横浜F・マリノス ファン

横浜F・マリノスを応援するイチファンによるブログです。

ポステコグルーから何を学んだのか

絶対にブレてはいけない。

言うだけなら簡単だが、外部環境がある中で、それを実行するのは難しい。

 

 

プロサッカークラブにとって、それは勝敗であり、更に1つの勝敗が重みを増すであろうタイトル、ポイントレースという重圧が、正常な判断を容易に狂わせる。

 

マリノスが目指すデザインを深く共有した、建築家であり、魂の伝道師はクラブから旅立ったが、その素晴らしい教えは残り続けなければならない。

 

監督が暫定であろうと、マスカットであろうと、マリノスのサッカーは変わる事がないとして、そこで生きるとはどういうことなのか、師が示した立ち振舞いを忘れてはいけない。

 

サッカーという不確定要素の多いスポーツにとって、スコア上の敗北は結果に過ぎず、チームのパフォーマンスを評価する上で、最も重要な指標に足り得ない。

 

マリノスは1つのゲームに敗北したとして、その敗北をどの様に受け入れるかを3年以上に渡り、ポステコグルーから学んだ筈だ。

 

 

 

2021年9月17日の名古屋戦で記録したマリノスの得点に近いスタッツは以下になる

 

 

ゴール期待値

 2.235  今季平均 1.896

 

枠内シュート数

 8本   今季平均 5.8本

 

チャンス構築率

 16.8%  今季平均 12.7%

 

 

関連指標として、ボール支配率65.5%、30mライン侵入87回、ペナルティエリア17回、これらも全て今季平均を上回る数値を記録。

 

(DATE by フットボールラボ)

 

 

 

タイトルは重要だが、それで態度がブレてはいけない。

うろたえ、痛がり、動揺している様を見せてはいけない。

 

 

鹿島戦は酷いもので、かなりネガティブな雑感を上げた。

敵がいる、邪魔をしてくる、だとしても何も出来ないに等しいものだった。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

 

 

だが、アタッキングフットボールとして、この敗北は、大した痛手ではない。

 

 

 

 

 

ならば、かつての師のように、堂々と受け止めればいい。

 

「敗北は残念だが、ゲームを支配し、より多く敵ゴールに迫る自分達のサッカーは出来ていた。」と

 

揺るがない姿勢というのは、辛い時にこそ見せるものだ。

ダメージを受けていないぞ、と。

 

 

画像

(引用元 
https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1402904673212780544

 

 

 

敗北に悔しさはついてくるだろうが、タイトル争いでマイナスだからと言って増幅させる必要はない。ただ粛々と論理的勝利を積み上げていき、その先にタイトルを多数保有する集団こそが現代におけるビッグクラブ=常勝軍団である。

 

アタッキングフットボールが問題なく機能した時、対戦相手は記憶に残らない。我々の記憶に残るのは、このゲームはゴールが生まれなかった、ただそれだけの悔しさでしかない。

 

主審も好きにすればいいし、対戦相手も勝利を誇ればいいし、岩田に聞かせる愚痴もない。

 

 

クラブより重要な選手はいない、と言われる事もあるが、何がタイトルだ。

 

いや、タイトルは素晴らしい、何より感動が生まれるし、それがより広く伝播しうる手助けになり、歴史と伝統はより深みを増すだろう。

 

だが、クラブのアイデンティティより、重要なタイトルなんて地球上に存在しない。アタッキングフットボールで獲得しなければ意味がないし、このゲームにおいても、マリノスは素晴らしいサッカーをした。

 

 

だから、気になるのはただ一つ、シュート成功率4.5%を記録したシューターの皆さんだ。

 

(#`ェ´)

 

ワーストゲーム 21シーズンJ1 マリノス鹿島戦雑感

J1リーグ2021シーズンを戦うマリノスにとって、現時点で最も酷い試合だったと言える。

 

 

それは前回3-5で敗れた試合、開幕戦、勝ったのが不思議なガンバ戦を含めて、辛いゲームは沢山あったが、標榜するアタッキングフットボールの根幹である、得点機会のクリエイトが最低だった事を意味する。

 

 

フットボールラボにて集計されるゴール期待値において、今季これまで最低だったのは、5月22日に行われた松原の一撃で辛うじて同点で終えた柏戦だった。

 

この試合のゴール期待値は今季平均1.909を大きく下回る0.674、まさに幸運で特別な一撃が必要な、可能性の低い攻撃だったと言える。

 

ところが今回の鹿島戦ではそれを更に大幅に下回る0.567、今季ワーストを記録した。

 

 

戦力運用

 

この8月、首位の川崎が三笘と田中を失い、攻撃のクオリティに問題を抱えている一方で、好調に思えたマリノスセンターバックの人員に問題を発生させていた。

 

川崎が再開以降に3試合で2分1敗と勝ち点7を喪失したのに対して、マリノスは最後の最後に勝ち点3を失うツケを払うことになった。

 

2試合連続で終盤に足がつり、前試合に至っては最前線の”ミソッカスポジション”で休養しながら試合を終えた畠中をそれでも起用したのは結果的には、今後中期的に戦力ダウンが起きる事も含めて大失敗だった。

 

明らかな”サイン”が出ていた選手を中2日で先発させるこの采配は同時に實藤に対する信頼感の無さを浮き彫りにさせた。来季に向けて一番動きがあるかもしれない。

 

 

また、連勝中は途中交代を最大限に活用した前線選手の時間基準での運用が成功していたが、組み合わせにより生まれる効果が考慮されているとは感じなかった。

 

鹿島という敵を過小評価していたのだろうか。

 

サイドに開いて足元にボールを受けてからアクションを起こす、もしエウベルであれば…右サイドではそういう局面が前半だけで何度も見られた。

 

他には失点シーンとなった被カウンターの直前などが典型例だが、内側に入る前田が敵サイドバックを引き連れる事で空くサイドのスペースで和田がフリーになる、という構造が度々起きていたが、右側同様に、ここでもティーラトンだったら…と思わされた。

 

 

更には全体的な組わせとして、マルコスが敵2.5列目に徹底監視される中、扇原とティーラトンが居ない、右は松原でもない、クォーターバックが一人も居ないのに、両ウイングがレシーバータイプとして、誰が彼らにパスを投げる? 一体、どういう想定だったのか、意図が分からなかった。

 

連戦だからとにかくプレータイム重視なんだ、として、それが今季ワーストの攻撃につながり、更には唯一運用しない決断をしたセンターバックが、その代償を個人もチームも払うことになってしまったのを見ると、遣る瀬無き、という気分である。

 

 

 

偶然と必然

 

ゲーム自体を総評すれば0-2はアンフェアな結果と言える。

 

鹿島の決定機はオープン(シューターとGKの間にDFが居ない)な物であったが、90分でそれのみでしかなく、同様のシーンはマリノスは終盤にアーリークロスから両ウイングがそれぞれシュート機会を迎えている。

 

両ウイングは元からシュート成功率が低いからせめてどっちか一本は…として、シュート名人と言えるマルコスの”確信的ショット”が枠を捉えなかったシーンも含めれば、鹿島のゴール期待値はマリノス以下の0.4台であり、決して一方的に、完敗したゲームとは言い切れない。

 

結局の所、対鹿島というのは彼らが究極的ミス待ちサッカーで挑んできて、特にマリノス側で守備の局面においてミスが出た際に発揮されるエネルギーと集中力が極めて高く、それは元から彼らが「それで一点突破しよう」という意図を持ち、準備しているからだと言える。

 

 

その点で、最初の失点シーンにおけるミスとは何か?

 

畠中がやらかしたどうこう以前に、敵GKがあの位置から精神的余裕が十分とれるフリーキックで(つまり完全にノーカバー、オープン)でボールを蹴るのに、DFラインをセンターラインまで5m未満まで上げる必要があるのか?

 

ミスを待って蹴り込んでくる相手に、どの様な陣形をとるべきか。仮にマリノスの2列目が競る位置だと、そんなに問題が起きるだろうか。

 

ゲームの形勢が決まりかねないリスクを犯して得られるメリットは何だろうか。蹴られた瞬間にダッシュで後方に一旦戻ってからヘディングで対応する事になるのが、果たして良いことなのか。

 

何故マリノスが鹿島に連敗中なのか、それはミス待ちサッカーに対して、ミスが起きやすい事を繰り返してるからではないか。

 

 

また2失点目に関わった喜田のプレーは残念だった。

 

ゴール前での残念さはネタでしかないが、彼のレゾンデートルに関わる残念なプレーだった。喜田の評価基準に得点力は入ってない、入ってるならトップクラブであるマリノスのユニホームを着ていないだろう。

 

 

被カウンターの局面、人数的なリスクコントロールは出来ていた。にもかかわらず、なぜ、敵陣内でピトゥカを潰そうとしなかったのか。

 

2人しか居ない相手に追走のマルコスを含めて4人の局面でリトリートするのが今のマリノスだろうか。コーナーエリア前から蹴られるGKのフリーキックにDFラインをセンターライン付近まで上げるのに?

 

徹底してミスを待つ相手に対して、リスクのとり方がちぐはぐに見えた。

そして起こるべくしてミスが起きて、それが全て失点につながった。

 

まったくもって遣る瀬無い、である

 

宮本監督解任な2021年のガンバ大阪は何が悪かったのか

これまでブログでは、マリノスのみを対象にしてきましたが、突然の大低迷となった結果、遂に、事実上の監督解任に踏み切ったガンバ大阪

 

f:id:Speir_s:20210514133207p:plain

(引用 

https://twitter.com/GAMBA_OFFICIAL/status/1392456236939943937

 

 

フットボールラボ提供のデータから見るチームの特徴というのをマリノスで行ってきましたが、ガンバ大阪も気になったので調べてみました。

 

はい、完全にヤジ馬です。

 

DATE by フットボールラボ(

https://www.football-lab.jp/

 

 

 

結論から言えば、失点を減らす為に、得点力が犠牲になっている。

 

という、皆がそんなの分かってるよ、という感じなのですが、では具体的に、失点をどのように減らそうとした結果、何が犠牲になり、得点が減ってるのか、説明したいと思います。

 

そもそも意図的なのこれ?みたいな

 

 

 

磨きがかかった堅守?

 

先ず事実として、ここまで10試合を振り返ると、2021年のガンバ大阪(以下ガンバ)は昨年以上に守備が堅かったと言える。

 

東口の奮闘は誰もが分かるところだが、それ以前に、シュートが放たれた状況を数値化した被ゴール期待値において、2021年ガンバの被弾状況は以下になる。

 

 

2020年 1.675

2021年 1.483

 

1試合平均で0.2ポイント近く下がっており、これは少なくない改善と言える。

 

 

更に、実際の1試合平均失点数、そして期待値との差分は以下になっている。

 

2020年 1.2 期待値との差分 -0.475

2021年 0.9 期待値との差分 -0.583

 

実際の失点数において、0.2ポイント以上の恩恵が発生しており、これが計画されたものであれば、さすが宮本恒靖と、益々、その評価は高まっていたのかもしれない。

 

 

ここからが本題で、何を犠牲にして、この利益を獲得したのか、となる。

 

 

 

データから伺える守備構造の変化

 

1試合平均の、被攻撃回数、被チャンス構築率において、全てが微パワーアップを感じられる内容で、それが反映される被シュート数は-0.8本となり、まさに被ゴール期待値0.2はここにあり、という数値になっている。

 

一方で、元から被シュート数自体は多く、改善しても今季の被シュート数14.1本はリーグ19位、ワーストな数字である。

 

にもかかわらず、被ゴールが0.9点、さらに被シュート成功率が6.4%に収まっているのは東口の頑張りだけでなく、シューターの周囲に大きなスペースがあるような、オープンな状況でのシュートの少なさが伺える。

 

データからみると、より撤退した自陣後方で守る、後ろのスペースを減らすやり方への転換…なのか自然とそうなっているのかは分からないが、変化が確認できた。

 

 

 

昨シーズンも引いて守る様な印象が強いかもしれないが、20年ガンバは以下となる。

 

ハイプレス指数 56

最終ライン 55

コンパクトネス 63

 

 

一方で、21年のガンバは以下になる。

 

ハイプレス指数 43

最終ライン 43

コンパクトネス 44

 

 

各数値の詳細説明は割愛する(

https://www.football-lab.jp/pages/team_style/

 

敵陣のボールを奪いに行く頻度が大幅に下がり、プレス出来て居ない状況でのデェフェンスラインが低く、守備組織も縦に伸びている(つまりファーストラインは変わってない※)

 

※守備組織がコンパクトなままラインが低いのであれば、全体が下がっているが、ガンバは広がっているので、後ろだけ下がっていると言える。

 

 

鶏が先か、卵が先か、ラインが低いから行けないのか、行かないからラインが低いのか、だがファーストラインは半端な立ち位置でコンパクトじゃなくなってるが、自陣のゴール前に人は居るっぽい?ので跳ね返したり、ブロックしたりで失点は増えない。

 

 

どうみるのかは宮本恒靖氏が語らなければ分からないが、昨年に結果は良かったけれど、被シュート数が多いので変えたのか、それとも変えるつもりは一切ないのに、ピッチ上で選手の意思統一がバラバラなのか。

 

少なくとも現状を見ると、ゴール前に人がいるだけな守備、という印象を受ける。

 

 

そして、この反動が出ているのが得点力だ。

 

 

先ず君たちが決めろ?

 

チームとしてどれだけ得点機会を創出できたのか、ガンバのゴール期待値を比較すると以下になる。

 

2020年 1.454 実得点 1.3

2021年 0.913 実得点 0.3

 

0.5ポイントも期待値が下がった上で、更に差分が-0.6ポイントと目を覆う数値に。

 

期待値はいわゆるハネる事もあるので、資金力があり優秀なアタッカーがいるチームであれば、例えば実得点が1.2になっても驚きはなく、その場合にガンバは10試合で12得点、3試合少ない状態で8~12位前後と、監督解任とまではならなかったと思われる。

 

※同じACL組の川崎、名古屋とは6試合

 

(ゴール期待値と実得点の参考)

川崎は異常値とも言える+0.6オーバー、名古屋+0.189、マリノス-0.018、鳥栖+0.188、神戸+0.196…エウベルもうちょい決めようか?

 

 

チームに若干、構造としての問題が起きているにせよ、正に決めるべき選手が決めていれば、ここまでの”貧果”にはならなかったかもしれない。

 

監督にも言い分がある、ということだ。

 

 

 

アタッカー陣も言いたいことがある?

 

 

一方で、構造が招くアタッカー陣の辛さ、も垣間見える。

 

先ず、トランジション、いわゆる切り替え勝負の局面において、特に守備から攻撃の際に大きなパワーダウンが確認できる。

 

2020年 60 → 2021年 44

 

これも説明の詳細は割愛するが、チーム全体としてボールを奪った3秒間に敵チームよりも縦方向に走っていれば上がっていく数値である。

 

一旦、いわゆるカウンターに関わる人数が減っている?という推測をするに留める。

 

 

 

次に、ショートカウンター指数を見ると、指数自体は微減だが、その攻撃がシュートに達する確率が大幅に下がっている事が確認できた。

 

 

2020年 Sカウンター指数 48.7 シュート率 18.5%

2021年 Sカウンター指数 46.5 シュート率 11.4%

 

 

ところが、ショートカウンター時に走っている人、を計測した各数値では、人数と中身で大幅に増加している。

 

2020年

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2021年

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先に守備構造の項目と合わせて考えられる推論として以下に考えられた。

 

 

同じショートカウンターだとしても、ボールを奪う位置が低いので、アタッカーは全力で走り込まないと、間に合わない状況になっている?

 

 

その結果、高速走行の弊害としてミスが起きやすく、シュートまでたどり着けない可能性。

 

 

 

さらに…ロングカウンターにおいても、ファーストラインが半端に設定され、後ろに人がいるだけの守備が悪影響を見せていると思われる。

 

 

2020年

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2021年

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30m以上のロングパスと、敵陣において7秒間で3人が関わったコンビネーションプレーが激減。

 

推測として、ゴールを守るだけの撤退守備により、両サイドで選手の位置が悪くなった結果、サイドを活かした大きな展開が無くなり、さらに半端なファーストラインとなっている前線でも、各選手の距離感が悪く、フォローが間に合わずパスがつながらない、と思われる。

 

 

結論として、スペースがある状況、数的優位がある状況といった、イージーショットが無く、おまけにこっちはシュート打つまでに疲弊してんねん!みたいな

 

 

これがデータから確認できる、守備が得点力に影響していると思われる、ガンバ大阪の2020年と2021年の差、となります。

 

 

今年はDAZNさん肝いり企画で、昨年のドキュメンタリーが公開されるそうですが、この様な事となり、よそ者としてはどの様な気持ちで視聴をしたら良いのか、困惑をしております。

 

ナニワトモアレ、2021シーズンはACLも含めて、この後も引き続きコロナ禍の元、超過密日程で進んでいきますので、ガンバ大阪様皆様のご健勝、そしてアジアでのご活躍を祈って終了とさせて頂きたいと思います。

 

お読み頂きましてありがとうございました。

 

 

 

P.S

 

マリノスファンとして、ひとこと言いたいのは、改善点は明らかなので諦めるにはまだ早いんじゃないか、ということです。

 

特に、マリノスとの対戦はまだ2回残っており、公平性の観点から、何よりもクラブのレジェンドである宮本氏とは、最後まで共にする覚悟で、是非とも11月3日まで解任は待って頂きたかった所です。

 

バージョン3.0 2021年の横浜Fマリノス

川崎との開幕45分を見た時には、目眩がした…なんて事は今さら起きず、見慣れた”やらかし”に「あぁ今年で最後かなポステコさん」と、サッカー界で言われる所のサイクルの終焉を予感した。

 

所が、最初からそのつもりだったのか、状況がそうしたのか、詳細を語ることがない指揮官から、その理由(ワケ)を知る術もないが、マリノスはこれまでとは大きく異なる、ポステコグルー監督の就任以来2度目となるメジャーアップデート、正にバージョン3とも言える、最終形態にモデルチェンジした。

 

これは新しいサイクルの始まりであり、大きな変化、革命を起こさず、同じ監督が自身でこれを成すことが出来るのは凄いことである。

 

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1385894009088790533

 

 

 

日程だけではなかった問題

 

オフには量より質を求め、良いトレードが出来たと思いきや、突出した記録を残したエースを失い、リカバリーとして行った補充も、コロナ禍により、それがいつ届くのか、全く見通しが立たない苦境に追い込まれる。

 

攻撃を標榜するチームでありながら、そもそも前線の駒数が足らず、特に左ウイングは高卒ルーキーである樺山を開幕先発にせざるを得なかった所に苦しさが伺えた。ポステコグルー監督にしても、やらかしとは君たちが言うが…と別に色々と理由を言いたい開幕戦だったと言える。

 

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1365300051602407429

 

 

 

一方で、前年にあらゆるタイトルを失い、持たざる者として2021新シーズンに挑む横浜Fマリノスだったが、常軌を逸した過密日程さえなければ、という思い込み、それはつまり、マリノスは何も変えなくとも、日程さえフェアであれば勝てるという誤解があるとすれば今年も昨シーズン同様に勝ちと負けがイーブン程度になると考えていた。

 

 

speir-s.hatenablog.jp

問題は増幅した状態でシーズンを終えており、2021シーズンに向けて大きな懸念点であり、問題が解決しているとは言えない状態である。

 

 

編成の問題は若干残ったが、それよりも覇権奪還を成し遂げる上で、焦点は昨シーズン顕になった問題を解決できているのかどうか、だった。

 

 

 

 

コンパクトネス依存からの脱却

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1367288400357715968

 

 

マリノスはポステコグルー監督の理想を具現化するべく年々と特化、先鋭化してきたが、失点と直結する要素として、フットボールラボの提供するデータにおけるコンパクトネスと高い関連性があった。

 

これは対戦相手が自陣でボールを保持しプレスがかかっていない時、どれだけ守備陣形が狭いか数値化されたものだが、マリノスにおいてはコンパクトネスの低下=失点しやすい状態となる事が、ポステコグルー監督のロジックとして存在していた。

 

DFラインは限界まで高いので、1列目で、戦術的に吊り出される、切り替えの遅れ、プレスミス、プレスバックのサボり、を起こすと失点しやすく、昨年は何処のチームも狙ってやってくるようになった、と言える。

 

 

この点において、昨シーズンに守備で上位に健闘した大阪の2チームも(何処を守るのか方法は異なるが)コンパクトネスに守備の堅牢さが依存しているタイプと言える。

 

 

他方、守備の堅さをコンパクトネスに依存しないスタイルとして、昨シーズンのJリーグにおいて、最もリスクなく戦った上位2チーム、川崎と名古屋があった。

 

ハイプレスを生命線としながらもディフェンスラインがマリノスほどヒステリックじゃなく、蹴られる局面では下がる川崎。自陣のスペースを完全に埋める為、横に広くなることで、コンパクトネスが下がる名古屋。

 

そして、今シーズンのマリノスは、この2チームの中間に位置し、守備のロジック、構造として従来のスタイルから脱却し、コンパクトネスに依存しないタイプへと転換したと言える。

 

 

 

大人のディフェンスライン

 

シン・エヴァンゲリオンはディティールの確認を含めて、2回観に行ったが、大人になることの重要性、そしていかに問題だと思っていたことが、自身の振る舞い1つで問題ではなくなるのか、を見せてくれた。

 

話をマリノスに戻すと、敵にプレスのラッシュをかけている時は連動してオフサイドトラップを仕掛けている、今までと変わらずにラインは高いのでは、と感じている人もいるだろう。

 

データではマリノスの”大人な振る舞い”が明確に反映されていた。

 

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1372365513955758084

 

 

 

フットボールラボが提供する、敵陣で敵がボールを保持し、マリノスのプレスがかかっていない時における最終ラインの高さを数値化した指数において顕著な差が出ている。

 

 

2019年 最終ライン指数 77  コンパクトネス55

2020年 最終ライン指数 81  コンパクトネス47

 

昨年はコンパクトネスが低下しているのに、プレスがかかっていない状況で更にラインを高くしていた、全体として前に吊り出されていたのがわかる。

 

そりゃー、もし途中で3バックをやっていなければ、2018年同様に年間で60失点しかねない数字だったのも分かる。

 

 

そして2021年、大人になったマリノスでは

 

最終ライン指数 46 と、プレスがかかってなければラインは上げられない、と常識的な振る舞いを見せるようになった。

 

大人になったなポステコはん…

 

 

シンエヴァを観てない人には何の事か分からないかもしれないが、大人になれば、「何であの時に私が怒っていたのか分かってんの?」と、答えがない地獄の設問に、黙っていれば「話聞いてんのか?」とガン詰めされる状況も華麗に切り抜けることが出来る。

 

問題は問題ではなくなるのだ。

 

 

 

コンパクトネスとハイプレス指数

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1379671278571855872

 

 

昨シーズンまで、マリノスはプレスがかかっていない状況でもラインを高く保っていたので敵は当然と裏に蹴る、その結果、だいたい通らないけど、通れば簡単に失点、シュート3本で3失点した試合もあった。

 

今季は上げられない状況においてはラインを上げないが、その分、一発勝負ではなく、自陣で時間をかけて守るようになったと言え、その結果、川崎よりも自陣で守る、名古屋よりは敵陣で守る、中間のチームになった。

 

 

ハイ(敵陣)プレス指数は川崎の72に対して40、元からマリノスは集計方法的に低めだったが

 

2019年 51.4 成功率47.8%

2020年 52.5 成功率50.3%

 

と大幅に下がっているものの、成功率は川崎を凌駕するリーグ1位 54%と大幅な上昇を見せている。

 

 

また、この3チームにおける共通点は前項で触れたが、コンパクトネスに依存しない、関連性は一切感じない点であり、それはマリノスにとっては激的な進化、革命とすら言える。

 

この為、敵チームが敵陣でボールを保持し、マリノスのプレスがかかっていない状況において、マリノスの守備陣形は、特に横に広くなっており、コンパクトネス指数も40になっている。

 

優勝した鬼プレスと言われた2019年が55、守備崩壊と言われた2020年が47、2021年はそこから更に大きく下がっているのだが、守備は過去1番というほど安定している事になる。

 

これは構造・ルールが変わった事を意味し、パラダイムシフト、変革である。

 

 

 

 

時間をかけて守る=自陣で戦う機会の増加

 

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引用 https://twitter.com/adidasJP/status/1385730187518783492

 

 

敵チームは苦し紛れにラインの裏を狙う、そしてパスカットやオフサイドトラップが決まると、それは気持ちの良い守備かもしれない。

 

一方で、プレスが上手く行っていないのに、それを狙うことで、無抵抗な失点を重ねてきた。その結果、マリノスは攻撃が良いけど守備はねぇというイメージが浸透している。

 

だが今季、プレスをかけられていない時はステイ、と待つ時間を持った事で、敵が一発勝負をする機会が減り、守備時にコンタクトプレーが激増しているのが伺える。

 

フットボールラボにおいて、タックル、ファウル、空中戦、ブロックなどを指数化したフィジカルコンタクトにおいて、ポステコグルー監督就任以降、初めて50を越える数値を記録。

 

2018年 31

2019年 36

2020年 43

 

2021年 51

 

 

 

被ゴール期待値と利益

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1385928358240784389

 

 

その成果として失点数が減っているとして、一つ前のデータが被ゴール期待値と、その差分、つまり利益だ。

 

 

ゴール期待値とは、打たれたシュートの状況、場所や敵の配置などから、平均的な能力の選手が放った場合の得点数をAIを用い割り出した数値となる。

 

昨シーズンのマリノス1.357の被ゴール期待値に対し1.6失点と必要以上に失点をしている状況だった。今季は、被ゴール期待値で1.205と改善した上で、0.7失点と大きな利益を出している。

※予想失点数が1.2点に対して、0.7失点しかしていない、ということ。

 

 

これはサッカーという競技において1点は重く、ゴール期待値と実際のゴールという関係において、「うちの子供でも決められるよ!」というようなイージーな状況が一回あるだけで、数値の上振れが起きやすい。イージーミスが多いチームほど、損失が増えやすい。

 

例えばルヴァンで高野がミスした後の状況とか、試合を通して数値は低くとも、エラーが起きれば実際のゴールは増えやすいのだ。

 

 

この点、データの見方として、昨シーズンまでのマリノスはいかに、オープンなシュート状況を生み出しやすい、守備のエラーが起きやすかったのか、と見るべきだろう。

 

1試合の平均利益は0.5に及び、これはとても優秀な数値であり、今季は如何にエラーが起きていないのかということだ。

 

上述してきた要素の成果として、大人の対応がもたらす安定感と言える。

 

 

 

前線の新サイクル

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1379441703451418630

 

 

エリキの移籍、そして度重なる仲川の離脱、遠藤の売却が決まり、優勝時とは総入れ替えとなった前線には新たなサイクルが生まれている。

 

 

エウベルはデータ通り、ドリブルの破壊力はリーグ屈指のレベルであり、全体的に弱点がないコンプリートなアタッカーと言え、更に実際にプレーした発見としてはパスに喜びを見出す、パスが好きな選手だった。

 

speir-s.hatenablog.jp

 

これにより復活したのがハーフスペースの攻略で、以前よりも警戒され狭くなった中で、走り込む選手の足元にピタリと止まるスルーパスは見事という他ない。今までのマリノスになかったクオリティである。

 

 

例えばセレッソ戦において、左右の攻撃を査定する上で『オープンになったボールホルダーがクロスを蹴ったか』という点において、右サイドが45分で2回と完全にスタックする中、エウベルは自身のドリブル突破、ハーフスペースに走り込む選手へのスルーパス、8回を記録した。

 

エウベルというクオリティによる攻撃効率向上の実現化と言える。

 

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https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1378234179301699584

 

 

湘南戦では、オープンな選手が蹴るクロスの危険性を理解しましたね。攻撃が上手く行っているかどうか、どのようなプロセスでゴール前にボールが供給されたのかを注視してもらいたい。

 

 

 

また、ファーストトップとして活躍していた前田をウイングで使うしかないとして、昨シーズンの様な置物化の悪夢がよぎったが、何となく足の速い奴を置いただけという状態ではなくなっている。

 

タッチライン際で開いて受ける従来ウイングの仕事を他の選手に任せ、中に進出していく動きがかなり多く、そこに空間が生まれ、マルコスが新たな仕事場として活用、さらにクロスに対して強みを見せるオナイウと前田が中にいる状態を作り出している。

 

 

ここに、ベッカムの領域すら感じる水沼のクロス攻撃、もう少し時間はかかるだろうがレオという新戦力の上積みもあり、そしてルーキー樺山や、怪我がちな仲川をデトネイター(起爆剤)として毎試合時間制限で活用するプランなど、始まったばかりの新しいサイクルはまだまだ可能性を残している。

 

 

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引用 https://twitter.com/prompt_fmarinos/status/1388403351511977987

 

 

また自陣からのビルドアップ・攻撃においては、ドリブル、ロングボールなど従来パスワークとは異なる方法の使用率も増えており、こちらも上手く行かない時の別手段に改善が見られた。

 

 

 

今季も川崎は独走し、過密日程は続き、そして8月は常軌を逸した真夏の連戦が待ち受けている。奪還には、追撃をしながら、更にもう一段のレベルアップが求められる。

 

土台は整った、あとはリーグNo.1の攻撃、アタッキングフットボールを標榜する前線のクオリティ向上に期待したい。

 

 

21年マリノス開幕雑観 川崎戦

明治安田生命J1リーグ開幕!

 

今年は金Jオープニングマッチに選ばれ、川崎と対戦を迎えたマリノスの雑観をツイートするには長くなったのではてな記事にまとめた。

 

今年は3バックと前触れもあったが、システムは関係ない、やる事は同じ、と言う監督。

 

練習を見た人間の解釈が足りなかったのか、守備時における最終ラインの並びは4枚、変化としてボール保持時に若干、両サイドバックのタスクが異なり、ティーラトンだけが中央まで進出する微調整程度の物と感ずる。

 

敵陣プレスでは、これまでの「敵なんか関係ねぇ!オレ達は行くんだ!」という能動的な、時間を奪う為の破壊的なアタックは見られず、

 

GKとCBにはボールを持たせ、天野がシミッチ番としてアンカー潰し定番を行いつつ、そこから出るボールに対してファーストプレスを始める、受動的な、選択肢を減らしていく安定性が高いやり方に。

 

その安定的守備の練度として、極めた川崎と、去年の秋から取り組んでいますのマリノスでは差があったとしても、よりゲームにおける優劣を決めたのが、パスアタック(パスで前進して行こうとするプレー)におけるエラーによって起きる、自陣ロストの数なのは観ている誰もが感じた事だろう。

 

何故こうなったのかと言えば、被決定機の発生を連発した畠中はあまりにも酷かったが、選手のクオリティに求めるのは簡単として、更に選手の適正と流動性の欠如が考えられる。

 

2018から2019年前半にかけて、頑なに2-3と言う形で最終ラインからのビルドアップ部隊を構成していたポステコグルー監督(以下ポステコさん)

 

まだJリーグに敵陣プレスを仕掛けるチームが少ない中で、それでも特攻してくる相手にはボコボコにされていた中、2CBに2ボランチのボックス陣形をベースに、プラス両サイドバックと言う構成を見出し、

 

2-2のボックスを維持、また松原だけが最終ラインに残ったり、ボランチが1列降りたりして3枚になる、など、高い流動性を生み出す事で対抗策とした。

 

だが今回の実験では、タスクを明確に割り振った結果、硬直が起き、選択肢を奪っていくプレス合戦において、マリノスはパスをすればする程に悪い状況になるという切なさで、敵陣への前進率(自陣からのパスアタック成功率)で惨敗となった。

 

攻撃回数があれだけ一方的になってしまえば、2-0というスコアはGKを褒めるべき結果だろう。

 

更に選手の適正として、扇原やティーラトンは狭さなんて関係ない、いやそもそも狭くないよね、と言う選手ではなく、流動性の中で運動量が活かし、そしてオープンになれば前進パスが出せる選手で、

 

「俺は正拳突きしか撃てないが、見えないほど速く、当たった物全てを砕く威力があれば、それでも問題は無い」

 

とでも言うべき、剛の者的論理を実現するには、マリノスにはリソースが、マネーが足りな過ぎる。

 

また、リスクを掛けて、苦労をして、ボールを前進させオープンな選手を作っても、低い可能性にベットできる、マルコスの様な勝負師なクォーターバックが居なければ、エラーによって起きるマイナスのみが目立つ結果になった。

 

ボールを守りファウルで逃げるのが上手い天野がアンカー、遠くを狙える扇原が、セカンドトップに入りボールを引き出し、前線で第二攻撃地点となった方が、あそこまでの劣勢にはならなかったかもしれない。

 

そんな訳で苦闘の45分であったが、4年目になれば「またやっとるな、ポステコさん」である。常に可能性を模索していく彼のラボでは成功と引き換えに積み上がった失敗作が、そろそろ山の様になってきた。「見たくないゲーム」と言うが、こちらは最早、見慣れた光景ですらある。

 

 

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可能性の模索を実践で行う手法でチームを仕上げていくのはいいとして、選手のみならず我々も辛い45分、場合によれば90分を過ごしてきた訳だが、

 

『でも、これまでの経験上、無理じゃないですかね。』みたいな、

 

あれ、もしかして、前のアレを失敗とは認識していなかったのか、解釈の相違を感じる事も珍しく無い。昨年の名古屋戦とか、どうでしたっけ?

 

一方で、これがレオの合流が遅れているからかなのかは分からないが、前田がマリノスに加入して以降では最も真価を感じさせるプレーを見せた。

 

「やっと彼がウイングではないと、我々の思いは通じた…トラストミー!」

 

その効果は絶大で、45分で記録したスプリント数26にとどまらない。

 

 

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サイドの上下に費やされていたそれは、ピッチ中央がスタートとなる事で、まさに縦横無尽。

ロングボールでの裏抜け、失った瞬間のファーストプレス、更には被カウンターにおけるプレスバックとして、そのベクトルはあらゆる局面で全方向に向けられた、太陽拳ならぬ八極拳

※八極、全方向へのエネルギー=爆発 を意味する

 

更に、これにより前半は存在しているのか確認不能だった、オナイウが敵DFラインから浮いた、セカンドトップ的な立ち位置に入る事が増えて復活。

 

彼の持つ武器の中ではドリブルシュートよりも遥かに優秀な、トラップとショートパス、そしてリバウンダーとしてセカンドボールの争奪における成功数が光った。

 

DAZNデータでは前半12-4と明らかな劣勢だったシュート数は、後半6-7と大幅に改善。

 

明らかな失敗ゲームは、この後に控える、マルコスとエウベル、そしてレオの合流と、更には樺山のブレイクというオマケまでついて、何とか今シーズンに期待を持たせる光を見せつつ終わる事が出来た。

 

前田はゲームを変えるデトネイター(起爆装置)としてセンターに置く、オナイウはセカンドトップとして振る舞わせてクロスからのゴールを期待したい、スペースを打ち抜けない天野は第二次攻撃地点よりビルドアップ部隊に組み込んだ方がボールを守れる、扇原のアンカーはいい加減諦めて…

 

役割や構造変化よりも、先ずは個性を活かす適正な選手起用の方が、今いる戦力で成果が出るのではないだろうか。

 

就任以来、成長がキーワードのポステコさんだか、外からだと妙に感じるこだわりで選手が疲弊している様に見えるタスク割り振り、運用の改善に成長を期待したい。