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横浜F・マリノス 復活へのウイングレス

3連敗目の相手がセレッソだったのは偶然か。

あの時はシーズン最後の敗戦となった2019年セレッソ戦から約1年。

 

優勝が具体的な目標となる中、手痛い敗戦に批判的な意見を多く目にしたが、全く異なる感想を持ったので、以下の記事を書いた。

 

 

speir-s.hatenablog.jp

統計に基づく確率では勝利に近かったという結論であり、サイドよりも中での適正を見せたエリキ、そしてサイドで質的優位を発揮したマテウス、絶望ではなく希望の一試合であると共に、今にしてみれば、正に優勝へ向けて陣容が固まった一戦であった。

 

 

そして今シーズン、現在は6勝3分8敗、状況はかなり異なるが、それほど悲観する試合ではなく、まだ2つのタイトルが目指せるルヴァンカップACLへ向けて、復活を感じる試合だったと感じた、その理由を書く。

 

 

個人の感想よりも統計を信じる

 

試合中継というのはバイアス(かたより)を受ける。

 

解説の福田正博氏はセレッソが計画通りで、マリノスの攻撃は効果的でないと繰り返し述べていたが、統計学的には正しくない。

 

フットボールラボが今季から提示しているゴール期待値というデータがある。

 

これは、簡単に述べるとAIを用い、シュートが打たれた状況を統計学的に積み重ねる事で、シューターがリーグの標準的な能力を発揮した場合に発生する得点数を数値化した物である。

 

マリノスセレッソ戦におけるゴール期待値は 2.314 であり、今季の1試合平均1.611を大きく上回る物で、AI的にはマリノスは効果的な攻撃を行っていたと言える。

 

(参考 2019シーズンは1.834)

 

 

人類とAIの関係で言えば、近年、チェスの天才も、将棋の名人も、囲碁の偉人も、AIには完膚なきまで敗れ去っており、人の感想は自由だが、その感想が正しいか、という考察は必要だ。

 

ちなみに今季、1試合平均3.1得点している川崎フロンターレのゴール期待値は2.486であり、この試合においてマリノスが記録した数字は、リーグの水準として、かなり高い物と言える。

 

更に、セレッソのシーズン被ゴール期待値(対戦相手に作られたゴール期待値)は1.42であり、他の試合と異なり、マリノスの攻撃をコントロール出来ていなかったと言える。

 

※試合における期待値は加算式の為、例えば”難し目なシュート”でも30本打てばそれなりの期待値になるが、そもそも統計的には”難し目なシュート”だろうと30本打てば並の選手なら何本か決まる、という話である。

 

 

一方で、セレッソが記録したゴール期待値は1.832と2得点も納得の数値だが、14本のシュートにおいて、内8本は65分以降、つまり伊藤の退場以降に打たれたものであり、2回フリーで打たれたヘディングのフリーキックも含め、全ては清武という偉才に、してやられただけの試合だったと評したい。

 

いや、三笘に続いて、余りにも無頓着すぎねぇか、ともツッコミたい。

 

 

ちなみにはてなブログではこんな風にDAZN動画が埋め込み出来るようになった。

 

そもそも敵陣プレスは形としてはハマってるのに、畠中がヘディング出来ずに坂元にフリックされた上で、置き去りにされたのが同点の理由である。

 

 

 

敗戦は誰の責任か

 

確かに喜田の攻撃性能には不足を感じる。

だが、不足を感じたのは別に喜田だけではない。

 

結局の所、サッカーという競技において最も重要で、勝敗に対するウェイトが大きいのはゴール前のクオリティであって、特にアタッキングフットボールを標榜するマリノスにおいては、何よりも重視するべきテーマである。

 

 

どんなに『良いサッカー』をしようが、ゴール前で質が出なければ、質の差で負ける。

 

画像

 

ギャラクティコ…!

 

 

ゴール期待値は『並の選手なら2.314得点』という意味であり、実際に川崎は期待値を大きく上回る3.1得点をしているように、マリノスの前線が並では物足りないのだ。

 

この点において、ポステコグルー監督はチームに充分な機会を生み出したが、ジュニオールサントスは2度ヘディングで得点できず、エリキのシュートは2回クロスバーを叩いた。

 

何より、エースのマルコスは並の仕事はしたかもしれないが、清武が針の穴を通すような少ない機会を2回ともに致命傷に繋げたのに比べると、遥かに機会を得ている中で一本のラストパスが出なかった。

 

ゴールの期待値が2.314なら最低でも3得点、さらに言えば4得点を出来るような、並じゃないクオリティこそがマリノスの前線に必要な能力である。

 

誤審がなければゼロ得点だぞ!

 

 

仮に、レアルマドリードのエースが1シーズンで10得点だったら、どの様な評価になるだろうか。

 

名古屋戦のゴール期待値は 0.51 とお粗末という他にない物で、全て監督の責任だが、並以下に終わったセレッソ戦で最も責任が重いのは監督でも、ましてや10人になってから出場した喜田でもない。

 

 

 

敵陣プレスの為の3バック

 

3トップにマルコスで、アンカー喜田、名古屋戦は余りにも無茶苦茶だった。

 

今季、ゴールキーパーまでファーストトップがアタックに行く特攻的プレスを繰り返すマリノスにとって、サイドバックを逃し所に置く敵のボール保持攻撃は悩みのタネであった。

 

マリノスサイドバックを自陣に釣り(吊り)出せたら闇雲でもいいからDFラインの裏へ蹴っていく、マリノスサイドバックが出てこなければ、オープンになったボールホルダーが、更に逆サイドの裏に誰でも蹴れるような質でいいから蹴っていく。

 

得点源のショートカウンターが激減し、唐突な失点が生まれ、全体的な撤退で体力も削られる、正にボディブロー。

 

これは昨シーズンよりもDFラインの平均位置が高いのに、縦のコンパクトネスが1.2mも悪化(守備陣形が縦に広がり空間が出来ている=FWも釣り出されてる)というデータでも反映している。

 

前が引き出されて、後ろもついて行くが罠です、という感じ。

 

 

この改善策として3バックなのだが、これを守備、失点減少の為と取るか、より高い位置で奪って攻撃する為と取るか、もちろん監督は後者だろう。

 

まぁ余りにも後者過ぎて、初登場の名古屋戦はオーガナイズ(整理されている)という点で、論外だった訳だが、徐々に仕上がってきた。

 

 

例えば、前半10分に敵GKから始まる攻撃に対する動きが分かりやすいが、GKにファーストトップ、2人のCBをセカンドトップの2人が見る中で、サイドバックに蹴られたボールへ小池がプレスに行くと同時に、後ろは伊藤が右で、ティーラトンが左の4バック化して、敵の両サイドハーフを見る。

 

この時に最大のリスクは逆サイドの敵サイドバックだが、例えば32分、前半にGKのボール保持攻撃からプレスを回避された数少ないシーンだと、以前であれば破局的状況となっていた所だが、クロスが上げられる際に、敵2人に対して、DFラインとして4人が揃っている普通のリスクで収まっている。

 

 

また、前半29分頃に中央でエラーが起きてしまい、センターサークル付近で敵にフリーにボールを持たれた際に、5バックで下がる事で両サイドへのロングパスを封じている。この時、中央の裏はチアゴの守備範囲なので蹴られるリスクは低い。

 

イニエスタなら分からないが、ボールホルダーにとってサイドがフリーに見えない事で蹴りにくい、狭くて難しいと感じる状況にしていると言える。

 

川崎戦における三笘のゴールが分かりやすいが、4枚で下がると両脇を捨てる事になり、簡単で蹴りやすく、強力なウイングがいるとかなりキツイ。

 

タレント力で勝負をしてくるチームも想定されるACLを見据える上で重要な進歩ではないだろうか。

 

 

 

前が余って後ろが足りない

 

『ウイングが重要なのにウイングレスな編成という歪(いびつ)さ』から始まった攻撃効率の著しい低下、それがウイングというポジションを無くす事で改善に向かう辺り、ポステコグルー監督は攻撃に関しては柔軟であり、引き出しは豊富と言える。

 

ところが難しいのは流石に編成が追いつかない。

 

中でも痛いのは實藤の怪我でさらなる駒不足が予見されるセンターバックだろう。松原をコンバートするにしても、この過密日程で3ポジションを4人で回すのは現実的ではない。累積警告、退場などのファウルトラブルもある。

 

なんということだ、設計図を書いて大工を揃えたが、材料がない、昨季のシティかよ。

 

 

この際、前に出ても、というよりも前でボールを受ける機会が増えた今季は攻撃性能が大いに問われている喜田をコンバートしてみるか。縦パスを受けるFWを潰す仕事がメインになるなら有りかなしか。

 

臨時運用した扇原は既に視野に入っているかもしれないし、センターバックの枚数はこれで大丈夫だが、そうすると、和田と渡辺がちぬ。

 

こうなってくると前から順送りで、大津や仙頭をここに”ズラす”しかなく、この実験は未知数にもほどが有るが、その内やりそうである。ただ、今の天野はやめておこう。

 

 

 

一方で前は豊富なラインナップが揃う。

 

2つのセカンドトップにはマルコスは勿論、エリキも11キロ走って35回スプリントする本来の片鱗を見せ、10人の中でも何度もボールを引き出す動きで起点となった仲川も何の問題もなくこなせるだろう。

 

更に、そもそもジュニオールサントスはファーストトップも出来るウイングであって、今の役割ならベターはセカンドトップであり、エジガルが復帰したら本職の2人、エジガルとオナイウで回した方が、今後多くなると推測されるウイングバックからのクロスに対する動きも含めて、ゴール数が増えるかもしれない。

 

ちなみにセレッソ戦でのクロス数は今季平均22本を大きく上回る32本である。

 

 

また、外国人枠も絡んで来るが、5人交代を活かすという点でもエジガル、マルコス、仲川でスタートした後に、オナイウ、ジュニオールサントス、エリキへのチェンジは強烈に他ならない。前田はシュートをミスし続ければ簡単に信頼を失うかもしれない、この点、監督はかなり厳しいと思う。

 

 

更に、センターバックの事情を考慮すると、水沼には右ウイングバックの役割をこなしてもらいたい。質的優位を求めるなら博打的に松田を入れる状況もあるだろうし、左利きが天野しか居ないという時もあるかもしれない。

 

とにかく泣き所はセンターバックの枚数で、合わないコンバートが繰り返されたりして、今度は3バックなのにセンターバックレス、とならない事を祈るのみである。

 

この問題さえ、脅威の獲得力で今季中に解決出来れば、復活は近いのでは無いでしょうか。流石に無理か。

 

 

 今という確定した未来から”超越的立場”で過去を見た時に、正解は例えば遠藤の移籍が決まった時のような、もっと早い対応であり、そうであれば杉本、前、山本はチームに残り、松田の復帰、ジュニオールサントスと前田の獲得は必要なかったかもしれないし、リーグを諦める様な状況もなかったかもしれない。

 

ただ、まだ確定していないマリノスの未来には2つの重要なタイトルが残っているし、そのどちらか、又は両方を制する事ができれば、誰も今シーズンのマリノスを失敗とは言えなくなるだろう。

 

まだ終わってない、カムバックを期待したい。

 

 

 

ところで余談ですが、「マリノスも誤審やんけ」みたいなクソリプを頂戴する事が想定されましたので触れませんでしたが、セレッソの決勝ゴールにおいて、坂元がクロスを蹴った瞬間、手前の鈴木はオフサイドポジションに居て、更にクロスを触っている(ボールの軌道が変わっている)のでこれも誤審である事をお伝えします。

 

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