでいるだろうか。
日本における現状のインターネット使用率だと、8割の人がスマートフォンで残りがパソコンからのアクセスになるだろうから、OS、アプリ、モニターという言葉は伝わりやすい物として代用する。
例えば、そのモニター上で「アニメーションが動いている」という状況が起きているとして、それは必ずしも1つの理由ではない。
YoutubeやNetflixのアプリで動画ファイルをダウンロードして見ているだけ、かもしれないし、ゲーム等のアプリで予め入っている動画ファイルを再生しているかもしれない、更には命令によりリアルタイムで動かしている、かもしれない。
ただ、モニター上では等しく「アニメーションが動いている」と呼べる状況が起きる。
これをサッカーに、ポジショナルプレーやストーミングに当てはめると、こうなるのではないか。
ラグビーとアメリカンフットボール
一旦、ストーミングは置いておいて順を追って考えたい。
???? に当てはまるものは何なのか。
グアルディオラやポステコグルーが信じる物と、真に対比する手法を分かりやすく説明するに当たって、ラグビーとアメリカンフットボールを用いて考えたい。
同じ様な形のボールを使い、同じ様な形のフィールドでプレーする、この2つのスポーツはルールも、大事にする物も大きく異る。何を重視するのか。
魂のポゼッション派、グアルディオラやポステコグルーが信じる物は、アメリカンフットボールに通じる。
それは、何よりも大事なのは攻撃権であり、サッカーだと、ボールを保持している事を意味する。
ルールでもボール保持を維持する権利が強く保護されている事もあり、アメリカンフットボールでは、自陣エンドゾーン(サッカーで言うならばゴールキーパーがゴールライン上でボールを持っている状態)から攻撃を開始する場合でも、簡単に攻撃権を放棄することは先ずあり得ない。
つまり、目的地である敵ゴールまでの距離と、同時にリスクである自ゴールまでの距離が最悪の状態でも、前進による次の攻撃地点の確保、更には得点を狙っていく。
これはマリノスが自陣ペナルティエリア付近において、数的に同数でプレスを受けようが、ビルドアップを諦めない姿勢に通じるものが有るだろう。
攻撃権の絶対的な死守。
それに対してラグビーというスポーツは、にわか知識だが、非常に位置を大事にしているスポーツだと感じた。今、ピッチ上のどこでプレーが行われているかが重視されている。
特に、その位置(敵ゴール及び自ゴールとの距離)が最悪に悪い状況では攻撃権を持っている事にほぼ意味がなく、攻撃権を失う価値は比べるべくもなく、出来るだけ早い位置の回復を行う確率が極めて高い。
そして、この概念こそが、魂のポゼッションと対比する、もう一つの手法の根源にある物ではないだろうか。
位置(敵ゴールと自ゴールとの距離関係)を重視する手法とは何か
ポジティブな意思とネガティブな不安、それが敵と自ゴールとの距離関係を求める。敵のミスを信じて、自分のミスを恐れる。
キーワードは敵ゴールと、自ゴールであり、それらとの距離。
ボールを持つなら…出来るだけ敵ゴールに近い位置で持ちたい、その意思の裏返しに、ロストが怖いので自ゴール付近では持ちたくない。
そんな2つの思惑を含み、攻撃権、ボールのロストを重視しない、スペースへのロングボールが増えるのをいとわない。
更に、出来るだけ敵ゴールに近い位置でボールを奪いたい、その意思の裏返しはボールを持たない時は出来るだけ自ゴールから遠ざけたい。
速攻の期待と、ゴール前守る不安を背景に、特攻的な敵陣プレスが行われる。
位置を回復する為に、ロストを恐れずスペースを狙うパスを次々と蹴り、同時に回復した位置を守る為に、即座に守備を開始する。
突き動かす原動力が大きければ大きいほど、どれだけ期待するか、望まない状況を拒絶するか、という意思において、よりテンポは高速化し、ピッチ上は混沌化する。
ポジショナルプレーには4つ目の指標がある?
ポジショナルプレーはサッカーというスポーツを捉える為の概念と考える。
ピッチ上をボードゲームの盤面に見立てて、質的優位、位置的優位、数的優位、3つの配置的優位性を元に考えよう、という物である。
ただ、1つ欠けている要素があるんじゃないだろうか。
現在、ポジショナルプレーが掲げる3つの要素は主に選手とボールで考えられているが、これではラグビー的な概念を網羅してフォローすることが出来ないのではないか。
例えば、自チームの選手が誰も居ない空間にパントキックを蹴り込む時に考えられる優位性は?
ポジショナルプレーには4つ目の評価要素として、敵と自分、それぞれにおけるゴールとの距離、距離的優位、という概念が必要なんじゃないだろうか。
これにより、サッカーにおいてもクリアをポジショナルプレーにおいて評価に組み込める。
では、なぜ、現在はそれが無いのかというと、考案したグアルディオラ自身に、ラグビー的にサッカーを捉える概念がなかった、からではないだろうか。
もしも、自ゴールに近い位置でボールを持つことに対して、不安や恐れを感じるなら、今のサッカーは出来ないだろう。
マリノスが起こすストーミング(暴風雨状態)の原理と概念
一方、魂のポゼッション派であるマリノスで起きるストーミングは、それとは異なる理由だ。人が暴風雨と感じる状態は、異なるエネルギー構造である、台風でも積乱雲でも起きるのだ。
先ず、攻撃権を何よりも重視する魂のポゼッションでは、ボールを巡る4つの状態は以下に考えられる。
ただし、魂のポゼッションにおいて、これだけでは、ピッチ上にストーミングは起きない。
多くのチームにおいては、ロストした瞬間に、攻撃権がない状態を許容できないとして、即座に奪還する所までは早いが、次のボールゲット以降においてテンポダウンが起きるからだ。
だが、ここでマリノスにはスペースをリソース(資源)と捉える概念があり、更に時間の経過により、それは失われるという認識の元に「攻撃は早くなければならない」という要素が加味される。
これは今のマリノスをデザインした当時の主要人物であり、ポステコグルー監督と契約したスポーツダイレクターのアイザック・ドル氏が2018年1月に行った指針表明演説でも、攻撃的、スピードの項目で「素早くなければいけない」「よりバーティカルなプレー」等と語られている。
ランゲラックのライプツィヒ及びその弟子達、そして影響を受けている筈のクロップにも、この概念はあるかもしれない。そういう意味では、マリノスは魂のポゼッション派に属しながらも、ストーミングを生み出す根源はメイド in ドイツに近いと言える。
一方で、ボールを持っている事の安心を何よりも重視し、スペースは作るものだ、作れるものだ、とグアルディオラは考えているフシが有るので、シティの場合に、その自主性のおいて、ピッチ上は中々、ストーミング化しない。
彼は攻撃時に、スペース(資源)が失われるという不安を抱えない。
そりゃー、経緯を考えると、現役時代、監督時代、天才的アタッカーが常にチームに居て、ゴール前を固める相手から次々とゴールを決めて勝ってきたのだから、思いもしない概念である。風間元監督もこの派閥だろう。
例えばマリノスの場合、早さを求めるあまり、ボールロストを連発する機会が見受けられる。グアルディオラからすれば、これは攻撃権よりも早さを優先している攻撃に見えるかもしれない。
むしろ彼は「ボールを持っていないと敵にやられる可能性がある」という不安を抱えている事を語った事がある。
資源が失われる焦燥と、攻撃権に潜む1%の恐怖、2つの狂気を内包し、揺るがぬ信念により収束させ、敵陣を3色で染める暴風雨、それがマリノストーミング。
まとめると
ともかく、マリノスでは、魂のポゼッション派に属し、攻撃権を極めて重視しながらも、同時に資源を確保する為に早さを求めることで、ピッチ上において4つの状態が高速回転を起こし、ストーミング、『まるで暴風雨のような状態』、超ハイテンポなプレーが展開される事になる。
なお、ポステコグルー監督はこれを意図的に発生させているコメントをしている。
「(日本では)相手に対して主導権を握るようなプレーより、ゆっくりとしたテンポでのプレー、組織的なプレーをしたがる。これには驚かされたが、我々はこの点にも取り組んできた。」
ここにおいて主導権(イニシアチブを握るプレー)とは、攻撃権ではなく、敵の考える時間を奪う様な意図と思われる。
もちろん、競技は相手も勝つ為に必死であり、相対的なものなので、試合においては望まない状況を妥協して耐える局面は当然あるし、資源よりも安全を重視する時間を持って、体力的にも、ゲームを、リスクを、コントールしなければならない。
まとめると
・ ストーミングとは手法ではなく、ピッチ上の状態を意味する。
・ 攻撃権ではなく、プレーする位置を重視する手法がある。
・ ポジショナルプレーの概念に、ゴールとの距離を取り入れる必要がある。
・ キーとなるのは手法ではなく『8秒ルール』的なスペース(資源)を失う焦り。
・ 更に、妥協の拒絶が、よりテンポアップに拍車をかける。
・ 勝率を求めるのであれば妥協とコントロールは必須。
この思考遊びをするに辺り、大変参考になったので感謝します。
ストーミングについて本気出して考えてみた。ただし、途中経過(・∀・) | サッカーの面白い戦術分析を心がけます