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横浜F・マリノスが惜し過ぎる ラディカルな変化の副作用

14節が終わった段階で、順位表における降格圏目前な位置、勝ち点というデータ(数字)だけを見れば、そこには惜しいも何もない、と言えます。

 

一方で、今季のマリノスが、リーグにおいて順位を向上させる為に、何を目指しているのか、何を改善したいのか、その進捗を追うのであれば、順調という見方もできます。

 

勿論、スペクタクルの師であるヨハン・クライフも認めるように、結果は何よりも重要だが、プロジェクトの進捗状況を推し量るのであれば、勝ち点(勝敗数及び順位)以外の結果(データ)に注視したいと思います。

 

 

 

 

現在の達成度

 

 

マリノスが理想とするサッカーにおけるプライオリティ(第1優先事項)が、出来るだけ失点をしない意志という意味の堅守から、実行力を持つ反映としてシュート本数が増えるアタッキング(攻撃的)に変わったのは以前に説明しました。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

 

では、ポステコグルー監督が、このオーダーに応えられているのかどうかを前年との比較で見てみましょう。

 

 

データ引用元 2018年5月13日時点

データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB[フットボールラボ]

 

全て1試合平均の数字、2017年 → 2018年

 

 

 

【攻撃重要指標】

 

 

得点に関連しやすい各項目でリーグ1位を記録…ただし

 

 

① 30mライン(アタッキングエリア)侵入回数

 

35.5回(リーグ15位)  →  55.5回(リーグ1位

 

 

② ペナルティエリア侵入回数

 

11.4回(リーグ15位)  →  18.1回(リーグ1位

 

 

③ クロス数

 

14.6回(リーグ11位)  →  22.6回(リーグ1位

 

 

④ コーナーキック

 

4.5回(リーグ13位)  →   6.6回(リーグ1位

 

 

⑤ シュート

 

12.2回(リーグ13位)  →  13.4回(リーグ7位)

 

 

 

 

【攻撃参考指標】

 

 

・ ボール支配率

 

50.2% → 60.3%(リーグ1位

 

※ ボール保持が上手く行っている目安になるが、イコール良い攻撃をしている、とはならない数字

 

 

・ 攻撃回数

 

120.8回 → 132.9回(リーグ1位

 

※ ミスで失う回数が増えれば増えてしまう数字でもあるので、多い=良いには直結しない → ミスが多いのに攻撃回数が多いのであれば取り返し回数も多い訳では有る

 

 

・ パス(成功数)

 

460.6回 → 618.2回(リーグ2位)

 

 

・ ドリブル

 

16.4回 → 19.3回(リーグ1位

 

※ リーグ屈指のドリブラーが2人居なくなったけど、むしろ増えた

 

 

 

以上のデータから、シュート本数(枠内シュート数)に改善の必要性があるのは明白ではありますが、

 

ポステコグルー監督は、スポーツディレクターの要望に見事に応え、重要指標の改善に成功していると言えます。

 

 

スポーツディレクターの要望と指針まとめ

 

speir-s.hatenablog.jp

 

 

 

守備はどうなっているのか

 

 

17シーズンの特徴として、カウンターの使用頻度を下げて、自陣ポゼッション攻撃に注力した結果、ビルドアップの失敗からショートカウンターを受ける回数が多く、酷いデータが残っているのは、繰り返し説明してきました。

 

 

2017シーズンデータ

 

・ 被シュート本数(1試合平均) 14.4本(リーグ16位)

・ 被チャンス構築率(1試合平均) 12.2%(リーグ17位) 

 

 

 

失点が増えている2018シーズンですが、なんと若干の改善が見られます。

 

 

・ 被シュート本数(1試合平均) 13.4本(リーグ15位)

・ 被チャンス構築率(1試合平均) 10.7%(リーグ14位)

 

※ 攻撃を受けた回数、なので数字は低いほど良い(順位が高い)です

 

 

 

ですが、失点数では断然に2017シーズンが少ないのは何故か。

 

 

これには、うまくいかないゲームでも負けない、リスクヘッジスペシャリストであるモンバエルツの準備された守備があったと考えます。

 

自陣に押し込まれ、その結果として、敵の攻撃、特にセットプレーからの失点が増えてしまった17シーズンでしたが、シュート本数に対する失点率は7.4%とリーグ1位でした。

 

これには、モンバエルツがチームに落とし込んだ、相手がシュートを打つ最終局面では、ペナルティエリア内に4人のDFが常に存在する、確率論で計算されたゾーンディフェンスがありました。

 

例えば、敵ウイングに対してサイドバックは出て行かないで、エリア内に留まり、クロスを4人で待つ光景が解りやすいかと思います。

 

 

シーズン最終節のように、マリノスが大量失点してしまったゲームでは、例外なく、これが崩壊してます。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

 

 

非論理的な失点

 

自陣に押し込まれた結果、増加するセットプレーが、イコール、増加する失点となり、ACL出場権を逃したのが2017シーズンとすると、

 

今季、リーグ1位だった被シュート成功率7.4%を、10.6%(リーグ15位)に落としている物はなんなのでしょう。

 

 

 

失点割合表 セットプレーはピンク色

 

f:id:Speir_s:20180513124414p:plain

 

 

 

紫がディフレクションを含めたこぼれ球、そして灰色は、あらゆる通常の攻撃パターンに分類されない、その他(謎)です。

 

 

こぼれ球+その他 8失点(ワースト1位) 汗

 

このファクターだけで、広島の総失点よりも多い訳です。

 

 

マリノスよりも失点数が多い、名古屋は合計が、その他だけで2、長崎はこぼれ球だけで2、更にワースト2位のガンバでも5です。

 

この、本来は再現性が乏しく、少ないはずの非論理的な失点が半分になるだけで、失点数はリーグ平均になると思われます。

 

 

 

ラディカルな変化の副作用

 

タイトル回収。

 

この様な、通常では起こりえない事が繰り返し起きているのだから、その内に無くなる、だから楽観していい、という結論ではありません。

 

逆に、何かしら大きな欠陥があるからこそ、この様な自体になっていると考えるのが問題解決では正しいアプローチです。

 

 

その大きな要素として、欲しい物を手に入れる為に、あまりにも急進的、厳しい言葉を使うと、性急に求めすぎている副作用が発現しているのではないかと考えます。

 

その一つは例えば、具体的には、飯倉が悪目立ちをしすぎですが、誰もが、局面局面における、状況に対する経験値不足という余白であると思います。

 

 

この部分は、モンバエルツという優れた前任者が居たにしても、あまりにラディカルな故に、段階を越えながら、というアプローチではなくなっており、その余白をトレーニングで埋めることが出来るのか、このW杯中断期間は極めて重要な時間になりそうです。

 

 

 

他にも、ディティールの修正は必要と思われるデータとして、そもそも、これだけ攻撃の重要指標が向上しているのに、肝心のチャンスクリエイトが出来ていない現状があります(チャンス構築率)

 

10.1% → 10.1%(変化なし)

 

 

サッカーは碁と違い、チェスや将棋と同じ、駒の性能が異なるボードゲームであり、配置されるのはあくまでも石ではなく駒であり、

 

この攻撃関連のデータからは、石の配置なら悪くないが、駒の選択は正しいのか、という疑問が残ります。

 

 

今後、ポステコグルー監督には、モンバエルツが確率論で守備組織を整備したように、あくまでもロジックに基づいたアプローチで、

 

これだけ攻撃的に優れた指標が、最終的にシュート本数や、ゴールに結びついていない現状を、確率論で最適化して貰いたいです。

 

 

speir-s.hatenablog.jp

 

 

中断までの前半戦、まだ1試合残っていますが、結論としては非常に惜しい戦いであった、と思います。

 

 

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