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横浜F・マリノスはストーミングなのか

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https://twitter.com/adidasFTB_jp/status/1203206742370217986

 

 

ボールを巡る4つの状況、ボールを保持してる、ボールを持たれている、ボールを失った、ボールを奪った。

 

それらが高速で転換する激しいテンポのプレーを見て言われたとする言葉がストーミング。

ストーキングではないし、ストリーミングでもない(`・ω・´)

 

 

現在、プレミアで覇権をめぐる二強のシティとリバプールの関係において、グアルディオラのポジショナルプレーと比較して、クロップのストーミングと対比されるが、果たしてその認識は正しいのだろうか。

 

また、高速アタッカーを有し、敵陣でハイテンポな攻守の切り替えが行われるマリノスにおいて、ストーミングは行われているのだろうか。

 

 

 

ストーミングとは状況を表現した言葉に過ぎない

 

重要なのは、ボールを巡る4つの状況が混沌的に激しく循環する状況を、第三者が見て表現した言葉であり、ポジショナルプレーのように、構築する立場から出てきた言葉ではない。

 

日本的に言うなら、嵐のようなサッカーだ、みたいな?

 

つまり、構築する指針となる概念ではなく、あくまでも第三者目線において、目の前で起きている状況を批評、述べている際の表現に過ぎない。

 

これが前述のライバルクラブの関係もあり、対比する構図で持ち込まれ方をした為に、誤った認識が広まったのではないだろうか。

 

 

例えば、目の前で起きている天候を表す言葉として「暴風雨だ」として、それは台風によって引き起こされている時もあれば、春一番であったり、より局地的な積乱雲により、発生している事もある。

 

この点において、マリノスも、そして例えば湘南も、それぞれ異なるプレー指針の元に、ピッチ上ではストーミングを起こしていると言える。

 

 

 

OSとアプリケーションとモニター上で起きていること

 

今、皆さんは、何でこの記事を読んでいるだろうか。

 

日本における現状のインターネット使用率だと、8割の人がスマートフォンで残りがパソコンからのアクセスになるだろうから、OS、アプリ、モニターという言葉は伝わりやすい物として代用する。

 

 

例えば、そのモニター上で「アニメーションが動いている」という状況が起きているとして、それは必ずしも1つの理由ではない。

 

 

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YoutubeNetflixのアプリで動画ファイルをダウンロードして見ているだけ、かもしれないし、ゲーム等のアプリで予め入っている動画ファイルを再生しているかもしれない、更には命令によりリアルタイムで動かしている、かもしれない。

 

ただ、モニター上では等しく「アニメーションが動いている」と呼べる状況が起きる。

 

 

これをサッカーに、ポジショナルプレーやストーミングに当てはめると、こうなるのではないか。

 

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ラグビーアメリカンフットボール

 

一旦、ストーミングは置いておいて順を追って考えたい。

???? に当てはまるものは何なのか。

 

グアルディオラやポステコグルーが信じる物と、真に対比する手法を分かりやすく説明するに当たって、ラグビーアメリカンフットボールを用いて考えたい。

 

同じ様な形のボールを使い、同じ様な形のフィールドでプレーする、この2つのスポーツはルールも、大事にする物も大きく異る。何を重視するのか。

 

 

魂のポゼッション派、グアルディオラやポステコグルーが信じる物は、アメリカンフットボールに通じる。

 

それは、何よりも大事なのは攻撃権であり、サッカーだと、ボールを保持している事を意味する。

 

ルールでもボール保持を維持する権利が強く保護されている事もあり、アメリカンフットボールでは、自陣エンドゾーン(サッカーで言うならばゴールキーパーゴールライン上でボールを持っている状態)から攻撃を開始する場合でも、簡単に攻撃権を放棄することは先ずあり得ない。

 

つまり、目的地である敵ゴールまでの距離と、同時にリスクである自ゴールまでの距離が最悪の状態でも、前進による次の攻撃地点の確保、更には得点を狙っていく。

 

これはマリノスが自陣ペナルティエリア付近において、数的に同数でプレスを受けようが、ビルドアップを諦めない姿勢に通じるものが有るだろう。

 

攻撃権の絶対的な死守。

 

それに対してラグビーというスポーツは、にわか知識だが、非常に位置を大事にしているスポーツだと感じた。今、ピッチ上のどこでプレーが行われているかが重視されている。

 

特に、その位置(敵ゴール及び自ゴールとの距離)が最悪に悪い状況では攻撃権を持っている事にほぼ意味がなく、攻撃権を失う価値は比べるべくもなく、出来るだけ早い位置の回復を行う確率が極めて高い。

 

そして、この概念こそが、魂のポゼッションと対比する、もう一つの手法の根源にある物ではないだろうか。

 

 

 

位置(敵ゴールと自ゴールとの距離関係)を重視する手法とは何か

 

ポジティブな意思とネガティブな不安、それが敵と自ゴールとの距離関係を求める。敵のミスを信じて、自分のミスを恐れる。

 

キーワードは敵ゴールと、自ゴールであり、それらとの距離。

 

ボールを持つなら…出来るだけ敵ゴールに近い位置で持ちたい、その意思の裏返しに、ロストが怖いので自ゴール付近では持ちたくない。

 

そんな2つの思惑を含み、攻撃権、ボールのロストを重視しない、スペースへのロングボールが増えるのをいとわない。

 

 

更に、出来るだけ敵ゴールに近い位置でボールを奪いたい、その意思の裏返しはボールを持たない時は出来るだけ自ゴールから遠ざけたい。

 

速攻の期待と、ゴール前守る不安を背景に、特攻的な敵陣プレスが行われる。

 

 

 

位置を回復する為に、ロストを恐れずスペースを狙うパスを次々と蹴り、同時に回復した位置を守る為に、即座に守備を開始する。

 

突き動かす原動力が大きければ大きいほど、どれだけ期待するか、望まない状況を拒絶するか、という意思において、よりテンポは高速化し、ピッチ上は混沌化する。

 

 

 

ポジショナルプレーには4つ目の指標がある?

 

ポジショナルプレーはサッカーというスポーツを捉える為の概念と考える。

 

ピッチ上をボードゲームの盤面に見立てて、質的優位、位置的優位、数的優位、3つの配置的優位性を元に考えよう、という物である。

 

ただ、1つ欠けている要素があるんじゃないだろうか。

 

現在、ポジショナルプレーが掲げる3つの要素は主に選手とボールで考えられているが、これではラグビー的な概念を網羅してフォローすることが出来ないのではないか。

 

 

例えば、自チームの選手が誰も居ない空間にパントキックを蹴り込む時に考えられる優位性は?

 

ポジショナルプレーには4つ目の評価要素として、敵と自分、それぞれにおけるゴールとの距離、距離的優位、という概念が必要なんじゃないだろうか。

 

これにより、サッカーにおいてもクリアをポジショナルプレーにおいて評価に組み込める。

 

 

では、なぜ、現在はそれが無いのかというと、考案したグアルディオラ自身に、ラグビー的にサッカーを捉える概念がなかった、からではないだろうか。

 

もしも、自ゴールに近い位置でボールを持つことに対して、不安や恐れを感じるなら、今のサッカーは出来ないだろう。

 

 

 

マリノスが起こすストーミング(暴風雨状態)の原理と概念

 

一方、魂のポゼッション派であるマリノスで起きるストーミングは、それとは異なる理由だ。人が暴風雨と感じる状態は、異なるエネルギー構造である、台風でも積乱雲でも起きるのだ。

 

 

先ず、攻撃権を何よりも重視する魂のポゼッションでは、ボールを巡る4つの状態は以下に考えられる。

 

 

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ただし、魂のポゼッションにおいて、これだけでは、ピッチ上にストーミングは起きない。

 

多くのチームにおいては、ロストした瞬間に、攻撃権がない状態を許容できないとして、即座に奪還する所までは早いが、次のボールゲット以降においてテンポダウンが起きるからだ。

 

 

だが、ここでマリノスにはスペースをリソース(資源)と捉える概念があり、更に時間の経過により、それは失われるという認識の元に「攻撃は早くなければならない」という要素が加味される。

 

これは今のマリノスをデザインした当時の主要人物であり、ポステコグルー監督と契約したスポーツダイレクターのアイザック・ドル氏が2018年1月に行った指針表明演説でも、攻撃的、スピードの項目で「素早くなければいけない」「よりバーティカルなプレー」等と語られている。

 

 

ランゲラックのライプツィヒ及びその弟子達、そして影響を受けている筈のクロップにも、この概念はあるかもしれない。そういう意味では、マリノスは魂のポゼッション派に属しながらも、ストーミングを生み出す根源はメイド in ドイツに近いと言える。

 

 

一方で、ボールを持っている事の安心を何よりも重視し、スペースは作るものだ、作れるものだ、とグアルディオラは考えているフシが有るので、シティの場合に、その自主性のおいて、ピッチ上は中々、ストーミング化しない。

 

彼は攻撃時に、スペース(資源)が失われるという不安を抱えない

 

そりゃー、経緯を考えると、現役時代、監督時代、天才的アタッカーが常にチームに居て、ゴール前を固める相手から次々とゴールを決めて勝ってきたのだから、思いもしない概念である。風間元監督もこの派閥だろう。

 

例えばマリノスの場合、早さを求めるあまり、ボールロストを連発する機会が見受けられる。グアルディオラからすれば、これは攻撃権よりも早さを優先している攻撃に見えるかもしれない。

 

むしろ彼は「ボールを持っていないと敵にやられる可能性がある」という不安を抱えている事を語った事がある。

 

 

資源が失われる焦燥と、攻撃権に潜む1%の恐怖、2つの狂気を内包し、揺るがぬ信念により収束させ、敵陣を3色で染める暴風雨、それがマリノストーミング。

 

 

 

まとめると

 

 

ともかく、マリノスでは、魂のポゼッション派に属し、攻撃権を極めて重視しながらも、同時に資源を確保する為に早さを求めることで、ピッチ上において4つの状態が高速回転を起こし、ストーミング、『まるで暴風雨のような状態』、超ハイテンポなプレーが展開される事になる。

 

なお、ポステコグルー監督はこれを意図的に発生させているコメントをしている。

 

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「(日本では)相手に対して主導権を握るようなプレーより、ゆっくりとしたテンポでのプレー、組織的なプレーをしたがる。これには驚かされたが、我々はこの点にも取り組んできた。」

 

ここにおいて主導権(イニシアチブを握るプレー)とは、攻撃権ではなく、敵の考える時間を奪う様な意図と思われる。

 

 

もちろん、競技は相手も勝つ為に必死であり、相対的なものなので、試合においては望まない状況を妥協して耐える局面は当然あるし、資源よりも安全を重視する時間を持って、体力的にも、ゲームを、リスクを、コントールしなければならない。

 

 

 

まとめると

 

・ ストーミングとは手法ではなく、ピッチ上の状態を意味する。

・ 攻撃権ではなく、プレーする位置を重視する手法がある。

・ ポジショナルプレーの概念に、ゴールとの距離を取り入れる必要がある。

・ キーとなるのは手法ではなく『8秒ルール』的なスペース(資源)を失う焦り。

・ 更に、妥協の拒絶が、よりテンポアップに拍車をかける。

・ 勝率を求めるのであれば妥協とコントロールは必須。

 

 

この思考遊びをするに辺り、大変参考になったので感謝します。

 

ストーミングについて本気出して考えてみた。ただし、途中経過(・∀・) | サッカーの面白い戦術分析を心がけます