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2022シーズンの横浜F・マリノスを振り返る

2022明治安田生命J1リーグを制し、2019年以来の王座奪還となった横浜F・マリノス

 

 

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引用元 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1589564177215279105

 

 

マリノスが今期、どの様にシーズンを戦ったのかを、いつもより一月も早く終わり、未だ時間は残されているとワールドカップにかまけた結果、むしろいつもより遥かに遅くなったが振り返っていきたい。

 

ライバルが苦しみ、大きく勝点を減らす中、マリノスは今期のJ1リーグに起きた劇的な変化の中、いかにその環境に適応したのか。

 

 

戦力編成

 

孫子の兵法を持ち出せば、戦いは始まる前に終わっている。

 

現代のフットボールシーンにおいて、チームのコンセプトに合致したスカッドの編成は何よりも重要であり、日本代表の様な重要なゲームの直前までファジーにかまえて準備も殆どしないようなチームと異なり、マリノスの様な、やる事が明確であればあるほど、その重要度は高まる。

 

先ず前提として、マリノスは22シーズン、その開幕を前に、得点王とリーグNo.1と呼ばれる不動のセンターバック、更には他主力と呼べる優勝メンバーを失った。

 

これに対し、新規加入として他チームから引き抜いたのがロペス、西村、ジョエル、永戸、エドゥアルドであり、リーグ戦だけでも彼らの合計プレータイムは9061分に達した。

 

※選手5人が34試合フルタイム出場すると15300分 9061分は約60%に該当

 

 

各セクションでみてもロペス、西村はエウベル、水沼と同等の1700分台とウイングの軸に対する中央の軸となり、永戸は小池龍太とほぼ同数の2147分、ジョエルは喜田に迫る1516分、エドゥアルドは複数ポジションで起用された岩田を除けばセンターバック陣では最長と、この買物が最良の選択であった事に議論の余地が無いだろう。

 

特に、スプリント王に変わって誕生したマップ兵器ランニング王・西村、停滞しきっていた左サイドとセットプレー攻撃を復活させた永戸、センターバックとして強いとは何かを示したエドゥアルドは欠かせない存在となった。

 

ほかベストイレブン級の彼ら程ではなかったが、ロペス、ジョエルも十分なインパクトを残したし、更に来季、向上する余地を大きく感じさせた。

 

終わってみればの結果論かもしれないが、有力選手の後釜が、補充と呼ぶにさえ値しない結果に終わり、大きく戦力を落としたライバルとは、戦う前に勝敗が決していたと言えるかもしれない。

 

 

ACL&冬ワールドカップ日程との戦い

 

忘れてはならないのが今期はセントラル開催のACLだけでなく、史上初の冬ワールドカップ開催が重なった異常日程を再び強いられたシーズンであった事だろう。

 

先日の皆既月食も、重なるのは200数十年後らしいが、冬ワールドカップは最後かもしれない。

 

ここで特に軽視されがちだが、シーズン開幕からのリーグ連戦は大きなダメージがあるのだと、分かったことだ。

 

同じくACL日程に苦しんだ昨季3位の神戸は10戦0勝6敗と残留さえ危ぶまれる事態になり、スーパーカップで川崎を下し、飛躍を期待された浦和は10戦2勝4敗と、早々に優勝戦線から脱落していった。

 

カップ戦が入るからシーズンの日程が過密なのと、リーグ戦の日程が過密なのは大きく異なる意味を持ち、リーグにおけるポイント=勝ち点だけを考えた場合に、極めて不公平だと指摘したい。

 

 

今期見られた事として、開幕直後は起きやすい比較的小さな怪我だとしても、主力選手が戻ってくる迄にリーグの試合が数試合飛んでしまう。更には状態が上がらない状態で直ぐに次の試合がやってくるが、代わりがいないので出るしか無い。

 

他にもシーズン前に大幅な選手の入れ替えを行ったマリノスにとっては、正に耐え時と呼べる2ヶ月だった。

 

その中で迎えた4月の広島戦は、どうにかやりくりしてきたマスカットの運用も遂に限界を迎えたと言えるゲームで、マリノスは一切に何もプレーをしない、ポステコグルー就任以降の数年間で振り返っても、間違いなく最低と言える内容だった。

 

ハイライト動画の再生数がたった7000しかないように、何も見るべき物がない、誰も思い出したくもない試合と言える。

 

分かっていても、どうにもならない切なさ、を噛みしめるかの様なゲームだったのだが、だからこそ次の鹿島戦で見せた見事なまでのリバウンドメンタリティは特筆に値するだろう。

 

前半から多数の決定機を鹿島に作られる中、高丘の神がかったセーブでしのぎ、自信を取り戻すと、後半は選手の質で一方的に殴りつけ、絶陸の孤島にある風車しか無い要塞カシマスタジアムを陥落させる3-0で完勝、22マリノスの強みが凝縮された90分。

 

今期は福岡戦の後の6連勝や、夏未勝利から迎えた湘南戦、連敗からの浦和戦など印象的な試合やストーリーは多数あるが、このゲームこそ、シーズンの趨勢を分けた分水嶺であったと考える。

 

ハイライト|J1リーグ第8節|vs鹿島アントラーズ - YouTube

 

 

 

戦力運用

 

2019シーズン、マリノスの優勝はJリーグに革命を起こした。

最先端をキャッチアップする重要性、走力、インテンシティの再発見…

 

そして22シーズン、再び他のクラブに新たな指標となる違いを見せることになった。

 

それは過密日程の消化のみならず、5人交代制と言ったルールの利用に留まらない、

より激しく、速く、強度が上がったフットボールを戦う選手運用のネオスタンダード。

 

 

この記事は6月時点でのデータになるが、今期のプレータイムが総プレータイムの70%以上に達している選手が、上位陣の中でどれだけいるのか、を調べたものだ。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

詳細は記事を見てくれ、とするのだが、この時、特に特定選手への強い依存が見られた柏はリーグ戦終盤では以下の成績となった。

 

柏 10戦0勝5敗

 

また、夏までは強かった広島だが、9月以降は2勝しかしていない

7戦2勝3敗、他にも特に重要なゲームとして天皇杯甲府に対する敗戦などもあった。

 

アスリート性能が重視される激しさを増すフットボールシーンを戦う為に、

シーズン終盤へ向けた準備はシーズンの最初から行う必要がある事を知らしめた。

 

 

また試合中における選手交代の特徴として両ウイングの入れ替えは定番となっているが、

 

ポリシーとしてマリノスは戦い方を変える事はなく、むしろ同じこと(敵DFラインに対し、スピード差という優位を突きつける)をやり続ける為にこそ行われる交代と言える。

 

だからこそプレータイムを重視し、ある種の定番となっている訳だが、その目的こそ異なるとしても、今期この影響を最も受けたのが、マリノスの試合に足繁く通った日本代表監督なのかもしれない。

 

 

 

知識の普及による環境の変化

 

今期J1リーグの生態系に大きな変化が見られた。

それは守備力(=失点数)の均等化である。

 

例えば、21シーズンにおいては堅守と考えられるシーズン総失点30点台(39点以下)は全て上位陣で、40失点以上したクラブは8位の福岡(37失点)よりも上にはいない。

 

更に、50失点以上したクラブは通常より4試合多いことから、半数の9にも及び、守備力の構築こそがリーグ順位を上げる手段だったと言える状況であった。

 

所が、今期22シーズンにおいては、16位の京都サンガマリノス・名古屋に次ぐ総失点数3位の38失点となるなど、大きな変動が見られる。

 

今期の30失点台(39失点以下)のクラブは

 

35失点 名古屋 8位

38失点 福岡 14位 京都 16位

39失点 浦和 9位 湘南 12位

準 41失点 神戸 13位

 

また備考として、55失点の札幌は大量失点した6試合を除けば1試合1失点ペースであるし、44失点のG大阪も監督交代以降は10試合で7のクリーンシートゲームを達成するなど、下位クラブが一定水準以上の守備力を備えていたと言える。

 

 

一方で、上位陣の川崎、広島、鹿島、C大阪FC東京、柏は揃って40失点以上しており、39失点以下だったクラブが1つもない稀有な結果となった。

 

2~5位に39失点以下のクラブが1つもなかったのは恐らくJ1リーグ史上初の事態では無いかと推測される。昨シーズンよりも試合数が4試合減っているのに、上位陣は軒並み総失点が増加している。

 

なお、川崎は守備の要であるジェジエウの影響を指摘されるが、彼が復帰した浦和戦以降の14試合で20失点もしており、個人で解決できる問題ではない事がわかる。

 

 

この逆転現象について考え、下位の得点力という部分を見ると、今期のJ1リーグではゴール期待値が1未満のチームが1つも存在しないなど(昨季は4チーム)守備力のみならず、各チーム1試合1点は取れるロジックを持っている事が確認できた。

 

つまり、一定以上の守備力を持ち、しぶとく戦える相手に対し、上位陣は勝ち点3を求める戦いをしなければならない難しさ(日本代表のコスタリカ戦やクロアチア戦のような構図)が現れているのではないか。

 

 

今回のワールドカップを見ても、選手のクオリティをベースに、実力差が存在していても、しぶとく戦う為のテンプレートが既に広く普及している事がわかった。それは監督が知らなくても、選手が教えるくらいに知れ渡っていると日本代表からも分かる。

 

そして更に、日本代表を見ても分かる通り、一定水準の選手がいればろくに準備していなくても直ぐに効果を発揮する事が確認できた。

 

今やワールドカップは何かを発見するラボではなく、世界のトップシーンで既に起きてることが反映しただけであり、森保監督はドイツに45分間一方的に殴られるまで気が付かなかった523(541)であったが、既に今期のJ1リーグでは広く普及し、日本代表の様にしぶとく戦うチームが多かったと言える。

 

 

余談だが、9月の代表戦そしてドイツ戦まで引っ張る事になる、

なぜか思い出したように日本代表が4231を始めたのを見て嫌な予感がした。

 

そういや森保、夏は毎週マリノスを見に来ていたな…と。

 

 

 

アタッキングフットボールの火力と求められらる質

 

この優れたテンプレートを利用する事で、インスタントな、攻守にバランスが整ったチームが増える環境下でも、マリノスは前年同様のゴール期待値を計測するなど、環境の進歩を越える、進化があったと考えられる。

 

・上位2チームゴール期待値 21年→22年

 マリノス 1.876 → 1.849

 川崎 1.710 → 1.411

 

1試合平均の実得点が2.1→2.03得点 若干下がっているが、これはロペスとレオが、前田大然やオナイウほどのクオリティを発揮できなかったからと言える

 

 

そして、これに関して先日行われたワールドカップで確認された出来事として、以下のようなデータがあるらしい。

 

FIFA国際サッカー連盟の技術研究グループは前回の大会に比べてクロスボールからの得点が2倍近く増えたことを明らかにしました。 

 

www3.nhk.or.jp

 

日本もクロアチアにやられたが、マリノスは今期、より整備された守備組織を上回る方法として、エリア外からでも高精度なボールを蹴れる選手がいればゴールは生まれるという、新たな質的優位を見出したと考える。

 

例えば、川崎戦におけるマルコス→エウベルのゴール、鹿島戦におけるエウベル→西村、浦和戦の宮市→ロペス、磐田戦の仲川→レオ、鳥栖戦の松原→水沼…etc

 

 

G大阪戦ではこぼれを押し込んだ同点ゴールを含むと、エウベル水沼がお互いにアシスト&レシーバーになり2ゴールを生み出すなど両方出来る質を見せたし、

 

ゴールばかり注目されるが、仲川は3年連続6アシストを記録しており、宮市は僅か600分ちょっとの出場時間で3アシストを記録している。

 

日本で冬になると敵陣でスローインを取るだけでゴールを生み出すチームが話題になるが、持って運べるチームがもっと点を取るためには…

 

マリノスは22シーズン、スピードやドリブルだけでなく、同時に質の高いクロスを蹴る担い手を多く揃える事に成功していた。

 

話は逸れるが、ワールドカップで大活躍をした前田大然、セルティックではそれほど活躍していないようだ。確かにセルティックの環境で左ウイングなら、天野の方が活躍するのではないだろうか。

 

 

さて、他にも札幌戦で實藤の同点ゴールもクロス攻撃であるし、今期70ゴールの内、約10ゴールがエリア外&ペナルティスポットよりも後方から蹴られた、斜めのクロスボールで生み出されている。

 

このトレンドが続くのであれば、ウイングに求められる質として、スピードだけでなく、よいクロスを蹴れるのか、なおかつ自身も良いレシーバーになれるのか、が問われるし、当然中で受けるファーストトップ&セカンドトップにはシュートの質も含めたクロスに対する強さが重要になるだろう。

 

 

この様に、振り返ればプロセスとしては色々な事があったが、22シーズンのマリノスは、事前の準備、ネオスタンダードな戦力運用、環境の変化に対する対応と、勝つべくして勝った、シーズンを制したと言える。

 

勿論、旅の道中で落とし物と忘れ物がなかった訳ではない。

 

外国籍問題の歪が出たACLラウンド16、前線のクオリティ不足による最後のホーム連敗など、画竜点睛を欠いた部分もあるし、印象的な悔しいゲームも少なくないだろう。

 

 

さて来季は…という季節だが、仲川の移籍だけでなく、日本という条件により、得点王に続いてリーグMVPも翌年には居なくなる、マリノスだけではどうしようもない環境が存在する。

 

嘆いていても仕方がない。

毎年同じ話になるが、生態系において強いとは、最も環境に適応する事である。

 

予算、事業規模、最先端、世界的トレンド、Jリーグマリノスが強者でありたいのであれば、環境に適応するべく、サイクルを回し続けるしかない。今のサッカー界において、ビッグクラブと言われている所は、全てそれを怠らずにやり続けて長短はあるが歴史を築いた結果である。

 

今年、マリノスは見事にペダルを踏み抜き、漕ぎきった。

改めて、関わる全ての皆、よくやったおめでとう。

 

また、変化を楽しむという点においても、22シーズンは記憶に残る1年であった。

 

 

 

P.S

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