横浜F・マリノス ファン

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横浜F・マリノスが目指す物 (メディア向け説明書)

堅守、ハイライン&ハイプレス、偽サイドバック、シティ式、ポジショナルプレー。 

 

安易なレッテルで納得する前に、横浜F・マリノス(以下マリノス)新体制発表会で何が語られたのかを、この事実をベースとして、考えよう。

 

 

 

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スポーツディレクターによる指針方針演説

 

 

昨季からの大きな変化として、統括本部長の利重氏ではなく、スポーツディレクターのドル氏がメインで語った事が先ずあげられる。

 

これは、サッカーにおけるスポーツ(競技)面における知見というものにおいて、利重氏がそれを専門としないのは明白であり、この道でキャリアを重ねてきたドル氏が、役職に応じた役割を表舞台でも果たすようになった、と言える。

 

内容として、大変エモい演説であり、私を含め、多くのファン、サポーターは感ずる物があったと思うが、出来ればクラブとして、校正を入れた書き起こしを出してくれると望ましいとリクエストしておきたい。

 

 

本稿では、競技面の最高責任者であるスポーツディレクターが登壇し、従来よりも具体的となったことで、チームの指針方針演説と呼んでも過言はないプレゼンテーション(以下プレゼン)の内容を再確認したい。

 

 

 

 

マリノスにとって攻撃的とは何か

 

 

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先ず、前提として、マリノスにとって、理想のサッカーにおける第1優先事項が変化した、というのが発表された場であった、と私は考える。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

2018年の変化として、出来るだけ点を失わない、という概念が、消えたのではなく1番手では無くなり、代わりに1番手となったのが、攻撃的(オフェンシブ)という概念である、と言える。

 

また、プレゼンでは攻撃的とは一体何のことなのか、という定義説明が丁寧に行われているのも大変印象が良い。

 

 

なぜなら、よくあるパターンとして、堅守のチームとマリノスの事を言う人がいるが、2017年リーグ戦における総失点数は36であり、一方で優勝した川崎フロンターレは32失点である。

 

堅守のチームとは、結果論として失点が少なければいいのか、それとも、出来るだけ失点をしない、という概念が第1優先事項であるのか。

 

では、第1優先事項であれば、50失点していても堅守のチーム?

(札幌47失点 仙台53失点)

 

先ず、堅守のチームという言葉は、結果に対する評価なのか、それともスタイルに対する評価なのか、次に、第1優先事項としたチームにとって、36失点は堅守と言えた結果だったのか。

 

このように定義もされずに曖昧な意味の言葉を、レッテルとして使う事に疑問を感じないのであれば、ジャーナリストという職業は資質が無い、という意味で向いていないので辞めるべきだ。

 

 

この点において、ドル氏のプレゼンでは、マリノスにとって攻撃的とはなにか、について、シュート本数だ、と明確に定義されている。

 

シュート本数を増やす為に、アタッキングエリアへの侵入回数を増やすんだ、出来るだけ素早く前に進むんだ、そして素早く進む為に仕掛ける回数を増やさないといけない、と非常に解りやすい説明でした。

 

またバーチカルプレー、というワードが出てきましたが、これはピッチをボードなどに記載した際に生まれる、上下、垂直という縦軸であり「まっすぐ立ってプレー」はご愛嬌かと思われます。

 

人間の姿勢を指すのでしたら、アップライト、かと思いますので、ここではピッチを上下に見た、前進意識の高いプレーをしよう、という事だと思います。

 

 

 

 

シナジー(相乗効果)はどう生まれるか

 

 

攻撃的という定義、そしてそれを理想における第1優先事項とするとした上で、どの様に実現するのか、という実装が次のテーマとなります。

 

この点で、身体、技術、思考といった個人スキルとしてのスピードを、欧州(トップレベルリーグの)水準にしようという目標が提示されました。

 

まてまて新幹線はそんなに速くないぞ、ドイツのパスは時速80キロで中国は20キロってほど差はないだろう、と聴衆がツッコミたくてたまらないエモさ溢れるトークでした。

 

 

 

次に、そんな選手の個人スキルとしてのスピードだけでは、理想の実現は出来ないぞ、と提示されたのが、リーダーシップでした。

 

オリンピックに多い、個人競技なら個人スキルのみの衝突ですけどね。

 

 

ハッキリ言って、私を含めて聴衆の中で、この時点で意味を完全に理解していた人は居なかったと思われます。

 

リーダーシップという言葉の解釈が、全員がキャプテンの気持ちで~、責任感を持って~、みたいな曖昧な物では無い、という事です。

 

 

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私は、昨今話題のポジショナルプレーという言葉が気になり、それをグアルディオラがサッカーに流用するとして、表層的ではない、概念の根源的な意味を考えていました。

 

この点、現在のメディアでみる論は、構成要素の説明に追われているに過ぎないのではないか、と感じます。

 

 

私は、深い思想的な部分を読み解く結果、チェス、将棋、ボードゲーム界を席巻しているAIソフトのゲームに対するアプローチが、極めて近似していることに気が付きました。

 

 

speir-s.hatenablog.jp

 

コンピューターは人間の模倣ではなく、将棋という競技や対戦相手は関係なく、ただひたすらに、盤面を点数化して、より良い点数の可能性だけを計算する事になりました。

 

監督は、盤面(駒配置)の点数化方法と、良い点数が出しやすい解法を教えるが、最終的に、より良い点数の探索は選手に任せる、ということになります。

 

この概念では、攻撃や守備という分類もなくなり、あくまでも、盤面が、より良い点数となる様な配置の模索と実行だけが行われるイメージとなります。

 

これこそが正に、ポジショナルプレーにおける『駒の配置から生まれる優位性がゲームの結果を決定するとされている』という概念に合致します。

 

 

選手が、駒として、割り振られた役割の消化、オーダーを消化する定石の保守、だけではなく、指し手として盤面形成を考える

 

これがボードゲームから持ち込まれた、ポジショナルプレーという概念をサッカーに流用する、というテーマに対する根源的な回答であると私は考えます。

 

 

監督は盤面の採点方法と、良い点数の出し方を授けます。

 

そして選手は、それを元に、リーダーシップ(指し手の概念)により、盤面形成による配置の優位性を維持し続ける事で、個人スキルとしてのスピードが活きる、その結果、攻撃的(=シュートの本数)という理想の第1優先事項を叶える。

 

更に、逆説的に言うと、盤面形成のゴールとして、第1優先事項は攻撃的だよ、という事です。

 

 

例えば、GKがボールを持っているとして、第1優先事項が『出来るだけ失点しない』のであれば…

 

ハイボールに強いファーストトップ(質的優位)を用意して、俊敏性が高く独力で切り込めるセカンドトップを近くに配置して(配置的優位)、敵陣深くへ蹴り込んだロングボールの落下点に数人が殺到(数的優位)、する盤面形成を繰り返せば良いとなります。

 

ビルドアップミスを完全に排除して、ショートカウンター(自陣からの速攻)被弾率をゼロにしつつ、自陣において常に敵よりも味方が多くいる状態の構築、です。

 

 

つまり、ポジショナルプレーとは、必ずしもFCバルセロナのようなスタイルだけが該当する訳ではない、と言えます。

 

 

 

 

問われるリーダーシップ

 

 

日本的対策として、GKがボールを持ってる時に、2人のセンターバックと、喜田にミラー型の配置で選手をぶつけられたら、今のマリノスは混乱すると思います。

 

例えば、4-3-1-2ですか。

 

この時に、前半終了を待たずに、 正に選手がリーダーシップを持って、最適なオプション(選択肢)を選択して、準備してきた相手を即座に無効化する盤面形成が素早く出来るのか、どうかが今後の戦いにおけるテーマではないでしょうか。

 

 

「おい、サイドバックがめっちゃワイドに開いたぞ」

「サイドサイドでボール運ぶから中の4人空転してる」

サイドバックが常にウイングとサイドバックにボコられる(´;ω;`)」

「喜田が落ちて3バックなったけど、代わりにウイングが中に入って中盤4人になってるやん」

「ぼく喜田にマークついていって良いんですか?」

「真ん中で一人足らないけど、どうするんですか、監督ぅー!」

 

 

みたいな感じで、前半終了を待たずに、選手が指し手となって、常に最高の盤面形成をする結果として、盤面的な優位性を保ち続ける事が出来るのか、ということであり、

 

今季のマリノスは苦労するとして、その中身は、定石の習熟に苦労するのではなく、盤面を崩壊させる様な、個人スキルに依存する致命的ミスと、選手はリーダーシップ(指し手という概念)を獲得できるのか、という事だと考えます。

 

 

マリノスがいい成績を収め、その中で大活躍する選手というのは、ある意味、盤面を支配する能力を手に入れたと同義であるので、それはプレミアだろうがブンデスだろうが、どこに出しても通用する選手になるでしょうね。