横浜F・マリノス ファン

横浜F・マリノスを応援するイチファンによるブログです。

マリノスが変えたJ1リーグ・英プレミアリーグを圧倒する走行力

かつてオシムは言った、日本人らしいサッカーをするべきだ、と。

 

その成果が反映されたのか、2022カタールワールドカップにおいて、W杯優勝国であり、大会優勝候補でもあった2つの強国に勝利したのは記憶に新しい。

 

なぜ日本は勝てたのか、その理由は2019年マリノスの優勝以降に、環境の激変が起きているJ1リーグに見出す事ができるかもしれない。

 

 

ht

 

s://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1649772404854652928?s=2引用元

https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1649772404854652928?s=20

https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1649772404854652928

 

 

 

世界基準ってどんなもんよ?

 

そもそも、世界最高峰のリーグにおいて、総走行距離ってどんなもんなんだろうか?

この点が気になり英プレミアリーグのデータを調べてみた。

 

が、昔は公式サイトにあった筈なのに、今は総走行距離の項目がマッチデータにも見当たらない。※どこか見れるところがあれば教えてもらいたい。

 

この為、メディアの記事をベースに話をする。

 

19-20シーズンの総走行距離データ

 

1位はブライトン 4280.7km 1試合平均は(112.65km)

同年2強のシティ 4173.4km(109.82km)、リヴァプール4150.1km(109.21km)

 

大体、シーズン平均だと109kmがベースの数字になる感じではないか。

 

 

総スプリント リヴァプール 3980回 (104.73回)

 

スプリントのトップスピード ランキング

1位 アダマ・トラオレ 37.78km/h
2位 アーロン・ワン・ビッサカ 37.60km/h
3位 メイソン・グリーンウッド 37.60km/h

 

 

トップスピードを見ると、流石バケモノだなと思いますが、昨今のJリーグファンならアレ?っと思うはず。

 

総走行距離、少なくね?

 

 

※GKを含まないのか等を思いましたが、そのような特殊基準はどこにも書かれて無く、またプレミアリーグにはGKのエリア外クリアの様な、GKの走行距離も関わるスタッツがあることから、全員の物として考える。

 

引用元 

https://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20200729/1101975.html

 

 

 

J1リーグと英プレミアリーグを比較する

 

今回、シーズンが始まった直後である2023年の現時点と、丁度よい比較データとして、下記の物があった。

 

21-22シーズン 開幕7試合のデータ

https://theanalyst.com/eu/2021/10/season-snapshot-storylines-from-the-premier-league-so-far/

 

 

このシーズン、走りでリーグを圧倒していたのがリーズ。

 

数字を抽出すると、総走行距離 764kmは2位以下と誤差ですが、スプリント数1210回は2位サウサンプトン997回を大きく引き離す。1試合平均にすると172.85回となる。

 

 

先ず、J1リーグとの比較における総評として、総走行距離は全体的に少なく、スプリント数もリーズが異常なだけで、2位以下はJ1リーグと差が殆どない。

 

 

また、若干スプリント数について補足をすると、Jリーグが以前の基準、時速24kmで計測していた時代だと、173という数字はマリノスの平均以下でしたが、23シーズンから適用された新基準時速25km以上だと、なかなか出ない数値になると思われる。

 

マリノスだと、今の所、横浜FC戦の173回、1試合のみ。

 

更に、基準変化の影響を探ると、昨季34試合中、28試合で173回以上、更にその内200回以上が19回という数字を残したサガン鳥栖でしたが、今季は8試合で最高165回に留まっているのをみると、時速1kmの差はかなり大きいかもしれない。

 

 

マリノスの2023シーズン 7試合時点の走行データは以下になる。

 

総走行距離 847.25km 1試合平均 121.03km

ワースト 札幌戦 110.94km

 

ちなみに77分で退場者が出た広島戦もリーズの平均を10km以上、上回る124.36kmを計測している。

 

リーズ

総走行距離 764km 1試合平均109.14km

 

 

 

J1リーグも2019年まではプレミア基準だった

 

マリノスが優勝した2019年、何が起きていたのか。

以前に、走りに関するデータをまとめた記事を作成した。

 

 

speir-s.hatenablog.jp

 

 

2019シーズン、マリノス以外の上位陣のデータは以下になる。

 

<2019シーズン 2位~4位の1試合平均の総走行距離>

 

2位 FC東京 109.869km

3位 鹿島 109.877km

4位 川崎 105.685km

 

19-20シーズン ブライトン 112.65km

21-22シーズン7試合平均 リーズ 109.14km

 

 

そうなんです、2019シーズンの時点では大して変わらなかった。

 

これに対して2019シーズンのマリノスは 116.647kmと差を付けた。

ピッチに対するカバレッジパワー(造語)が、選手0.8人分の差がつくと言うこと。

 

更にマリノスは、このシーズン、ボール保持率が61.4%を記録しており、よくある守備の為に走るだけでなく、守備の時間が一番短いリーグで圧倒的にボールを保持するチームだった。

 

 

走れば勝てるという物ではない、という説があると思う。

事実、この2019シーズンもとにかく走るしかないと走った松本山雅が降格した。

 

ところが、対面の敵に走り勝つ効果は上位陣4チームでも以下のように確認された。

 

 

明確に走り勝った試合  22試合 17勝 5分

僅かに走り勝った試合  20試合 16勝 2分 2敗

 

僅かに走り負けた試合 27試合 10勝 8分 9敗

明確に走り負けた試合 27試合 11勝 14分 7敗

 

※明確 3km以上 僅か 3km未満1km以上

 

マリノスは僅か~以上の試合、17試合で14勝3分であった。

 

走らないを標榜していた川崎ですが、総走行距離が低くても、相手を走らせない事で、結果として走り勝つ必要があり、走り負けると勝率、勝ち点率が明らかに落ちていた。

 

この結果を受けて、20シーズンはコロナ禍によって異常な、計測の意味を持たないシーズンとなったが、J1リーグは大きな変化が起きた。

 

 

 

走り革命の寵児サガン鳥栖と+1人の衝撃

 

先程、触れましたがマリノスについで現れ、革命の先端に立ったのは鳥栖であった。

 

なぜあれだけ選手が入れ替わっても降格せずに戦えているのか。

 

それは走る事を優位性にするべくチームの構造に組み入れ、そして走るという常に発揮されやすい安定した能力をベースにした選手を揃える事に成功したからかもしれない。

 

走ったから勝てるとは限らないのですが、なぜ走るのか、走る事によって生じる優位性、これがチームとして定義されているのであれば、全ての試合で安定して発揮されやすい効果となり、パッシブスキルと言える。

 

22シーズン鳥栖

 

鳥栖は基準が他とはことなります、データの上と、下に顕著な効果が現れる。

 

走り負けた~3km以上走り勝てなかった試合 11試合 1勝5敗5分

 

敵チームに対して8km以上走り勝った試合 6試合 5勝1分

 

 

リーズどころじゃない、フットボールにおける走り革命のチーム、それが鳥栖

 

川崎戦では谷口が退場したので計測外と言えるが、敵に退場者なしで10km以上走り勝った試合が2試合ある。どちらもFC東京戦。

 

FC東京戦 11.61km 11.17km を記録している。

 

特に2試合目は6月下旬に気温27.6度(日中気温31.5度)を記録しており、その中で普段通り120kmオーバーした鳥栖に東京の選手はまるでついていけず、5-0の圧勝となった。

 

走行距離10kmとは選手が一人いるかいないかの差。

 

世の中で戦術を語る人々は全く鳥栖の総走行距離に注目をしていないようだが、退場者が出ていないのに1人少ない状況に陥る魔法の戦術として、記録されるべき事例だと思う。

 

 

ちなみに今年もFC東京戦では、終盤に交代枠が無いのに一人プレー続行不能な選手が出たにも関わらず、9.87kmの走り勝ちを記録しており、1-0で勝利をした。

 

途中出場の選手が脚を痛めてなければ…3試合連続で+10kmの金字塔まで届いただろう。

 

 

そしてマリノスも22シーズン、+10kmゲームが1度あった。

もちろん、対戦相手に退場者はいない。

 

2022年10月29日の浦和戦で、+10.41kmを記録し、4-1で圧勝している。

 

また、FC東京には+7.09km、昨季の天敵と呼べるほど苦戦させられた広島に唯一、3-0で快勝したゲームでは+6.13kmを記録。

 

他にも、1-2の川崎戦、+4.21km 4-2の川崎戦では+5.61km。

 

3-3だった浦和戦は+4.83km、大惨敗の広島戦では-1.02kmと同じ対戦相手に対して、走り勝った結果が残るゲームの方が、良い結果になっている。

 

もちろん、走りたくても走れない、あくまでも相対的な競技なので、頑張ってないから走ってないという事はない。走り勝ったゲームをロールモデルにどうすれば再現できるのか、を考える必要がある。

 

 

また、11人いるのに衝撃の1人足りないレベルまで達しているFC東京、浦和ですが、両チームの監督はアルベル、リカルド・ロドリゲス(対戦時)、Jリーグでスペイン人監督が苦戦する理由の1つが垣間見えたかもしれない。

 

例えばゾーンディフェンスを重視し、追いかけず、結果として走り負けても良い、という影響が出ているのか。だとしても許容限界があるのかもしれない。

 

シティとの対戦時はマリノスはかなり未完成でしたが、昨年ローマとの対戦で見せたように、どんな強豪であれ、初見であれば圧倒する事も出来るかもしれない。

 

カタールで森保のチームがやったように。

 

 

 

マリノスと川崎を止めろ J1リーグ革命

 

時は進み2023シーズン。

 

マリノス以外の上位陣(8節終了データ)4チーム、7試合消化時点での走行データを抽出した。

 

プレミアリーグ21-22のリーズと同じ程度で109km前後だったJ1リーグ上位陣の動向はどの様に変化したのか。

 

<2019シーズン 総走行距離1試合平均>

2位 FC東京 109.869km

3位 鹿島 109.877km

4位 川崎 105.685km

 

 

<2023シーズン7試合終了時点データ 総走行距離合計・1試合平均>

 

1位 神戸 811.76km 115.96km
2位 名古屋 830.05km 118.57km
3位 広島 803.51km 114.78km
4位 浦和 814.31km 116.33km

 

参考

プレミアリーグ19-20シーズンで1位だったブライトン 112.65km

 

 

マリノスの優勝、そして鳥栖の革命、ポゼッション重視チームのタイトル寡占…

 

その結果、J1リーグは英プレミアリーグを凌駕する総走行距離型に変化を起こしているのかもしれない。

※ただJ1リーグは真夏期があるので絶対に今より下がる、まだ分からない。

 

 

走りによって生まれるピッチのカバー率、カバレッジパワー(造語)の向上、それが最も力を発揮するのは、マリノスのような強い意志でボールを保持し続けるチームに対する守備であり、カウンターにおける攻防の両局面となる。

 

「走るだけでは勝てない」

 

だが、それが最適化された結果、12人目、もう1人の選手にまで達したらどうなるだろう。それに対抗するには自分達も走り、走り負けても0.5人程度までに抑える必要があるかもしれない。

 

そして更にボールを保持し、選手は常に動き続け、流動的にポジショナルな戦いを仕掛けてくるチームに、守るだけはなく、勝つために対抗するには?

 

 

なぜ、ヨーロッパから来た外国人選手がJリーグを速いと言うのか。

 

web.gekisaka.jp

「どれだけ走ってもまるで疲れることを知らない。非常に発達したフィジカルを誇り、ハードワークと規律正しさが目立ちます。もちろん、私もハードワークと規律を怠ることはありませんが、Jリーグは強いフィジカルが求められると身をもって知りました」

 

 

かつて散発的に走るチームというのが現れたが、環境を変えるまでには至らなかった。

 

ところが2019年以降、走行距離を武器するチームが躍進し、走行距離を武器にはしないが相対的に凌駕されないウィークポイントにならない準備が必要になり、更にはタイトルを寡占するチームに対抗手段として走行距離が求められる事もあり、2019年以降のJ1リーグはよりフィジカルなリーグに変わり始めているのではないだろうか。

 

 

 

 

走り勝ち型と走り負け型 広島は走れない

 

1つ大きな勘違いとして、あくまでも相対的な競技であり、重要なのは敵に走り勝ったか、そして走り勝つ事がチームのパフォーマンスに影響を与える構造なのか、である。

 

例えば走り負けても良い構造のチームでは、走行距離が伸びるのは自分達が走りたいからではなく、結果として敵に増やされてしまうが、それは問題ないという場合もある。

 

更にはそういったチームが一定数居るとして、環境として走り勝つ事を構造として求めてるチームが増えたので、リーグ平均の総走行距離が増えるという効果にもつながる。

 

 

この中で上位陣(8節終了時点)を見ると、走り勝ち型と、走り負け問題なし型が分かれる。

 

1位 神戸 8試合中6試合で+1km以上走り勝ち

2位 名古屋 8試合中6試合で+1km以上走り勝ち

 

3位 広島 8試合中6試合で-1km以上走り負け

4位 浦和 8試合中4試合で-1km以上走り負け

 

 

特にイメージと異なるのが広島だろう。

22シーズンも-1km~+1kmの微差が6試合、10試合以上で-1km、9試合で-3kmを記録している。

 

つまり彼らはあくまでも、とにかく自陣ではプレーしない事を目指した、位置のフットボールであり、走るサッカーのイメージとは程遠いハイプレス特化型チームと言える。

 

とはいえ、昨シーズンでは退場者が居ないにもかかわらず、-8.64km差がついたG大阪に0-2で敗戦、-6.13kmの差がついたマリノス戦では0-3で敗戦しており、限度はありそう。

 

また22シーズン、沢山走らされた試合(総走行距離113km以上)では13試合 3勝3敗7分 とまるで降格圏の成績になっている。

 

ちなみにこの3勝は全て対戦相手に+1km以上走り勝っており、沢山走らされると走り勝てない、という関連性があるかもしれない。

 

C大阪戦3-0 +3.66km 磐田戦3-0 1.71km マリノス戦2-0 +1.09km

 

 

 

 

マリノス2023モデルは

 

現状マリノスは優秀な競技力を維持する為のスキームが機能し踏みとどまっているが、リーグを牽引してきた上位陣に、選手の引き抜きを含めたサイクルの終焉を感じさせる2023シーズン、この新たな環境下でアタッキングフットボールをどの様に進化させるのか。

 

シーズン序盤は全選手の戦力化作業を急ぐマスカットが、後半に向けて目指すデザインは、新たな優位性をどこに見出すのか。

 

 

1つ発見したデータとして、昨シーズンを2019シーズンと比較すると1つ改善点が見える。

 

2019シーズン +1km未満もしくは走り負けた試合が17試合あり、その内2試合は最下位降格の松本山雅なので除外するとしても、通算成績は以下になる。

 

 

2019 15試合 6勝8敗1分 勝ち点率 19/45  42.22 %

 

 

そして22シーズンは以下になる。(清水、磐田戦は走り勝っているのでない)

 

2022 14試合 7勝4敗4分 勝ち点率 25/42  59.52%

 

 

圧倒的な走り勝ちはマリノスのサッカーが出来ている1つのバロメーターであり、理想としては圧倒的に走り勝つ様な数字が残る事になるゲーム展開であるが、

 

それが対戦相手との関係で出来ない時に、それでも勝ち点を取れる様に、改善を目指しているのかもしれない。

 

もしかしたら圧倒的な走り勝ちが好調のバロメーターとはならない、別のモデルを目指している可能性もある。

 

この点はもう少しシーズンが進み、データが揃わないと結論が出ない。

 

 

 

 

Twitterではマリノス中心にツイートをしています。

 

リーグ戦の試合後などには、スペース機能を使って音声コンテンツ・試合後雑談を開催中。

 

twitter.com

 

 

さて余談ですが、Jリーグのレベルは~という意見を目にする事があるが、今風にいうのであれば、それってアナタの感想ですよね?という話。

 

両軍総走行距離120kmオーバーの激しい運動量、150回を優に越えるスプリント数、J1リーグで展開されるフットボールは間違いなく世界有数に、英プレミアリーグをも凌駕する、フィジカルな激しいフットボールであるのは計測されるデータからも明らかである。

 

いつまでも昔のイメージで語っていると時代錯誤と言える。

 

もちろん、よりダイナミックに進化する上で課題は最高速度とパススピード、の二点が上げられる。これらは瞬間的な力であり、筋肉の質や量に関わるので簡単には解決しないかもしれない。

 

 

しかし、思えば2018年ロシアワールドカップの時点で、総走行距離、スプリント数、最高速度と、ピッチ上で最高数値を記録したのは原口や長友といった日本人だった。

 

相手がセネガルであろうと、ベルギーであろうと。

 

走力と、走力によって優位性を生み出す構造、これこそが日本人らしいサッカーではないか、と分かったかもしれないカタール2022であったが…

 

またポゼッションとかいい出した上に、それを名波に任せるのは不安しかない。

別に勝敗において結果が出ない事はあるかもしれないが、彼が監督をしたチームがそんなプレーをしていたんでしょうか。