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横浜F・マリノス試合後ざつだん記事 優れた監督は間違えない

2025年10月4日、横浜F・マリノスは残留圏と勝ち点差なしの17位というぎりぎりの状況で迎えたJ1リーグ第33節で、今季3回の公式戦ですべて敗れている柏レイソルと4度目の対戦を行い、0-1で敗れた。

 

これで今季は柏に4敗を喫したが、結果以上に後述する監督の判断によって勝ち点を一つも得られなかったことへの落胆の方が大きかった。

 

試合後は審判の判定が話題になったが、今回の判定は論理的に説明できる範囲にある。近年を振り返ると、むしろマリノスが恩恵を受けた明らかな誤審の例も複数あるため、今回は想定内の“下振れ”に過ぎないと言ってよいだろう。

 

一方、永戸が広島戦で受けたレッドカードは基準の取り違えとも言える説明のつかない判定だった。その後、J1で同様の事例でレッドが出た例を見ておらず、訂正されない限り今後も指摘し続けたい。

 

 

 

柏レイソルのストレングス”強み”は何か?

 

柏レイソルとは今期4度目の対戦、と言っても途中就任の大島監督は3試合目。

 

2戦の中身としてはひと月前の9月に、A面B面と言える大きくターンオーバーしたメンバーで1週間に2試合するという最高の検証試験のデータを保有している状態だった。

 

能力に懐疑的な目で見られる新米監督にとって、何が効果的で、何が上手く行かなかったのかを正しく認識出来ているのかが問われる一戦とも言えた。

 

 

守備に関しては比較的上手く行っていたルヴァンカップ2戦を踏襲する物かと思ったが、WGを押し出しファーストラインを3枚に設定しCBに詰めていく一方で、WGの裏をWBに使われるなどスタートで設定の甘さが目立った。

 

しかしこれに関してはキニョーネスが交錯して痛んでいる最中にSBをジャンプさせてWBを捕まえに行くマンツーマンを徹底する事で修正は直ぐに出来た。

 

これまでも何度か提示している様に、徹底地上戦を挑んだルヴァンカップ2試合でレイソルのゴール期待値は今期アベレージを下回っており、強気の敵陣マンツーは効果を見せていた。

 

この試合も算出モデルによりバラツキはあるが柏のゴール期待値は大体1.3前後。

 

一見、そこそこ高い様に見えるがこれもゴール期待値マジックで、得点したセットプレーのシーンがシュート2本と計上されており(ヘディングと体に当たった後)これだけでPK相当の0.7近い数値が加算されており、どちらかのシュートを採用して実際は0.9程度と言える。

 

参考:今期の柏レイソル 1試合平均ゴール期待値 1.342

 

 

一方で、問題が起きたのはFC東京戦そのままに挑んだ攻撃だった。

 

ハイプレスを受けるとポゼッションが安定しない現状を受け、マリノスは保持を極端に避け、分かりやすいロングボールに頼る傾向がある。

落としどころの工夫として、谷村と植中という「前線の裏と前の両方をこなせる選手」を配置し、明確なターゲットマンを置かない縦関係でCBに迷いを生じさせようという狙いだ。

 

そのギャップにより手前を使い、CBに簡単なクリアをさせない事でセカンド争奪戦を敵陣で作る意図がある。谷村も植中も空中戦勝率自体は低く、ポストプレーから攻撃が始まる事は少ない。

 

設計として明確なポストマンを用意するならまだしも、悲しいかな、偶発性を期待するワンチャン縦ポンフットボールこと昭和式部活サッカーである。

 

で、当然柏には通用しなかった。

 

本来は急造と言える馬場&ジエゴのサイドを狙いたかったが、マリノスの設計としてクルークスがいる右側を狙う事もあり、先ず古賀、杉岡がしっかりと対空で勝ち、例えセカンドを拾われても柏第3の武器とも言える堅牢なローブロックがあった。

 

柏に、いかにローブロックで守らせないか、というルヴァンカップ第2戦の教訓は見られなかった。今のマリノス被シュート率リーグ1位を誇る柏のローブロックを崩す力はない。

 

チームに浸透しているポジショナルプレーと実践能力、高水準なプレス設計、そして堅牢なローブロック、これが25年の柏レイソルと言える。

 

 

 

大島監督は何を間違えたのか

 

大局としては劣勢もスコアは不運。ドローでも悪いと言えないチーム状況を考えれば何かを失敗したとまでは言えない45分を過ごしたマリノス。とはいえこのままでは勝ち点0なので何かをしなければならない。

 

後半になると明確に見られた変化として意図的なボールの保持が増えた。

 

51分にオフサイドとなったがクルークスのポストヒットとなるシュートシーンは前半丸で見られなかった最終ラインでのボール保持からキニョーネスのDF裏を突くロングボールから起きている。山根がCBの間に下りる動きも頻繁に見られるようになった。

 

56分にはハーフライン手前の保持からパクイルギュがエリア外でバックパスを受けてロングボール、60分にも敵のロングボールを回収した角田が一旦最終ラインで保持してから柏を前に釣り出してから再びボールを受けて関富をDFライン裏に走らせるロングボールから植中のヘッドに繋がる。

 

もちろんロストから攻撃を受けるリスク(57~59分)もあったが、前半は0.18に留まったゴール期待値を瞬く間に更新するようにチャンスシーンを構築していく。

 

これが本来、ルヴァンカップ1戦目から受け取るべき有効なデータだった。

 

あの試合では大胆なターンオーバーにより徹底地上戦という極端な試合であったが、マリノスが強く保持をするからこそ裏が空き、堅牢な柏の守備が崩壊レベルで機能しなかった。

 

柏戦から得られた教訓とFC東京戦という文脈。これを正しく読み取り、かつて神戸が対マリノスで行ったように、プレスをさせる為の保持であり、1列目を戻れなくする保持であり、生じたスペースを一気に攻める為のロングボール攻撃をするべきだった。

 

ちなみに取り消しになった谷村のゴールシーンは柏のゴールキックを跳ね返したセカンド回収から一気に攻め切ったミドルカウンターである。

 

高度なプレス、堅牢なローブロックと衝突しないというルート。かつてマリノスと戦ったチームは戦力やフットボール的な先端への理解で劣っていても、何とか活路を見出すべく工夫し、大変苦労させられたのを思い出して欲しい。

 

敵のストレングスを出させないという戦いの基本を知っていれば、対抗できるのを身をもって知っていた筈じゃないのか。

 

しかしチームは活路を見出した。まだ時間は十分にある!

この方向を加速させる手を打てば柏を追い込むことが出来る!

 

後方の保持を安定させ、さらに一撃をさせる選手は天野しかいないだろう。

前方で裏に強い選手が複数人欲しい所だ。

 

63分、大島が動いた。

 

その結果、攻撃は沈静化する。

 

宮市、井上、裏に強い選手は入ったかもしれないが、それを狙うようなプレーは乏しい。後方で違いを生み出して欲しい天野はいつも通りに前線で好き放題に動いている。

 

2年前なら完全B面の前線が、2年前の様にプレーし始めた。

 

一応、その中でも68分に山根が井上を裏に走らせクロスから谷村がヘッド、72分に再び右サイド縦ポンから左に展開し、まるでイニエスタの様な関富のロブパスを恐らくブルーロックを読み過ぎな山根の反転ボレーなど見せ場的な物はあった。

 

 

だが時間の経過と共に、逃げ切りを意識し始める柏はローブロックの時間が増えてくる。そらそうだ。

 

こうなると疲れ切った谷村を含め、完全に手詰まりで、フレッシュでもクオリティの低い選手が出来る事は殆ど無かった。

 

唯一のチャンスシーンにして最大の決定機は左サイドで、保持の為の保持に失敗し、やられかけた所を宮市がプレスバックで救い、驚きの対角線ロングパスを井上に届けて加藤のスルーパスが相手に当たって、たまたま谷村の足元に転がったという再現性は無い物だった。

 

 

 

適材配置

 

J2では一時の不調から脱却し長崎が昇格レースに復活した。

 

監督は高木琢也。曖昧だった前線の関係を整理し、就任直後から一貫して最大火力のジェズスをシャドーに固定し、ファーストトップをダブルエースと言えるファンマとエジガルで回し、補強もあるがピトゥカと山口蛍のボランチはJ1仕様。ちなみにCBの真ん中は新井一輝で、高木監督下で不動のレギュラーに定着した。

 

彼に先端的思想とかを特別に感じる事は無いが、とにかく適材配置を間違えない監督だ。キャリアのスタートも波乱に満ちたもので、J2史上最速監督解任となった1節で監督交代による緊急登板からスタート。そこから万年下位だったチームで数々の記録を打ち立てながらJ2初優勝、昇格を獲得した。あんたジダンかよ!

 

その後は予算に乏しいチームで苦労を重ねる様に力のないチームを勝たせたり、特別な話題を呼ぶサッカーを展開する訳ではないが、戦力に見合った結果を出す事を得意とし、J1仕様な長崎を復活させたのも納得の結果だ。

 

神戸を何度も救う吉田孝之監督などもそうだが、高度な戦術どうこうではなく、勝負で勝つ為に、何処で、誰に、何をさせるのか(タスク振り)を間違えない印象がある。

 

今の大島監督に大きく欠けている要素を持った監督だ。

 

後方でボールを持つ事で柏にプレスをさせて裏を狙う。問われるのは、補強したい要素は保持の安定と、裏への一撃、そして裏を取るタレント。

 

喜田と天野、植中とデイビッドを交代し、ピッチ上で選手達が活路を見出した方法をサポートする交代が、何故できなかったのか。

 

2トップの機能性として、試合当初の分かり切ったロングボールを2トップの縦関係で何とかする作戦が失敗し、一旦ボールを持って裏が上手く行き始めていたのだから、手前は谷村に任せ、裏取り名人こそを中央に配置してよかったという事だ。

 

ところが天野を前に入れた事によって縦ポンすら蹴りづらくなって持たされる時間が増える。柏にとっては格好の休憩タイムだ。

 

 

また戦力運用についても問題がある。

 

最近の試合で多くみられる様にロングパスを蹴るにしても、加藤ではキックの質が出ない。

一方で宮市は前線とは異なり、後方にいるとキックの質がとても良く、72分の井上に通した対角線のパスなど他に誰が蹴れるのかというボールだった。今期SBを務める事で発見があったとするなら後方からのキックの質だ。

 

ポストマンの能力が高い選手はおらず、単純に蹴るが通用しない中の選択肢として、一旦、ボールを持って裏というやり方を進めるなら彼はSBで戦力になるし、SB不足は明らかな上に、WGには夏に獲得したオナイウがいるのだから戦力の無駄となる左WGで使うのはやめるべきだ。

 

他にも選手とのコミュニケーションと言う点においても、交代に明確な不満を示したクルークスはまだ走れたのではないか。

 

むしろ60分の段階で代えるべきは、高いキックの質を見せた関富に低い位置に引いて受けさせる事で柏のWBをつり出す設計をした上で、左をアラウージョからオナイウに代えて裏取りを仕掛けるアイデアが最適だったように思う。

 

4枚代えをするなら、持って裏の意図が明確になる交代案。

60分交代 喜田→天野 植中→ デイビッド アラウージョ→ オナイウ

+角田→ デン

 

角田の負傷もあり、少し早すぎる4枚切りとなるが裏が効いてる状況を加速させるにはアラウージョではなくオナイウだろう。

 

0-1のまま時間が無くなり、引かれてローブロックになれば終戦だ。

 

早く動いたと言う判断自体はそこまで間違っていないが、何の為の交代なのか。それがピッチ内の選手どころか、交代で入った選手にすら伝わってない様に見えたのが無策を感じさせるものだった。

 

何よりピッチ上で上手く行き始めた事が、大島監督の交代により完全に機能不全に陥った事は今後の試合に不安を残す結果となった。

 

マリノスが創設以来経験をしたことが無い水準で厳しい戦いとなる残り5戦。運命を委ねるには経験、フットボール的教養、直感的な判断力、監督として重要な要素を欠きすぎているように感じる。

 

 

 

2週間で出来る事

 

判断が間違っていたのなら、プロセスの変化で修正出来る筈。

それは何の情報を重視するかというパラメーターの設定で導き出される結果が異なると言う事だ。

 

休憩地点とも言えるAマッチウィークによる2週間を活かして貰いたい。

 

何故、この様な判断になったのか。試合前に行った柏に対する見立て、分析は正しかったのか。誰の意見を重視したのか。アイデアがあったとして、どの様に導き出されたアイデアだったのか。

 

2週間もあれば徹底的に洗い出しを出来るだろう。

 

勝敗の結果を、審判に全てを預けるのはフェアじゃない。