2025年1月11日、横浜F・マリノスは日産ホールで新体制発表会を行い新シーズンをスタートした。
これを受け、まだ戦力編成は途中段階であるとして、25シーズン展望を行いたい。
新体制発表会
引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1877962493370482975
● 社長の振り返り
・抜本的対策の為に時間をかけた
(ハッチンソンの敗戦処理が必要だった説明)
・9月から西野氏がCFG内で動く
・目標はアジアを制覇して日本を代表するクラブ
・親会社と協力も経済的自立は目指す
・新スローガンは Be a Stunner
● 新SD西野氏登場
・アイスブレイクトーク戦術を活用
※本題の前に雑談をして場と自身の緊張を解く
・既存のチームをベースにする
・課題は守備と明言
PDCA(計画、実施、自己評価、改善)のサイクルを回す
・戦術分析の強化 「シティですら勝てなくなる」
新アナリストは”キスノーボのユニット”
戦力編成をする上で、クラブとしてどういうサッカ―をするのかは重要であり、
また常にそれは最先端の知識を取り入れ続ける必要が求められる。
その戦略的視点が求められるタスクが現場業務に追われる監督任せになり、専門家無しで乗り切ろうと言う試みが崩壊した経緯は驕りと言わざるを得ない。
それに対して西野氏を頂点とするスタッフの大幅入れ替えなど、抜本的な改革が行われた事は安心を覚える。
また、どの様なプロセスで監督の選定が行われたのか、という説明は不透明な昨季と比較し納得感が増した。自分達がなぜ選んだのかを説明できない監督では戦えない。
そして何より、西野氏が挙げた項目は全てド素人が外野から見ていても問題を感じるテーマだった要素であり、特にマスカットとキューエル(ハッチンソン)下では情報分析官がユニットに組み込まれていない問題
・自分達のチームを改善、修正するのに上がってくる情報が活用されていない
・相手を見る気が無い=対戦相手のやりたい事が試合で”そのまま”やられてる
これに対し、コーチのキスノーボとユニットとして活動してきた人物の採用は監督とコーチが情報を活用する意思があると受け取れる、早くも確認できるポジティブな要素だ。
早速PDCAを回す上で提案するのであれば、生配信はテスト放送を行って音量テストをユーザーと同じ配信プラットフォームを通して行った方が良いだろう。
再設計の必要性
引用元 https://x.com/prompt_fmarinos/status/1877986392418263224
・ドル&アンジェのアーキテクチャ(設計思想)は限界を迎えた
・人材不足 ポステコグルーのやり方はポステコグルーが必要
・監督にお任せは失敗の元
アタッキングフットボールの定義は難しい。
例えばJ1最多ゴールだったスキッベの広島はどうか。
出来るだけ敵陣でプレーを行う思想の元に、多数のクロス、シュートを生み出す彼らはアタッキングフットボールか。ただGKはロングボールをガンガン蹴りますよ…低い位置では出来るだけボール持ちたくないのでね。
自陣でのプレーをどれだけ拒絶するのか、とボールを持ってる事の優位性に対するウェイト、このバランスが、クラブとしてどの様に戦うかを大きく左右する。
この点、ポステコグルー最大の問題は本来はスキッべの様に振る舞うのが合理的なのに、それが出来ない”信仰”を持つ事により生じる不合理である。信仰は損得ではない。
そして相手どころか、自分達すら見れない、それは金井と中澤の2CBをやってしまうような、信仰を実現する為に現実を無視する振る舞いにあるだろう。信念の”信”が信仰の”信”なのである。
勿論、その裏にはテクニカルな設計、マネジメント、ディティールがあるからこそ飛びぬけた実績を残す事が出来たのだが、更に殉教も厭わない信仰が無ければ、その担い手は務まらないだろう。
プレーする位置とボール保持のウェイトに折り合いをつけながら、ポステコグルーを合理的にしていく作業をクラブと監督がコンセンサス(同意)の元に行う。
これがクラブとしての戦い方を再設計するテーマになると考える。
それでもボール保持か
ボールを持つ事と奪いに行く事、この攻防がゲームの優劣を分ける中心になっている。
だからと言ってボール保持率は何の参考にもならない。
攻守においてどちらがやりたい事をやれるのかと言う話。
この点で、ボールを持つウェイトを何処まで重視するのかと言う点で、昨季のJリーグにおいては自陣保持を拒否するチームの躍進が目立った。
それは後方での保持に対する価値評価を下げたチームが躍進した、という事である。
これは端的に言えば、奪いに行くロジック(論理)の完成度が高まった事により、リスクの方が上回っている事、前年までショートカウンターを武器とするチームの優位(マリノスや川崎)に対するアンチテーゼ(反論)として、Jリーグという生態系における環境適応が生じたとも言える。
自陣で持たなければショートカウンターを食らわない戦略。
その文脈の中でマリノスは2年間、ボールを持つ事に対するウェイトを下げない選択をしたが、マスカットは自陣の問題を解決できず、キューエルは敵陣で問題を抱えた結果、より悲惨な損害を生み出すという、問題解決には程遠い結果となった。
よって、マリノスの25シーズン展望をする上で先ず注目するべきは自陣でのボール保持に対する価値評価になると言える。Jリーグのトレンドにのるかそるか。
指標としては何処でプレーを行っているのかが現れるパス本数が分かりやすい。
21年は1試合平均で 自陣253 敵陣311 とボール保持にウェイトを置くチームとして理想的な配分になっている。22年も自陣236 敵陣266と傾向に変化はない。
23年では自陣241 敵陣218と明らかに減少傾向が見られ、24年では自陣231 敵陣229と改善しようとした痕跡は伺える。最もマスカットが崩したチームで、そこだけ改善した結果、悲惨な結末となったが。
参考として24年データだとアンチフットボール※勢の躍進が見える一方
(※プレーしない事を好むチームの意)
1位 神戸 自陣137 敵陣159
3位 町田 自陣97 敵陣134
これに対して広島は 自陣164 敵陣256 と敵陣では往時のマリノスと同様にプレーしている事が伺える。スキッベは現実主義でソリッドなポステコグルーと言える。
答えが無い問題に対して、ポステコグルーの様な信仰を持たないのであれば、合理的に振る舞うしかないと考える。西野&スティーブの選択に注目したい。
2つの3 325アタックと523ブロック
5レーンアタックという言葉も古くなってきたが、ボールを持つ形として325と言える状態を形成するのが最適解として普及している。
なので、プレミアリーグが最も身近だったスティーブ監督がこれを採用する確率は高く、ボールを持つ時間が長くなるマリノスでは3バックと言える状態で戦う時間が長くなるかもしれない。
ただ世界的傾向として、だからと言って最初から3CBが設定されているチームはそれほど多くない。
3を形成する中身として、SBやMFが入る、その過程で2を形成する選手がSBや時にはCBになる事もある、相手を迷わせる流動性と試合中の変化を生む自由度が高い2CB(4バック)の構成の方が主流と言える。
また、次にマリノスの選手構成で3CB(5バック)で守る事を考えた場合に、主戦場となるミドルゾーンにおけるプレスとブロックは523で行う事になる。
この時に前で3を形成するのがロペス、エウベル、ヤンとなった時に、果たしてそれは上手く行くのかと現時点では大いに疑問を感じる部分となる。(まぁやってみなけりゃ分からないが)
トライしてみた結果として無理だとなった時に、4(2CB)にはしないで解決するとしたら低い位置をベースに541で守るという落とし所を選ぶ可能性も捨てきれない。
その時にプレスはどうした、これがアタッキングフットボールか、と言う意見が出るかもしれないが、序盤連戦のACLEの重要ゲームが続く中で、これは合理的判断と言えるし、むしろそれが出来る監督であってほしい。
勿論、上手く行くかもしれないし、早い段階で判断出来た結果、守備時は433か442で行こうと言う選択肢を取るかもしれない。まぁ昨季を考えると442も怪しいが…
そして何より3CBを選ぶなら純粋に人数が足らない問題もある。
戦力編成から推測する事
1月11日時点において、飯倉が復活を遂げたGKではJリーグ屈指と言える選手層を揃えるのに対すると、最も物理的に減ったのがCBとなっている。
昨季のリーグ戦出場者に實藤も含めると4人が退団で現状の加入はキニョーネス一人となっている。既報のニッキ・ハーフナーが追加してもマイナス2の状態だ。
喜田と渡辺が残り、山根と木村卓で4人を揃えるMFからジャンや山村が両対応、埜口を結構使うつもりなのかもしれないが、ベンチ入り9人制を考えると4人目の本職が薄い。
この点、マリノスが契約更新の発表は意味がなく、ウインドーは3月26日まで開いている事を証明している事から、下位カテゴリーに対するある種の暴力的なオファーは可能と言える。
またサイドバックも純粋な増減で言えば―2となっており、特に後方で流動性を作る場合にCBの位置に入れる人材が少ない。この事から序盤戦は高い流動性を求めるような難しい事には手を付けず、3CBによる523をベースに考えている可能性はあるかもしれない。
もしくはMFが最後方の3に下りる形をベースにし、SBは中盤に入る偽SBかウイング化を想定しているのかもしれない。この点、誰がSBに入るかでウイングも、中でプレーする遠野や天野を採用する変化を起こせる。
例としてはヤンがいる時は中盤に入る松原、ここで松原と鈴木冬、ヤンと遠野の交代でウイングタスクは鈴木が行い、遠野はAMF、上がっていたMFが中盤に下がる、と言った同ポジションの交代で構造の変化を起こせる。
一方で、その場合に人数配分としてウイングタスクプレーヤーが多すぎるかもしれない。
同時にセカンドトップが少ないので、エウベルとヤンをそちらで運用するつもりかもしれない。植中がこちらへ回せるのかはロペスの運用次第とも言える。
偽SBも可能 松原、永戸(ゴール前突撃は制限される)
セカンドトップ エウベル、ヤン、遠野、天野(望月)
ウイングタスクプレーヤー 宮市、井上、松田、加藤蓮、鈴木
・守備も含めてエウベルとヤンが未知数過ぎる部分である。
・宮市や井上、松田がインサイドでプレーするのは余り想像できない。
人数配分的に右偽SBは山根や木村卓も入るかもしれない。
この点、左に偽SB人材が少ないのでヤンがいる右は偽SB運用が多く、左はウイングタスクの選手を置く事が増える可能性がある。
右ウイングタスク(WG)をヤン、井上、松田で回し、左ウイングタスク(2CBならSB、3CBならWB)を鈴木、宮市、加藤蓮で回すとハマリは良い。左右非対称構造
スタートから使う前提のエウベルは永戸が偽SBをやる時は左WG、永戸以外の選手(ウイングタスクな選手)が入る時はセカンドトップ運用が増える可能性がある。
つまり右は誰が出ても同じだが、左は永戸が出るかどうかで構造が変わる。
緊急補充
水沼と加藤聖を想定した戦力編成だったのは間違いない。
では、その二人がいなくなるとしてどの様な補充を行うべきなのか。
特に水沼については先に述べた通り、ウイングタスクプレーヤーは充実しており、セカンドトップでの運用を想定していたのではないだろうか。
浅田や望月がチャンスと言えるかもしれないが、国内から探しやすいポジションである事も事実である。
特に近年ではJ3で活躍した選手がJ1でも活躍するなど、下位カテゴリーや、J1で出場機会が無かった若手選手が大ブレイクする傾向があり、チャレンジをしてもいいかもしれない。
加藤聖については左のウイングタスク(5バックにおけるWB)をこなせる選手は多く、余剰気味な戦力だった事から、永戸の様な偽SBをこなせる人材に乗り換えるのがいいだろう。
例えば岡山の鈴木喜丈辺りは狙い目だ。偽SBよりも更に最終ラインの3にはいるCBロールもこなせる選手だ。FC東京育成の183㎝80㎏の左利き27歳。
まぁ契約更新後の選手を引き抜くという事は引き抜かれる覚悟もあっての事だろう。
そろそろ関東の…都会が懐かしくなってきたんじゃないか?
サウジアラビアでクリスティアーノ・ロナウドと戦おう。
現時点で24人 A枠マイナス10
キニョーネスの獲得が内定されたが、A契約枠は24人。
いわゆるルーキー4名は枠外で、全選手は28人。
Jリーグには特例処置があり、育成組織出身者(U-15かU-18)に3年以上在籍していればA枠から除外されるというものがある。廃止されたという発表はない。
つまり、育成が強いクラブはA枠を拡大可能であり、それはACLEの様な試合数が膨大に超過密日程を生みだす大会に参加する為には大きな力になる仕組みとなっている。
この点、24シーズンにおけるマリノスは西村がいた時点でA契約32人と、60試合を戦う準備はしていた。(監督が全く活用しようとしなかったが)
所が今季、最小でも45試合、そこそこカップ戦を勝ち上がれば50数試合戦う事がわかっている中で、全選手28人の状態となっている。
ここから上記条件をベースにA契約除外選手を抜くと、A契約は17人となり、本来使える枠を大きく余らせている事になる。
勿論、戦術浸透の為に少人数で運用したいという意図が監督コーチ陣にはあるのかもしれない。もっと言えば不満を抱える不穏分子のマネジメントに労力を割きたくない。
ただ、問題は今期からリーグ戦ではベンチ9人制度を採用しており、それは毎試合20人が必要になるという事である。
これは5人交代制と同じくゲームの構造に影響を与える大きなルールチェンジだ。
それに対し24シーズンの連戦においては穴埋め的な、戦術や選択の幅ではなく人数合わせ的なベンチメンバーという状況もあったが、25シーズンではより戦えなくなる、チームを戦闘力が乏しい状態で前線に送り出すという事につながる。
西野SDが新体制発表会で口にした、獲得活動、あと数名、が誰で何人なのか、キャンプ入りまでに分かるのを期待したい。