2025年8月9日、J1残留に向けて後が無くなっていく横浜F・マリノスは順位こそ低いが難敵と言える東京Vに0-1で敗れた。
ここまでの東京Vは得点力不足に悩むも、今期は保持姿勢を強め、見事なボール保持と献身性をフルに発揮した特別な頑張りが生み出す強度高い守備で、直近でも対戦したチームは尽く低ゴール期待値に終わるなど、正に難敵と言えた。
勝ちこそしたが町田は0.45しかなく、マリノスと同じ様にセットプレーの1点で1-0負けした川崎も0.67しかなかった。
その点で見れば、0.8を越えたマリノスは2回の決定機演出もあり、渡辺と松村が決めるべき時に決められず負けた、ゴール前のクオリティが問題だったと評する事も出来る試合であった。
一方で、前半だけで12回ものCKと、多数のゴール前フリーキック機会を与えるなど、特に前半はマリノスの守備が全く機能していないのは明らかだった。
そんな前半の印象は相当に悪く、リーグ再開初戦の新潟に惨敗したキスノーボと同じ空気が大島にも漂った。
この監督で、この先も戦っていけるのか?という不安だ。
独学で定石を無視する新米監督
先ず、前提として今期のマリノスはビルドアップの基本であるポジショナルプレーにおける数的優位が設計され、それをピッチ上で実現可能なチームに滅法弱いのが特徴だ。
アル・ナスル、柏レイソル、新潟、完成された保持型のチームこそが天敵なのである。
これはキューエル、ハッチンソン、ホランド、キスノーボ、守備時のポジショナルプレーに無頓着な、いやそもそも理解しているのかというフットボール的教養まで懐疑的な監督が4人も続く奇跡のリレーによる賜物、というか負の遺産である。
アンチ策、対する定石としてマンツーマンか5バックが普及した中、今のトップカテゴリーに所属するチームでここまでポジショナルプレーに翻弄されてくれるチームも数少ないだろう。
そして、ヴェルディ戦はそれが大島監督になっても変わらないのが確認された試合であると言える。
しかし、なんでマリノスは常に相手に関係なく4231なのか。
これでヴェルディと試合をするとどうなるかという検討はされたのだろうか。
上手く行く筈だったプランがあるかもしれないが、まるで見えてこない。
更には守備時だけでなく、ボール保持においても、保持の安定すら出来ないという点で全く上手く行っていないのに、世界中が取り合えず安心な325で立たない理由は何故なのか?
裏を狙う以前にボールを打ち出す砲台陣地を確保できていない。
何故、裏を狙う攻撃がピッチ上で再現できないか理解できているのか不安だ。
混同を避ける為にサッカーというが、サッカーのパスアタックは今やアメリカンフットボール化している。
パスを供給するのはクォーターバックという1ポジションだが、ラインを形成する選手で時間と空間を確保するチーム作業であり、レシーバーは設計されたムーブでスペースを狙う。
これをサッカーで再現する最適解として、後方中央で数的優位を作りやすい32のパス供給部隊と、スペースを狙う5枚のレシーバー隊というのが発見され普及している。
何度も頻発するCB→SBでサイドに追い込まれたらGKが死に駒化する4バックでのビルドと異なり、GKの+1を活かせる後方中央で数的優位を形成しやすい。

別に4バックでも、左右SBで最終ライン残りと偽SB(ボランチ横)に入り、32を構成するのは珍しくない。DFがボールより後ろに残る方が被カウンター時の安心感がある。
攻守に渡って、既に確立された定石を無視して散々な結果をピッチ上で繰り返す様は、脱サラしたサラリーマンが独学で作るラーメンがマズいを通り越して、ラーメンと認識出来るのか怪しい状態である。
具体例
前半31分のヴェルディ保持攻撃に対する守備は悲惨だった。
ヴェルディはGK+1で5対3 +2の安定保持を構成。
この時に、右のタッチラインにいるのは3バックの一人宮原
右WBの松橋は上がり鈴木を最終ラインにピン止め
鈴木の応援は期待できないので左WG(この時はCK崩れで左にいるヤン)は
前のCBとWBを一人で見なければならない。

GK→ 宮原で一回けん制を入れてバックパスで戻す
これで、CKで左右入れ替わり中の左ヤンが宮原を気にして下がる
ヤンが下がって1列目が2枚になったので森田は保持の安定を確認して前に移動
引き続きGK+1で4対2 +2安定保持
マリノスは谷村が縦パスだけは切って前進させない

バックパスにヤンも応援に前に出るが、今度は右シャドーの斎藤が下りて5対3
森田で右WG(エウベル)を前に出させず、左WG(ヤン)の裏には宮原がいる。
ヴェルディには右サイドローテという流動性が存在し+2の安定を維持。
ボランチ2人と斎藤の連携が巧みであるし、数的優位でGK保持の安定を作り続ける意識は高い。その仕組みを理解すらしてないマリノスと圧倒的な練度の差である。

痺れを切らした天野が‐2状態なのにプレス開始(CB→GKへの二度追い)
だがGKには余裕でCB、ボランチ、タッチラインの宮原と3択が残されていて
危険度はゼロ
よりバーティカルな斎藤を選択して前進パス
これでマリノスのファーストラインを容易に破壊
斎藤は右にパスをすれば宮原&松橋 vs 鈴木 の2対1で更に容易に前進出来る。

宮原を使うヴェルディの右サイド
中央で5対3を形成する仕組みとしては両ウイングを前に参加させない事。
特に5には入らない右CBに入った宮原がタッチライン沿いに位置し、
左WGは常に気になってしまい前に出れない。
実際に前に出てしまったタイミングでフリーな宮原に通され
全体がリトリートするしかない展開も繰り返される。


マリノスは何となく全員、そのままハマっていない4231で立っているが、ボール保持時に相手を翻弄する立ち位置の仕組みなど標準装備が当たり前の時代だ。
マリノスが無策過ぎるだけで、ヴェルディはちゃんとしてるだけ。
曖昧過ぎるプレス設定
34分にはバックパスからファーストラインはプレスに出ていき、
喜田も追随する姿勢を見せるも途中で踵を返して下がってしまい森田がオープン
谷村がエリア内までラッシュしているのにDFラインがマンマークになってない。
喜田は後ろを気にしてUターンし、ヴェルディは容易にプレス回避成功。
これぞ体力の無駄、無駄プレスの極み。

そして、プレス失敗によって完全に前への意識が折れる。
ずるずると全体が下がるだけになってしまい、敵CBは完全に余裕をもってボールをドリブルで運んでからロングボール。
で、画面奥の誰が担当するんです?この左WB?に蹴られて無風の前進
プレスどうこう以前に、試合開始から30分以上経過し、給水タイムもあったが立ち位置もまるでハマっていない。

ヴェルディはゆったりと保持攻撃を展開するも(速攻した方がいいですよ城福さん)
最後は左に完全にフリーなサイドプレーヤーが誕生し、クロス攻撃

ビッグチャンス!(キニョーネスがいれば大丈夫)

監督の仕事は決断であるが、大島監督は何も決めずに試合をしたと言える
行くならいけば?
エウベル宮原、喜田が森田、キニョーネス福田、追従のマンツーマン
谷村がカバーシャドウからGKラッシュ

待つなら待てば?
ジャン中央、天野喜田は左右IHで走って死んで宮原ごと出し先をマーク。
まぁ森田ならCB→WB間を上手く使う、19マリノスにおけるティーラトンタスクで対抗してくるか

大島監督には質問に答えて欲しい。
記者は厳しい質問とやらをしないのだろうか。
最初に失敗したとして、何も決めてなかったとして、中途半端のまま、選手が迷走したまま45分間過ごすのは何で?
今更、ポステコグルーを思い出すのは時間の無駄
世界のサッカーシーンは進んでいる、マリノスを置き去りにして。
大島監督は自身で言う様に未熟だとして、今の世の中では定石として、523-541でも343でも呼び方は何でもいいが、広まっているし、それはJリーグでも変わらないのだが、何故なのかを一度でも考えた事があるのだろうか。
未熟である事を受けれるのであれば、なぜ、定石を模倣する所から始めようとしないのか。憧れるのは構わないが、世界のサッカーシーンに革命を起こしたいのか、とでも言うポステコグルーの結末はどうなったか知らないのではないか。

革命は失敗し、カップ戦の決勝ではスタイルを投げ捨て守備からカウンターで唯一のタイトルを勝ち取った。
鹿島戦で激怒していた姿はもう無い。
名より実を取った、実に人間らしくていいじゃないか。
大島監督はマリノスという、日本国内では有数の整った環境でコーチという仕事を続ける中で、どれだけフットボールを研究し続けてきたのか。
プレミア、ブンデス、ラリーガ…その最先端を追い続けてきたのか。自分に順番が回ってきた時の準備をしていたのか。それが今問われている。
ハイプレスをするならマンツーマンの設定と、保持をする基本として敵ファーストラインに対してGKを含んだ数的優位を作る立ち位置の設計。
ハイプレスを、ボール保持を、やるのかやらないのか。
やるなら定石を使って準備をする。
Be a Stunner を目指す前に、先ず平凡を、平均点を目指して貰いたい。
スタートはゼロなんだから。
おまけ 戦力編成は終わる事が無い
エウベルが出て行くとして、アラウージョをそのままというのはどうだろうか。
逆足ウイングが主戦場だった選手の左右交換は左のヤンになる危険性あり懐疑的だ。
更には折角、間受けのレシーブ能力、ショートレンジパスという中央での才能が見つかりつつある井上をサイドに戻すのは勿体ない。
彼をWBにサイドプレーヤーにしてしまったのは一体、誰なんだとの思いが募る。
フリンポンじゃなくて香川真司を目指すべきだったのかもしれないし、まだ遅くない。
また天野や渡辺はボランチでもトップ下でもなくIHが最適で、相手次第によって433(4123)のオプションに出来る選手であるが、中央ユニットはデイビッド、谷村、植中、井上の4人で構成するのが適しているのではないか。
天野や渡辺は正にオプションとなる選手で、433から32保持をするならセカンドトップ化する、第二ボランチも役割としてあるだろう。
例えばヴェルディのビルドアップ部隊、3バック+2ボランチを前からハメに行くなら4123で3トップ+天野、渡辺で敵の保持ユニットに対して人数をしっかり合わせて潰しに行くべきだった。
ハイプレス時は1を担当する、例えばジャンがバックラインに下りて5枚化すれば、両WB、2シャドー、CFに対して、枚数と立ち位置を合わせやすい。
相手の325保持に合わせた結果、こちらも523の様な形になるが、相手を、人を捕まえるのが守備なのだから当然である。無策にズレた4231で立ち続けて各所で劣勢が自然発生しても気にしない方がおかしい。
話を戦力編成に戻すと、エウベルという主力級の選手が出て行くのだから、緊急になろうがしっかりと補強をするのは当たり前。
ところが残念ながら、以前に紹介した長崎の松澤は海外へ、愛媛の窪田もこの夏に既にJ1へと移籍済みだ。出遅れは損失を招く。
そもそも鬼木は松村や荒木を使ってやれよというのもあるが、J2から探すなら熊本の松岡 瑠夢(リム)などは177㎝のスケールでスピードもあり、23年は右の島村、左の松岡として熊本の躍進に貢献。
またチーム事情から昨シーズンはファーストトップも経験するなど、活躍した左WGで固定起用して貰えていない等、伸び悩んでいる。
一方、その経験を活かしてウイングの組み合わせとして右が起点型のヤンなら、例えばヤマルとニコ、ヤマルとハフィーニャの様に、左は斜め走りでのスペースアタックも期待できる選手が組み合わせとして良い。
遠野が起用されていた時は全く考慮されていなかったが、2CBと右SB、両ボランチを安定保持隊にするような選手選考がセットとして、加藤や鈴木といったウイング型サイドバックを起用する選択肢も活きる。
一方で、ウイングこそが花形とする従来のスタイルであれば日本人では役不足。
J1リーグで特別な個を発揮できるのか?
この点、Xでも紹介したが、 ジョルダン・ボタカ 良い選手じゃないかい?
なんと移籍金0円の契約満了フリー選手、そして安い(多分)。
今流行りのイスラエルリーグでプレーしていた左ウイングでバリバリにフルタイムプレー。
24/25 イスラエルPL 33試合2747分プレー6G2A
1試合平均のドリブルスタッツ(成功1.9回/成功率55%)
32歳 コンゴ 184㎝ 右利き
PK、セットプレーも担う強烈な右足、裏抜けのスピード、ボール運搬力
ハイプレスの連携も改善し、上背も日本のSBが相手なら十分過ぎるロングボールの蹴り先、保持の逃げ先にもなれる高さがあり、セットプレー守備まで強化されるだろう。
安定して発揮されるフィジカルの優位性を感じる選手であり、緊急補強としては十分だ。
西野SDが興味無いのなら、以前紹介したスウェーデンのCFイサク・キーセテリンに、浦和は声をかけているらしいが、彼らも左ウイングも取った方がいいかもしれない。
イングランドチャンピオンシップ、エールディヴィジ2など欧州リーグを渡り歩き、ベルギー1部でも100試合以上出ており、スコルジャも気に入るに違いない。